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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第59話:ジョン・ディールという男

宣言通り今週中に投稿できました。

前回の続きですね。


カタリナとサラを家に残して外に出る。

こちらに近付いて来る一団へ向けて歩き出した。


「あー、そこで止まって貰っていいですか? その縄張りからこっち、俺の私有地なんで」


相手の方が先に敷地の境に到達したので、俺はそう声をかけた。

意外にも、その場で立ち止まる一団。

少しは話が通じる相手なのかな?


「貴様がカタリナを買った奴か」


土地の境で立ち止まっていた貴族達に俺が近付くと、開口一番、貴族はそう言った。

あ、これ話通じないやつだ。


「そうですが?」


「あれは俺のものだ。返してもらおう」


おいおい、せめて交渉の真似事くらいしろよ。


「おっしゃっている意味がわかりませんね。彼女は俺が正規の手続きを経て購入した奴隷です」


「あれは元々高貴な血筋だ。お前のようなどこの馬の骨ともわからん平民ごときが手を出して良い女ではない」


「奴隷として売りに出されている以上、貴賤は無いと思いますよ。まぁ、値段には多少反映されるでしょうが」


そして俺は貴族を見てにやりと笑い、


「何人もの主を経ていたせいか、俺のような平民でも購入できましたけどね」


「ぐぬ……」


俺の言葉に顔を顰める貴族。多分、アレな事を想像したんだろうな。処女を有り難がる文化ではないとは言え、それでも他人に抱かれたという事実は、嫉妬と悔恨の理由になる。

まぁ、性的な経験が無い事を俺は知ってるんだけどな。


「彼女はこれまでにも何人もの相手に買われてきました」


敢えてそういう言い方をする俺。顔を真っ赤にして、肩を震わせる貴族。


「なのに何故あなたは買わなかったのですか?」


「それは……」


この貴族、ジョン・ディールは、相手の家を罠に嵌めてまで、自分が実験を握ろうとした男だ。

それは高い自尊心の現れだ。立場の弱い婿養子、という将来に我慢ができなかったんだろう。しがない男爵家の三男、という出自も不満の種だったかもしれない。


それを解消するためには、圧倒的に優位な立場でカタリナを手に入れる必要があったんだろう。


お家再興のために奴隷に身をやつした婚約者を救ったとなれば、それは精神的優位に立てそうなものだが、カタリナの場合そうもいかない。

一年ごとの契約の更新。しかも更新するかどうかを決める権利はカタリナが持つ。

カタリナは主従では従う立場でありながら、その実、主導権は彼女が握っている。


カタリナを手に入れていながら、しかし常に彼女の評価に怯える生活など、ジョンには耐えられないだろう。

まだただの婿養子だったなら、多少立場が低くても、婿養子だから仕方ない、と誤魔化す事もできただろうが、奴隷の主人となってしまってはそうもいかない。

俺は主人なのに何故こいつの機嫌を伺わなければならないのか、と煩悶とする事になるだろう。


ジョンのように自尊心が高く、尊大で傲慢な、絵に描いたような貴族然とした性格をしていれば尚更だ。


ついでに言えば、購入する際に断られたら、という恐怖もあったに違いない。


「まぁ、カタリナとの契約はとりあえず一年です。一年後に、俺がカタリナを買った奴隷商に足を運んでください」


その時に買えるかどうかはわからないけどな。

ああ、それもあってこうしてカタリナを買った奴の所へ脅しに来てるのかな?

確かに奴隷の移譲は主と移譲先の同意があれば可能だけど、扱いが悪いとすぐに訴えを起こされるし、カタリナなら間違いなく、一年後に契約破棄してジョンの元を去るだろうな。


そもそもこいつは、クォーリンダム家が没落したのが、自分の策略によるものだとカタリナにバレている事知ってるのか?

