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【完結】ドラグニカ ~剣と契り~【1stシーズン】  作者: 三城谷
第76章【ドラグニカ~剣と契り~】
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第八百二十二話「欲しかったモノⅦ」

 『オレの元へ戻って来いっ!!ハクッッッーーーーーーー!!!!!!!!』

 

 ……呼んでいる。

竜也の深層世界ではないのに、その声は良く響いている。

いや、この空間で響いているモノではない。


 「どうしたの?」

 「……声が、聞こえて……」

 「声?……私には何も聞こえませんけど」


 新しい龍王の妹には、この声は聞こえていないようだ。

つまりは、この声は自分の内側なかだけで響いているという事になる。

きっとそういう事なのだろう。他の者には聞こえない声。

その声は彼女に届かなくても、私は……ハクは良く知っている。


 「……呼んでる」

 「ハクさん?」


 そう呼んでいるのだ。

今、竜也かれはハクの力を必要としている。

彼女の言う通り、ハクにも出来る事があるのかもしれない。

そう思える瞬間にもかかわらず、どうにも身体が動かない。


 「……行かないんですか?」

 「っ!?」

 「……」

 「声が、聞こえてるの?」

 「いいえ、聞こえてません。けれど、貴女が今さっき言いました。『呼んでいる』と。ならば、その人の所へ行くべきだと思います」

 「……行きたいよ。けど……身体が動かないの。ハクは、……リュウヤの力になりたい。役に立ちたいのにっ」


 彼女に当たっても仕方がない。

だがしかし、それでもハクは動く事が出来ない。

出来ない状態から、動くようにするにはどうしたら良いのだろう。

そう考えた瞬間、彼女がハクの背中を押そうとしながら言った。


 「私が言うのもあれですけど、自分が出来ると思った時に行動出来ないのは……とても悲しいです。でも今の貴女は違います。今からでも遅くは無いんです。恐くはありませんよ、きっとその人も、ハクさんを待っていますよ?」

 「ハクを……待ってる?」

 「はい。必ずそうだと私は思いますよ。(かつての私がそうだったから)」

 「……――!」


 だがしかし、動こうとしても意識しても動く事が出来ない。

その原因を理解しているかのようにして、彼女はハクの事を後ろから抱き締めた。


 「大丈夫です。もう必要とされないという事はありませんから……勇気を振り絞って下さい」

 「……(ハクが恐がってた?)」


 それはつまり、自分で無意識に彼を恐れたという事。

それを自覚した瞬間、自分の中で何かが弾けるモノを感じた。


 「ハハハ……」

 「ハクさん?」

 「ありがとう。ハクはもう大丈夫だよ、レイの妹」

 「そうですか?なら私は、もうお役が御免ですね。いってらっしゃい、ハクさん」

 

 そう言いながら、彼女は背中を押してくれた。

遠くなって行く空間と彼女を背に、光が見える方へと手を伸ばし続けた。

その結果、ゆっくりと開いた時には……彼の深層世界に居たのであった――。


 「すぅ……はぁ……リュウヤ!」

 「ハクッ!」

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