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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第53話:奴隷少女の独白

遅くなりました。

長くなりました。

サラ視点の話です。

感想をくださった方、評価してくださった方々、ありがとうございます。

私は奴隷だった。

奴隷の両親に生まれたので、生まれた時から奴隷。

なぜ? とか、どうして? と思っても、この国はそういう事になっているんだから仕方がない。

両親の主は、奴隷の恋愛と結婚を容認してくれるくらいには寛容な人だったようだけど、その子供を養う程お人よしではなかった。

両親の主が奴隷として欲したのは両親であり、私ではなかったからだ。

特別両親の主がひどい訳じゃない。

この国のヒトにとっては当たり前の感覚だ。

奴隷が子供を作る事さえ許さないヒトも居るのだから、そういう意味では、両親の主は変わった考えの持ち主だったんだろう。


ともかく私は生まれてすぐに奴隷商に売られた。

だから私は両親の顔も、両親の主の事も知らない。

ただ、私が物心ついた時、奴隷商からそのように教えられただけだ。


奴隷商館では必要最低限の教育を施される。

言葉と常識。そして奴隷としての心得を教え込まれる。

必要以上に賢いと奴隷は扱いにくいけれど、何も知らない奴隷もそれはそれで扱いにくいからだ。


その過程で、私は自分の人生が既に終わっている事を知る。

あとはせいぜい、あまり無茶を言わない主人に買われる事を願うしかなかった。


私のような生まれた時から奴隷である事は珍しく、大抵は人生の途中で奴隷に落ちてしまうものらしい。

そうしたヒトから、私はこの奴隷商館の暮らしが、最低よりワンランク上程度である事を教えられた。


犯罪奴隷を除けば、奴隷にもある程度の権利が保障されている。

奴隷を購入する際、奴隷の方から断る事もできるそうだ。

だからあまり奴隷商での待遇が良過ぎると、誰も買われていかないから、奴隷商は最低限の保障しかされないのだと、他所から買われて来た奴隷のヒトに聞いた。


それを聞いて、私は少し気が楽になった。

今の状況より悪くなる事はないようだったからだ。


そして12歳の誕生日を迎えて、私はいよいよ売られる事になった。


私の目の前には一人の男性が居る。

黒目黒髪。時折店で見た、線の細い貴族のヒトとは違い、生命力が漲っている顔立ちだった。

男くさい、と言うのだと、別の奴隷から聞いた。

しかしその奴隷のヒトも含めて、あまり悪い印象を抱いた人は居なかった。

それは、私も同じだった。


奴隷商に所属する女性の奴隷が全員集められた。どうやら件の男性はかなりのお金持ちらしい。

ああいう男性に買われるのが、奴隷として幸せになれる道だ、と別の奴隷が息巻いていた。


若い男性が女性の奴隷を所望する理由なんて一つしかない。

見事に寵愛を得て、その後も安泰に暮らすんだ、なんてはりきっていた。


そういうものか、と思っても、私は特に何も思わなかった。

私の世界はこの奴隷商の中だけ。

外の世界の知識や常識を得ても、それはただ知識として所有しているだけ。

自分で体験した記憶じゃない。


だから、ここよりマシなら、私はどこでも良かった。

いやらしい事は、ちょっと嫌だったけど、それでもよく商館で見た、でっぷりと太った年配の男性に買われるよりはマシだと思った。


奴隷商から条件が伝えられると、多くの奴隷が顔を顰めた。


ダンジョンでの探索。

それは危険を伴う仕事だ。多くの奴隷が、この時点で拒否を示した。

私はどっちでも良かった。

奴隷として生きるのも、ダンジョンでも死ぬのも、別にどうでも良かった。


あまりにも希望者が少なかったせいか、特に拒否をしなかった私も連れていかれた。


男性は更に条件を付けて来た。

家がある事は聞いていたけれど、それが城壁の外だと言うんだ。

ダンジョンに潜るだけでも危険を伴うのに、更に危険な城壁の外で寝泊まりするそうだ。

当然、この段階で更に二人が彼に買われるのを拒絶した。


