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【完結】ドラグニカ ~剣と契り~【1stシーズン】  作者: 三城谷
第5章【龍紋に魅せられし者】
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第五十話「灰色の存在Ⅳ」

 ドラグニカ……その存在は、龍に中てられし者たちの呼び名。

その呼び名で呼ばれる人類には、特別な力が宿っていると云われている。

漫画やアニメのような創作に出てくる魔法にも似たその力は、呪いと同じだと彼は言った。


 「桐華さん、休憩どうですか?」

 「……ん、賛成」


 でもその呪いの力を使わなければ、自分自身を守る事は出来ない。

再び龍災が起きれば、誰かが龍化してしまう可能性だってあるのだ。

それにこの力とは別に、この戦い方は……。


 「桐華さん?」

 「な、何?亜理紗」

 「何?じゃありません。何をボーっとしてるんですか?」

 「ん……考え事」

 「何か気になる事でもあるんですか?」

 「うん」


 気になる事はある。それに引っ掛かってる物もある。

彼、霧原零という人物に関係する事の何かがあるのだ。

でも何故か、それが曖昧で思い出しにくい状態だ。


 (あの時……あの場所で、あたしは彼と会っている?)


 何も思い出せない。この棘が刺さった感覚は気持ち悪い。

思い出せそうで、思い出せないこの感覚は嫌いだ。慣れない。

お菓子でも食べて落ち着こう……あれ?


 「……亜理紗、そのお菓子って」

 「あ、こ、これはその……ちゃんと許可は取りましたわよ!?ずっと生返事というか、ボーっとしてたので、悪戯でもしたら元に戻るかなぁと思いまして……あ、あははは~」

 「…………訓練再開。手加減無しで行くから」

 「ちょっと待って下さいませ!!私の準備がまだ――」

 「乱れ撃て、ケルベロスッ」


 銃を乱反射しながら、逃げ惑う彼女を目一杯に追う。

そんな自分が誰かと話しながら、ふざけ合った記憶はあまり無い。

こんな暖かい空間の中には、自分がちゃんと居るのかどうかさえあやふやだ。


 「――ええい、たかがお菓子の一つや二つで!!みみっちいですわよ!」

 「たかが……亜理紗、今、言ってはならない事をあたしの前で言った」

 「あ、しまっ……」


 ハッとした様子で彼女は口を覆うが、時既に遅しという奴だ。

両手に銃を具現化させ、呟くようにもう一つの龍紋を発動させる。

オルトロスとケルベロス。この二体とは、いつからの付き合いだったか。

もうそんな事すら、私は覚えていないんだ。


 「もうっ、セキュリティを最大限へ設定して下さい!」

 『畏まりました。防御障壁のレベル、最大限へ移行いたします』

 「これで思う存分、暴れられますわよ。桐華さんっ!!――トライデントッッ!」

 「言われなくても、その為の訓練でしょ。亜理紗、教えてあげる。食べ物の恨みの怖さを」


 私はそのまま、銃を構えて彼女と訓練を再開する。

武器を構える度、何かが頭の中で映像として横切るけれど気にしない。

今、自分が立っているこの場所。それが今の居場所なのだから――。

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