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第五百三十三話「亜理紗VS桐華、再びⅣ」

「……どうしたの、亜理紗。それで本気?」


 彼女が私を見下し、冷ややかに目を細めながらそう言った。

彼女らしいと言えば彼女らしいし、彼女らしくないと言えば彼女らしくない言動。

普段の性格から考えれば、彼女の口からそう簡単に聞く事の出来ない声色だ。


 「っ……まだですわ。私だって、まだ戦えますわっ!サラスバティッッ!!」


 槍と身体を覆い尽くす程の電流が、周囲に火花を散らして音を響かせる。

小さい破裂音が鳴り響く中で、彼女は私を見据えながら口を開いた。


 「……まだやるんだ」

 「私も、桐華さんと同じですから」

 「同じって、何が?」

 「負けず嫌い、ですわっ!!」


 そう。私と彼女の唯一の共通点と言える部分。

そして、これ以上の無いぐらいの接点である共通の意識。

だがしかし逆に言えば、これしか私と彼女を繋ぐ物が見つからないという事実。

これを失ってしまったら最後、私は彼女にとってどんな存在か分からなくなる。


 「はぁあっ!!」

 「っ……甘いよ、亜理紗!」


 槍の間合いを的確に理解しながら、銃と肉弾戦を繰り返す彼女。

これも才能の差なのだろう。いつからだったか、私が彼女の背中を追うようになったのは。

施設の中等部に入った頃だろうか。いや……もしかすれば、もっと前に。

出会った瞬間にはもう、本能で理解していたのかもしれない。


 ――彼女は強い。今の私では勝つ事は出来ない、と……。


 だから私は、強くあろうとした。

身体的にも、精神的にも……追い越す事が難しいなら、並ぶぐらいの実力を。

それを求めて頑張って来たのに、私は何度も自分の無力を思い知らされた。

今、彼女が暴走状態であるのならば……もう二度と同じ事を繰り返してはならない。

また彼の力を借りるようでは、サラスバティから逃げるようでは話にならない。


 「……すぅ……はぁ……!」

 「っ……!?(亜理紗の雰囲気が、変わった?)」

 

 この戦い方が通用しないのであれば、いよいよ私には打つ手が無い。

もう彼女の隣に居る事、それだけの話では無くなってしまう。

この壁を越えなくては、私は彼らの空間に居る資格は無い……!


 「桐華さん……」

 「ん……?」

 「見せてあげますわ。私の本気ちからを……私の真の能力ほんきを」

 「……」

 「対等で居ようと思うのは、これで最後です。私は今日、貴女を越えさせて頂きますわ!」

 「ふふ……ん、分かった。許した訳じゃないけれど、その本気を見せてもらう事にする。でもその代わり、あたしも本気で行くから。良い?」

 「フッ……望むところですわ」


 互いに視線を交わした数秒後、私たちは互いに前へと駆け出したのであった――。

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