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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第一章:異世界生活開始
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第7話:はじめての……

グロ描写があります。

苦手な人はご注意を。

「乗り合い馬車の護衛クエストはかなり難易度が低いんだよ」


馬車に揺られている間、ソードは俺に話しかけ続けた。

悪意は感じないが、正直、それほど興味がない話を聞かされ続けるのは苦痛でしかない。


そりゃ情報収集は大事だけど、『常識』にある範囲の話しか今のところ聞けてないからなぁ。

とはいえそれを言う訳にもいかないし。

最初に護衛クエストは初めてって言っちゃったから。


あと、うっとおしいからもう喋るな、なんて言う勇気が俺にはない……。


「特にガルツは迷宮都市だからな。周辺の魔物は多くの冒険者によって討伐されてるし、ガルツから出る乗り合い馬車を襲う盗賊もそうはいないしさ」


「そうだな。自分もガルツから出る乗り合い馬車のクエストは何度か受けているが、襲われた経験は少ないな」


近くで聞いていたのか、メイスが同意する。

ドワーフの朗らかな笑顔って迫力あるな。


メイスは巡礼者だから、各地の神殿や聖地を巡っているんだろう。

旅費を浮かせるために乗り合い馬車の護衛クエストを受けながらなんだろうな。

あ、俺と一緒だ。


「まぁ、パーティで仕事してる冒険者達には人気が無いんだけどな」


おや? 『常識』と違うぞ?


「不測の事態が起きる可能性が高いからじゃなかったか?」


俺の疑問はメイスが変わりに尋ねてくれた。

正直今の俺のコミュスキルじゃ、疑問に思っても質問なんてできないからなぁ。


「それもあるけどな。人数制限があったり拘束時間が長かったりするとどうしてもな。知らない冒険者と組むとなるとトラブルも多くなるし」


「それをここで言うのかい?」


幌にもたれていたランスが皮肉めいた笑みを浮かべて会話に参加した。

まぁ、今の発言はかなり際どいよな。


「はは。俺もそのトラブルを起こす側って事さ。だから未だに固定のパーティを組めない」


言って笑うソードに、ランスは苦笑を返す。


なんというか、言動がいちいち爽やかな奴だよなぁ。

でも今の言い方、なんか赤い大尉さんっぽかったな。本当にこいつこの世界の住人なんだろうか……?

