第百四十六話「ガールズバトルⅩ」
メアリーの話から、彼女がヘリを追った方角はこちらで合っている。
合っていると思うのだが、どうも様子がおかしい。どう様子がおかしいかというと……。
「……(あいつ、この警備の中を通って行ったのか?)」
視界に映る景色の中でも、軽く十体は越えている。
その容姿は全て、藤堂亜理紗と瓜二つの見た目をしている。
だがしかし見た目だけで、その行動と表情がとても無機質だ。
「…………(さて、これからどうするか。このまま突破しても構わないが、全く同じ姿でその辺をウロチョロされても困るしな。ついでに日頃の鬱憤を晴らして置くか。あいつには世話になってるし、野蛮人とも言われてるしな……よし、このぐらいで良いか)」
そんな事を思いながら、黒い大剣を刀へと形を変えて具現化させる。
カチャリカチャリと両手の中で交互に持ち替えて、軽く振るったり重さを確認する。
やがて納得したように口角を上げて、彼女たちの事を見据えて口を開くのである。
「んじゃ、ぶっ壊すか。ここは俺だけで十分だな――」
その一言だけ呟き、俺は一人で黒い刀を持って彼女たちの中心へと降り立つのだった。
彼女たちの中心へと飛び込んだ俺は、薙ぎ払うように一閃を放って空気と共に斬り裂いた。
「所詮、ガラクタはガラクタか。似ても似つかない玩具に用は無ぇ……失せろ」
藤堂亜理紗と同じ姿をしていても、その実力には天と地ほどの差を感じる。
それは相手をしている俺にとって、そして姿を真似されている彼女にとっても侮辱だ。
粉々にスクラップしたとしても、俺の気が晴れる事はあまり期待出来ないだろう。
『敵、排除。侵入者、一名……』
『これより排除行動に移ります』
「人の話を聞かない時点で、まぁ……こちとら不愉快だな」
振り下ろした剣は彼女たちを真っ二つにし、周囲に廃棄物のように積み上がっている。
燃えないゴミの山を作った気分になり、尚且つそれが微かに動くのだから始末が悪い。
正直に言えば……不気味である。
「早く電源を落とせ。ゴキブリじゃねぇんだから、そんな無駄な生命力を発揮するな」
『……し、侵入者……は、排除……そ、それが……めい、れい……』
ビリビリと電磁波が流れ、徐々にショートしていく彼女たち。
それでも動いている様子を見ていたら、昔の記憶が頭の中を過ぎった。
それに嫌気が差した俺は、小さく呟いて剣を彼女へ突き刺すのだった――。
「お前らに恨みは無ぇ。だが俺が出来るのは、壊すだけなんだよ。……悪いな」