残ったのは私を含めて四人。

獣人が一人、エルフが一人、私と同じ人間種が一人。

家事などもするらしいけど、ダンジョンに潜るとなると、身体能力の高い獣人、魔法に長けたエルフが選ばれるだろうか。

もう一人の人間の奴隷は、戦闘職業を持っているという話だから、それを聞けば彼女を選ぶかもしれない。

私はただの頭数。

最初、この商館に居る女性奴隷全員を集めたくらいだから、相当な予算を用意して来ているんだろう。

だったら、ここで良い印象を与えておけば、今後も良い関係でいられるかもしれない。

そう考えて、奴隷商が私も連れて来たに違いない。

条件に合致する奴隷が多ければ、その分、商館に対する信頼度が増すそうだから。


意外にも選ばれたのは私だった。

獣人は寿命の関係で活動期間が短い。わかる。

エルフは逆に寿命が長いので育てるのに時間がかかる。わかる。

同じ育てるのなら、年齢の若い私の方が良い。まぁ、わかる。

けれど、それでどうして私?

そんなにお金を持っているのなら、もっと条件に合う奴隷を、他の街に行ってでも探して来れば良いのに。


けれどまぁ。

どうでも良かったので、私は特に拒否しなかった。


色々と条件をつけられ、奴隷契約を結ぶ。最後に新たな主から契約内容の確認があった。

私に拒否権なんか無いんだから、気にせず進めれば良いのに。


「答えてくれ」


反応しないでいたら、主様からそう要請があった。

まだ奴隷じゃないので命令に従う必要は無い。

そう考えて反応しないでいたら、主様も諦めたのか、特に反対しないようなので契約を結ぶ、とか話を進めていた。

そう、それで良い。仕事はちゃんとするから、それ以外の事で煩わせないで欲しい。


奴隷の証である、隷属の首輪がつけられて契約完了。


そして私は主様に買われていった。


いつもの薄い布一枚の奴隷服じゃなくて、奴隷商が用意した普通の服を着て主様について行く。

後で聞いた話だけど、この服は主様が奴隷商にお金を払って用意させた服だそうだ。

機嫌を取って私を取り込むつもりだろうか。

命令すれば良いんだから、そんな事しなくても良いのに。


ご飯を食べてから主様の家へと向かう。

ご飯は街で食べた。奴隷は床に座るか、主人の背後に立つ。奴隷と主人が同じテーブルで食事する事は無い。

そう習っていたのだけど、主様は、私を椅子に座らせて、自分と同じ料理を、同じテーブルで食べさせた。

最初は戸惑っていたけれど、運ばれて来た美味しそうな料理に、そんな事は気にしなくなってしまう。


よく噛んで食え、と言われた。

言われなくても、しっかりと味わうに決まってる。

ひょっとしたら、こんな贅沢、これで最後かもしれないんだから。


おかわりも許して貰えた。ひょっとしていい人なんだろうか?

いや、騙されては駄目だ。男なんて女性といやらしい事をする事しか考えていないと、他の奴隷が言っていた。

こうして私に優しくしておいて、警戒が薄くなったところを狙っているに違いない。

奴隷にはそういう行為を拒否する権利が与えられているけれど、ひょっとしたらこの食事はその対価なのかもしれない。

あれだけ豪華な食事を食べさせてやったんだから、体を開くくらいしろ、とか。

あ、だとすると食べたらまずかったんじゃ?

でも手が止まらない。どんどん料理をお腹の中に納めて行く。

うーん、なるようになるかな。

この人にいやらしい事をされるのは、嫌だけれども、最悪って訳じゃない。

美味しいごはんと引き換えなら、何とか我慢できる。


食べたら私の装備を買いに行くと言う。

そう言えば、ダンジョンに潜るという話だった。

とは言え奴隷も安い買い物じゃない。簡単に使い潰したりはしないだろう。

奴隷の購入代金が、使い潰してしまっても惜しくないくらいのお金持ちだったら知らないけど。

その時は、私の運が悪かったんだと思おう。

それで死ぬならそれまでなんだ。

結局、私の人生は私のものじゃない。

生まれた時から別の誰かのものだった。

それが、今はこの主様のものになったに過ぎない。

だったら、その人生が続くのか終わるのか。それは主様次第だろう。


え?

