第二十一話「龍の力を持った兄妹Ⅱ」
懐かしい夢から覚めた後、寝汗を流しながら彼女の言葉を思い出す。
また適正テストとやらをやらなくてはならないとは、なんとも面倒だと思ってしまう。
そう思いながら、降り注ぐ小さい雨に身を委ねる。
「……あの時、俺は……」
その中で、夢の中で見た記憶が脳裏に思い浮かぶ。
まだ小さい妹の姿を見たのは、あれっきりで記憶に残っているのは写真だけ。
それ以上は覚えていないし、正直、何があったかは詳しく覚えていない。
ただ覚えているとすれば、俺はあの時――無我夢中で何かをしていたと思うのだ。
『……お兄ちゃん、助けて……』
「いや、覚えていないじゃない。俺は多分……あの時逃げたんだろうな」
シャワーを浴び終わり、タオルで頭を拭きながら端末を眺める。
そこには誰からか、一件だけ通知が来ていた。
俺はそれを開いて中身を見ると、着替えを済ませて急いで部屋を飛び出した。
「この端末で、相手の名前が無いのは初めてだな。非通知設定とか出来たのか?」
そう呟きながら、廊下を走って外へと出て行く。
シャワーを浴びたばかりの所為か、身体に当たる風が冷たく感じる。
その夜風に吹かれながら、俺は端末へ送信されていた場所へとやってきた。
するとそこには、誰かが夜空を見上げて立っていたのであった――。
◆◆◆
「こんな夜中に行動しているとは、やはり野蛮な男子は好きになれませんね」
「あんたは確か……生徒会に居た」
「藤堂と申します。生徒会のメンバーに加わってはいますが、貴方の事が気になってお呼び致しました。忙しかったですか?」
ニヤリと笑みを浮かべながら、零の事を目を細めて様子を伺っている。
その様子には時間の所為もあってか、なんだか不気味な状態に見えている。
だが零が答えを出す前に、彼女は溜息を吐きながら手を空へと掲げた。
「――早速ですが、貴方には死んでいただきますわ」
「……は?俺、あんたに何かしたか?」
「何もしてませんわ。ただ私が気に食わない。それで理由は十分です」
「勘弁して欲しいな。テストの疲れが残っていて、早く寝たかったんだがなぁ」
零はそう言いながら、肩をぐるぐると軽く回す。
その様子はやる気があるようにしか見えず、彼女の目が零を観察する。
彼女はそのまま小さく呼吸し、零の龍紋が反応するように痛みを走らせる。
「……またか。そういえばこの学園ってさ、龍紋ってのを持ってる奴らばかりなんだよな?」
「何を今更な事を聞いてますの?この数日間、貴方は何を学んでいらしたのかしら。全く、これだから野蛮な者は……やはり貴方には、生徒会に相応しくありませんわね。――行くわよ、トライデント」
彼女がそう呼ぶと、電磁波が彼女を包んでいくように発生する。
空へ掲げた手の先から、波紋のようにその中から武器が出現していく。
それは長く、まるで槍のような武器にも見える。
「それがあんたの武器か。電気を纏ってるから、当たったら痺れたりとかしちゃう訳?」
「妙に良い勘をしてますわね。そう、この槍にはトライデントの能力が付加されています。少しでも掠れば、身体を痺れされる事が出来ますわ」
「ご丁寧にどうも。……んじゃ、逃げるかな」
「逃がすとお思いですか?――ふん!!」
零が逃げようとした瞬間、彼女は電気を纏った槍を振り回す。
回避行動していたが、腕に軽く掠った瞬間に動きが止まってしまう。
ただ掠っただけにも関わらず、零は身体の自由を失ったのだった――。
「くっ……!?」
「死んで下さい。霧原零さん、おやすみなさい」




