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【完結】ドラグニカ ~剣と契り~【1stシーズン】  作者: 三城谷
第2章【龍が出現せし日に】
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第十九話「レポート・ゼロⅣ」

 瓦礫となった壁の向こう側から、妹の声が頭まで響いてくる。

早く助けないといけないのにも関わらず、瓦礫を退かす腕に限界が来ていた。

両手は真っ赤になっていて、赤い滴が地面に垂れていく。


 「咲ぃ!今、今行くからっ!」


 痛みなんて気にしている暇はない。

すぐそこで、目の前で助けてと呼ぶ声が聞こえるのだ。

こんな痛みは、我慢するべき時だ。


 だが一方で、俺の知らない所でそれは動いていた。

口を開け咆哮と共に出る衝撃は、その場一帯の物に影響を与える。

その衝撃は瓦礫を退かすと同時に、俺と妹を一緒に吹き飛ばしたのだった。


 「咲っ!」

 「お兄ちゃん!」


 空中で互いに伸ばす手。その手を掴もうと必死になる。

徐々に近付く事が出来た瞬間、届いた時に感じた安堵の瞬間だ。

叩き付けられるような風圧が俺たちを襲い、届いた手を引いて俺は妹を抱きしめる。

そのまま地面を転がり、俺の視界は真っ赤な世界になった。


 「……ぐっ……咲、早く……逃げるんだっ……」

 「やだよ、お兄ちゃんも一緒に!」


 そんな事を言っても、声がだんだんと遠くなっていく。

近付く地響きと共に揺らされる体。頬に当たる雨は、妙に暖かい。


 「やだっ!お兄ちゃんも一緒にっ、一緒じゃなきゃやだよ!早く起きてよお兄ちゃん!」

 「……咲、早く逃げないと……うぐっ」


 頭の中まで走る痛みを抑え、俺は覚束無い状態で立ち上がる。

妹が体を支えてくれているのか、やや傾いた状態で俺の動きは止まる。

ポタポタと垂れる血が、俺の意識が徐々に遠退いてくるのが分かってしまう。

俺はこのままでは、恐らく動けなくなって逃げ遅れるだろう。


 「――はやく、お兄ちゃんっ!」

 「……咲……」


 霞んだ視界の中で、俺の手を引く妹の姿が微かに見える。

後ろを振り返れば、大きく黒い物体が迫っているのも分かる。

何かが振り下ろされそうになっているのも、すぐに察知する事が出来たのだ。

俺は無理矢理にその手を払い、目の前に居る人影の背中を押した。


 「咲……生きろっ!」

 「――お兄、ちゃん?」


 そして俺はそのまま、叩き潰されるように意識を失った。

そこから先は、何が起こったか曖昧で良く覚えていない。

でも何かが遭った事だけは確かだと、俺はそう感じていたのであった。


  ◆


 「……うぅ……んん?」

 「やっとお目覚めですか?霧原さん」

 「ここは……?」

 「貴方のお部屋です。様子を見に来たら、寝ていたので勝手に入りました」


 嘘は言っていない。様子を見に来たのも、勝手に入ったのも。

だが私は、まだこの人に嘘を吐き続けなければならない。

この人の記憶の中には、今の私は別人という事になっているだろうから……。


 「何か用だったのか?生徒会長ともあろう人間が」

 「はい」


 そして恐らく、あの時の事を忘れているだろうから。

私は彼から離れて、指を差して言うのだった。


 「――明日の放課後、第3体育館へ集合して下さいね?約束ですよ」

 「あ、ああ」


 廊下へ出た所で、先に待っていた彼女の姿を見つける。

またお菓子を食べていたけれど、彼女は一言だけ言って去っていった。


 「――思い出すといいね、あなたの事」

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