第六百八十六話「退屈凌ぎⅡ」
「はぁ……」
神殿付近までやって来たが、タイミングを見計らう咲。
そんな咲を行動に疑問を覚えたのか、ウロボロスは耳打ちし始める。
「(どうしたのだ?さっさと話しかければ良いではないか)」
「(そうは行かないよー。何か考え込んでるみたいだし、邪魔しちゃ悪いよ)」
「(話したいと言い出したのは貴様だろうが。ここまでやって来たのも貴様のワガママなのだから、この時間を作った責任ぐらいは取れ)」
「(ええー、そんな重要視されてたの?この時間って)」
困惑した表情を浮かべる咲とは違い、目を細めて階段に座る少女の動向を探るウロボロス。
そんな視線を浴びる少女は、溜息混じりにブツブツと呟きながら彼女たちの気配に気付いていた。
「退屈で仕方が無いとはいえ、まさか久し振りの客人があの者たちとは世も末だな。(何をグズグズしておるのだあの者たちは!さっさと話掛けて来んか)」
そんな事を思いながら、少女は足をブラつかせて視線を先にある雲を眺める。
退屈さを我慢しながらも、身を潜めて内緒話をしている彼女たちの気配を探っている。
やがて身を潜めていた彼女たちに動きがあり、咲が少女の方へと近付いた。
「――あの~、ちょっと聞きたい事があるんですけど」
「……(話し掛けてくるのが遅いから、少しだけ悪戯してやろう)」
「えっとここがどういう場所なのか、もし知ってたら教えて頂けませんか?……もしもーし!」
聞こえていないのかと思った咲は、少女に聞こえるように声の音量を上げる。
後ろに居るウロボロスにまで聞こえる音量で言ったが、少女は反応している様子は無い。
だが実は聞いている少女は、内心的に文句を言いながら無視を続けていた。
「――!(うるさいわ!!この距離で聞こえぬ程、耳は衰えておらぬわ!捻り潰してやろうか小娘がっ!)」
「もしもーし!(き、聞こえてないのかな?さっきまで起きてたのに、もう寝てるのかな?)」
足をブラつかせる事もしなくなったのを見て、咲は少女が起きているか不安になっていた。
そんな不安がある中で、後ろから咲とその少女の事をじっと眺めているウロボロス。
眺めている間ではあったが、少女を見ていた彼女は疑問を浮かべたのである。
「……(あの者、どこかで見た事あったか?何やら感じた事のある空気だが)」
「もしもーし!!もっしもーし!」
「(しかし咲は何をしておるのだ、あれは。ただ同じ言葉で騒いでるだけではないか。もしあれで気付いている場合、後々蹴られても文句は言えんぞ)」
気付いている状態である。
既に沸点を突破する程のボルテージが溜まり、爆発寸前という状況だ。
だがそんな事に気付かないまま、咲は少女に声を掛け続けるのである――。