何が起こったの?

主様に人気の無い場所に連れて行かれた。

もしかしてそういう行為をするのかと、ちょっと怖くなった。

流石の私も、外でそういう事に及ぶのは、抵抗があったからだ。


瞬きの間に景色が変わっていた。

ガルツの街中だったのに、突然草原に居た。

しかもここはルードルイの近くだと言う。


納得しろと言われて納得できるものじゃない。

けれど、起きてしまった以上は受け入れるしかない。


ひょっとしてこの人、凄い人なんじゃ……。


装備を買うだけじゃなくて、私用に専用で作るとかいう話になった。

どうして奴隷にそこまで? しかも聞いていた限りだと、決して安くないお金が動いていた。


再び突然景色が切り替わる。

木製の家の中だった。


「ここが俺の家だ」


言われても、何も反応できない。

奴隷商で聞いた話だと、この家はガルツの外れに建っているそうだ。

ガルツからルードルイへ一瞬で移動して、その後、ルードルイからガルツの外れの家に一瞬で移動した。

この家も、綺麗だし片付いているし、結構広い。


ひょっとしなくてもこの人、凄い人なんじゃ……。


更に私の理解を超える出来事が続く。

仕事をする事は聞いていたけれど、まずは主様がやって見せてくれるそうだ。

それを覚えるのは当たり前だけど、私一人でやるのは二週間後だと言う。

随分と準備期間をくれるみたいだ。


「変なもの作られるよりよっぽどいい」


それはそうなんだろうけど、奴隷商で習った奴隷の常識からあまりにもかけ離れていて、私は戸惑う事しかできなかった。


それからも驚きの連続だ。

火を点けるのに魔法を使うし、水も魔法で出していた。

聞いた事の無い調理法に、見た事の無い料理。

そして出された料理がまた美味しかった。

え? これ来週から私が作るの? しまった。お肉に夢中で手順を見て無かった。

来週は教えながら作ってくれるそうだから、その時に覚えればいいか。


食べた後は食器の片付け。

石鹸と呼ばれる道具を使って綺麗にしていく。

植物のエキスなんかを使うという話は聞いていたけれど、その道具は使わなくなった油で作られているという。

初耳だった。

とは言え、奴隷商では石鹸は勿論だけど、そんな植物のエキスなんて使う事もできなかったから、何だって驚いたと思う。

布を使って掃除するのも初めて知った。奴隷商に居た時は指に唾をつけて擦っていた。

他の奴隷のヒトが汚れを直接舐めて綺麗にしているのを見て、確かにその方が効率が良いと思ってそれを真似するようになった。

その光景をたまたま見た奴隷商が、顔を引きつらせていた理由は未だに不明だ。


この家にはお風呂があるという。

王侯貴族の邸宅にはあるそうだけど、私は見た事が無かった。

公衆浴場にすら行った事がなかったんだから。濡れた手で体を撫でるくらいしかしてなかった。

舌で舐めると汚れがよく落ちる事を発見してからは、奴隷みんなでそれぞれの体を舐め合って綺麗にした。

やっぱりその光景を見た奴隷商が顔を引きつらせていたけれど、未だに理由はわからない。


う、一緒に入るの?

なるほど。ここでするのか。

お風呂という贅沢品をエサにするなんて、随分とムッツリさんじゃないか。

奥手なのかな? そういう私も経験は無いけれど。

とは言え、こういう時のために、と他の奴隷から、ある程度の事は聞いている。

事に及ぶにあたって、回りくどく誘う男は、意気地なしか変態なんだそうだ。

……意気地なしであることを切に願う。


頭や体を洗われるのは恥ずかしかったけれど、気持ち良くもあった。

成る程、汚れているより綺麗な方が良いのか。

世の中には女性の汚れた生まれたままの匂いが好きだというヒトも居るらしくて、そういうヒトは変態というそうだ。


どうやら、主様は変態ではないらしい。

変態なスケベよりは普通のスケベの方がマシだと思った。


けれど主様は私に手を出さなかった。

そのせいで、主様を恨むとか怒りが湧くとかではなく、ただただ恥ずかしかった。

やっぱりちょっと恨んだかもしれない。


ベッドか? やっぱりベッドでしたいのか?

