第一話「白銀の少女」
「霧原~、休憩に入っていいぞ」
「あざっす、分かりましたぁ」
照りつける太陽の下から、ビルの谷間で陰がある場所へと足を運ぶ。
汗だくになった首をタオルで拭きながら、休日を謳歌している人たちを眺める。
冷たい飲料が、熱くなった体温を内側から冷やしてくれる。
「あちぃ~」
汗でへばり付いたシャツを扇ぎ、少しでも暑くなった空気を外へと逃がす。
七年前の大災害以来、世界は概ね復興の終盤を迎えて来ている。
地割れや噴火、大洪水という災害の嵐になっていた。その中から人々は協力し合い、助け合って今を手に入れている。いわば人類の意地とも言えるだろう。
復興している部分も、復興出来ていない部分も、それぞれはやはり見つける事が出来る。視界に入れるなと言われて、それを無視出来る程の人間はもうほとんどいないだろう。
比較的に平和といえば、平和だろうとは思う。けれど……。
「霧原!休憩終わりだ!こっち手伝ってくれ!」
「うぃっす!」
俺もバイトをしながら、日々の生活資金を貯めている。あの災害以来、両親が他界してしまっている。妹は行方不明で、自衛隊とかからはもう死んでいてもおかしくないと言われている。俺も生きているとは思ってないけど、もし会えるなら守ってやりたいとは思う。
まぁ貯金なんて全然無いけど……。全く無いよりかは、遥かにマシだろう。
夕方になれば、俺はバイトも終了して明日の朝まで暇になる。
ほとんどは寝るだけなのだが、俺は今日だけは行かなくてはならない場所がある。
それは――
「母さん、父さん……久しぶりだな。俺は元気でやってるよ」
未曾有の大災害からちょうど七年。今日は俺の両親の命日だ。
この時期になると、同じ目的でやってくる人たちがいる。自然と顔も覚えてきてしまう。
ん――?
そう思っていたのだが、俺はふと見た事のない人物に出会った――