第6話:護衛クエスト開始
今日は用事が入っているので予約投稿を試してみました。
うまくできているでしょうか?
迷宮を出たあと、魔石を冒険者ギルドへ7個売った。
全部『山羊小鬼の角』だったので、合計で14デューだ。
宿代で10、夕食に6使っているので赤字になった。
ただ一日トータルだと、レア素材が一回出ているお陰で黒字だ。
現在残金184デュー。
あ、トータルだと装備品買ってるから赤字だな。
夕食は宿の一階で摂った。
小麦のパンにジャガイモと塩漬け肉のスープ。
明らかに菜物が足りない。
キャベツはあるらしいし、カブなんかを八百屋でそのまま買えば葉もついてくる。
カブの葉は飼料扱いらしいけど。
ヒキコモリニートだったくせに菜物なんて食べてたのかって?
実家だからな。朝と夕は飯を作ってもらえてたんだよ。
例によってお盆に乗って部屋の前に置いててもらった。
ヒキコモリニートだからってジャンクフードばかりだと思うなよ。
酒はビールが置いてあった。
世間にはワイン、果実酒なんかもあるけど、基本的に高い。
まぁワインも言ってしまえば果実酒みたいなもんだしな。
ちなみにビールはラガーではなくエールだ。
元々ビールを嗜む習慣の無かった俺には違いがわからん。
知識もないので内政チートでラガーを生み出す事もできない。
飲む気もおきなかったので水で済ませた。
鍵を受け取り部屋に戻る。
外は月と星明りくらいしか灯りが無いため真っ暗だ。
街灯が無いんだよな、この世界。
一部の都市には、魔法の光を灯した街灯が存在しているらしいけど、残念ながらガルツには無かった。
夜の八時くらいまで、大通りには松明を持った警備兵が立つが、それ以降は完全に闇の中だ。
酒場や娼館の窓から漏れる光が路地を照らす程度。
部屋にランプを持ち込もうとすると金がかかるので、俺は鍵をかけ、荷物を置き、装備を外すとそのままベッドに潜り込んだ。
時間的には夜の七時くらい。
こんな早くに寝た事なんてなかったけれど、流石に肉体的にも精神的にも疲れていたのか、目を閉じたらすぐに意識が闇に沈んでいった。
こうして、俺の異世界生活一日目は幕を閉じたのだった。
二日目。外から差し込んだ光が眩しくて目を覚ました。
時間的には朝の6時ってところか。
普段なら寝る時間だな。
朝食をとって早速ダンジョンへ。
ちなみに朝食はパンとジャガイモと塩漬け肉のスープだった。
夕食と同じだって? そうだよ。
ただパンもスープもできたてだったらしく、昨日食べたのより美味く感じた。
一日分の食事を作って夜まで置いているらしいな。
昨日と変わらず山羊小鬼を狩る。
勿論、『サーチ』で他の冒険者を避けながらだ。
しかし相変わらず山羊小鬼以外が出ないな。
やっぱり下の階層に行かないとダメか。
LVも徐々に上がって来たし、そもそも最初のチート分があるから大丈夫だとは思うけど……。
なんとなく一歩を踏み出す勇気が出ない。
馬車の護衛から帰ってきたら考えるか。
昼前にダンジョンを出て、ギルドへ向かう。
魔石を6個売却して12デューを得た。
全部『山羊小鬼の角』だった。
屋台で買った鳥串を頬張りながら、都市でも最も大きな商館へ向かう。
明日からの食糧と水を買うためだ。
念のため毛布も買っておこう。
ランタン……はいらないか。夜は走らないし、見張りなら薪がある筈。
最悪魔法で何とかしよう。
保存食と飲用の清潔な水はそれなりに高かった。余裕を見て七日分買ったら90デューもした。
毛布が10デューだったので100デューも使ってしまった。
報酬が200だからいいっちゃいいけどさ。
でも乗り合い馬車の護衛って迷宮に潜るよりかなり効率良いのに、あんまり人気無いのはなんでなんだろうな?
