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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第85話:ノーラと難民事情

ノーラ含めた難民の説明回です。


ノーラ一家を治療だけしてさよならする事に、カタリナらノブレスオブリージュ組が良しとしなかったため、彼女達をダンジョンの外まで護衛していく事になった。


道中、幾つかのパーティとすれ違ったけれど、確かに獣人だけのパーティだったり、獣人の割合多めのパーティだったりした。


ノーラらの話によると、ラングノニア王国で獣人による反乱が勃発。

彼女達はその戦火を逃れて亡命して来たんだそうだ。


別に反乱に参加して、戦い敗れて逃げて来た訳じゃない訳だ。


「元々ラングノニア王国では獣人は隠れて生きていたんですけどね。エルフやドワーフは二級市民とは言え、一応国民扱いですが、獣人は討伐対象でしたから」


なんか飯まで奢る流れになったので、ガルツの食堂で詳しい話を聞く事にした。


オジサン獣人はノーラの父親でウォード。

他の獣人達もノーラの家族。皆ラングノニア王国を出発してから今日まで碌に食べてなかったらしく、かなり旺盛な食欲を見せている。


聞けば、ラングノニア王国において獣人というのは、ヒトとモンスターのハーフ、あるいはその子孫と考えられていて、基本国民扱いされていない。

なんせ、獣人には何をしても罪に問われないっていうんだから。

数少ない街に住んでいる獣人は皆奴隷だそうだ。

しかもエレノニア王国の奴隷と違って、主人がどんな扱いをしても、奴隷側には文句を言う権利も逆らう権利も無い。

殴られようが蹴られようが、それこそ殺されようが、耐える事しかできないのだという。


ノーラ一家は山奥に隠れて小さな畑を耕しながら、狩猟で生活していたらしい。


「だから冒険者としてもやっていけると思ったんですけどね」


甘くありませんでした、と骨付き肉を片手に照れるウォードおじさん。


ちなみにそんな国から何故脱出しなかったのか? なんて問いはこの場合意味が無い。

テレビもネットも無いどころか、新聞だって存在しない。おまけに山奥に隠れ住んでいたなら、周辺情勢にだって疎い。

そんな彼らにとって世界とは自分達の周りの狭い部分だけだ。

よその国もラングノニア王国と同じだと思っても仕方ないだろう。


そんなある日、街に住んでいた獣人奴隷を中心に反乱が勃発。

それだけならノーラ達も住処を離れる事は無かったそうだけど(そもそも街だけの話なら、彼女達には知りようが無かった訳だし)、反乱を鎮圧したラングノニア王国軍が、獣人狩りを始めたらしい。


