第七百六話「武力介入」
同時刻。零と竜也が対峙している頃。
別行動をしていた彼らは、行動を開始していた。
セブンスアビスの一人、紫苑を中心にして彼らは動く。
「――んで?あたいに何をさせたいんだ?馬鹿共」
白い煙に染まった息を吐きながら、目の前で改めて正座していた海斗に視線を向けられた。
ソファに力強く腰を下ろしている紫苑の視線には、威圧と呼べる類のモノが彼へ向けられる。
だが海斗だけではなく、他の者も同じく正座をさせられている最中なのであった。
「な、何でボクまで……」
「海斗と一緒に行動してたんだから、お前も同罪だろう?連帯責任って言葉を知らないとか言わないだろうなぁ?あぁ?」
「これでも応急処置する為に頑張ったんだけどなぁ!!ボクは海斗きゅんより役に立ってると思うけどっ!?」
「あの人間もどき……いや、龍もどきの話を詳しく聞かせろ。まぁどうせ、ベルフェゴールの奴が実験した子供かなんかだろうがな」
「「――っ!?」」
ベルフェゴールという名を聞いた瞬間、海斗と栞は目を見開いた。
聞いたばかりの名を紫苑の口から聞いた事が、驚いた結果となっているのだろう。
紫苑からすれば、ベルフェゴールという存在は懐かしくも憎たらしくもある存在なのだが……。
「せ、師匠っ。そいつを知ってるんですか!?」
「海斗きゅん、まさか何も知らないで言葉を交わしてたの?」
「何だその他人を馬鹿にしたような口調は」
「だって……ねぇ?紫苑さん」
海斗の言葉を聞いた栞だったが、口角を微かに上げて紫苑へと視線を向ける。
首を傾げながら同意を求めた栞に対して、海斗がムスッとした態度で紫苑の反応も確認する。
ソファにどっしりと構える紫苑は、そんな両方の視線を浴びながら口を開くのであった。
「ベルフェゴールはあたいの仲間だ。セブンスアビスって知ってるか?海斗」
「それは、勿論。でもそれに何の関係が?……まさか、あんな奴がそのメンバーだった。なんて言いませんよね?師匠」
「はぁ……おい栞、こいつはこんな浅はかな知識量で今まで戦ってたのか?」
紫苑は溜息混じりにそう言って、栞へと問い掛ける。
そんな問い掛けに対して、栞も肩を竦めて両手を挙げて言った。
「紫苑さん。海斗きゅんが頭の悪い事は、もう周知の事実だと思うんだけどにゃぁ?」
「はぁ……全く。良くもまぁそんな周知していない事を羞恥しないのな。お前は」
「紫苑さん紫苑さん、上手い事を言うにゃぁ。周知してない事を羞恥、だにゃんて♪――ぐえっ!?」
「うるせぇぞ、チビ。さて海斗、改めて本題に入るが……そもそもあのガキとの馴れ初めは?」
そう問い掛けられた海斗は、隣で眠るアインへ視線を向ける。
やがて微かに息を吐くと、紫苑の方へと戻して事の経緯を話すのであった――。