いや、最初の俺の自己紹介をスルーしてたし考えすぎか……。


勇者ユーマは確実に異世界の人間だろうからなぁ。ちょっと疑心暗鬼になるな。


ソードが中心になり、メイスとランスの間で会話が交わされる。

ワンハンドは我関せずといった雰囲気で隅に座って目を伏せていた。

エストックも積極的に他の人間と関わろうとはせず、他の人間も、紅一点の彼女に話しかけるには、チャラさが足りていなかった。


女性の冒険者は珍しくないが、女性一人で冒険者をしているのは非常に珍しい。

そのうえ、大体が特別な事情を抱えている場合が多い。

そうした事を考慮して、ソードは敢えて触れなかったのかもしれない。


ソードの会話の相手が俺からメイス達に移った事に安堵していた。


暫くして馬車はゆっくりと速度を落として停車した。


「少し休憩にします」


俺たちの乗った馬車の御者が、御者台から俺たちに声をかけてきた。


「よし、ちょっと外に出るか」


そう声を上げたのはやはりというかソードだった。

彼に続いて、全員が馬車を降りる。


馬車が止まったのは、街道から少し外れた川の傍だった。

大木の下に二台の馬車は止められいる。幹が直径で三メートルはあり、その高さも十メートルはあるだろうか。

休憩のために人工的に植えられたものではなく、自然に成長した木であるらしい。

フィクレツへ向かう際、時間を測る目印の一つになっているそうだ。


背丈の短い草を風が揺らす様は、ヒキコモリだった俺にも情緒的に映った。

石畳と煉瓦の街並みもそうだったが、こうした風景はやはり異世界ならではだろう。


川の水なんか澄み切ってるもんなぁ。


太陽を見ると大体昼を過ぎたくらいだった。

乗客たちも各々馬車から出て、適当な所に座り昼食を食べ始める。


俺も宿を出る前に『マジックボックス』からリュックに移しておいた食糧を取り出し、食べる。

干し肉だ。硬い。塩味もきついし。

ガジガジと齧っていると自然と眉間に皺が寄ってしまう。

顔面の筋肉的な反応なのか、それとも味の問題なのか。

他の冒険者達も干し肉を齧りながら水で流し込んでいる。

やっぱこの世界の人間でもこの保存食はマズいのか……。


これを改良したら金になりそうだけど、俺にはそんな知識ないからなぁ……。

どっかに、身体能力はへっぽこだが、知識だけは大量にある現代人の転生者とか落ちてないだろうか……?


……そろそろかな……?


俺はソードに近づき、その肩をたたく。


「うん?」


ソードは馬車の中のようにメイスやランスと談笑している訳ではなかった。

そこは彼らもベテランの域に差し掛かった冒険者達。

それぞれ昼食をとりながら、馬車と乗客を囲むような位置に移動し、周囲を警戒していた。


「目線は寄越さないでください。北西の丘の陰に潜んでる奴らがいます」


「なに……?」


俺の報告に、ソードの目がすっと細められた。

警戒しつつもどこかリラックスしていた風のソードの顔つきが、戦士のそれに変わった瞬間だった。


ちょっと、背筋がぞわっとなったぜ……!


「実は街を出て少ししてから尾行してきたた奴らがいました。多分そいつらだと思います……」


「そうか……。人数は?」


「わかるだけで、七人」


俺は正確な数を伝えた。わからないと答える意味は無かったし、嘘を言う意味はもっと無かったからだ。


「俺たちが警戒してるんで様子を見てるんだと思います。けど、このままついて来られて夜襲でも仕掛けられると面倒です」


「誘うか……。ちょっとグルデュフカとオンデノトュエと雑談でもしてくるわ……」


俺の意図を察してくれたらしく、ソードがその場を離れる。まずはメイスへ近付いていく。

ていうかソード、メイス達の名前ちゃんと覚えてたんだなぁ。

一瞬誰の事かわからなかったぜ。


俺も北西の丘を意識しつつ、ワンハンドへと向かった。

エストックを選ばなかった理由は、まだよく知らない女性に話しかけるのは、少々ハードルが高かったからだ。


!! 来た!!


『サーチ』が丘の向こうから飛来する矢を捉えた。

軌道は……客用の馬車か!