奴隷商で一緒だった女性からは、外や、他人に見つかりそうな場所でスるのに興奮する変態も居ると聞いた。

反対に、絶対に寝所でしかシないというヒトも居るそうだ。

それも変態なのか? と聞いたら、どちらとも言えない、そうだ。

私はちょっと、変態っぽいと思った。


「それじゃ、おやすみ」


「あ、あれ?」


個室を与えられた事や、その個室が不潔な牢屋のような場所じゃなかった事や、新しい服を買って貰える事などに驚いていると、主様はそう言って部屋を出て行こうとした。

思わず、疑問が口をついて出る。


「なんだ?」


「だ、抱かないんですか……?」


私は何を言っているんだろう?

抱かれないならそれでいいのに。

これで抱いて欲しいのか? なんて聞かれたら、私は肯定しかできないのに。

はっ! まさか、それを言わせる作戦!?

変態だ。やっぱり主様は変態だ。

それも、ちょっと特殊なタイプの変態だった。


「そんな条件、契約の時に言ったか?」


「…………すみません」


契約の事は聞いていなかった。さっきも注意された事だ。

だって私が選ばれるなんて思ってなかったし。


ちょっと可愛そうな子を見る目で見られた。

あれ? これ本当に抱かれない流れですか?


「お休み」


「……おやすみなさい」


どうやら本当に、私は家事をするために買われたらしい。

主様は、子供好きの変態でも、奴隷に欲望をぶつける変態でもなかったようです。



私は本当に良い所に買われたんだと思います。

ご飯は凄くおいしい。

仕事は少し大変だけど、注意こそされるけれど、怒鳴られたり、ましてやぶたれたりする事はなかった。

初めてダンジョンへ入り、モンスターと戦うのも大変だった。

突然響いた雄叫びに、私は体が動かなくなってしまった。主様が助けてくれて、その日はずっと背後で守ってくれていた。

あの時、肩に添えられた手と、背中に感じた温もりは、今でもはっきりと思い出せるし、思い出すと胸が高鳴る。

多分、あの時感じた恐怖と恥ずかしさが思い起こされてるんだろう。


勉強も少し教えて貰った。

文字の読み書きと簡単な計算。足し算引き算は本当に簡単だった。

けれど掛け算が難しい。一気に数字が大きくなるからまるで想像できない。

割り算って何? なんで掛け算を使ってるのに数字が小さくなるの?


魔法も少し教えて貰った。魔法が使えるようになると、色々と便利になると聞いていた。

主様も色んな魔法を便利に使っていた。

でも私の魔法じゃ薪に火を点けるのに時間がかかった。


料理も教わった。包丁の使い方難しい。

なんで野菜も食べないといけないの? 青汁? ナンノコトデスカ?


