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家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~  作者: うるいあ
1章 断罪から脱出まで

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4/60

3 思い出す、断罪の記憶


主人公としてプレイしてた時は、ちょっと都合いいけどまあ、と思っていたアリア。

この現実が、乙女ゲームだって思い出しても、私はアリアが大嫌いなままだ。

私には権力があり、金があり、学力があり、美貌があった。周囲にはまた品のいい取り巻きがいた。


アリアは平民で、権力も金もなかった。最初は学力も乏しく、ミスを笑いで誤魔化すような性格が嫌いだった。顔も最初は平凡そのもの。突出していたのは、魔力が強く全ての属性の魔法を満遍なく使えるということだった。

確かに貴族連中は、手ぐすねを引いて彼女に対応していた。


けれど。よもや。

完璧パーフェクト、それが私の王子、ハイド様――リアルガチの王子様が、その中にあろうとは、どうあっても想像できなかった。


ハイド様の相手は、私しかありえないと、そう思い込んでいた。

だって、私は血の滲むような努力を重ねていたから。スペックがどうあれ、結果周りの人を騙すことができるくらい、ちゃんとした。魔力なしでもいいと、ハイド様に微笑んでもらえるくらい、頑張った。

でもアリアが現れ、あれよあれよと学園を掌握しはじめると、遜色のないレベルの私は、次第にそれこそ色を失っていく。

『どうして!』

さあ、と気のない返事の取り巻きが私に隠れて笑った。

それは嘲りの意味を含んでいた。

やばい。私は唇を噛みしめる。

どろどろと、私の周りが溶かされ、崩されていく。ひしひしとその恐怖に震えながらも、私は抗った。

ハイド様と社交の場に顔を出し、王妃たる振る舞いを実演してみせた。

実家でお茶会を開き、周囲の貴族たちに自分が婚約者であることを名実ともにアピールした。

庶民の生活も知らなければ、と身分を隠して城下町の様子を見に行ったりもした。

――しかし、そのどれもが、逆効果だった。


自己主張をしだした私は、ハイド様の望む姿ではなかった。私は婚約者として及第点ではあったが、旧来の王妃を踏襲したその姿は、彼が王位を受け継ぐための一打に欠けた。王位継承者は彼だけではない。彼が選ばれる理由が必要だ。

アリアは学園の温室で、ハイド様との愛を育んだ。加えてそこで自身の思う、夢物語のような政策を口に出す。――それは、王家の教育に欠けていた視点だった。彼が考えていた政策に一条の光を与える発想だった。

孤児院での英才教育、給食の義務化、固定採用、サロンでの職人たちの競争試合を見世物にした催し、兵士たちの衛生管理。冒険者の一定賞与と引き換えの定住化。

話し合うごとに、二人は親密になる。

いくども重ねたその逢瀬を、周囲はあっさりと目にする。――当たり前だ。あの二人は注目される存在だったし、温室で笑い声を上げてれば誰でも気がつく。

二人だけならまだしも、綺羅綺羅しい将来有望な攻略者六人を侍らせて、中央にあるその女。

彼女はもう、平凡そのものの存在ではなかった。外見は以前と同じ、黒髪に桃茶色の目をもつ平民であったけれども、その慈愛そのまま光にしたような、そんな存在感を持つ娘になった。

攻略者六人に、劣らぬその存在感に、皆が皆、彼女が勝者であると頭をたれたのだ。


――私以外は。


温室に乗り込み、攻略者の一人の問題行動を責めていた私は、証言者であった幾人かの生徒の裏切りに合い、逆に不正とアリアへの嫌がらせの証拠をつきつけられた。

前述のとおり、子ども騙しのその行為は、けれども王子の婚約者の資格を失うには十分だった。

私はその場に崩れ落ち、大好きだったハイド様にあらぬ罪を決めつけられ――言い返す気力もなく冤罪を受け入れた。


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