いや、多分知らないんだろう。知ってたら、例え万金を積まれても、カタリナがジョンの奴隷になる事はないってわかるだろうし。


そもそも騙した事がバレたから、カタリナの父親に、ディール家との負債の折半じゃなくて、領土の返還を選択されたんだから、カタリナにもバレてると考えるのが自然だろうに。


「まぁまぁそのように頭ごなしに断らなくとも良いではありませんか」


そこで、壮年の男性が俺とジョンの間に割って入った。

柔和な表情をしているが、目の奥が笑っていない。

成る程。俺が素直に応じればそれでよし。今のように色々と理屈をつけて断るようなら、こいつが交渉に出て来る手筈だったのか。


「あなたは?」


「申し遅れました。わたくし、ディール家顧問弁護士のスリノレンと申します」


自己紹介をしつつ頭を下げるスリノレン。

顧問弁護士か。偏見だけど、胡散臭い肩書だよな。

だって弁護士って法の正当性を守る人間だろ? それが一企業やらに肩入れするってどうよ?

まぁ、基本は企業に法を遵守させるために居るんだろうけどさ。知らないうちに法律違反をしてしまわないように、とか。


さておき、この国の顧問弁護士は非常に胡散臭い商売だ。

そもそものこの国の裁判は、被告と原告が法廷で舌戦を繰り広げ、裁判官を納得させる、というものだ。

弁護士とは原告や被告の代わりに、法廷で戦う人間であり、法律の知識は勿論だが、何より弁が立つ。

この国には推定無罪とかないからな。屁理屈だろうとなんだろうと、裁判官を納得させれば勝ちなんだ。

勿論、動かぬ証拠があれば、それを持ち出すのが手っ取り早い。

けれど、科学捜査なんて導入されてないこの世界で、動かぬ証拠を見つけ出すのがどれだけ難しい事か。

多くの証拠は状況証拠だったり、第三者による証言だったりするから、捏造や冤罪なんて日常茶飯事だ。


多くの弁護士は依頼人の利益のために動く。

そして顧問弁護士は雇われている商会や貴族のために動く。

彼らの望みを叶えるために、法の穴を突き、時に法を犯しながらそれを覆す。そのために磨いた技術を振るう。


胡散臭くない訳がない。


「確かにカタリナ嬢は奴隷登録されており、あなたがそれを購入された事は事実です。しかし、果たしてそれは彼女の本心でしょうか?」


「というと?」


「彼女はとある理由から領地を没収されており、そのお家再興のために奴隷に身をやつしております。ならば、現在の彼女はその立場が本意ではない筈。奴隷として屈辱に耐える必要が無ければ、彼女は現在のような環境に甘んじる事はないでしょう」


