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【完結】ドラグニカ ~剣と契り~【1stシーズン】  作者: 三城谷
第2章【龍が出現せし日に】
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第二十話「龍の力を持った兄妹」

 闇に染まった廊下を進み、私は月の光が差し込む窓を眺める。

彼の持っている記憶は曖昧で、私に対する記憶が不安定だ。

龍紋を刻まれた私たちは、ほぼ強制的にこの場所に収容される。

だが彼の事を見つけるまで、数年は掛かってしまった事が曖昧な理由だろう。


 「生徒会長がこんな夜中に何をしてるのですか?九条さん?」

 「藤堂さん、ですか。そちらこそ、何故この夜中に廊下へ?お手洗いなら寮にあるはずでは?」

 

 私は心がざわつく所為か、生徒会の仲間である彼女に軽く八つ当たりをしてしまった。

だが彼女はそれを気にしていない様子で、腕を組んで目を細めて言った。


 「……生徒会長、私は彼を仲間にするのは反対です」

 「龍を狩るというのなら、彼の存在は必要ですよ。いずれ先輩にも分かります」

 「随分と自信があるようですが、次は誰がテストをするのですか?」

 「私が動く予定です。先に言っておきますが、先輩の力は借りるつもりはありませんよ」

 「あら、残念。私が動くのなら彼を不合格にして、違う場所に収容させるつもりでしたのに」


 そんな事を考えていたのかと、私はやや睨み気味で彼女を見据える。

彼女の瞳に反射している私の瞳は、月夜に照らされていると目立つものだった。

無意識下では無いが、私の龍紋が彼女の龍紋に反応しているのだろう。

内側から闘争本能が込み上げてくる。身体が熱いと思うぐらいだ。


 「そんな怖い顔をしないで下さい。私はただ、実力の無い者は必要無いと思っているだけ。実力が証明されれば、それなりの対応を致しますわ」

 「そうですか。じゃあ……問題は無さそうですね。彼は私たちより、遥か先を経験している者です。そう簡単に勝てる人間ではありませんよ」

 「……なら、それを拝見出来る日を楽しみにしていますね。ふふふ」


 彼女は笑みを浮かべて廊下を去って行く。

私は彼女の背中が見えなくなるまで、その背中を見届けた。

やがて龍紋の疼きは静まっていき、落ち着かせるように深呼吸をする。

私は再び空に浮かぶ月を見て、自分に言い聞かせるように呟くのだった。


 「落ち着きなさい。私は私……たとえ苗字が変わったとしても、容姿が変わったとしても――私はあの人の妹という事実は変わらない。そうは思わないですか?藍原桐華さん」

 

 私はそう言って、背後を見ずに呟く。

廊下の奥から姿を出して、棒状のお菓子を口に咥えている。

気配は感じていたが、恐らくは彼の部屋から着いて来ていたのだろう。

彼女には、神出鬼没という部分があるのだ。


 「いつもそんな事を言い聞かせてるの?」

 「……そうですね。割と最近は思ってますね」

 

 否定するつもりは無いが、改めて言われると背中が痒くなる。

その様子を眺めながら、彼女も同じように月が浮かぶ空を見ている。

そして彼女は目を細めたまま、一言だけ呟くのだった――。


 「……彼は力を隠している。そんな気がする……」


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