第七百六十五話「失うモノⅩ」
「っ……!?」
端末画面には、龍を含めて龍紋保持者の反応が示される。
そして龍を消滅させれば、端末上でも消滅するという探知機能がある。
だがしかし、私の端末から今その反応が消滅した。
「……桐華、さん?」
「消えた……」
「え?」
「端末上で確認してた。けど、白龍だけじゃなくて零も消えた」
「っ……私のも同じようですわね」
私がそう言うと、亜理紗は自分の端末を確認して言った。
その言葉を聞いていた他の人も、自分の端末を確認している。
施設で生徒として通っていた者なら、全員が持っていておかしくない。
支給されるのだから、当然の事だろう。
「……零くんが居ないのって、やっぱりおかしいんだよね?」
「ん、オカシイ。この端末は龍と龍紋保持者の位置を特定したり探知出来たりする物なの。龍紋保持者は登録しなきゃ表示されないけれど、それでも正体不明みたいに表示されるのが当然」
未央の言葉に同意した私だったが、やはり確かめに行かなくちゃいけない気がする。
白龍の気配も無くなっているし、零の龍紋の気配もしなくなった。
私たちが内側に宿していた龍を失ったから、同胞の気配を辿れなくなったのだろうか。
「……」
「なぁ藍原先輩」
そんな思考を巡らせている時、この中で得体が知れていない彼が会話に入った。
「何?」
「俺が言うのもなんだけどさ。外の様子、見に行って良いか?」
「どうして……?」
「――どうしてそう思ったのかしら?」
そんな彼の言葉に理由を問い掛けようとした時、亜理紗が私の言葉を遮るように言った。
訝しげな視線を彼へと送る亜理紗だが、その視線から目を逸らす事なく彼は目を細めて言う。
その視線には、微かに真剣さが混ざっていた気がしたのは気のせいだろうか。
「あいつが……零の奴がやられたとは思えないが、生死を確認するのは当然だろ。それにあいつは介入してくるなとは言っていたが、俺は待機していろと言われたが見に来るなとは言われてないしな」
「屁理屈ですわね」
「屁理屈だろうが関係無い。今まで別行動になっちまってたからな。俺は側近だからな、早く龍王の傍らに行かなくちゃいけないし」
そういえば、気になる事がもう一つあった。
彼の言う側近と龍王という言葉だが、追求せずに聞いていたがやはり気になる。
良い機会だ。この際、洗い浚い聞いてみるとしよう。
「亜理紗、少し待って」
「ん、何ですの?桐華さん」
「彼に聞きたい事がある。悪いけど、無意味な口論は後で」
「無意味な……はぁ、そうですわね。貴女の言う聞きたい事の方が、よっぽど有意義そうですわ」
溜息混じりにそう言う亜理紗だが、私はその言葉を聞いて彼へと視線を向けた。
「天風海斗……二つ聞いて良い?」
「双龍紋持ちの藍原先輩が、平凡な俺に何の用だ?」
「あたしは聞きたい事、一つは貴方がここに居る理由」
「俺が何処に居ようが勝手だろ。と言いたい所だが、ここに居る理由は俺の家で代々伝わってる務めとやらを果たしに来てる」
「務め、ね」
多分かもしれないけれど、次の聞きたい事がこの理由に関係ありそうだ。
私はそう思いながら、彼に目を細めて問い掛けるのであった――。
「じゃあもう一つ、貴方に言う龍王って何?」