威嚇のつもりだろうな。乗客がパニックを起こせば、護衛の人間も混乱させられる。


すぐさまそちらへ駆ける。


「え……?」


ショートソードを抜いて駆け寄る俺を見て、御者が思わず腰の剣に手をかけていた。


「ふせろっ!!」


伏せる必要は実は無かったが、俺が敵意を持って近づいている訳じゃない事を御者に伝えるために叫ぶ。


地を蹴り跳ぶ。まだ空中にある矢を、ショートソードで切って落とす。


「きゃああ!」


「な、なんだ!?」


その時になってようやく事態に気付いたらしい乗客たちが騒ぎ始める。


「落ち着いて! 慌てずに馬車の中へ!!」


ここでパニックを起こされ、思い思いに逃げられては、それこそ襲撃者の思う壺だ。

俺は乗客に声をかけて落ち着かせるフリをする。

実際には『サニティ』の魔法を心の中で唱えて、乗客たちのバッドステータスを取り除いていた。


混乱さえしていなければ、俺の指示に素直に従ってくれる。一ヶ所に固まってくれれば守りやすいし、馬車の中なら流れ矢などから身を守れる。


魔法使い系の職業を獲得していないので、スキルにある『効果拡大』が使えない。

そのため一人ずつに魔法をかけなければならないのが面倒だったけど、乗客たちの避難は成功しそうだった。

丘の向こうから盗賊の一団が姿を現しても、乗客たちは慌てず、騒がず、しかし素早く馬車に乗り込んで行く。


「オンデノトュエとセニアは南を警戒してくれ! グルデュフカとマカレセーナムとタクマは俺と共に盗賊たちの迎撃!」


ソードが素早く指示を出し、配置につく一同。

誰も、彼がリーダーシップを発揮している事に疑問も不満も漏らさない。


今はこの状況に対処するべきで、そういった追及は後ですれば良い。

そのくらいの判断はできるらしかった。



役職:盗賊

盗賊LV27 戦士LV11 斧戦士LV13


役職:盗賊

盗賊LV21 野盗LV14 農夫LV4


役職:暗殺者

暗殺者LV17 曲者LV20


役職:盗賊

盗賊LV11 曲者LV16 野盗LV15


役職:盗賊

盗賊LV3 野盗LV11 戦士LV7 弓使いLV6


役職:盗賊

盗賊LV8 戦士LV5 剣戦士LV3 野盗LV5


役職:盗賊

盗賊LV10 野盗LV7 戦士LV9 野伏LV6



なんか全体的にレベルが高ぇ!

あと『盗賊ロバー』じゃないの混ざってるんですけど!?


暗殺者アサシン』もやばそうだが、とりあえず最もレベルが高い盗賊に狙いを定めて弓を放つ。

弓使い(アーチャー)』のスキル『クイックショット』で、矢を番えてから放つまでの速度が二倍に上昇している。


空を切り裂き、真っすぐに飛んだ矢は、見事に盗賊の頭に刺さる。


「ぐおっ! っそったれぇ!!」


一瞬体勢を崩しかけるが、額に矢を刺したまま激昂してこちらへ向かって来る。


うぅむ。そういうものだとわかっていても、この光景はホラーだなぁ……。


『連射』により再び射撃。

直前に行った射撃攻撃と同じ攻撃を行う場合、その速度が二倍になるスキルだ。

『クイックショット』と組み合わせれば、かなりのスピードで矢を射る事ができる。


斧で迎撃する素振りを見せたので、狙いを膝へ。寸分違わず突き刺さり、その場で転倒する。


顔面からいったな、今。あの速度から転ばされたらかなりのダメージだろう。受け身も取れなかったみたいだし。

もう一発『連射』を使用して頭を矢で射る。

更にもう一発撃とうとしたら『連射』が発動しなかった。


それは対象が死亡した事を意味していた。


よし、次。


と次は明らかにヤバそうな暗殺者に狙いを定める。


同時に俺はちょっと拍子抜けしていた。

盗賊の弱さに、ではない。


人を殺しても何も感じない自分に、だ。


人を殺した事に対する嫌悪とそれに伴う葛藤は?

初めて人を殺した事でショックを受け、戦えなくなるのがテンプレでは?


丁度そんな俺を叱咤してくれそうなソードと、ヒロイン候補のエストックもいる訳だし……。


理由はわかっていた。

それは俺が持つ『世界の常識』のせいだ。


いや、お蔭、と言うべきだろうか。


この世界でも、人が人を殺すのは罪だ。

普通の人間なら、そんな経験をせずに一生を終える。

だからこの世界でも、普通の人間が初めて人殺しを経験したなら、精神的に異常をきたしてしまう可能性が高い。


だが冒険者は別だ。

いや、冒険者に限らないが、こうした荒事で生計を立てている人間は別だ。

盗賊は問答無用で殺害するし、モンスターの中にも人型のそれがいる。


傭兵のように戦争に参加する事もあるし、決闘で相手を殺してしまう事もある。


俺が保有している『常識』はこの世界の冒険者の三割が知っている事だ。

だからその中にある倫理や道徳も、この世界の冒険者のそれを基準にしているものなのである。


だから人を殺す事に、抵抗感も不快感も感じなかった。

いや、それなりには感じているのだけれど、それ以上に自分の身を守るために敵を殺す事を当たり前の事と認識していたんだ。


異世界転生もののテンプレのイベントをスルーしてしまった事に一抹の寂しさを感じながらも、俺はこの『常識』をくれた女神に感謝していた。


「おっと……!」


暗殺者に向けて矢を撃った時、丘の上から一本の矢が飛来した。

その矢は客用の馬車の幌に刺さる。


……あの深さなら中までは届いてないよな……?


