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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第87話:ノーラとの模擬戦

沢山の感想ありがとうございます。

時間がかかっても必ず全員に返信いたしますので、今後もよろしくお願いいたします。


日に日に難民のテントが増える。

一応敷地内には入らない事と、街道を塞がない事、川を堰き止めない事などを説明しておいた。


暫く様子見かな、と思ったら、数日後、サラ達から抗議をするよう要請を受ける。


「洗濯の最中に上流から汚物が流れて来ました」


そういう事らしい。


という訳でウォードさんに頼んで、各村や集落の代表を集めて貰う。

場所は敷地の外、少し開けた平野部だ。


「用を足す時は俺達の家の下流で。飲料用などの水汲みは上流で行って欲しい」


「なんでそんな事まで指図されなきゃならねぇんだ?」


「川は皆のものだろうが」


俺が要請を伝えると、獣人達からは不満が続出した。

まぁ、気持ちはわかるけどね。


「ここは俺が金を出して買った土地だ。人手が足りないから今囲いがある所までしか敷地を拡げていないが、本来は現在テントが張られている辺りも俺の土地だ」


そう宣言すると声が小さくなる。


「だからと言って出ていけ、とは言わないさ。実際、使ってない場所なんだからな。けれど、ルールは守って欲しい。それにこれはお前達のためでもある」


「どういう事だ?」


「家より上流という事は、街道寄りという事だ。つまり、家の上流で用を足すと街道側から丸見えになる」


「オラたちは別に気にしねぇだ」


「お前達はそうでも、街道を通る人々は違う。そして彼らからガルツやここの領主に抗議が行けば、お前達は強制的に追い出される可能性がある」


流石にその言葉に、獣人達はざわついた。


「けれど、家を挟んで下流なら、家が壁になってその姿が見られる事は無くなる」


「うーん、けれどウチの村のテントは下流の方にあるんだ。飲料用に水汲みするのがちょっと遠いんだが……」


「逆に上流の者は用を足すのが遠くなる」


目的が違う以上、公平とは言い難いけれど、まぁどちらかは我慢して貰わないとな。


「にゃあみんにゃ、俺達はタクマさんの厚意でここに住まわせて貰ってるんだ。少しくらいの不便は多めにみようじゃにゃいか」


「うぅん、ガレオンの旦那が言うなら……」


ちなみにウォードさんは、各村、集落、家族から毎日二人ずつをローテーションさせてモニカ達の実地訓練に同行させている。

そのお陰もあって、俺の家周辺に住む難民達は餓死の危機からは逃れつつあった。

最初は俺も、それってどうよ? と思ったのだけれど、俺達の世話になっているウォードさんが何か言っても、他の獣人は反発したり僻んだりして耳を貸して貰えない可能性が高かったらしい。


こういうのをサラリと提案してくれるニーナさんはやっぱり大人って凄いなぁ、と思わせてくれる。

家事に関しても、めきめきと腕前が上達し、今ではサラ達も毎日一人ずつ、ローテーションでダンジョン探索に加われるようになった。


「やっぱり、毎日とは言わずとも、定期的にダンジョンに潜らないと腕が鈍るような気がしますわ」


すっかり冒険者としての思考に染まっているカタリナの意見は、ミカエルは勿論、サラにも受け入れられていた。


「タクマさん、ちょっと付き合って欲しいんだけど、いいかにゃ?」


「ああ、いいぜ」


朝、俺が朝食後にリビングでまったりしていると、ノーラが声をかけてきた。

勿論、色っぽい意味じゃない事は流石の俺でもわかる。


ノーラに誘われて外に出ると、庭にウォードさんとサラが待っていた。


「サラに一度タクマさんと戦ってみろって言われてさ。だから、一手願えるかにゃ?」


「ああ、いいぜ。どのくらい強くなったか見せてくれよ」


『アナライズ』である程度はわかるけれど、実際に戦ってみると、ステータス以上の強さを発揮する場合があるからな。

逆も勿論あるけど。


「それじゃ、行くぜ!」


宣言と同時にノーラが地を蹴り宙を舞った。

こちらへ飛び掛かりながら回転し、蹴りを放つ。


「おっと」


袈裟切りの要領で繰り出された蹴りを躱すと、ノーラは空中で腰を捻り、先程放ったのとは別の足で後ろ回し蹴りを繰り出してくる。

それもバックステップで躱す。

ノーラの着地は背中からだった。途中で足と手を使って衝撃を殺すと、その勢いを乗せて爪先蹴り(トゥーキック)を放つ。

更に腕を使って自分の体を裏返しながらの浴びせ蹴り。腕の力だけで飛び、低空のドロップキックへと繋げる。


成る程、色々やって来てやりにくいな。動きがトリッキー過ぎる。


サイドステップでドロップキックを回避。そのままノーラは地面に落下するけれど、即座にブレイクダンスのヘッドスピンの要領で回転しながら立ち上がった。

足を大きく広げて高速で回転されちゃ、手が出せないな。


「ははっ! やっぱりすごいにゃ、アンタ!」


「まぁ、これでも鍛えてるんでね」


楽しそうに笑うノーラにつられて、俺の口角も上がってしまった。


今度は熊手ジャブによるワンツー。左が若干フック気味だった。左を振り抜いた勢いをそのまま乗せて、ミドルキックが俺を襲う。


「おっと」


流石にこれは躱せない。だから肘で撃ち落とす。

上体を俺とは反対側に倒しながらの攻撃だったから、それで体勢を崩しても、俺からの反撃を受けにくくなっていた。


なので軸足めがけてローキック。


誘いだった!