「そうでしょうね」


俺の言葉にスリノレンはにやり、と口の端を吊り上げる。


「今は他に手段が無いため、彼女は奴隷としての立場を受け入れておりますが、他にお家再興のための手段があるとなれば、話は別では?」


「つまり、カタリナに選ばせろ、という事ですか?」


「いえいえ。選ばせろ、などと強く言うつもりはありませんよ。我々は話し合いに来たのです。カタリナ嬢とお話させていただけませんか?」


「…………」


「カタリナ嬢が我々の申し出を断るようでしたら、この場は退散させていただきますので」


俺が考えるふり(・・)をすると、スリノレンがそう言って頭を下げた。

成る程。目的を達成するために、一時でも屈辱に耐える事のできる人間か。

まともに相手をすれば厄介なんだろうけれど、しかし甘い。


スリノレンの言葉から、俺はジョンが強気でやって来た理由に合点がいった。

これまでのカタリナの主が、しがない男爵家の三男では太刀打ちできない相手だったから、というのも勿論ある。

けれど、ジョンは待っていたのだ。カタリナの心が折れるのを。


これはカタリナに、自分が領地没収の原因となった事を知られている事を知っているな。

知られていてなお、カタリナを自分の足元に跪かせるために、ジョンは今まで耐えていたんだ。

自分の目的を達成するために、今の立場に追いやった現況に頭を垂れなければならないなんて、カタリナでなくともかなりの屈辱の筈だ。

それを見て、悦に浸りたいのだろう。


どこまでも腐ってやがんなぁ。


奴隷としての年齢はともかく、お家再興を果たし、その後クォーリンダム家を存続させていくためには、既にカタリナの年齢はギリギリだ。

しかも今まではディール家に手出しされない相手を選んで買われていたのに、今回は持ち家こそあるが、大して後ろ盾も影響力もない(ように見える)新米冒険者を選んだ。

事情を知らない人間から見れば、カタリナが切羽詰まっているように映るだろう。

事実、俺に買われた時点ではそうだったに違いない。


焦っている。追い詰められている。

それが、ジョン達から見たカタリナの現在の印象だろう。


ここで手を差し出せば、仇敵のものでも縋ってしまうんじゃないかと思える程度には。


「まぁ、いいでしょう。けれどいくつか約束してください。カタリナと話をするのはスリノレンさん、貴方だけです」


「わかりました」


スリノレンが一度ジョンを見ると、彼は無言で頷いたので、スリノレンはこの条件を了承した。


「当然、誰もこちらの敷地に入らないでください」


「それは勿論」


「では呼んできますので、全体的に二、三歩下がってお待ちください」


そして俺は屋根裏部屋で様子を窺っていたカタリナを連れて戻って来る。


「という訳でして、こちらのジョン様の側室となっていただけるのでしたら、我々はクォーリンダム家復興のために支援する用意があります」


側室と来たか。婚約者って普通、正室になる予定の相手に使う名称だよな。


「まずはディール家分家としてジョン様が独立されます。その後、モールズ子爵の養子となり、カタリナ様を側室に迎え入れる、という手筈ですね」


ジョンがクォーリンダム家に婿入りしちゃうと、カタリナを正室にしないといけなくなるからな。反対に、ディール男爵家分家の側室にカタリナが入るとなると、ジョンがクォーリンダム家を継ぐことはできない。

だからまず、現在の当主の養子になる事で、ジョンがクォーリンダム家を継ぐ事ができるようにしたんだ。


迂遠ではあるけれど、筋は通っている。誰がどう見てもお家乗っ取りだけど、当のクォーリンダム家が了承しているならどこからも文句は出ないだろう。

矢面に立たされるだろうディール男爵家も、分家がやった事、で責任転嫁をする事もできるしな。


「どうでしょうか?」


「お断りいたしますわ」


カタリナの即答に、スリノレンの笑顔が凍り付く。


「なぜ……でしょうか?」


「何故? そんな事もわからない方が顧問弁護士を務めているんですの? 男爵家の程度が知れますわね」


顎をしゃくって鼻を鳴らすカタリナ。

スリノレンの額に青筋が浮かび、ジョンの顔が真っ赤に染まる。


もうちょっと煽れば、簡単に爆発しそうだな。


「しかしあなたは貴族の令嬢という立場から、奴隷にまで堕ちてしまった身。今の生活が苦しくありませんか? かつての裕福な暮らしに戻りたいと思いませんか?」


「確かに奴隷という立場は屈辱ですけれど、けれど生活が苦しいという事はありませんわ。お家再興という目的に向かって邁進している現在、むしろ屋敷でお茶を嗜んでいた時より充実しているとさえ言えますの」


まぁ、既に食事はクォーリンダム家の水準を超えているそうだし、綿入りの布団と羽毛布団は貴族でも所有していない素晴らしい寝具だと絶賛していたからな。


「そ、そのような強がりはやめた方がよろしいですよ。貴族であるのだから、誇りを持つ事は大事でしょうけれど、しかし、妥協する事も大事で……」


「生憎ですけれど、ご主人様には大変よくしていただいておりますわ。お給金もそれなりの額をいただいておりますし。このままなら五年後にはお家再興が叶いそうですわ」


「五年!」


失言だ、とばかりに食いつくスリノレン。


「五年経ってお家再興を果たし、奴隷から解放されたとしても、あなたに婿入りする者は存在するでしょうか? ジョン様はあなたを大変愛していらっしゃいますが、流石にそこまで想い続けられるかと言えば、否と答えざるを得ませんよ?」


ノリノリで年齢を根拠に脅してくる。


「そうですね。その時はご主人様に子種を仕込んでいただきましょう」


「き、貴族が平民の血を受け入れるというのですか!?」


「庶子が後を継いだ貴族家も数多く存在しておりますわ。何も問題ありません」


「おい、いい加減にしろ!」


スリノレンの説得が全く上手くいっていない事に焦れたジョンがついに口を挟んだ。

スリノレンの顔が蒼褪める。よし、約束破ったな。


「お前はとっとと俺の元に来ればいいんだよ! みっともなく土下座をしながら、どうかわたくしを貰ってくださいと懇願するのが筋だろう! それをなんだ、あーだこーだと理屈を並べて! 交渉のつもりか!? 少しでも有利な条件を引き出したいのか!!? 卑しい女め!」