暗殺者は肩に矢を受け体勢を崩したので、俺は狙いを丘の上で弓を構える弓使いの盗賊に変更した。


距離としては50メートルくらいか……? 遠いな。

届くとは思うけど、威力と命中精度に不安が残る。

『ロングレンジ』と『スナイプショット』を使用し、その不安を払拭する。

どちらも『弓使い(アーチャー)』LV8では使用できないスキルだ。

『ロングレンジ』は『弓使い(アーチャー)』LV15。『スナイプショット』はLV20必要なんだが、俺は『技能八百万』により問題無く使用できる。


流石チートだ。なんともないぜ。


更に少ない手数で倒すため、『パワーショットット』と『ペネトレイト』も発動させる。

オーバーキルならそれで良い。へたに残る方が厄介なんだから。


『クイックショット』も使用して二本の矢を番えて放つ。

その軌道は山なりではなくライナーだ。

凄まじい速度で飛んだ矢は、相手の弓使いに反応さえ許さず、その胸に突き刺さる。

続けてそのすぐ後ろを飛んでいたもう一本の矢が、矢の尻にある弦を挟む部分、筈を直撃する。

先に刺さっていた矢を押し込み、更に深く突き刺す。


『ペネトレイト』は射撃攻撃の最初の一撃に続けて同じ個所を攻撃した際、二発目の攻撃は敵の防御力を無視するという強力なスキルだ。

それを射撃攻撃の威力を高める『パワーショット』と併せて使用した事で、弓使いの盗賊に大ダメージを与える事に成功したのだ。


結果、弓使いの盗賊はそのまま仰向けに倒れて動かなくなった。

いえーい、ワンパンキルー。

実は二発撃ち込んでるとか言わない。


「はあぁっ!」


声がしたので見れば、馬車から少し離れた場所で、ソードが暗殺者と切り結んでいた。

一メートル五〇センチはありそうな巨大な剣を振り回すソードの周囲を暗殺者が飛び回るように移動し翻弄していた。


ステータスの総合力としてはソードの方が上だが、敏捷と器用は暗殺者の方が二倍近く高い。

物理法則にステータスの数字が大きく関係してくるこの世界では、素早い相手から急所に一撃もらって熟練者が殺される、みたいな事はほぼない。

だから総合力さえ上回っていれば負ける可能性は低いのだけれど、一部の職業はこれに当てはまらない。


そして『暗殺者アサシン』はこの当てはまらない一部の職業だ。

それも代表的な職業だと言っていい。


暗殺者アサシン』のスキルには『一撃死』というものがある。

効果は読んで字のごとく。相手に攻撃を命中させた時に確率で発動、相手の防御力やHPに関わらず一撃で死亡させるというものだ。

流石に、鎧の上から指で叩いた程度では発動しないが。


この『一撃死』の発動確率に関わってくるステータスが器用だ。相手より自分の器用が高ければ高いほど発動確率は高くなる。

そして敏捷が高ければ手数が増えるので、その分発動確率は高まる。


ソード、そいつお前との相性最悪だぞ。


上半身を完全に覆う鉄の鎧に鉄の脚甲。鉄の篭手。そして巨大な剣。

回避ではなく防御力の高さに頼って攻撃を受けきるタイプの戦闘スタイルなのは明白だ。


横薙ぎに振るわれたソードの大剣を掻い潜り、暗殺者が彼の懐に飛び込む。

手にしたシミターを逆にソードのわき腹に向けて振るう。


だがその凶刃がソードに届くことは無かった。

俺がその間にショートソードを割り込ませたからだ。


「なにっ!?」


攻撃を防がれた事もそうだが、何より俺がいつの間にか近づいて来ていた事に暗殺者は驚いたようだった。


「こいつは俺の方がやりやすいです! 他を頼みます!」


俺はソードに一方的にそう宣言すると、後ろに跳んで距離を取っていた暗殺者を追撃する。


「な……う、わかった!」


何か言いたそうではあったけど、他の盗賊達が俺達に近づいて来ていたし、自分でも相性が悪いと感じていたんだろう。了承を伝えて槍を持った盗賊へと向かう。


「弓を撃っていた奴だな。俺に気付かせずに近づくとは、『野伏レンジャー』か? だが、近接戦闘で俺に敵うと思っているのか?」