『常識』によると……。なるほど、不測の事態が起こるからか。
迷宮で山羊小鬼を相手にしてる分には事故なんてそうそう起きないけど、襲って来た盗賊がこっちより強い可能性は十分にあるもんな。
俺より強い奴はそうそういないだろうけど。
街中ですれ違う冒険者で、気になった奴は『アナライズ』してるけど、今のところ俺より強かったのは勇者とクレインさんだけだ。
これで乗り合い馬車の護衛の中に例の勇者がいれば、とんでもない強さの敵が出てくる可能性がはねあがるが、そうでなければ大丈夫だろう。
大丈夫だから乗り合い馬車が出てる訳だし。
買ったものを持ってそのままダンジョンへ。
勿論店を出てから、人気の無い所で『マジックボックス』へ移している。
七日分の食糧と水背負ったまま戦うとか、何の修行だよ。
じゃあ夕方買えよと思うかもしれないが、それだと店が閉まってる可能性があるんだよなぁ。
時計が無いこの世界じゃ、開店時間なんて店主の気まぐれだ。
日が傾いて来て客足が少なくなったら閉めちゃうのが普通だ。
露店や屋台なら、目標の金額まで粘る可能性があるけど、店を構えて商売してる所なら、売り上げは一日ではなくて月、年単位で見てるからな。
今まで通りに『サーチ』で他の冒険者を避けつつ山羊小鬼を狩る。
日が落ちる前に迷宮を出てギルドへ向かう。
今回はこれから暫く街を離れるから頑張った、というアピールのために11個の魔石を売却する。
もう一回レア素材を出したいなーって欲望もなかったとは言えない。
出なかったけどな。
昨日と同じ宿で同じ夕食をとり、同じように部屋で眠った。
三日目。今日は乗り合い馬車の護衛クエストの日だ。
昨日と同じように朝日に起こされた俺は、一階に降りて朝食をとる。
普通の奴なら、宿のおっちゃんに、これから乗り合い馬車のクエストに行くから、暫く来れない事でも伝えるんだろうが、今の俺には無理だ。
たった二日で何言ってんだ? って顔されたらどうしよう?
そもそも二日連続で泊まったと思われてなかったらどうしよう?
そんな事思わないかもしれないけど、思われてるかもしれないと思うだけでも無理だ。
余計な事は言わない日本の店員にさえ、そんな事言えない俺だ。
この世界なら普通に思った事を口に出されてしまうかもしれない。
そんなの無理。想像するだけで無理。
連泊のシステムがあればまだよかったんだけどなー。
連泊は今日までですってのを伝えるためって理由があれば、俺でもそのくらいは言える。
だって必要な事だから。言わない方がダメだから。
「お世話になりました」
という訳で、連泊だろうが一日だけだろうが、通じる挨拶をして俺は宿を後にする。
おっちゃんも特に何も言わず、鍵を受け取っただけだった。
宿を出た俺はギルドに向かった。
ギルドの前には馬車が二台止まっていて、冒険者風の人間が何人か周囲にたむろしている。
あれが護衛対象の乗り合い馬車。片方の小さい馬車は護衛の冒険者が乗る用だな。
「フィクレツの街までの乗り合い馬車ですか?」
俺は大きな馬車の傍に立っていた、御者風の男性に話しかけた。
「ああ。そうだよ。乗るなら1000デューだ」
「護衛のクエストを受けた冒険者です」
そう言ってリュックから木札を取り出し、手渡す。
「おう、よろしくな。そっちの馬車に乗ってくれ」
予想通り御者は小さい方の馬車を指差した。
軽く頭を下げて、俺はそちらへ向かう。
馬車の周囲にいた冒険者達が俺をじろりと睨む。
装備はこの街で買える普通のものだな。
ひょっとしたらエンチャントくらいされてるかもしれないけど。
とは言え俺より皆良い装備だ。
革の服に布のズボンなんて、一般人でも武装しろ、と言われたらもう少しまともな装備を持ってくるだろうな。
一応弓をかついでショートソードを佩いてるけど、そんなの猟師もそうだしな。
とりあえず俺もこれからの仕事仲間を『アナライズ』で確認してみる。
名前:エクレルムト
年齢:18歳
性別:♂
種族:人間
役職:冒険者
職業:重戦士
種族LV13
職業LV:戦士LV8 重戦士LV6
名前:グルデュフカ
年齢:68歳
性別:♂
種族:ドワーフ
役職:巡礼者
職業:神官戦士
種族LV16
職業LV:戦士LV11 神性術士LV12 神官戦士LV3
名前:オンデノトュエ
年齢:20歳
性別:♂
覚えにくい!!!
ジャックとかジョンとかもっとシンプルな名前にしとけよ!!
