第二話「白銀の招待状」
銀色の髪の毛。それは染めたようなモノではない事は、専門外の俺でも分かる事だった。何故なら太陽に反射しているせいか、髪の毛の毛先までに艶が見えるからだ。
髪の毛は手入れをしなければ痛んだりするはずなのだが、彼女の髪の毛はその様子もない。しっかりと手入れをしているのだろう。
「…………なに?」
「あぁ、えっと……!」
しまった。つい見過ぎてしまっていたのか、声を掛けられてしまった。いや、これはむしろチャンスなのではないか。生まれてから数十年、俺は女の子と話す機会なんてものはなかったし……。少しぐらい夢を見たって――いやいや、俺には大事な野望がぁ――でもでもぉ~。
「ニヤニヤしたり、頭を抱えたり、一人で忙しい人ね。とても龍に選ばれたとは思えない」
「……っ!?」
今、彼女は何と言った。今――――『龍』と言ったんだよな。
「……お前、何だ?」
「警戒しないで欲しい。私はただ、貴方を迎えに来ただけ」
「どういう事だ?」
「ここでは話せない。後日、ここに来て欲しい。来てくれたら何でも答えてあげる。それじゃ」
「あっ、おい!」
一枚の紙を渡した彼女は、さっさと墓地から離れてしまった。すぐに追ってはみたが、お金持ちが乗るような黒い車に乗って、何処かに行ってしまった。
ただ一人墓地に残された俺は、家に帰ってから渡された手紙を読む事にしたのだった。
◆
『お渡しする事が出来て、何よりでしたね。見た所子供でしたが……』
運転手がそんな事を聞いてきて、私は溜息を吐かずには居られなかった。
「子供だろうがなんだろうが、あれは私と同じ選ばれた人間です。決して侮ってはいけない対象だと、私は説明したはずですよ?」
『失礼致しました、お嬢様。ですが……』
何やら言葉を選んでいる様子が目に見える。大方、『あれを本気で選ばれた者だと思って宜しいのですか?』などという事を考えている事だろう。正直に言えば、私だって同じ気持ちだ。見た目は平凡な少年で、年齢だって私とそんなに変わらない様子だった。それでも私は彼に声を掛けた。見られているのは分かったけど、それとこれとは話が違うのだから。
「龍災に中てられし者。戦わずして、生きるべからず……ね」
私は前にそう言われたのを思い出し、小さく呟くのだった。
次の休日は三日後。彼にはその三日が猶予になり、この日常を過ごせるか過ごせないかの選択になる。それは決して凡人には選択出来ない内容で、慎重に選択しなければいけない内容だ。
彼がどう出るか。どう考え、どう答えを導くか……。私を含め、彼は選択しなければならない。
それが龍災に中てられた者の役目なのだから――。