私は本当に良い所に買われたんだと思う。

個室があるしお風呂に毎日入れるしご飯美味しいし。


主様は時々意地悪だけど、優しいし頼りになる。色々な事を知っているし色々な魔法も使える。

主様に体を触られると、触られた部分と頬が熱くなる。

頭を撫でられたら凄く嬉しかった。子ども扱いされてるようで少し不満もあったけど。

櫛で髪を梳いて貰うのは恥ずかしいですけど、凄く安らぎます。


主様に買われて一週間と少し経った頃、私は一人でダンジョンで戦っていた。

勿論、主様は後ろで私を見守ってくれている。

私が強くなるために、主様が手を出したり助言したりしないんだと言っていた。


山羊小鬼との戦いはまだ怖いけれど、何とか攻撃を受ける事無く一人で倒せるようになった。

うん、私強くなってる。


強さなんて今まで気にした事なかったし、そもそも、私自身、生きる事自体諦めていたけれど。

けれどやっぱり。

自分の成長を実感できると嬉しいな。


あ、主様も嬉しそうにしてる。

うん。私もっと強くなるから、だから主様。

私を――


「え?」


突然、床が抜けた。一瞬の浮遊感。そして、直後に落下していく私。

状況が何もわからないまま、私は落ちて行く。

途中で何か硬い場所に叩きつけられるように落ちた。凄く痛い。

一瞬意識が飛ぶ。今度は落下の勢いのまま、通路を転げ落ちて行く。

状況がわからない。

目が回る。気持ち悪い。

今何がどうなっているのか考える暇も無い。

なにこれ? なにこれ? なんで?

なんでこんなことになってるの?

怖い。怖いよ。

助けて。誰か助けて。


助けて。主様……。





「ふ、ふふふ……」


斜面が終わって、通常の通路に投げ出された。暫く転がり、壁に叩きつけられる。

凄く、痛い。

気持ち悪い。目を瞑っていても、世界が回っているのがわかる。

今立ち上がれば、一歩も進めずにこける自信があった。

体力を回復させる目的もあって、暫く、倒れたままでいる。


思わず笑いが零れた。


怖いって。

助けてって。


生きる事諦めてたんじゃなかったの?

私の人生、終わってるんじゃなかったの?


なのに、助けてって。


やっぱり私は良い所に買われたんだと思います。

だって私。死にたくないと思ってしまったから。

生きていたいと思ってしまったから。


ああ、そうか。


「私今、幸せなんだ……」


呟くと、すとん、と胸に落ちた。

最初はどうでも良かった主様との生活。

でもご飯は美味しいし、主様は優しいし。

私は、幸せを知ってしまったんだ。


奴隷に生まれて、奴隷として生きて。

そして多分、奴隷として死んでいくんだろうと思っていた。

だから、全てを諦めていた私。


幸せなんて、それまで感じたことも、考えた事も無かった。


なのに。


「帰らなきゃ……」


立ち上がる。幸い、槍は握りしめたままだった。杖代わりにして、立つ。


「帰らなきゃ……」


足はまだふらふらしてるけど、肩を壁に預けて歩き出す。


「帰らなきゃ……」


今自分がどこに居るかわからない。どこへ向かえばいいかわからない。

それでも、私は歩く。歩き続ける。


帰りたい。あの家に。

帰りたい。主様の元に。

帰りたい。私が感じた幸せがある場所に。

だから――


「邪魔をしないで……!」


私は呟いた。目の前で噴出する、魔力の霧を睨みつけながら。


「ぼ……」


出現と同時に山羊小鬼が雄叫びを上げる。

させない。

以前に私の体の自由を奪った鳴き声。

あの時は主様が居た。主様が助けてくれた。

でも、ここには私一人。

あの声を聴いて動けなくなれば、助からない。


だから、させない。


踏み込んで槍を突き出す。穂先が山羊小鬼の下顎に当たり、雄叫びを遮る。

硬い。

握る手に伝わって来た感触に、私は顔を顰める。

そう言えば、階層が深い場所に出現する魔物は、上の階層と一見同じように見えても、強くなってるって主様が言ってた。

ここがどこかわからないけれど、私が普段戦っている第一階層よりは間違いなく下だ。


けど……!


くるりと槍を回転させて石突で更に顎をかち上げる。

右手はそのまま、左手を石突側に素早く移動させる。

自然と、槍を振りかぶった形になる。そのまま振り下ろす。


「ぶひゅぅ……」


若干前傾姿勢になって山羊小鬼が蹈鞴を踏んだ。

逃がさない。

絶え間なく攻撃し続けろ! でないと、私は立ち直った相手の攻撃にきっと対応できない。

一撃受ければそれで終わり。

だから、相手に何もさせるな!


