最終話「剣と契りⅩ」
フランとの会話を終えた俺は、玲奈と桐華の元へと戻る。
だが足に力が入らない状態の影響で、俺は剣を具現化させて杖として使った。
剣を杖として使う事を侍にでも見られれば、確実に罵倒される光景だろう。
「……はぁ、はぁ……満足したんか?二人共」
近くまで戻ってみると、神無の疲れ切った声が聞こえて来た。
肩で息をしている様子から見て、既に事が済んだと思って良いのだろうか。
そんな疑問を浮かべながら、俺は彼女たちの様子を伺った。
「うん、満足したよ。あーしたちが優しくて良かったねぇ、カンナ?」
「……玲奈はともかく、桐華嬢ちゃんにド突かれるとは思わんかったわ」
「そうですか……?」
神無の言葉に対して、桐華は首を傾げてそう問い掛けた。
その問い掛けを聞いた神無は、溜息混じりに肩を落とした。
桐華が感情を表に出す事は少ない事もあり、冗談なのか本当なのかが分からない時がある。
言葉を聞いて分かっているのか、分かっていないのか。……という判断も難しくなる。
「お前ら、まだやってたのか……」
「あ、レイおかえりー!」
「――零、おかえり」
玲奈が手を振った瞬間、それを遮るようにして俺の方へと桐華がやってくる。
『おかえり』という言葉を呟いた後、桐華は俺の目線と同じ位置にしゃがみ込む。
「……っ」
「むぎゅ」
「なっ!?き、桐華っち!!!!何普通にレイに抱き着いてるのさ!!!」
ビシッという効果音が鳴り響く程、玲奈は指差してそう言った。
だがしかし桐華は離れる様子は無く、俺の腕に絡み付いて動こうとしない。
そんな桐華の拘束を受けながら、俺は告げるべきだと思い口を開いた。
「――丁度良いから桐華」
「ん?」
「お前に関して思い出した事は、ほんの少しだが思い出した。あの施設から拾った子供が、まさかこんな風に育つとは思わなかった」
「ん、成長期」
何故かドヤ顔を浮かべながら、視線を合わせる桐華。
間近に顔がある所為で、ドヤ顔をされても直視する事が出来ないと分かっているのだろうか。
少しでも顔が近付けば、口と口がぶつかるかもしれない距離感だ。
「むぅ……桐華っち、離れろってば!」
「玲奈さんは恋人になるんでしょ?なら少しぐらい貸して」
「どういう理屈よ!?誰が人に自分の彼氏を貸す馬鹿が居るのさ!」
「……」
「あーしは違うし!!レイもこっち見ないの!!違うからねっ?」
桐華の言葉に対して声を上げる玲奈。
そんな玲奈に桐華が視線を向けるから、俺も空気を読んで視線を向ける。
「はぁ……そんな慌てなくても」
「誰の所為だと思ってるの!?誰の!――ちょっと、何処行くのさ?」
玲奈の言葉に対して、桐華は溜息を吐きながら俺から離れた。
何処へ行くのかと俺も思っていたが、玲奈の問い掛けに桐華は振り向いて言った。
「あたしが居るとお別れしにくいでしょ?だから空気を読んであげる。でも次また会ったら、抱き着くから……そのつもりで」
「誰が抱き着かせるもんですか!えっとレイ、あーしって彼女で良いんだよね?」
彼氏彼女という関係性を言うつもりは無かったが、俺は肩を竦めつつ答える事にした。
それはこの先の未来を自分で確定されるやり方で、約束事に近い物かもしれないだろう。
そんな事を思いながら、俺は龍紋を発動しながらその場から逃げるように言うのであった――。
「悪い、その話はまた今度な?」
「えぇ!?ちょ、レイ?」
「あぁでも……次にお前と会う時は、お前の苗字は霧原になるかもな?って事だけ言っとく」
「っ……それって……」
どうも、おはこんばんにちは。作者の三城谷と申します。
この度は、【ドラグニカ~剣と契り~】を最後までご拝読していただきありがとうございます。
この作品を書き始めたのは「小説家になろう」に投稿し始めの頃が初めてで、それから二年の歳月を懸けて「改稿版」として投稿しておりました。
『面白い』『読んでて楽しい』と思われたい一心で書き続けておりましたが、何事も経験なのか。足りない物も多々あり、それは恐らく読者様方にも伝わっていると思います(笑)
ですが、この作品を完結まで書き続ける事が出来たのは、ひとえに読者様のブクマや感想のお声。そしてアクセス数などがモチベーションとなっておりました。
さて、ここで重大発表です。
この作品が完結した事に関係しておりますが、恐らく「え?これで完結?作者?マジで?」と思った方々が居たかもしれません。ですが、ご安心下さい。
来年となって、3月辺りから続編を投稿したいと思います。また読んでもらえるように頑張って行こうと思います!!
それでは読者様方、次回作でお会い致しましょう!
追伸:この作品の完結にするのは、数個のエピローグ投稿後となります。宜しくお願いします。