まぁ、後顧の憂いを断つって意味では間違いじゃないんだろうけどさ。


普段から隠れて住んでいる獣人たちは独自のネットワークを築いて情報を交換、共有していたから、この情報はあっという間にラングノニア中の獣人たちに伝わる。

抵抗して戦う獣人達も居たそうだけど、ノーラ達は大部分の獣人と同じようにラングノニアを脱出してエレノニア王国に来たんだそうだ。


「それまでエレノニア王国自体知りませんでしたからね。一緒になった他の獣人から伝え聞いただけで」


碌に食料も装備も無い状況で国境へ向かうのはかなり無謀だ。

ラングノニア軍の追撃部隊にも頻繁に接触を受け、半数以上がその道程で命を落としたというから、その過酷ぶりが想像できる。


国境につけば一応は助かる。

エレノニア王国は亡命や難民の受け入れを標榜しているからな。

国境警備隊の詰め所で一日休憩させて貰い、一食だけだが、ご飯も食べさせて貰ったそうだ。


「感動しました。ヒトとは本当は優しい種族だったんだと……」


涙ぐむノーラ。他の家族も思い出したのか、肩を震わせている。


「そこでこのガルツの事を聞き、やって来たんです」


勿論、エレノニア王国は難民を受け入れるだけ受け入れて、あとは放置、なんて中途半端な対応はしない。

国境警備隊から、本来なら最寄りの街へ送られて、そこから、それぞれができる仕事、やりたい仕事を聞いて、王国の公共事業に割り振られる。

それを足掛かりに、エレノニア王国で生活基盤を築かせるのだけど、今はそれが機能していないらしい。


「帝国との戦争で人手を取られているからな。北に行けば仕事はあるんだろうが、それこそ戦争の手伝いだ。落ち着くまでは待った方が良いだろうな」


とは、何故か俺達について来たクレインさんの言葉だ。


エレノニア王国はかなり大きな国であるから、それなりに官僚機構が構築されているんだけど、近代国家ほどに役割分担が徹底してる訳じゃない。

何かしらの事情で国が忙しくなれば、普段重要度の低い部署から人員が抜かれて、その部署は機能を停止するらしい。

今は戦争に関わる部署に王国の内政は注がれているそうだ。

だからマヨイガの氾濫に関しても当初は対処できない可能性があったんだそうだ。


ゴブリンキングダムを名乗るゴブリンの集団が協力を申し出たお陰で氾濫は鎮圧されたと聞いた時には、どういうリアクションを取るのが正解なのかわからないくらい困惑してしまったけれどな。


そうか、ついに出て来たか……。


「それでガルツに獣人が多くなっているのか……」


とは言え、前にも言ったと思うけれど、シュブニグラス迷宮は決して初心者向けのダンジョンって訳じゃない。

確かに、ダンジョン的には何か面倒な仕掛けがある訳じゃないから、そういう意味では初心者向けと言えるかもしれないけれど、メインモンスターの山羊小鬼が初見殺しアンド初心者殺しだからなぁ。

単純にステータスが高いだけじゃなくて、状態異常攻撃も使って来るとかもう、ね……。


ここまで来るまでに心身ともに疲弊していた獣人達だと尚更だよな。

確かに獣人は身体能力が高い人種だから、同じLVなら人間よりは戦えるけどさ。

けどラングノニアで生きていた獣人の多くは栄養失調を患っている。

ほぼ全員が状態異常:飢餓を発動させているんだ。ステータスが大幅に減少してしまっている。

しかもこれまでずっとそんな状態だったから、生育状況も非常に悪い。

冒険者として食べていくにはかなり不利な条件が揃っている訳だ。


「ガルツが身分や立場を気にせず受け入れる街だとは言っても、それは互いの過去や素性を詮索しないという事であって、無償で宿屋食事を提供してくれる訳ではないからな」


金が無いから野宿だし、まともな飯にもありつけない。

疲労困憊、栄養失調状態でダンジョンに潜っても大した戦果は得られない。

おまけにメインモンスターの山羊小鬼は、苦労して倒しても2デューにしかならない。レア素材を引ければ別だけど、それでも一家六人が食べていこうと思ったら、三日分程度の食費にしかならないしな。


俺のこれまでのレア素材の出現率から考えれば、三日じゃまず出ないだろう。


「え……!?」


ふと気付くと、ウォード一家が揃って土下座していた。

他の客もいる、食堂の中で。


「ちょ、ちょっと……!」


流石に慌てる。他の客も、何事か、とこちらを注目しているし、勘弁して欲しい。


「どうか、我々を助けていただきたい!」


床に額を擦り付け、ウォードさんが叫ぶ。


「た、助けるって……?」


「雇って欲しいとか、養って欲しいなどとは言いません! 我々に、戦い方を教えていただけませんか!?」


「ああ、えーと、その……」


勢いに押されるとまずいのはわかる。結果的に良かったとは言え、ミカエルもカタリナも、情に流された結果だ。

ちらり、とクレインさんを見る。


「お前さんの事だから、お前さんが決めた方が良い。儂としては、優秀な冒険者が増えるのは喜ばしい事だが?」


そういや後進の育成のためにガルツに残ったんでしたね!

ていうか、後進の育成ならむしろあんたの仕事だろ!?


「儂は一組のパーティにかかりきりになっている時間は無いからな」


代わりにガルツに居る一万人の冒険者の面倒を見るか? と視線で問われれば、首を振らざるを得ない。


「と、とりあえずこのままじゃなんだし、まずは店を出よう! すいません、お勘定!!」


不図テーブルを見ると、注文された料理は綺麗に平らげられていた。


「断れると思う?」


「断れるならボクはここに居ないよ」


慌ててウォード一家を連れて店を出る俺の背後から、モニカとミカエルのそんな会話が聞こえて来た。

ちくしょー、そんな事は俺が一番わかってるっつーの!