「思っているから割って入ったんだろうが」


何か会話があるなら恐らく言ってくるだろうセリフだったので、こちらも想定通りの返しを行えた。


「ほざけ!」


そして地を蹴り、こちらに飛び込む暗殺者。

いや、飛び込もうとしたところで、その動きが止まっていた。

俺が相手が動き出すより早く前に出て、距離を潰していたからだ。


「な……っ!?」


今まで自分より速く動く相手と出会った事なんてなかったんだろう。先程よりも更に大きく驚いている。


「俺の方が素早いみたいだしな」


そしてショートソードを振るう。

ステータス的に筋力が異常に高いので何の変哲もないこんな武器でも相手の防御力を軽く抜ける。おまけに相手は紙防御の暗殺者だ。


「ぐはぁっ!」


シミターで防ぐ事もかなわず、俺の一撃をまともに受けてのけぞる暗殺者。

流石に一撃で殺すのは無理か。


『常識』のお蔭で直接相手の肉を切り裂く感触とか、飛び散る血飛沫とかに動揺せずに済んでいた。ありがとうございます、女神様。


勿論ダメージにより体勢を崩した相手にそれを建て直す時間を与える訳がない。

今度はこちらが言う番だ。

ゲームのようにターン制ではないのだと。

相手からすると何のことかわからないと思うけどなー。


「ぐっ……!?」


袈裟斬りに振り抜いた刃をすぐに返し、逆袈裟に切り上げる。

のけぞるような形で体勢を崩していた暗殺者は、今度は上半身を前に折り曲げる形になる。

つまり俺の目の前に無防備な後頭部が晒された訳だ。


「ふんっ!」


気合いと共に刃を振り下ろす。

見事にショートソードは暗殺者の頭を割った。

大量の血液と共に脳漿が飛び散り、暗殺者は地面に俯せに倒れる。


……HPを0にした時は普通にグロくなるんだよなぁ……。


流石に『常識』があってもこれには若干引く。

あまり直視したいもんじゃないので、早々に俺は顔を背け、死体を意識の外へ追いやる。


周囲を見ると戦闘は終わりつつあった。


元農夫の槍持ちの盗賊はソードによって倒されていた。

メイスとワンハンドはそれぞれ盗賊と戦闘を行っている。

どちらも護衛側が優勢だ。


一人残った『野伏レンジャー』の盗賊はこちらの護衛がそれぞれ戦っている間をフリーの身で動けていたらしく、馬車の近くでエストックと戦っていた。

ソードと二対一なのですぐに勝負はつくだろう。


野伏は弓を槍のように構えて戦っていた。

器用な戦い方を……。弓弭に槍の穂先がついてる……。あれ、弭槍じゃね?

兵器としてはともかく、野盗の装備としては珍しいな。

どっかの兵士か傭兵崩れなんだろうか?


武器としては高機能でも、基本木製なので耐久性は低い。

ソードの一撃を受けて、弭槍は粉々に砕け散った。

あ、もったいね。


その隙を突いてエストックが突きを繰り出す。

隙を突いただけにね!!


……エストックの一撃は見事に野伏の喉に突き刺さる。

刃を抜くと、首から血飛沫を吹き出し、こちらは仰向けに倒れる。


「なんとかなったようだな」


それぞれ相手にしていた盗賊を倒して、メイスとワンハンドが二人に近付いていく。

俺も無言でその傍に寄る。


不気味? こんな時なんて言っていいかわからないの。


「どうだ?」


ソードが俺に尋ねてきた。

どうやらさっきの俺の索敵能力に期待し、他に伏兵がいないか確認しているようだ。


「大丈夫です」


それに気付いた俺は短く答えた。


「そうか。けど援軍がこないとは限らない。後始末を終えたらすぐに出発した方がいいだろう」


ソードの提案に、護衛の冒険者だけでなく、戦闘が終わった事を察して馬車から出て来た御者も同意した。


人を初めて殺した事への葛藤は、この手のジャンルだとテンプレですよね。

そしてそれをスルーするのも、今じゃ別の意味でテンプレなんでしょうか?

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