第五百二十一話「天照す、光Ⅱ」
本日の更新は、二話となります。
それでは、本編へどうぞ!
「……凄まじいオーラやなぁ、お嬢ちゃん。それがお嬢ちゃんの本気、という事でええ?」
「……すぅ……はぁ……」
「(集中力もやけど、本当にこのオーラは凄まじいな。彼女の戦闘能力で、ここまでのオーラはリバウンドの恐れもある。注意せんとな)」
神無は小さく呼吸をし、集中力を高めている桐華を見てそう思う。
そのオーラは天に届きそうな勢いで湧き上がり、藍原桐華という存在の能力を表している。
勝てる勝てないの問題で言えば、その心配はどこにも無いのだが……懸念すべき点が一つ。
龍紋保持者には、一定以上の能力解放でやってくるリバウンドが存在する。
霧原零でいう所の代償と言えば、恐らくは伝わりやすいだろう。
「(手遅れになる前に、さっさと終わらそか)」
「――っ!!」
「(来るっ)」
藍原桐華のオーラがまた上昇し、気迫という圧力が生じる。
その気迫を感じた瞬間、彼女の姿を神無は見失ってしまった。
「っ……(何処や、気配は……上っ?)」
微かな気配を辿り、神無は彼女の位置を把握し捉えた。
すぐにアマテラスに指示を出し、龍を彼女へと向かわせる。
だがしかし……。
「何処を見てるの?」
「っ!?」
その声は神無の背後から聞こえ、カチャリと後頭部付近で金属音が響く。
回避行動を取るより先に引き金を引かれれば、神無は致命傷は免れないだろう。
それでも彼女は回避せず、後頭部へと向けられた銃を持つ腕の方向を逸らす。
「っ、まだ着いて来れるの。だったら、もっと速くするだけ!」
「そんなんで勝てる程、セブンスアビスは伊達ではないっちゅう事や」
「ケルベロスッ、あたしの負傷した腕を貸す。もっと動けるようにしてっ」
「止すんやっ!!」
桐華の言葉を聞いた神無は、焦った様子で彼女へと手を伸ばした。
だがしかし、それは届く事なく彼女は旋風に包まれてしまう。
その様子を眺めていた亜理紗は、拳を握ったまま奥歯を噛み締める。
「……(邪魔はしない。しないけれど、あのままでは桐華さんが……いえ、信じないと駄目ですわね。彼女は私の友であり、好敵手なのですから)」
「うぐっ……あああああああああっ」
凄まじい風圧によって、桐華の姿を確認する事は出来ない。
だがその声は、正真正銘……何かに耐えている藍原桐華の声だった。
やがて旋風は風圧となり、周囲を切り裂くようにして散らばった。
砂埃が舞い、シルエットしか見えない彼女の姿に変化は無い。だが……。
「っ……(なんやこれはっ、これは何や?)」
その異変を彼女だけ、神無は気が付いていた。
「――お待たせ。出血大サービスで、相手してあげるよ。神無さん」
「冗談キツイで、ほんま……」
冷や汗を頬に伝わせながら、神無はそう言って彼女を見据える。
負傷していた彼女の腕には、龍紋が巻き付いたように浮かび上がっている。
そして彼女自身を見ていた神無の目には、彼女のオーラが見えなくなっていたのであった――。