「貴方に下げる頭は持ち合わせていませんわ。それと、ご主人様との約束では、顧問弁護士以外は口を挟まないのではなかったのかしら?」


「貴族の俺が下賤な平民との約束を守る必要は無い! おい、男を殺して女を捕えろ! 俺は貴族だ。平民一人殺したところで罪に問われる事は……」


ジョンが背後の兵士たちに命令を下そうとしたところで、俺はカタリナの腰を抱き寄せ、頭をしっかりとホールドし、その唇にキスをした。


「んっ!!?」


驚きに目を見開き、体を強張らせるカタリナ。


「ん、ちゅ、ふ……」


しかしそのまま唇を重ね続け、更にぷっくりとした肉厚の唇の間へ舌を滑り込ませると、カタリナから次第に力が抜け、全てを俺に委ねるようになった。


「んちゅ、ちゅぷ、ちゅ、ん、…………ふぅ……」


サラのそれとは違う、成熟した女性の唇と口腔内の感触に、思わず作戦を忘れて楽しんでしまったけれど、固まっていたジョン達が動きそうな気配があったので、俺は唇を離した。

二人の口から唾液が糸を引き垂れた。まるでそれは、キスの終わりを惜しんでいるようだった。


「な? こいつは本心から俺といる事を望んでるんだよ」


そう言って、俺はカタリナ首輪を指し示す。

俺とのキスが首輪の強制力によって行われたものだったなら、隷属の首輪は赤く発光していただろう。

しかし、カタリナの首輪は何の反応も示していなかった。


それは、彼女が俺とのキスを受け入れたという証拠でもあった。

少なくとも、ジョン達からすれば。


種明かしをすると、第七階位の超理魔法『チャーム』によって俺への好意を抱かせ、それを『ダブリングスマイル』で倍増させたんだ。

『チャーム』は対象に術者に対する『恋慕』と『従属』を抱かせる魔法だが、効果時間が短い。しかし、突然無くなるのではなくて、時間経過で徐々に消えて行くタイプのものなので、『ダブリングスマイル』で倍増させておけば、持続時間が伸びるという寸法だ。

