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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第76話:王国侵攻3 小さな戦争

遅くなりました。

そして長くなりました。

三人称視点で、留守番組の話になります。


「美味しくない……」


食堂で出された食事を一口食べて、サラがぽつりと呟いた。


「すっかり舌が肥えちゃったみたいだね。ここは値段からもわかる通り、味が良いと評判の店なんだけど」


ミカエルは苦笑いしつつ、店員の様子を伺う。どうやら聞かれていなかったようだ。


「サラさんはこちらに生まれてからずっと奴隷商館で暮らしていたそうですし、初めて買っていただいたのがご主人様ですからね。舌が肥えたというより、ご主人様の料理が当たり前になってしまっているのでしょう。むしろ、舌が肥えたというならわたくしの方ですわ」


奴隷になってから暫く、ガルツで生活していたカタリナは庶民的な食生活に慣れていた。

ただ、貴族時代より、冒険者として生活していた時代の方が良い物を食べていた事は、タクマにさえ秘密にしている。

同情される事ではないし、同情されると悲しくなるからだ。


「そもそもサラ君が、タクマ君が残していってくれた食材を使いきっちゃうのがいけないんじゃないか」


「だって、ミカエルもカタリナも野菜多めに使うから……」


「理由になっていませんし、ご主人様から野菜も食べるように言われているでしょうに」


タクマが帝国に向かってからもうすぐ二週間になる。タクマは一ヶ月程を予想して肉類を置いて行ったのだが、それらは一週間で無くなってしまった。

理由はミカエルが言った通り、サラが無計画に肉を料理に使い過ぎたせいである。


家事は三人で分担するのだが、カタリナもミカエルも、タクマの言いつけ通りに肉と野菜を配分していたが、サラには『野菜が多い』と映ってしまったらしく、自分の番の時はここぞとばかりに野菜を殆ど使わず、肉だけで料理を作っていた。


「情熱を注ぐだけあって美味しかったけどさ……」


初日にそれを止めずに、自分達も舌鼓を打ってしまったのもまずかった。

気付けば肉類はあっさりと底をつき、食材は野菜と保存の効く穀物類だけになっていた。

そしてサラが野菜を嫌がったため、こうして外に食事に来ている。


タクマからは留守中も浅い階層でいいからダンジョンに通うよう言われていたので、ついでにこうしてガルツで食事をしていたのだ。


しかし、サラの舌には合わなかったようだ。


「黄色い布を巻いておけば、あの怪しい商人が来てくれるかな?」


「そうだとしても、ボク達じゃ購入する代金が無いよ」


お金はかさばるという理由で、『マジックボックス』を使えるタクマが一括管理していた。

お小遣い程度は貰っていたし、ダンジョンで手に入れた魔石を売却してある程度の現金収入はあるが、それは決して多くない。


「深い階層に潜って万が一があると困りますものね」


「魔物を狩って食べるって手もあるけど、誰も捌けないんだよね……」


「肉屋で頼めればよかったのに……」


「断られましたものね」


普通の猪や鹿なら解体を含めてやってくれるが、魔物は拒否された。

毒などを持っている場合があるし、魔物を殺すと呪いを受けるかもしれない、と思っている職人も居た。

技術を持っている冒険者に頼んだ事もあったが、あからさまにサラとカタリナに下心を抱いていたので、サラが二度と頼まないと憤慨していた。


ミカエルはガルツでも男性で通しているが、タクマの奴隷であるので、あまり虫除けにはなっていなかった。



「ところで、そのモニカさんとはどのような方なのでしょう?」


夕食を終え、家に戻って来た三人は、装備を解きながらも雑談に興じていた。

やはり、女は三人寄れば姦しいらしい。


「帝国の第三王女。でも帝国はあまり他国と繋がりが無いから、噂を聞いた事も無いね。数年前に行方不明になったとか、死んだとかは聞いたけど、多分、その時に冒険者になってて、タクマ君と出会ったんだろうね」


