第百十六話「狙われた生徒会」
――藤堂家。藤堂亜理紗の暮らしていたその家では、ある会議が行われていた。
それはドラグニカという存在を今後どうして行くか、という方針についての会議だった。
それと同時に、ドラグニカ達……つまりは零たちの居るあの施設をどうするかも検討されていた。
『龍災が起こり得ないと何故言えるのだね?』
『だが実際、ここ最近は龍災が発生したのを確認していない』
『沈静化をまともに行っていないのも事実だ。龍災は、龍を殺さなければ治まらない』
『そうだ。何の為にあの化物たちを施設へ閉じ込めていると思っている!』
スーツで身を包んだ男たちが言い争い、討論という名の責任の擦り付け合いをしている。
そんな中でただ一人、和服に身を包んだ女性が扇子を閉じたり開いたりしていたのである。
クダラナイ光景を眺めながら目を細め、彼女は自分の思考だけで物事を整理していた。
「……近々、龍災がまた起こると思いますなぁ。それも遠くない日に……」
『何を馬鹿な。予言者でもあるまいし、ふざけた事を言うな』
「どう思おうが他者の自由やけど、今自分が誰に喧嘩を売っているのかを理解した方がええなぁ」
『ぐっ……』
その女性は扇子を口の前で開き、ニコリと笑みを浮かべてそう言った。
怪しげなその空気は会議室を圧迫し、刀で突き付けられている緊張感に包まれる。
実際は何もしていないし、彼女は何かをしている訳でも無い。にも関わらず……。
『(こ、これが対巨龍戦線を生き残った精鋭の一人の殺気)』
『(少しでも動けば、こ、殺されるかもしれない)』
『では草薙様は、何か策があるのでしょうか?あれば我々にその策とやらを教えて頂けないでしょうか?情報共有は必須な世の中ですし、その方が我々も助かるのですが』
それを聞いた草薙と呼ばれる彼女は、目を細めて意見を出した者を眺める。
「……ウチを動かしたいのであれば、それ相応の情報と報酬を持ってくる事やな。ま、皆さんの財産は眼中にあらへんからなぁ、なんとも言えんなぁ」
『では、何が草薙様の心を動かすと?』
「そうやなぁ……この子たちをウチの前まで連れて来れたら、考えてやってもええで?」
そう言いながら彼女は、四枚の写真を彼らの前に差し出した。
九条咲、藤堂亜理紗、藍原桐華、そして……霧原零という標的を作り出した。
それを見た一人の男は、眉をひそめて口を開いて言うのである。
『何故、我が娘の亜理紗も標的となっているのか。それを聞いても宜しいか?』
それを聞いた瞬間、彼女は再びニヤリと笑みを浮かべてそれに答えた。
「……ウチが欲しいのは龍紋の力を使いこなす人材。藤堂家の娘も当て嵌まっていると思うんやけど……異論がある者は挙手してくれへんか?」
『『『………………』』』
その沈黙は彼女にとっての肯定と見なし、開いていた扇子を閉じて一言だけ言うのだった――。
「……では宜しゅう頼んますなぁ。皆々様、ウチはこれで」