逃がさない。

振り下ろした槍を、踏み込みながら再び突き出す。穂先が山羊小鬼の鳩尾に届く。

今度は距離が遠い。石突の振り上げは届かない。

ならば、と槍を横薙ぎに振るう。

間合いが詰まったので三度槍で突く。

石突による振り上げ。手を持ち替えての振り下ろし。また距離が空いたので、追いかけながら槍を突き出す。


繰り返す。

何度も繰り返す。

山羊小鬼の体勢と自分との距離をしっかりと見極めて、相手が何か反応する前に、攻撃を加える。

何度も繰り返す。

相手に何もさせない。させる訳にはいかない。

だから、何度も何度も繰り返す。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


そして、何度目か忘れた振り下ろしを受けて、山羊小鬼は魔石を残して消えた。


この魔石は回収した方がいいんだろうけど、今の私じゃ持って帰れない。

そう言えば、袋のようなものは貰ってなかった。

主様は幾らでもものが入る不思議なリュックサックを背負っていたから、私は特に気にしてなかったけど。

魔石を持って帰ろうとしたら、手がふさがってしまう。

それは駄目だ。

ただでさえ攻撃の通りにくい山羊小鬼相手に、更にダメージが減ってしまう。


一体倒すだけで、膝は震え、目の前は霞み、肩で息をするくらい疲れているのに……。


魔石を放置して歩き出す。

待っててください、主様。私は、必ずあなたの元へ帰りますから。



「はぁ、はぁ、はぁ……」


歩き出してから、三体目の山羊小鬼を倒したところで、私は座り込んでしまった。

限界だ。歩けない。

少し休めば、立ち上がれるだろうか。

お腹も空いた。

昨日の食事は当たりだったな。

なんせ、昼はカレーで夜はトンカツだった。

どちらも凄い美味しい。特にカレーは、前日にわざわざ多めに作って残しておいたもの。主様は寝かせる、とか言っていたけど、私にはよく意味がわからなかった。

とにかく、日を置くと美味しくなるのがカレーらしい。

けれど、置き過ぎると腐ってしまうらしいから、そういう意味でも貴重な料理だ。


今日の夕食は何かな?

先週作ってもらって、今週まだ作ってないのはカツレツ、アジフライ、ステーキ、焼肉……。

あれ? あとなにか、パスタっぽいのがあったと思うけど、思い出せない。

ふふ、残ってるのは私の大好物ばかりだ。

うん? いや。主様の所に来てから食べたものは大体好きになったから、残っている料理が好きなものばかりなのは当然だった。


でもあの青汁は駄目だ。スープは美味しいのに。


「!」


足音が聞こえた。

一瞬主様かと期待したけれど、複数だった。

主様が他の冒険者を避けるようにしていたのは知っている。

だから、複数なら主様じゃない。

それとも、私を探すために他のヒトに協力を頼んだとか?

それだと少し嬉しいな。

うん? 嬉しい? なんで?

それだけ大切にされてるから、だよね。

でも大切にされてるとなんで嬉しいの?

いや、それは嬉しいんだろうけど。


話し声が聞こえる。

主様の声は無い。がっかりした。


こっちに近付いてくる……。


どうしよう?

隠れようにも隠れる場所なんてこのダンジョンには無いし、逃げるにもまだ体力が回復していない。

助けてくれたり、しないかな……。


「お、誰か倒れてるぞ」


近くにやって来た一団の一人が、私に気付いた。


「生きてるのか?」


「生きてるみたいだな。呼吸はしてる」


「中々良い装備みたいだけど、一人か……? パーティが全滅したか?」


近付いてくる。私は、顔を上げた。

人間種の男性が四人だった。


「お、結構可愛いな」


「おい、見ろ」


「あん?」


一人の男性が顔を綻ばせるけれど、隣の男性が私を指差した。

正確には、私の首の辺りを。


「奴隷だ」


「あん? なんでこんな所に奴隷が一人でいるんだ?」


「装備が整ってるから戦闘奴隷だろう。女のそれは珍しいが」


「逃げて来たのか?」


私は無言で首を振った。


「パーティが全滅したのか?」


私は再び首を振った。


「ふぅん、まぁいいや。いこうぜ」


え?