「ミカエルみたい」


「帝国の皇室は権力闘争が激しいって聞くから、ボク以上に切実に逃げたかったのかもしれないね」


「そんな事情があったのに、帝国に戻ってしまったという事は……」


「そのまま居るとタクマ君に迷惑がかかると思ったんだろうね。つまり、それだけタクマ君を想ってたって訳だ」


情熱的だね、とミカエルはコメントするが、サラは不機嫌な表情を浮かべている。


「そんな彼女からの手紙一つで助けに行くくらいだから、両想いだったんだろうね」


にやにやと笑いながら、ミカエルはサラの膨れた頬をつついた。


「大丈夫だよ。昔の恋人が現れたからって、タクマ君はボク達を捨てたりしないさ」


ミカエルの言葉に頷くカタリナ。しかし、サラが案じているのは別の事柄だった。


「私だって、タクマ様を信じてる。けど、相手が誰か一人に絞って欲しいと言ったら?」


「元皇族ならその辺は寛容だと思うけど、普通の奴隷とご主人様の関係に戻ればいいんじゃないのかな? エッチな事するだけが絆じゃないだろう?」


ミカエルの言い様に、サラは思わず頬を赤く染めて目を逸らしてしまった。


「み、ミカエルは、平気なの?」


確かに、タクマの傍に居る、という事は、肉体関係を持つだけを意味する訳ではない。

傍にいられるだけで、笑顔を向けてくれるだけで、頭を撫でてくれるだけで。

それだけでも、サラは幸せを感じる事ができるだろう。

しかし、それでも。

タクマと肌を合わせられないのは、想像するだけで辛かった。

しかも、タクマは別の女性と愛し合うのだ。

そう思うと、胸がズキズキと痛み始める。


「いや、なんとしてでも夜の権利を勝ち取るつもりだよ」


「ず、ずるい!」


あっけらかんとした様子で言うミカエルに、サラは思わず叫んでいた。


「わたくしも、できれば傍に置いておいていただきたいですが、全てはご主人様が戻ってからの話ですわ。今勝手に想像して、勝手にへこむ必要はありませんわよ」


「むぅ~~~~……」


しかしサラは唇を尖らせて唸っている。まだ納得できないようだ。


「しかしサラ君……」


「な、なに?」


サラを見るミカエルの瞳に、粘ついたものが含まれている事に気付き、サラはたじろいだ。


「この一年で随分と育ったねぇ。ボクはすっかり追い抜かれてしまったよ」


ミカエルの指がサラの双丘をつついた。流石に、その先端を狙うような真似はしない。


「だ、だめ!」


慌てて両腕で胸を隠して身をよじる。


「やっぱりあれかな? 成長期に男の人に揉まれると大きくなるのかな?」


厭らしい笑みを浮かべて、わきわきと指を動かす様は、同性のそれではなかった。


とは言え、サラはまだ年相応に肉がついてきたくらいだ。ほぼ平坦なミカエルは、本人の言葉通り完全に追い越しているが、サラ自身はまだまだだと思っていた。

何せ、どれだけ育てば追いつけるのか、想像もできない相手が目の前に居るのだから。


ちなみに、男性に胸を揉まれると大きくなる、というのは俗説ではあるが、根拠が無い訳ではないらしい。

女性の胸が大きくなるのは、女性ホルモンが大きく関係している。これが多く分泌されている時に胸部をマッサージすると、胸は大きくなりやすいそうだ。

そして女性ホルモンが多く出る時というのは、エッチな気分になっている時らしい。

好きな男性に胸を揉まれれば、そのような気分になって、自然と、胸が大きくなる条件を満たせるそうだ。


ただ、あくまで胸の成長と女性ホルモンの分泌条件からの推測であるし、個人差もあるため、誰もがエッチな気分の時に胸を揉めば大きくなるという訳ではない。


閑話休題。


「?」


「あら?」


「おや!」


三人が着替えながらじゃれあっていると、鈴の音が家全体に鳴り響いた。

決して騒音のようなうるささではない。しかし、彼女達の声を縫うようにして、それぞれの耳に届く。

それはタクマが残していった『空気の嫁セカンダス・エアリアル』の警報だった。


三人共、着替えもそこそこに屋根裏部屋へと急ぐ。

タクマが『錬成』で作った凸レンズを用いて作成した望遠鏡をそれぞれ覗く。


「北の方角から兵士らしき部隊が近付いてる」


「南の方角から兵士のような方達が近付いて来ていますわ」


「どうやら、全周のようだね……」


彼女達の言葉通り、家に向かって大勢の兵士達が近付いて来ている。

決して友好的な雰囲気ではない。


「装備からして正規兵だね。ようやくというか、遂にというか。ボクの居場所を突き止めたらしいね」


苦笑いを浮かべるミカエルの表情はひきつっていた。血の気が引いているのか、顔も蒼褪めている。


「数は三百といったところかな。ボク一人に随分と張り込んだもんだね。それとも、タクマ君を評価しての人数かな」


「ミカエルさん……」


「すまないね、君達を巻き込んでしまったようだ。ボクが出れば時間を稼げるだろう。君達はその間に……」


「ミカエルさん、あの兵士達にその身を差し出せば、わたくし達が助かると考えてらっしゃるのでしたら、それは間違いですわよ」


「ああ、わかってる。君達を見逃す可能性は低いだろう。けれど、せめて君達だけでも無事にタクマ君の元へ……」


「ミカエル、違うわ」


「まさか君達も戦うというのかい? 駄目だよ。君達にまで何かあったら、ボクはタクマ君に顔向けできないよ!」


「そういう事じゃなくて……」


「けれどまぁ、勝手に死ねと言わないでくれてありがとう。君達の友情にボクは……」


「あれ、多分目的はわたくしですわよ」


「感動を禁じえ……え?」


「いくら一年経ったと言っても、女神様と交わした誓約を違える訳がない。女神様と交神して、契約の事を聞いたのなら女神様からこちらに伝えてくださるようになっている筈。ミカエルの居場所を突き止めたからって、この国の全てがタクマ様や時空の神の教会のものになってしまう可能性を考慮せずに攻めて来る程、エレノニア王国は愚かなの?」


