第五百六十九話「灰色に染まる世界Ⅹ」
目を覚ました彼女は、左右の瞳が違う色の状態だった。
それを自覚していない彼女自身は、周囲の状況に寝起きのまま言葉を投げる。
「……騒がしいぞ、貴様ら」
伸びをしながら、片目を閉じてそんな事を言う彼女。
そんな彼女の様子を見て、ある事を感じた桐華は咥えていた棒菓子を折りながら言った。
「……亜理紗、ウロボロスだよ。どう見たって咲じゃない」
「わ、分かっていますわ。ただ見た目が似てるのだから、間違って呼んでも仕方が無い事でしょう?」
「まぁ……あむあむ。(あたしが気になってるのは、まだウロボロスとしか会話してないって事だけど――後で聞いてみよ。今は……アレをどうするかだし)」
口には出さず、ただ真上に浮かぶ巨大兵器を眺める桐華。
そんな桐華の様子を見ていた彼女は、目を擦りながら言うのであった。
「小娘よ、メサイアを破壊したい気持ちは分からなくは無いが止めておけ。いくら貴様の龍が威力を持とうと、いくら貴様に力があったとしても破壊する事は不可能だ」
「……どうして、そんな事を言えるの?」
「我の記憶にある情報から言ったまでだ。何でこんな事を知ってるのか、我自身には不明だがな」
「??……不明って、貴女は零から記憶の代償を払わせていたはず。なのにそれを知らない訳がない」
「……記憶の代償?ふむ――」
彼女は腕を組んで、自分の記憶を探るように目を細めた。
記憶にある情報を探り、巡り、奥へ奥へと記憶の層を進んで行く。
だが、そんな様子を見ていた桐華は疑問を抱いていた。それは……。
「(おかしい。記憶の代償は、不明な事?)」
今に至るまで、彼と行動を共にしていた彼女の言動。
そして、その様子を見ていた桐華は疑問を抱くしか出来なかった。
だがその疑問は間違っておらず、すぐに答えを出すかのように彼女は亜理紗に凭れ掛かった。
「か、会……ウロボロス、大丈夫ですか?」
「…………」
「ウロボロス?」
眩暈を起こした様子で、倒れてきた彼女だったが返事が無い。
やがてまた目を擦りながら、喉を鳴らしながら伸びをし始めた。
何があったのかを把握していない彼女たちは、そんな彼女の行動に顔を見合わせる。
「……ウロボロス、体調が不調なのですか?もしそうなら、ここから離れた方が」
亜理紗の言葉を聞いた彼女は、『ん~~』と言いながら伸びをし続けていた。
そして準備運動のようにその場で跳ねると、何かに納得したような様子で首を縦に振った。
そんな不可解な行動をしている彼女だったが、亜理紗と桐華たちの方へと身体を向ける。
やがて、口角を少し上げて言うのであった――。
「……久し振りっていう程、時間は経ってない。けれど、私が私である事を私は告げなくてはならない。やや面倒さを感じるけれど、まぁそこは我慢するしかないかな」
「「???」」
「まずはおはよう、二人とも。私が誰だか、もうこの時点で分かって欲しいんだけどなぁ」
「「っ!?」」




