第八十一話「龍王と歌姫Ⅵ」
電子手帳のアラーム音が響いた瞬間、九条館の明かりが全て落ちた。
見えるのは、アラームを響かせる電子手帳が自分のを合わせて二つ。
私のと亜理紗の電子手帳が、微かな明かりとなっている。
「亜理紗、緊急事態だから臨戦態勢を許可します。生徒会長としてではなく、執行部としての許可を出します。それを全員へ送信して下さい!」
「了解ですわっ!」
彼女はそう返事すると、手早く電子手帳を操作して送信した。
同様に私の端末にも音がなり、各端末に送信された事を確認する。
「……響かせなさい、ミネルヴァ」
「っ!?」
「――会長っ」
咄嗟に聞こえてきた声と共に、風圧が私に向かって迫って来た。
彼女が少しの判断が遅れていたら、私もあんな風になっていただろう。
「九条館の壁が特別製で、かなり強度な素材を使用して建てられているんですよ。それをいとも簡単に砕いて、あまつさえ亜理紗でも動きが追い着けなかった……。さて、一体貴女は何者か教えてもらえるのでしょうか?入江未央さん」
「あら、気付いてたんだ?それとも気配を辿った勘、かしら?」
やってくれましたね、お兄様。
とんだじゃじゃ馬を施設に招いただけじゃなく、その正体がドラグニカだなんて……。
「この気配、会長は後ろへ。ここは私がお相手致しますわ」
「藤堂亜理紗、雷を操る『電撃姫』と呼ばれているドラグニカ。体重はえっと……ごじゅう」
「その口を今すぐ閉じましょうかっ!!」
「亜理紗、落ち着いて?そんな事よりも今は聞く事があるでしょ」
「そ、そんな事!?」
ガーンという効果音が似合う雰囲気で、亜理紗は部屋の隅で体育座りをし始めた。
何やらブツブツと卑下したような言葉を呟いているが、この場はそっとして置こう。
決して面倒とは思って居ない事を分かって欲しい。本当ですとも……多分。
「それで入江未央さん、貴女は何が目的なのですか?」
「……あなたがそれを知る必要は無い。全員、言う事を聞いてくれれば命は助けてくれるみたいだし、大人しく投降した方が良いと思うよ」
「その言葉を聞く限り、貴女は誰かの支配下にあるという事のようですね。ですが、投降する意志はありません。そして、敵意を向けたこの瞬間、私は執行部として行動しなくてはなりません」
私は深呼吸をしながら、目を瞑って口を開いた。
それは生徒会長ではなく、今から告げる言葉は執行部としての発言だ。
言い放ったその瞬間、執行部である彼女はすぐに行動を起こすだろう。
だがそれでも、あまり気乗りはしないが発言をする必要性がある。
「執行部、九条咲として命じます。入江未央、貴女の拘束を開始致します!」
「――トライデントッ、行きますわよ!」
槍を出現させた亜理紗は、一直線に彼女を目指して飛び出した。
容赦ない速度で向かった亜理紗に対して、彼女は動かずに棒立ちになっている。
そして直撃をすると思う程の距離で、彼女は笑みを浮かべて口を開くのだった――。
「……ミネルヴァ、手始めにメゾフォルテ♪」