「いや……」


事実を淡々と述べるサラの言葉は、ミカエルの胸に深々と突き刺さった。

そんな事もわからない程馬鹿なのか? と言われたような気がしたからだ。


「わたくしが奴隷になった経緯は以前お話いたしましたわよね?」


「ああ、悪徳貴族に騙されたんだったね」


「その貴族は未だにわたくしを狙っております。正確には、わたくしと結婚する事で得られる、旧クォーリンダム家の領地を、ですけれど」


「この一年は平和だったから、てっきり諦めたと思ってたけど……」


「どうやら時機を見ていただけのようですわね」


「どういう事?」


「それならボクもわかるぞ!」


汚名返上とばかりに、勢いよく挙手するミカエル。


「ここ数日、ガルツでも噂されているけど、帝国がいよいよ攻めて来るようだ。実際に戦うのは北部の貴族だろうけど、他の貴族にも召集がかかるだろう。近隣諸国への牽制や、北部の貴族への後詰。クォーリンダム家は確か湖周派の貴族だったよね? 君の家を狙う貴族もじゃあ同じかな? どちらにせよ、帝国との戦に備えるって名目で募兵が可能だし、進軍させても誰も不思議に思わない」


「つまり?」


「帝国との戦争のどさくさに紛れて、この家を破壊し、わたくしを連れ去ろうというのですわ」


「許しません!」


「その憤怒がわたくしのためであれば嬉しいのですけど……」


「二割くらいはある」


サラの返答に、カタリナは溜息で応えた。


「まぁ、このような状況になれなければ、彼らは動かなかっただろうから、クレインさんに話をしておいた甲斐はあったかな?」


「クレインさんがなにか?」


「いや、別に」


カタリナの疑問に答えず、ミカエルははぐらかす。


「ええっとそれで……。さっき自分で言った手前、言いにくいんだけど、自分が犠牲になってボク達を助けようとか思ってないよね?」


「逃げたいとおっしゃるのであればお止めしませんわ。その時はご一緒させていただきますけど」


「タクマ様の家を捨てて逃げるなんて有り得ない」


「じゃあ仕方ないね」


「ええ、仕方ありませんわね」


そして三人は大きく一つ頷く。


「迎え撃つ」


「迎え撃ちましょう」


「迎え撃とう」




「止まれ!!」


家から一歩だけ外に出たミカエルは、声の限りに叫んだ。


「それ以上進むならボク達に対する敵対行動とみなし、迎撃する! これはガルツ執政府および、アンドリュー侯爵家に認められた正当な防衛行動である!」


しかし兵士達の前進は止まらない。そのくらいは織り込み済みなのだろう。

家を破壊し、サラやミカエルを殺し、カタリナを攫ってしまえば、後はなんとでも言い訳ができると考えているのだ。


「これより3数える前に止まらなければ、敵対の意思ありとみなす! 1!」


家の全周囲から兵士達が近付いて来る。


「2!」


一部の兵士が抜刀した。弓を構える兵士も居る。


「3!」


そして、家の屋根裏部屋の窓から、魔法が放たれた。前衛の兵士に着弾。何人かの兵士が倒れたが、彼らは構わず前進を続ける。


「『エンゲージリンク』」


自身の首に巻かれた首輪。その中心の宝玉を愛おしそうに撫でながら、ミカエルはそう宣言した。

宝玉が一瞬強く輝くと、その光が収まった時には、既にミカエルは『変身』を終えていた。


白を基調とした全身鎧。兜はフルフェイスではなく、ミカエルの顔が見えた。

左手には鎧と同じく白い丸盾。右手にはやはり同じく白い刀身の片手剣。


ミカエルが兵士達へ向かって歩き出す。徐々にその速度が上がり、ついに走り出した。

走り始めてから殆ど間を置かず、ミカエルは兵士達に肉薄する。


「なっ!?」


流石にこれには、兵士達も驚き、声を上げ、足を止める。


「愚かっ!」


その兵士に向けて剣を一閃させる。幾つかの首が宙に舞った。


「あれだけはっきりと敵意を示しておきながら、あまりにも暢気に過ぎるね。ましてや相手はこうして牙を剥いたんだ」


敵陣へと走り込みながら、片手剣を振るうと、次々と赤い線が閃き、首と血飛沫が舞う。


「しっかりと反撃しないか!」


叫ぶミカエルの背後から近付いた兵士が、家から飛来した魔法に頭を吹き飛ばされる。


「前進だ! 前進しろ! 一度に放てる魔法には限度があるぞ!」


指揮官らしき人物が叫んだ。その命令に従い、兵士達の進軍速度が上昇する。


「中々優秀じゃないか」


指揮官が見抜いた通り、進軍の速度が上がった事で、魔法による迎撃が追いつかなくなる。