慌ただしく店を出て、流石に『ワープゲート』や『テレポート』を使う訳にはいかないので歩いて家に戻る。

歩ている間に頭も冷えるだろうし、考えもまとまるだろう。

他人の目が無くなれば、断る事もできるだろう。

そんな事を考えていた。

防壁の周辺に建てられた、テントの群れを見るまでは。


「あれは?」


何気なく聞いたけれど、聞いて後悔した。


難民にゃんみんのテントです。ガルツは野宿禁止ですし、宿に泊まる金がありませんから」


「ひょっとしてお前らも……?」


「ええ。随分前から」


ウォードさんがちらりと彼の息子達を見る。彼らは大きな麻の袋を背負っていた。

あの中に、テントを始めとした生活道具一式が入っているんだろう。


ウォード一家は家長のウォードさん、その妻のニーナ。

長女のノーラが第一子。

双子の息子フルブとライト、4歳。

そして末子、次女のツィーリ、2歳の六人。


流石に下三人はまだ戦えるような年齢じゃないので(双子はサラと同年代だけど、サラが特別なだけだ)荷物持ち。

ツィーリに至っては状況をあまり把握しているとは思えないくらい、楽しそうに歩いている。


結局途中で撒く事もできず、帰れと言う事もできず、家に連れて来てしまった。


そして今、庭にて、サラとノーラが対峙している。


「タクマ様にご教授賜るなど百年早い。まずは私が世間の厳しさを教育してあげます」


結局は押し切られてしまって、ウォードさんとノーラにダンジョンで実地訓練を施す事になった。

後の家族は敷地の外でテント生活をしつつ、家事を手伝う事で賃金を払う事になった。


ちなみにダンジョンで二人を引率するのはモニカとエレン。

家事を教えるのがサラ達三人だ。

俺? 俺はダンジョンのもっと深い階層に潜るよ。生活費を稼ぐために、魔石から素材を獲得して、それを錬成して売らなきゃいけないからね。


モニカやエレンは深い階層だと事故が怖いからな。二人を指導しつつ自分達を安全に鍛える事もできて一石二鳥という訳だ。


ここに来て、俺が奴隷を購入するにあたって最初に思い描いていた、役割分担ができるようになっている。

怪我の功名、とはちょっと違うか。


「いいの? 確かにさっきのモンスターには苦戦したけど、只の人間が相手にゃら、アタシは相当強いよ」


「問題無い」


言うサラは鍋の蓋を盾に、箒を槍に見立てて立っている。

装備は外して簡素な麻の服の上下だ。季節はもう春。毛皮は暑いよなぁ。


「そうかい。怪我したって知らないよ……!」


言いながら、ノーラの額に青筋が浮かんでいるのがわかる。唇の端が、愉悦以外の理由で吊り上がっていく。

覗いた犬歯は、まさに肉食獣の牙だった。

つんつんした固そうな赤い髪がまるで鬣のようだ。

尻尾は細長く、その先端は扇状に体毛が伸びている。


うん、こうしてみると確かに猫じゃなくてライオンだな。


ノーラは薄い木綿の服の上下。服の裾が擦り切れていて、タンクトップとホットパンツのようになっている。

胸はモニカとカタリナの間くらいか。

お尻が大きく、腰から太腿にかけてのラインは煽情的だ。

しなやかな筋肉は、まさにネコ科の大型動物のそれ。

腹筋が妙に艶めかしい。


目のやり場に困る、なんて時期はとうに過ぎた。

目の保養だと言って良いだろう。


くそ、一瞬女神のお導きに感謝しそうになったじゃねぇか。


「ぐううぅああああぁぁぁぁああああ!!!」


一声吠え、ノーラが走り出す。

気合いを入れるための咆哮。それだけじゃない。

バインドシャウトだ。獣人にはそういう能力もあるのか。


地面が抉れる程の脚力で、一気にサラとの距離を潰す。

既に曲げられた肘は肩甲骨の後ろ。引き絞られた矢が放たれるように、ノーラが繰り出したのは掌打だった。


しかしそれはサラの持つ鍋の蓋で受け止められ、そして次の瞬間には、蓋を振るってノーラの腕をいなした。


「くっ……!」


体勢が崩れるが、強引に股を開いて踏ん張るノーラ。そしてそのまま上半身を力が流れた方向へ傾け、踏ん張っている足とは反対の脚を振り上げる。