助けて、くれないの?


「いいのか?」


「ほっとけ。何があったか知らねぇが、どう考えても厄介事だ。面倒だよ」


「奴隷を使っているなら金持ちだろう? 恩を売っておくのも良いんじゃないか?」


「死んでたらどうするんだよ」


「全滅していないと言っていたぞ」


「嘘かもしれねぇだろ。俺ら相手じゃ首輪は反応しねぇんだしよ」


「うーむ……」


最初に私が奴隷だと気付いた男性の言葉に、全員が納得しかかっていた。

駄目だ。このままだと本当に見捨てられる。

なんとか、助けて貰わないと……。

主様が生きている事を正直に話せば?

でも、相手は私が嘘を吐いてると思ってる。


「たす……けて……」


それでも私は、他に頼る人は居ない。彼らに賭けるしかないんだ。


「いいぜ」


私を可愛いと言ってくれた男性が、すぐに了承してくれる。

やった!


「対価は?」


え? タイカ?

お金って事かな?


「ご主人様と、はぐれました……。ご主人様は、家もあって、私を簡単に買えるくらい、お金を持ってます」


「つまり金はご主人様から貰え、と?」


「はい……」


主様には悪いけど、勝手に約束してしまう。

主様なら、きっと払ってくれると思う。


「けどなー、お前のご主人様が生きてるかどうかわかんねーからなー。お前を助けても誰も金を支払ってくれないって事もあるし?」


「ご主人様が、死ぬ筈ありません。それに、私は……」


落とし穴に引っかかってこの階層に落ちて来た。

それを説明するまえに、男性の放った一言が、私から言葉を奪った。


「服脱いで足開け」


え?

コノヒトハナニヲイッテイルノ?


「おい」


別の男性が声をかける。でもその顔は苦笑いしてるようだった。本気で止めようとは思ってない?

なら、最初の一人の要求も、本気じゃない?


「いいじゃねぇか。暫くご無沙汰だしよ。それにほら、確かにちょっとガキくさいけど、そこそこ肉付きはいいし、顔立ちは整ってる。こんな上玉滅多にいねぇぜ」


「こいつの持ち主が生きていたらどうするんだ?」


「ここはシュブニグラス迷宮だぜ? こんな所に女が一人でいたら、異種族交配を持つ山羊小鬼に襲われたって仕方ねーよな?」


「はーん……」


止めようとしていたヒトが、何故か納得したような声を出す。


「なに、どうせご主人様に毎晩相手させられてんだろうし、多少使った(・・・)ところでバレやしねぇって」


「まぁ、そういう事なら……」


「ご無沙汰だしな」


「ガキに興味ない」


そして、三人の男性がこちらに迫って来る。

え? うそ? うそだよね?


私奴隷だけど、いや、奴隷だから、他人の所有物だよ?

なのに、乱暴するの?

なんで?

助けてくれるって言ったのに……?


「お前のご主人様が死んでた時の保険だよ。前金って奴だな」


「助けてって言ったのは、そっちだぜ」


「大人しくしてりゃ、気持ち良くしてやるさ」


好き勝手言って……!

抵抗しようにも、体に力が入らない。

起き上がる事もできない。

壁際に倒れ込んでいたから、転がって逃げる事もできない。


下品な笑みを浮かべた男性が、私に手を伸ばしてきて……。



「ばふぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」



その時、通路にそんな鳴き声が響いた。


え? なに? 今の声。


山羊小鬼のじゃないよね?