ついに、川側から接近して来ていた部隊が家に向かって矢を射かけ始めた。

しかし、壁に当たった矢は刺さる事無く弾かれて落ちる。


「エンチャント!? 家の壁に!?」


兵士が驚くのも無理もない。普通、防壁の外だからと言って、家の壁や屋根に防御用のエンチャントを施す事などしない。

そもそもエンチャントを行える『付与士エンチャンター』自体が稀な職業だ。それでもせいぜい盾や鎧の一部にエンチャントを施す程度である。

家全体に付与した挙句、それを何日も保たせるなど、王国中の『付与士エンチャンター』を探したところで、片手の指程も居ないだろう。


「『エンゲージリンク』」


そして二階の窓が開き、黒い全身鎧に身を包んだサラが飛び出す。川の向こうに降り立つと同時に槍を振るい、兵士達を薙ぎ倒す。


「て、敵は一人だ! 囲んで殺せ!」


しかし、次々に繰り出される槍を、サラはまるで踊るような動きで軽やかに躱していく。

逆に、サラとすれ違った兵士達は体を貫かれ、あるいは首を切り飛ばされ、その命を散らす。


「く、弓隊、あいつを狙え!」


「しかしそれでは味方を巻き込みます……」


「あのままでもどうせあいつに殺される!」


そしてサラに向けて矢が放たれる。一応その直前に退き太鼓が一度鳴らされていたため、兵士達は慌てて退避している。

それでも何人かの兵士に矢が刺さり倒れる。サラは風車のように槍を回して、自らに迫る矢を弾いた。


「よし、矢を射かけ続けろ。その間に槍兵は迂回して家に取りつけ」


「させない!」


サラを迂回して川を越えようとした兵士の前に、火の玉が出現する。


「え? ぐわあぁ!?」


それがなんなのか理解する前に、火の玉が弾丸となって兵士を襲った。

それはサラの『ファイアショット』だ。この一年で、彼女は第一階位の自然魔法の殆どを、無詠唱で使用できるようになっていた。


東側はサラ。西側はミカエルが抑えている。カタリナは魔法を北側に集中させていた。

自然と南側が手薄になるが、三人はそちらに意識を向けていなかった。

気付いていなかった訳ではない。南側にはある施設があったからだ。

そんなつもりではなかったが、結果的に防衛施設となってしまったそれ(・・)


「隊長、畑があります」


「どのみちこの家の住人は全て居なくなる。畑なんて残っていても仕方ないだろう。踏み潰せ!」


嗜虐的な笑みを浮かべて兵士長が命令を下す。

そして兵士の一人が畑に足を踏み入れたその瞬間、


「ぐぶっ!?」


トウモロコシの茎から実が発射され、一人の兵士の胸を、鎧を砕いて貫いた。


「なっ……!?」


何が起こったのかを兵士達が理解する前に、次々にトウモロコシの身が発射され、兵士達の体を穿つ。

更にトマトが大きく割れ、口と目のような模様が現れる。一度大きくトマトは頬を膨らませた後、口から汁を飛ばす。

それは高い圧力がかかった水流だった。トマトの汁に貫かれ、或いは切り裂かれ、兵士達が倒れ伏す。

地中から飛び出たジャガイモが次々に兵士達へ体当たりを敢行する。全身を打ち据えられ、全身打撲でショック死する兵士が出た。

タマネギやニンニクは根を伸ばし、兵士を絡めとると、そのまま締め上げ、全身の骨を砕く。


「い、イーティングイーターだと!? 馬鹿な! あれは駆け出しの戦士でも一対一で戦える程度のモンスターの筈だ!!」


すぐに兵士達も応戦するが、振るわれる刃は、自在に空中を飛び回るジャガイモをとらえられず空を斬った。繰り出された槍は、トマトの弾力ある皮に弾かれてしまう。


イーティングイーターは戦士LV6相当の強さを持っている。装備や技術で勝率は変動するが、初心者冒険者が一人で戦うには少々厳しい相手だ。

しかし、逆に言えばその程度の強さでしかない。決して、鎧を貫く程の攻撃力や、槍を弾く程の防御力を有してはいないモンスターだった。


ならば何故、訓練を受けた兵士達が苦戦しているのかと言えば、それはタクマの企みによる。

別に防犯を考えて行った訳ではない。

ダンジョンなどに出現する、高LVのモンスターは、そのLVに応じて魔石を複数残す。

ならば、イーティングイーターも、LVが高い状態で倒せば、多くの魔石が手に入るのではないか、と考えたのだ。

魔力で成長するのだから、魔力を流してやればLVも上がるだろう、と単純に考え、第一階位の世界魔法『トランスファーマジックパワー』を使用して畑に魔力を注ぎ込んだのだ。

