第八百四十七話「未来の為にⅡ」
バハムートへ武器を振り下ろした零と玲奈。
だがしかし、紙一重で回避に成功したバハムートは反撃へと行動を移す。
けれど、それを阻害する者の存在がバハムートの動きを制限する。
「……命中」
一発だけ撃った弾丸が命中した事を確認した桐華は、そう呟いて銃を縦にした。
やがて立ち上がってバハムートが桐華の姿を捉えた時には、時既に遅しと彼女は移動を開始。
狙撃者というのは同じ場所に留まるのは厳しくなり、時折場所を変えるのが最適だという。
ただしそれは仲間と連絡を取り合い、一対一ではない状況下に限る話である。
「(あの者が世に攻撃を……逃がして堪るか!)」
バハムートを取り囲むように立つ零たちを放置し、一矢報いるという勢いで桐華を狙う。
だがしかし、零たちがそれを許すとは到底有り得ない話なのは明白。
それを理解していながら、バハムートは零たちの事を放置し続けながら移動を開始した。
そんなバハムートの事を追い、零たちは先回りして前に立ち塞がって言った。
「逃がす訳無いだろ!テメェの相手はオレたちだ!」
「ウチらを無視とは、ええ度胸やないか」
「あーしをよくも操ってくれたね。お返しを受け取ってもらうよ絶対」
「もう逃げ場は無いぞ、バハムート。俺たちはお前を逃がさない」
ベルフェゴールと紫苑は不在とはいえ、それでも戦力としては申し分ない。
戦闘能力の高いメンバーが残っている以上、バハムートには分が悪い事は一目瞭然だ。
その上、別行動をしている桐華が何処から狙撃をする為にこちらを常に狙っている。
バハムートからすれば、その状況は聊か厳しいという一言に尽きるだろう。
「人間如きに遅れを取る事になるとはな。先程の言葉は確かな事らしい」
バハムートはそう言いながら、一度だけ竜也へ視線を送る。
だがすぐに逸らすバハムートに対し、玲奈は笑みを浮かべながら大金槌を振るう。
それを両手で防御したバハムートだったが、拘束された状態のまま真横に現れた零を見た。
「悪りぃな」
ただその一言だけを呟いた零を見たバハムートは、大金槌を防ぎながら小さく笑った。
何かを悟った表情にも思えた零だったが、振り上げた剣を躊躇する事なく振り下ろした。
肉を切り裂いたという感覚だけが手に伝い、零の放った斬撃は衝撃波となって街を横断する。
風圧に負けたセブンスアビスの面々は、武器や龍紋を使って風圧に耐えている間だった。
「――世を許すな、霧原零よ。そして、同胞たちを頼む」
「勝手な事を言う。……まぁ良い。お前の代わりに護ってやるよ、あいつらをな」
「あぁ」
短く交わされた言葉の中で、零とバハムートは見合った。
振り下ろされた剣からは衝撃波が波を呼び、爆風となってその場を包み込んだ。
その爆風が治まった時には、零の足元には虫の息となっているバハムートの姿があったのだった――。




