プロローグ
――重い。怖い。
そう頭の中で回転し、体の震えが抑えられない。
一度考えてしまった事は、フラッシュバックでトラウマと共に蘇る。
頭では分かっていても、身体がそれに追い着いていない。
未完成でしかない自分が、ずっと虚しくて情けない。
『グォォォォォ――!!』
ノイズ混じりのその声は、自分の身体の奥から絡みつくような恐怖感を与える。
トラウマがトラウマを呼び、やがてその身体は動かなくなる。
――はぁ、はぁ、はぁ……。
視界が霞んで、手も足も、全てが震えていた。
闇に墜ちていき、真っ暗な世界へと引っ張られていくのだ。
何度も、何度も、何度も……。
赤い記憶は脳裏を侵食し、絶望という名の傷を心に負わせる。
でも逃げる事は出来なくなっている。
それは何故か、理由は簡単なのだ。
自分の中にあるその化け物の血が、蠢いて、疼いて、渇くのだ。
でも、立ち上がらなければならない。
「……俺は、お前らが嫌いだ……」
声に出して、そう呟く。
『グォォォォォ――!!』
その化け物は、一つの街を燃やし続ける。
地を這い、炎の撒き散らして、この世界を崩壊へと誘う元凶。
少年は石を投げる。ひたすら、こちらを向くまで。
その場所が爆発するまで、崩壊するまで石を投げ続けた。
そして少年は、霧原零はその爆発の影響を受けたのだった――。