その結果、LV10超えのイーティングイーターが完成した。

通常の野菜であれば、栄養のあげ過ぎは育成に悪影響が出るが、モンスターはその限りではなかったらしい。


ミカエルは畑を管理する仕事を与えられている関係上、この魔法だけは使えるように訓練していた。


種族LV10のイーティングイーターは、単純計算で戦士LV16に相当する。それは中堅の冒険者と同程度の実力であり、毎日訓練をしている正規兵でも、少々厳しい相手だ。

しかも、兵士達が訓練しているのは基本的に対人戦であり、モンスター、特に、人間と形も大きさも違う相手を想定していない。




「ええぃ、相手は少数だぞ。一体いつまでかかっているんだ!」


家に攻め寄せている兵士達の後方で、苛立ちと共に叫んだのはジョン・ディールだった。

カタリナを自らの前に引き摺り出し、跪かせる事を夢想し、屋敷で待つ事ができずにここまで同行していたのだ。

決して、実家が居づらかった訳ではない。


無様に撃退されてから一年。情報を集め、機会を窺っていた。

帝国との緊張が高まり、貴族に招集命令が出た事で、軍事行動を起こしても誰にも見咎めらえない状況が訪れた。

更に、ガルツに潜らせていた手の者から、あの忌々しい時空の神の使徒が家を空けているという情報を入手した。

たかがマイナー神の使徒に、ガルツを領地に持つ貴族も、王国も、気を使い過ぎだと思ったが、それでも彼が王国内で重要な立場にある事は間違いない。へたに排除すると、自分の身は勿論、ディール家そのものさえ存続が危なくなってしまう。


まさに千載一遇の機会と言えるこの状況。何としてでも今回カタリナを連れて帰らなければならなかった。


「し、しかし、東も西もその少数によって抑えられておりまして。南は謎のモンスターの襲撃で壊滅的な打撃を受け、部隊再編中です」


「ならば南の部隊を北側の部隊に合流させて……」


「一番被害が大きいのが北側の部隊です。家から放たれる魔法によって、甚大な被害が出ております。カタリナ嬢によるもののようですが……彼女は本当に第一階位の世界魔法を少し使える程度なのですか? 一撃で十人以上が吹き飛ぶような魔法は第二階位どころか、第三階位なのでは……?」