もう武器にちなんだ名前にしよう。
若いイケメン風の冒険者はソード。
髭をたっぷり蓄えたいかにもなドワーフはメイス。
ひょろ長い印象の細身の男はランス。
首くらいまで伸びたくせ毛のせいで陰気な印象を受ける男はワンハンド。
紅一点の美少女はエストック。
こっちから話しかけなければ名前を呼ぶ機会もないだろうし大丈夫だろう。
LV的には初心者を抜けて、中級にさしかかろうって辺りか。
ちなみにドワーフは人間の3倍くらいの寿命らしいから、メイスは人間に直すと22~23歳ってところだな。
そういう意味でもこの中では最年長だ。
まぁ、実年齢だと俺が一番上なんですけどね。
ちなみに俺もこの二日間でそれなりに成長している。
名前:佐伯琢磨
年齢:28歳(肉体年齢18歳)
性別:♂
種族:人間
役職:異世界からの訪問者
職業:弓使い
状態:平静
種族LV10
職業LV:戦士LV6 弓使いLV8 剣戦士LV2
HP:249→376
MP:279→397
生命力:166→249
魔力:185→262
体力:155→234
筋力:155→207
知力:179→250
器用:156→237
敏捷:147→202
頑強:180→232
魔抵:193→243
幸運:104→109
装備:ショートボウ 革の服 布のズボン 革のブーツ ショートソード 鉄の矢
保有スキル
神々の祝福 技能八百万 魔導の覇者 異世界の知識 世界の常識
こんな感じだ。
幸運は完全に種族LV依存だな、これ。
ていうか普通の人間は幸運って成長しないんだってさ。
うん? 筋力と知力の差が広がったな。弓で撃ちまくる戦いだった筈だけど……。
それとも『クリエイトウェポン』で矢を作っていたから、知力の成長が良かったのか?
成長がLVごとに一定なのか、レベルアップまでに行っていた行動で変わるのかもわかっていないからなぁ
まぁあまり伸びなかった筋力や敏捷だって普通の人と比べたら相当高いんだ。あまり細かいことは気にしないでおこう。
頑強と生命力以外はクレインさんを抜いてしまったな。
勇者はなんか能力がピーキーだったから参考にならん。成長率も良さそうだし。
ただステータスで追いついても、装備やら経験やらスキルやらでまだまだ勝てないだろうけどね。
戦う気もないけど。
「良かった、『弓使い』が来てくれた!」
本当に嬉しそうに言って近づいて来たのはソードだった。
うう、さわやかイケメンオーラが出ている。
間違いなくこいつリア充だ。
てかなんで俺が『弓使い』だってわかる!?
まさか『アナライズ』かそれに似たスキルが使える!?
「見ての通り今回みんな近接戦闘ばかりだからさ。遠距離戦闘ができる人が来てくれて助かったよ」
どうやら、俺の背負っている弓を見てそう判断したそうだ。
ショートボウとショートソード持ってたら、普通は『弓使い』だって思うわな。
弓がサブウェポンなら近接武器にもっとマシなのチョイスしてる筈だし。
少なくとも、獲得職業の中に『弓使い』があると予想できるだろう。
俺のステータスが見えてるならもっと慌てるとか、何かしらの反応がある筈だ。
ステータスの高さだけでなく、保有スキルがヤバすぎるからな。
「護衛のクエストは防衛と迎撃がメインの戦闘になるからね。遠距離攻撃ができるのは重要なんだよ」
じゃあなんでお前は近接武器なんだよ。
しかも盾持ってるワンハンドと違って、お前の武器、両手剣じゃん。
守る気ねぇじゃん。
なんて事は言える筈がなく。
「ど、どうも……」
なんて短く答えるしかできなかった。
うぅ、情けないぜ……。
「俺はエクレルムト。『剣戦士』じゃなくて『重戦士』だ。攻撃には期待してくれていいぜ。護衛クエストもそれなりに経験があるしな」
言って爽やかに笑いながら手を差し出してくる。
うっ、眩しい……!
「た、タクマです……。ご覧の通り『弓使い』です。護衛クエストは初めてなので、よろしくお願いします」
「おう、任せてくれていいぜ!」
俺の手を握り返しながら、自分の胸を叩くソードは本当に頼りになりそうだった。
これは、マジでモテるだろうな……。
あと、さりげなくオタクっぽいネタを混ぜてみたが、通じる訳がなかった。
わかってはいたけど、スルーされたみたいでちょっと悲しくて恥ずかしいぜ。
「乗客が揃った。そろそろ出発しよう」
御者が近づいて来てそう言った。
俺の後にも何人か人が来て馬車に乗り込んでいた。
運営している場所によるが、ガルツからフィクレツに出ている乗り合い馬車は事前予約が必要だ。
乗せられる人数には限りがあるし、あまり多いようなら馬車の台数を増やさないといけないからな。
1000デューも払ってすし詰め状態とか嫌だろうし。
他の冒険者にも頭を下げつつ、俺も馬車に乗り込む。
俺を含めて五人だけだが、馬車そのものが小さいし、それぞれの荷物もあるので結構狭い。
全員が横になる事はできないが、座るくらいはできるから、まぁ良しとしよう。
そしてゆっくりと、馬車が動き始めた。
次回から護衛クエストの話になります。
迷宮で黙々と戦うだけじゃありませんよ。