第三十八話「龍化した少女Ⅲ」
「上を見たら殺しますわよ」
「はいはい。分かってますよ~」
自分の部屋から窓側から脱出し、近くにある地下水道へと向かう。
その梯子で下りながら、薄暗い先へと進んでいたのだが……。
下へと辿り着いた途端、何やら彼女の様子が挙動不審になっていた。
「何か気になる事でもあるのか?そわそわし過ぎだぞ」
「な、何もありませんわ!決して暗い所が苦手とか、そんな事をありません事よ!」
「あ~、さいですか」
(薄暗い場所が苦手っと……いつも使ってるメモ帳にでも書いておこうかな……?)
「……ん?」
制服のポケットなどを手で叩いて確かめたが、メモ帳自体が見つからなかった。
部屋の中にでも置いていってしまったのだろうか。そうは思っても、取りに行くのは面倒だ。
さて……どうしようか。
「ど、どうしたのですか?」
「いや、特に何も」
「そ、そうですか。は、離れないで下さいね?」
闇に怯える様子で、彼女に袖を指で掴まれる。
やや引っ張られる感覚で、身体が後方へと傾いてしまう。
細い道になっている為、身体が横に流れれば下水に真っ逆さまだ。
「おい、歩き辛いんだけど……」
「し、仕方ないじゃありませんの!暗くて良く見えないんですからっ!」
「電子手帳でライト機能を使えや!腕を引っ張られた方が、百倍危ねぇわ!」
「あ、なるほど。こ、こほん……なかなか良いアイデアを言いましたわね。褒めて差し上げますわ」
「はいはい。そりゃどうも」
鼻歌混じりにライト機能を使う彼女は、嬉しそうに道を照らしている。
子供っぽいというか、意地っ張りというか……難儀な性格だと思ってしまう。
良くもまぁ、これで執行部が出来てるなぁと疑ってしまう。大丈夫なのか、本当に。
「藤堂亜理紗。お前は何でここに居るんだ?」
「いきなり何ですの?」
「いや、特にそういう話をした事無かったからさ。良い機会かと思ってな。嫌なら答えなくていいぞ?無理強いはしない」
「ふむ……まぁ、秘密にする事でもありませんし、暇潰しにはちょうど良いですわね」
少し悩んでから、彼女はそう言った。
懐かしい事を思い出すように、目を細めて話し始める。
その表情は柔らかくて、見た事の無い仕草でドキっとしてしまう。
俺は思わず息を呑んで、誤魔化すように話を促すのだった。
「――ではお話致しましょう。本当に、大変、非常に不本意なのですが……仕方ないのでお話致しますわ。私が、生徒会長である彼女にあった頃のお話を」
「どうでも良いが、前置きがすげぇ気になるんだが?」
「話の腰を折らないで頂けますか?」
「はいはい。続けてくれ」
「こほん……あれは、まだこの施設に入る前の話ですわ」
そう言い始めて、彼女は語り始めた。
俺はその話を聞きながら、彼女と共に地下水道を歩き続けるのだった――。