多少反則だけど、俺は事前にカタリナに彼女の意思を確認している。だからまぁ、許される範囲だろう。


肩を抱き、抱き寄せると、カタリナは顔を耳まで真っ赤に染めて、俺の胸に顔を埋めた。

既に『チャーム』の効果は切れている。にも関わらずこの反応。純粋に恥ずかしいのか、それとも、本当に俺への好意が芽生えたのか。


これまでラッキースケベで積み重ねた印象度を考えると、恐らく後者だろうとは思う。


「それで? 誰が今の生活に不満を抱いているって?」


この言葉にスリノレンは完全に沈黙した。しかし再起動を果たしたジョンは違った。

自分の思い通りにいかなくて苛立っているのもあるんだろう。


「う、うるさい! 平民の分際で、下手に出ていれば調子に乗りおって!」


誰がいつ下手に出たんだよ。


「おい、いいからとっととコイツを殺せ! 平民一人、なんとでもなる! 幸いここなら目撃者も居ないだろうしな! 消す手間が省けて丁度良い!」


目撃者が居たら控えるんじゃなくて、口封じするつもりなのかよ。

こいつ、マジで駄目な貴族の中でも相当アレな部類だな。


後ろに控えていた兵士達が、あまり気が進まないような足取りで前に出る。

ジョンの馬鹿さ加減に呆れている、というよりは、なんで脅しに屈さねぇんだよ、面倒だなぁ。みたいな反応だ。

こいつらも大分毒されてんな。これまでも、このバカボンの命令で好き勝手してきたんだろうな。


スリノレンも苦い顔をしているだけで止めようとしないしな。


「カタリナ、下がってろ」


ジョンの目的はカタリナなので、彼女が危険に晒されるような事はないだろうけど、念のために注意する。

人質にされても、相手はカタリナに危害を加えられないんだから無視しても大丈夫だろうが、そうするとカタリナの俺への好感度が著しく下がるだろうからな。

テロリストには屈しない、って考えもあるにはあるみたいだけど、国際常識と言える程に浸透してる訳じゃないからなぁ。


さておき、兵士たちは装備こそ整っているが、おしなべて種族LVが低い。

全員10前後だ。ステータスで言えば、サラにも劣る奴がちらほらいる。


「話し合いをするんじゃなかったのか? 自分達が不利になったからって暴力に訴えようだなんて野蛮な考えだな」


とりあえず先制攻撃をしてもらおう。という訳で挑発してみる。


「黙れ! これは躾けだ! 分を弁えない平民に世界の理を教えてやる!」


恐竜並みの釣りやすさだな。手間がかからなくて助かるが。

兵士の一人が剣を抜き、俺に向かって振り下ろす。その際に浮かんだ嗜虐的な笑みは印象的だったな。勿論、悪い意味で。


「え?」


「なっ……!?」


特に武装している訳でもない俺に向けて兵士が剣を振るう。その後の惨劇を期待していたジョンだが、間抜けな声を漏らす結果になった。


俺が素手で相手の剣を受け止めたからだ。

まぁ、俺と兵士のステータス差ならこのくらいできて当然だ。この兵士の筋力で俺の頑強を抜こうと思ったら、せめて魔法の武器が必要だ。


「横暴な主人にとりあえず納得してもらうため、適当に斬り付けるようなものじゃなくて、しっかりと腰の入った一撃だ。しかも刃の軌道は俺の頭へ直撃するコース」


攻撃の分析を口にすると、兵士の顔が蒼褪めて行く。


「殺す気の一撃だったって事で、対応させて貰うぞ? なに、安心しろよ殺しはしないよ。俺はお前たちと違って優しいからさ」


その時俺が浮かべた笑みを見たカタリナ曰く。

全然優しそうには見えなかった。

だそうだ。




例え武装した正規の兵士11人が相手でも、このステータス差なら何の問題も無く撃退できた。

魔法を使うと後々面倒だと思ったので、基本的には素手だ。拳闘士グラップラーのLV上げにも貢献して貰った。


宣言通り誰も殺していない。気絶させたり足腰立たなくさせると、片付けが面倒なので、自力で帰れる程度の元気は残してやった。


「お、覚えていろよ! 上級国民たる我ら貴族に逆らうとどうなるか、重い知らせてやるからな!!」


連れて来た兵士が瞬く間に全滅させられてしまったジョンは、そのような捨て台詞を残して逃げ去った。


「ご主人様……」


ジョン達の一団が小さくなった頃、カタリナが声をかけた。声も瞳も、不安に揺れている。


「気にするな。お前を買った時からある程度のトラブルは織り込み済みだし、この程度、危機という程のものじゃない」


「けれど……」


「俺がお前といたいと望み、お前が俺と一緒にいる事を選んだ。何か問題があるか?」


「……その言い方は、ずるいですわ」


言うカタリナの頬が赤い。目を逸らし唇を尖らせるその様子は非常に愛らしかった。


「まぁ、逆恨みである事無い事言いふらされて国を動かされても面倒だ。先に手を打っておこうか」


「と言いますと?」


「言ったろ? この土地を治める領主でもなく、王族なんかに関係がある訳でもない、しがない男爵家の三男程度、何とかなる伝手があるって」


勿論俺の頭に浮かんでいるのは、シュブニグラス迷宮の入口に居るクレインさんだ。

建築ギルドのレセンダさんも、それなりの発言力がありそうだし。

ついでに言えば、すっかり忘れていたけれど、俺は国から勲章も授与されている。

更に、エレニア大森林のエルフには多大な貸があるんだ。


おっと、喧嘩を売った相手に同情したくなるくらい、強力なカードが揃っていたぞ。


もう少しディール家関係のエピソードは続きます。

感想でエレンの事に言及してくださった方、エルフの話が最後にちらっと出ましたが、エレンはまだ出ませんので、あらかじめご了承ください。

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