撃ち落とされた左足を先に地面につけ、その反動を利用して、軸足でジャンプしていた。しかもその足がそのまま蹴りとなって俺に向かって来る。


ただローキックを放つために俺の体勢も若干上体が反らされていたので、これはスウェーバックで躱す事ができた。


「これもダメか!」


叫ぶノーラの声は楽しそうだ。


そのまま逆立ちし、脚を広げて回転。

腕突きだけどスピニング〇ードキックだ。

しかも高速で回転しながらこっちへ迫って来るという再現っぷり。


いや、勿論ノーラはあの技知らないんだろうけどさ。


これは中々厄介だな。

技術でノーラを上回れるのはここまでみたいだ。


じゃあ、力づくで。


俺は敢えて回転鋸の中へと飛び込む。一瞬の後に迫る蹴り。それを、掌でがっちり受け止める。


「えぇっ!?」


ノーラから漏れる驚愕の声。


「で、あとは顔蹴って終わりな訳だが?」


両足をガッシリと掴んで俺は宣言する。


「ああ、参ったよ。降参だ、降参」


ノーラは逆立ちの状態で器用に肩を竦めてみせた。


「で、サラ、これはなんだったんだ?」


「タクマ様の強さを実感させておこうと思ったのと、あとはテスト」


「テスト?」


なんの?


「タクマ様のモノになるのに相応しいかどうかの」


あ、その設定まだ活きてたのか。


「いや、俺ノーラを愛人にする気ないぞ」


「え?」


「どうしてですか?」


ノーラも驚くなよ、その気かよ。

その気だろうな。今回のテストに参加してるところを見ると。


「どうしてって言われてもな。それこそ獣人の習性を考えたら面倒しかないだろ?」


ノーラをハーレムに入れたら、ウチの娘も、とか言われかねん。


「逆になんでサラはそんなにノーラを俺の愛人にしたいんだ?」


「タクマ様に愛されたら幸せになれますから」


……サラの愛が重い。

サラの愛なら幾ら重くても受け止めてやりたいが、そこに別人の愛を乗せるのはやめてくれ。


「ていうかノーラはいいのかよ?」


「アタシはギノ族っていう、獅子人ガレオン族の中でも古い部族の戦巫女だ」


うん、知ってる。そう言えば、本人やウォードさんの口から聞いた事は無かったな。


獅子人ガレオン族自体が強さを重視した種族で、ギノ族はそのにゃかでも戦闘に特化した部族だった。その戦巫女とにゃれば尚更にゃおさらだ」


つまり、強い相手の血統を受け入れたいってそういう事か?

俺の強さはチート(ズル)だから子供には受け継がれないぞ。

多分。


成長率の良さとかが遺伝しないとは限らないからな。


「だからアンタの子供を授かるのは悪いはにゃしじゃにゃい。けれどまぁ、ギノ族も戦巫女も古いはにゃしだよ。今更拘る事でもにゃいんだ」


言うノーラの表情は確かに変わっていなかった。どっちでも良かったって感じだな。


「二人がそう言うなら、今はこれ以上は私も押しません」


サラも諦めてくれたようだ。


「どうせ長く一緒にいれば、タクマ様は流されるでしょうから」


諦めてくれてなかったようだ。


まぁ、でも、確かに将来はどうなるかわかんないからなぁ。ノーラ、外見は普通に良いし、性格も溌剌としていて好感が持てるし。


「君の能力の影響もあるから、手を出すなら早いに越した事は無いと思うよ」


いつの間に居たのか、ミカエルが中々の爆弾を落として来る。


「優秀な人間の子種を多く残すのは当然の事だよ。これは優秀な人間に生まれつき課せられた義務だね」


元王族は言う事が違う。

だから俺の強さは紛い物なんだが……。

うう、カミングアウトした瞬間に彼女達に愛想尽かされるかもと思うと、正直に言えない。


「それに、ノーラに限らず、獣人を従える事ができれば、ボク達の負担も減るだろう? そうすれば、子作りが解禁されるかもしれない」


それが狙いか! あ、サラの目に怪しい光が灯ってる。


「と、とにかく! 今はノーラは勿論、他の獣人にも手を出すつもりはない!」


まずい流れになりそうだったので強引に話題を変える。


「そうですね、時間はたっぷりあります」


静かに微笑むサラが怖い。


「ウォードさん、ちょっといいだか?」


と、一人の獣人が柵の外からウォードさんに声をかける。

犬人ガウル族の村の代表だな、確か。


ウォードさんがこちらを見たので、無言で頷く。ウォードさんは誤解する事無く、相手に近寄らず手招きした。


驚いた様子の犬人ガウル族代表は、それでもすぐにおっかなびっくり柵の中に入って来る。


「そのままでいい。どうした?」


耳打ちしようとした代表にウォードさんはそう言って先を促した。


「国境に潜ませていた村の者からの情報だ。勇者が国境を超えたそうだよ」


なんかトラブルの予感。国境を超えるって事は、ラングノニアから来るって事だよな?

そしてこの獣人達の反応……。


「獣人殺しが、追って来るのか……」


ウォードさんの不穏な言葉が、全てを語っていた。


続く難民の問題とノーラとの模擬戦。

そしてやってくる火種。

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