「へぇ」


それをスウェーバックで躱しながら、サラが感心したように呟く。


振り上げた足を勢い良く地面に降ろし、踏み込んだ力で跳躍。サラの頭の辺りまで飛び上がりながら、空中で回し蹴りを放つ。

それを躱されても、更に一回転してもう一撃。今度は鍋の蓋に当たる。

いや、サラが当てたんだ。サラは蓋を持った左手を大きく広げるように振るう。空中で体勢を崩されるノーラ。

頭から落下すると思った次の瞬間、掌で地面を叩き、その勢いを乗せて蹴りを放つ。


おお、あの動きは……!


更に両手でグルグルとその場で回転しながら、次々に蹴りを放つノーラ。

突然両足で地面に着地し、背中をサラに向けたまま、裏拳を放った。


「奇妙な動きだね」


「けど、それだけですわ」


やっぱりこの国でも、カポエラは珍しいのか。『常識』にも無いもんな。

しかしカタリナの評価は辛い。

まぁ、仕方ない。だって全部見える(・・・)んだもの。




名前:ノーラ

年齢:8歳

性別:♀

種族:ガレオン

役職:ギノ族戦巫女

職業:拳闘士

状態:飢餓(軽度)憔悴(中度)疲労(中度)狂気(軽度)


種族LV5

職業LV:拳闘士LV3 巫女LV1


HP:43/128

MP:0/60


生命力:84

魔力:35

体力:78

筋力:81

知力:40

器用:55

敏捷:74

頑強:62

魔抵:8

幸運:47


装備:木綿の服 木綿のズボン


保有スキル

徒手空拳 軽業 根性 悪食 忍耐 超反応

バインドシャウト 即応 連撃

獣の神の加護




ステータス的には相当強い。ただそれは、同じ種族LVならの話だ。

やっぱり戦闘種族みたいなもんなんだろうな、この強さは。

巫女らしく加護を得てるし。


しかし、ステータス的にもサラに遠く及ばないのに、一食満足に食べただけでは消えない状態異常のせいで、彼女はこの数値の半分程度しか実力を発揮できていない筈だ。

この状態で山羊小鬼と戦っても勝てる訳ないわな。ウォードさんも似たような状態異常だし。


そしてMP0!? 文字通り『根性』だけで戦ってる感じか。


「ぐぶぅぉおおぉ!?」


一通り動きを見たという事なんだろうか、サラが冷静な動きで、ノーラの腹部に箒の柄を突き刺す。

女性が発しちゃいけない音を漏らしながら、ノーラは地面に転がった。


「が、は……!」


「どう? これが私とあなたの実力差。そしてタクマ様は私の何倍も強いわ」


「うぐ……」


腹を押さえて地面に転がりながら、ノーラは涙目でサラを睨みつける。


「けれど安心して。私も二年前はあなたのように、いいえ、あなたよりも弱かったのだから」


「え……?」


「タクマ様に教えを受けた私の教えを受ければ、あなたもきっと強くなれる」


「アンタ……」


ほう、圧倒的な実力差を見せてから、必ずできると励ますのか。

見事な飴と鞭だな。


「サラって『奴隷の心得』持ってるんだったわよね」


「確かそうだったね」


「あれって従属するだけじゃなくて、後輩の指導とかにも補正がつくらしいわよ。帝室だと、侍女や執事を雇ったら、まず『奴隷の心得』獲得させるんだから」


「歪んでるね、君の国は」


「だから私の国じゃなくなったのよ」


ちょっと聞き捨てならない事が聞こえたけれど、そこはスルーするとして、成る程。サラがカタリナ達に先輩風を吹かそうとするのは『奴隷の心得』の影響でもあった訳だ。

あとは、奴隷商館で世話になったという先輩奴隷を見習って、自分も後輩の世話をしようと思ってるのかもしれない。


「だからあなたもタクマ様のものになりなさい」


流石にそれはスルーできないので、全力で止めた。

エレンとは違う方向でヤンでないかい?


そしてウォード一家がタクマの家の近くに住むようになりました。

基本的に誰かから悪く思われるのが嫌なタクマは、なんだかんだ言って、強く押されると流されます。

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