第百八話「藤堂家のお嬢様Ⅲ」
「――トライデントッ、貫きなさい!」
「オルトロス、ケルベロス……行くよ」
亜理紗が槍を出現させ、電磁波を纏って構えを取った。
同じく銃を出現させて、亜理紗と対峙する形で桐華も構えを取っていた。
最終日にして、ようやく合宿らしい自主訓練が行われていたのである。
「今日こそ、一本取ってみせますわ」
「成績だけじゃ、あたしには勝てないよ」
「序列では私の方が上。成績も実力も勝っていると思いますがっ」
「序列なんてただの飾り。それを今日も教えてあげる」
槍を振り回しながら距離を詰める亜理紗に対し、桐華は防戦しながら銃を撃っている。
どちらも模造刀やゴム弾を利用していないので、両者共に当たれば大怪我をする恐れがある。
基本的には空手と同様、寸止めを基準としているのだが……。
「あれ、寸止めする必要が無いだろ。というか、意味を持たないだろ」
「安心して下さい。あの二人はお互いの手の内を知っていますし、ある程度の本気でやっています。そうしなければ、訓練にならないので」
「そうは言っても、弾丸がこっちまで飛んでくるんだが?」
そうなのだ。流れ弾や電撃がたまに飛んでくる。
訓練している彼女たちに怪我は無いが、周囲に影響を及ぼすのはアウトな気がする。
だがそれ以上に驚いたのが、メイドである彼女がそれを打ち払っている。
「えっと、メアリーってメイドだよね?」
「……のはずだけどな。メイドロボにしては、龍紋で放たれた技を弾くとか厄介だな」
『このぐらい容易な事です。お嬢様の身を安全にする為、旦那様が施した機能の一つです』
「「過保護過ぎ」」
未央と零が同時にそう言い、目の前で行われている景色を眺める。
並んで立っているように見えるが、零は少し未央の前になるように立っている。
その立ち位置を横目で見ていた咲は、目を細めて零に気付かれないよう近付くのだった。
「――そういえば亜理紗、あの招待状はどうするの?」
「……っ!?訓練に関係の無い話題を持ってくるなんて、趣味が悪いですわね」
「こうやって訓練中に聞かないと、亜理紗は誰にも言わないでしょ」
「これは私の問題です。他の方に迷惑を掛ける訳にはいきませんわ」
「ふうん……じゃあこうしよう」
「っ!?(速いっ。接近戦に持ち込む気ですか?!)」
銃を使っている桐華は前に身を乗り出し、躊躇する事無く亜理紗の間合いへと入る。
槍術に対して、持ち手の範囲に入られれば半歩だけ下がる癖が生じていた。
それを軸に亜理紗は反撃したが、槍の持ち手を掴み桐華はさらに懐へと入り込んだ。
そして……。
「――あたしが勝ったら、一つだけ質問に答えてもらうから」
「…………」
そう言いながら桐華は、亜理紗の事を足払いして体勢を崩させた。
そして、倒れた亜理紗の顔に銃を向けて馬乗りになったのであった――。
「チェックメイト。あたしの勝ちだね、亜理紗」