「そんな事俺が知るか! いいからさっさとカタリナを俺の前に連れて来い!」


「しかしこのままではいたずらに兵を損耗させるだけで……」


「それがどうかしたか!? 貴族である俺の目的を達成するための犠牲になるのだから、平民としては本望だろう」


あくまで男爵家の三男でしかないジョンは、厳密には貴族ではないのだが、側近の兵はその事に言及しなかった。

これまでの経緯を知っているからこそ、ディール家がどれだけ過保護であるか理解していたからだ。


「攻撃を続ければ奴らも疲れる。疲れれば、どんなに強い相手でも簡単に倒せる筈だ。こんな簡単な理屈もわからんのか!?」


それはその通りだが、兵を預かる身としては、そのために発生する損害から目を背ける訳にはいかなかった。

三百人全てを使い潰しても、最終的にカタリナの身柄を押さえられれば良い、とは考える事はできなかったのだ。


それでも彼は命令を下さなければならない。

何故なら、自分にはもう既に命令が下されたからだ。

ジョンにとっては前線で戦う兵も自分も変わりはないのだ。彼らの代わりに尊い犠牲の一人にされては堪らない。




「多少は使えるようだが、俺ほどじゃねぇな!」


サラへ射かけられていた矢が収まった時、一人の兵士が槍を構えて前に出て来た。

兵達は矢の補充と、サラを迂回して家に取りつこうとして、魔法で迎撃された者達の治療にあたっていた。


「俺はヘンドリック・アンバー。てめぇを殺す者の名前だ。覚えとけ」


「…………」


しかしサラは油断無く槍を構えたまま無言だった。


「……お前は?」


若干の苛立ちを覚えて、ヘンドリックはサラに聞く。


「お前に名乗る名前は無い」


高台に立ち、腕組をしているような口調でサラが言った。


「名乗りも知らねぇとは、所詮平民か! アンバー騎士爵家次男、ヘンドリック・アンバー、推して参る!」


口上と共にヘンドリックが槍を繰り出す。言うだけあって、他の兵士と比べてその穂先は鋭かった。

しかし、普段は閃光の如き、タクマの槍を相手に訓練をしているサラにとっては、大した速度ではない。


突き出された穂先に、自らも穂先を合わせてこれを弾く。


「うおっ!?」


即座に刃を返し、薙ぎ払う。ヘンドリックは上体を逸らしてなんとかこれを躱した。

しかしサラは一歩踏み込み、ヘンドリックが体勢を建て直す前に槍を振るった。

しゃがんで躱したヘンドリックの頭上に、斜めから振り下ろす。横に跳び、地面を転がってなんとか回避する。


「う、うおぉ、な、中々やるじゃねぇか……」


地面を這いつくばって距離を取るなど、屈辱以外の何物でもなかった。それでも、ヘンドリックは貴族としての矜持から強がってみせた。


「なら、俺も本気を出させてもらうぜ!」


言いながら再びヘンドリックが前に出て、突きを繰り出すが、先程と比べて特別速くなってはいなかった。

むしろ、無駄な力が入っているせいで、モーションが大きくて体感では遅く思えた。


「ふぅ」


特に茶番に付き合う気の無いサラは、面倒くさそうに一つ溜息を吐いた後、その繰り出された槍の穂先を、上から軽く叩いた。


「!?」


そこはある程度腕に覚えのあるヘンドリック。すぐさまそのサラの行動が、自分の武器を叩き落とすためのものだと判断し、槍を握る手に更に力を籠め、穂先を下げまいと上向きに腕を動かした。

その瞬間を狙って、サラが素早く刃を返し、下から槍を跳ね上げる。


「なっ!?」


サラの純粋な筋力は『エンゲージリンク』の効果もあってヘンドリックのそれを超える。

その筋力に加え、自分の力も利用された結果、ヘンドリックの両腕は大きく頭上へと弾き飛ばされていた。

サラの狙いが武器を叩き落とす事ではなく、がら空きの喉元だったとヘンドリックが気付いたのは、サラの穂先が自らの首に突き立てられた時だった。


槍を引き抜くとヘンドリックは俯せに倒れた。彼の言葉通りに、兵士達の中でその槍の腕前を認められていたのだろう、まさか彼が一騎打ちで負けるとは思っていなかったらしく、次の矢を準備する手を止めて、呆然とその様を眺めていた。

槍を軽く振って血を払うと、サラは兵士達に背を向け、家へと向かって走り出す。その途中で『エンゲージリンク』を解除した。

絹で作られた太ももが露になった短いズボン、所謂ホットパンツと、キャミソール的な上着姿だけになったサラは、素早く窓を開いてその中に飛び込む。

窓の大きさはサラがギリギリ通れるくらいだった。『エンゲージリンク』を使用していれば、魔力の鎧が邪魔になって入れない。勿論、甲冑を着た兵士達も同様だ。

それでも窓を閉めてすぐに鍵をかける。

慌てて兵士達が殺到するが、エンチャントによる高い防御力に阻まれて侵入する事ができない。


サラは落ち着いて、しかし素早くリビングへと向かうと、壁際に置かれた箪笥の引き出しを開ける。

そこには、タクマがHPやMPを回復させるためのマジックアイテムを常備しているからだ。


幾つか並んだマジックアイテムのうち、MPを回復させるマジックヒーリングポーションを取り出し、陶器に入った苦みのある液体を一気飲みする。

回復量は少ないものの、無いよりマシだ。一度に量を飲むと回復量が下がる事もタクマから注意されていた。

だから、回復アイテムの使用は、一種類ごとに、一時間に一つまで、と決められている。

次にサラは丸薬を取り出し口に運ぶ。苦い。眉間に皺が寄るが、すぐに『クリエイトウォーター』で飲み水を作り、嚥下する。

これは魔力回復薬。マジックヒーリングポーションよりは回復量が多い。


今家に置いてあるのはこの二種類だけだ。完全回復には程遠いが、それでもMPが随分と回復したのをサラは感じていた。

『アナライズ』は勿論、『セルフアナライズ』も使えないので、この辺りは経験による勘に頼るしかない。

タクマの監督の下、自分のHPとMPを二桁単位で把握できるようには訓練されている。

ちなみにカタリナはHPの把握は不得手だが、MPは一桁単位で把握できる。ミカエルは両方苦手だった。

それぞれの性格が出ていて面白い、とタクマが言っていた事を思い出し、サラはくすりと笑った。


「あら、サラさんも休憩ですか?」


『疲労』や『空腹』の状態異常を改善するため、白パンを頬張っていると、カタリナが二階から降りて来た。

屋根裏部屋から北側の部隊へ魔法を放っていた彼女も、MPが少なくなって来たので回復に来たのだ。


「うん。でも急がないと、エンチャントが剥がれてしまう……」


「もう暫くは大丈夫ですわよ」


ゆっくりと箪笥から回復アイテムを取り出し、落ち着いた様子でそれを服用するカタリナ。

彼女は魔法系の職業に特化している関係で、ある程度魔力を見る事に長けている。

兵士達の攻撃では、一人当たり百回は攻撃しないと、タクマのエンチャントが効果を失うような事は無いとわかっていた。


「折角タクマ様が私達のために家を強化してくれたのに、それをあんな奴らに剥がされてしまうなんて我慢がならない」


どうやらサラは別の理由で憤っているようだった。

タクマの事は好きだし、主としても尊敬しているし、男性としても愛しているカタリナだが、時折、サラの盲目的な、信仰にはついていけなくなる事がある。


(ご主人様は刷り込みとおっしゃっていましたね)


その言葉はカタリナも朧気ながら知っていた。生まれたばかりの鳥の雛などが、始めて見た動く物体を親だと認識してそれに倣う習性だ。

生まれてからずっと奴隷商で過ごしていたサラにとって、初めて幸せをくれたタクマにそのような感情を抱いても仕方ないか、とも思っていた。


「ところでミカエルさんは大丈夫でしょうか? あの方、あまりご自身の魔力の残量を把握するの、得意ではございませんよね」


「えむぴー」


「はい?」


「エムピー。魔力は魔法の威力や効果の高さを表す能力。魔法やスキルの使用回数の上限値はエムピーと言う。タクマ様から習ったでしょう?」


「……そうでしたわね」


苦笑いをしつつ、カタリナは魔力回復薬を口に入れた。




「しまった……」


サラとカタリナが家の中でゆったりしている頃、ミカエルは自身の失態を嘆いていた。

先程まで纏っていた白い鎧は無くなり、布の服の上下に胸当てと手甲、脚甲というごくありふれた冒険者のスタイルになっていた。

一応、服も具足もかなり高性能な装備ではあるが。

カタリナが危惧していた通り、自身のMPの残量を把握できず、『エンゲージリンク』が維持できなくなってしまったのだ。

一時タクマがスパルタで訓練を課した事があった。そのお陰で、MPがゼロになっても気絶しない『根性』のスキルを獲得しているから、まだ動く事はできる。

だが、ミカエルがスキルを使用しようとすると、頭の中のどこかで、それを拒絶される感覚があった。


(MP枯渇状態だね……)


そのくらいの自己分析はできる。MPという言葉はサラドで冒険者をしていた時に魔法使いから聞いていた。

タクマも同じことを説明していたが、カタリナは知らなかった。

MPという言葉は一般的に知られていない。というのも、MP回復用のアイテムを鑑定するか、MP枯渇が原因で気絶した相手を鑑定しなければ出て来ない言葉だからだ。


あまり見ない言葉なので、それを知った者も、周りに説明するのに伝わらない可能性を考えて、別の言葉に置き換えてしまう。

ミカエルに話した冒険者のように、蘊蓄を披露するのが好きな人間でもなければ、他人にこの言葉を伝えようとは思わないのだ。


このままの状態でも戦う事はできるし、ここまで戦って来た経験から、『エンゲージリンク』が無くてもまず負ける事はないともわかっていた。

しかし、万が一という事がある。

タクマが出掛けにかけていったオートレイズの『オーバーロード』は既に効果が切れている。


「家に戻って鍵を開けて、扉を開けて、中に入って、扉を閉めて、鍵をかける……間に合うかな?」


当然、突然鎧が無くなったミカエルを見て、チャンスと考えて兵士達の士気が上がっている。

この状況で逃げる様子を見せれば、相手は是が非でも阻止したいと思うだろう。


(カタリナ君辺りが気付いてくれるといいんだけど……)


そしてミカエルははたと気付く。


(そう言えば鍵持って出たっけ?)


敵襲に対して慌てて飛び出た訳ではない。警告を与えるために余裕をもって出た筈だ。

けれど、鍵を閉めた記憶が無い。恐らく、中の二人のどちらかが閉めたのだろうけど、自分は鍵を持って出ただろうか?


今次々に兵達が襲って来る状況では、それを確認する事はできない。


(しかし彼らもご苦労な事だね)


どれだけ味方が斬られても倒されても、次々に向かって来る敵兵に、戦慄すると共に哀れみを覚えていた。

普通はこれだけ被害を被れば部隊は撤退する。

襲撃を諦めるか、部隊を再編して再攻撃を仕掛けるかはともかく、とにかく一度は撤退する筈だ。


だのに、敵兵は撤退は勿論、ミカエルに襲い掛かる事を躊躇う事さえしない。

勇猛果敢という訳ではなく、誰も彼もが悲壮感漂う表情を浮かべていた。


(後方で督戦している奴がいるね)


その指揮官が、更に上司から督戦されているのか、それともその上司に阿るために自主的に督戦しているかはわからないが、ミカエルはそう結論付けた。


(となると、ここで奮戦しても状況は改善しないね。皆殺しにする覚悟があれば別だろうけど)


いくら督戦されてると言っても、それに従うよう決めたのは彼ら自身だ。などと冷徹な判断を下せるようなら、ミカエルは王宮から逃げなかっただろう。

だからミカエルは逃げる事を選択した。突き出された槍の穂先を、盾の丸みを利用して逸らして、態勢を崩させるが刃で斬り付けず、蹴倒すだけにする。

そしてすぐさま踵を返し、家へと向かって全力で走り出す。

これまで彼らは倒された兵士を踏み越え、乗り越え、ミカエルに迫って来ていた。しかし、流石に生きている兵士を踏みつける事は躊躇われたのだろう。その分、ミカエルを追いかけるのが遅れてしまった。

その一瞬の遅れが、ミカエルとの筋力差により、覆し難い距離となる。


しかしミカエルは忘れていた。

家を取り囲む兵士達の武装は、槍と剣だけではない事を。

ミカエルが兵士から離れた事で、その忘れられていた武器が使用可能になったのだ。


「ぐっ!?」


膝の裏に痛みを感じた直後、力が抜けてそのまま崩れ落ちた。勢いは殺せず、ミカエルは派手に地面に転がる事になる。


「矢……!? しまった、それを忘れてた……!」


それでも不運だ。ミカエルが装備している脚甲は、脹脛も踵も、足首もアキレス腱もしっかり覆われている。太腿は草摺があって矢が刺さるような事はないだろう。

下半身で唯一と言っていい、矢が刺さる場所にピンポイントで命中したのだ。

勿論狙った訳ではない。適当にミカエルに向けて放たれた大量の矢の一本が、偶々刺さったに過ぎない。


「く、返しがついてる……!」


それでもミカエルの機動力が失われた事に変わりはない。


「死ねぇっ!」


追いついた兵士が槍を突き出して来た。殺気の籠った本気の一撃。

この戦いが始まって初めて、ミカエルは死の危険を感じた。

盾で何とか穂先を逸らし、剣を突き出し、兵士の喉を突き刺す。


(チャンスと考えて攻めかかってきてくれたのは助かるな)


恐らく指揮官からは、ただひたすら攻めて殺せ、というような命令くらいしか出ていないのだろう、とミカエルは予想した。

冷静に考えれば、ミカエルの足が止まったのだから、矢を浴びせかければ良いだけなのだ。


それでもこの状況が危険な事に変わりはない。

仮にカタリナが気付いて魔法で援護をしてくれたとしても、そうすると、彼女の元々の持ち場である北側が手薄になる。

南側だって、いつまでもイーティングイーターだけでは抑えておけないだろう。


自分の判断ミスが悔やまれる。あのまま兵士と乱戦状態になっていれば、このような事態には陥らなかった筈だ。


(死んで詫びるのは簡単だけど、ここでボクが死んでも何の解決にもならないね)


ならばいっそ、自分の正体を声高に叫ぶか?

しかしそれで興奮状態にある兵士達が止まるだろうか?

それこそ、死人に口無し、とより奮起させる事になるかもしれない。


カタリナを売る事も頭をよぎる。

なんだかんだ言って、やはりタクマはサラを三人の中では一番大事に思っている。

本人に聞けば絶対にそんな事は無いと言うだろうし、心底で彼は三人を平等に扱っているつもりだろう。

それでもやはり、誰か一人を選べと言われたら、タクマはサラを選ぶだろう。

それは、タクマの事を想っているからこそ、ミカエルにはわかった。


彼らに寝返りカタリナを渡す事を条件にサラを見逃して貰う。

自分は後で死んで詫びよう。


この取引に応じる可能性は高い。

これ以上の損害は相手も決して看過できない筈だ。


(さて、問題は切り出し方だね。興奮状態の彼らが聞き耳をもってくれるかどうか……)


一人、ミカエルが悲愴な決意を固めたその時、上空に強烈な光が出現した。

何事か? と顔を上げると、四つの光の球が浮かんでいた。そしてその光球から、光の槍が兵士達に向かって降り注ぐ。


「ひとが留守にしてる間に、随分と好き勝手やってくれてるじゃないか」


上空から声が聞こえた。

待ちに待った、待ち焦がれた、想い人の声だ。


眩い光に目を細めて声のした方を見ると、空中に人影が浮かんでいる。


逆光になっていて顔はよく見えない。けれど、あの声を自分が聞き間違える筈がない。


自分を恥じた。

勝手に諦めて、勝手に彼の愛する女性を自らと共に犠牲にしようとした。

そんな自分をミカエルは恥じた。


けれど、きっと彼は許してくれるだろう。


(愛する女性の上空に、別の女性をお姫様抱っこして現れるような君ならさ)


次回はタクマによる一人称で、戦後処理の話です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・肉食無計画娘のサラに同情の余地なし ・アホ貴族の三男、行動力だけはあるのだねー ・それにしてもアホ三男の我が儘に、唯々諾々と従う兵士たちも兵士たちだわな ・多勢に無勢で女三人を襲って…
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