ゴーレムは喋らないし、あの奇妙な植物モンスターも無言だし。


「なんだ?」


男性の動きが止まった。

ともかく助かった。


何かが近付いてくる音がする。

あとは、彼らが戦闘している間になんとかこの場を離れて……。


「ばふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」


そしてそれは現れた。

その雄叫びを聞いた者、全てを恐怖で縛り付けながら。


大きい。

通路を完全にふさいでしまうくらい大きい。

筋骨隆々な上半身。下半身は黒い毛で覆われているけど、動物の足みたいだ。

顔は山羊小鬼と同じ顔。

大きくなった山羊小鬼。けれど、私は違うと直感的に感じた。


あれは、そんな生易しいものじゃない……。


「ば、バフォール!?」


男性の一人が驚きと恐怖を混ぜた声で呟く。


「莫迦な! 二十階層のボスモンスターだぞ! なんでこんな所に居るんだ!?」


「それ以降の階層なら普通にザコとして出て来るよ」


「余計になんでこんな所に居るんだよ!? モンスターが階層を移動するなんて聞いた事ねぇぞ!」


「移動したんじゃないんだろうな」


「どういうことだ?」


「成長したんじゃないか?」


「山羊小鬼が進化して、バフォールになったとでも言うのかよ?」


「違う。モンスターじゃなくて、ダンジョンがだ」


「ダンジョンは……生きている……」


誰かが呟く。

そう言えば、それまで一度も見たことが無かった第一階層で、私は落とし穴にひっかかったっけ?

あれも、ダンジョンが成長したせいだったのかな?


「おい、そいつ回復させてやれ」


「え?」


「逃げるのは無理だ。なら、そいつにも戦力になってもらう」


「けど……」


さっきまで自分達が何をしようとしていたのか思い出してるんだと思う。


「そいつだって死にたくねぇはずだ! 急げ!」


「わ、わかった」


白い、ぞろっとした服を着た男性が私に近づいて来た。

それが合図になったんだろうか。それまで、男性達をじっと眺めていただけだったバフォールが動いた。


「ち!」


男性が盾を構えて前に出る。


「ぐわぉう!」


バフォールの右腕が振るわれる。男性がそれを盾で防ぐけれど、そのまま吹き飛ばされて、壁に叩きつけられた。


「がはっ……!」


そしてまだ空中に居るその男性に向かってバフォールは突進。その角を突き刺した。


「ぐあああぁぁぁ……!」


痛みに声を上げ、暫くびくびくと動いていたけれど、すぐに男性は動かなくなった。


強い……。


「く、畜生……! おい、そいつはほっとけ! 俺らにバフだ!」


「あ、ああ……」


私に回復魔法を使おうとしていた白い男性が、髭の濃い男性に呼ばれて離れて行った。


柄の短い斧を構えた髭の男性。その後ろで、杖を持ち、ローブを着た男性が呪文の詠唱を行っている。

遅れてかけつけた白い男性も、呪文の詠唱を始めて。


「ぱぎゃっ!?」


その二人の目の前で、バフォールの飛び蹴りが、髭の男性の頭を蹴り砕いていた。

う、気持ち悪い。


「――ファイアショット!」


ローブの男性が魔法を完成させて放つ。

けれど、バフォールはそれを首を振って角で弾いた。


「なっ!?」


「――フォースアーマー!」


白い男性も魔法を放つ。白い男性から放たれた光が、ローブの男性に当たり、彼を包む。

多分、補助魔法だ。


けれど、距離を詰められて振るわれた腕の一撃で、ローブの男性は体を二つに割られて絶命した。


「う、う……」


バフォールが残った白い男性にゆっくりと向き直る。


「うわああああぁぁぁ!」


赤い瞳に自分の姿が捕らえられると同時に、白い男性は悲鳴を上げて逃げ出した。

あ、背中を向けたら……。


「あぐぎゃ……!」


その後頭部に跳び蹴りが炸裂する。地面に倒れる前に、その頭は砕け散っていた。

あっという間の殺戮劇。

その間に逃げようなんて、無謀もいいところだった。

私は、立ち上がる事さえできていなかった。


ゆっくりと、バフォールが近付いてくる。


? すぐに殺さない? なんで……。


私はすぐにその理由に気付く。

バフォールの股間から伸びた、巨大な蛇。口から涎を垂らし、私を真っすぐに見据えている。


山羊小鬼は異種族交配のスキルを持っているってさっきの男性達が言っていた。

多分、その山羊小鬼と似たような種族のバフォールも、きっと持っているんだろう。


じゃあ、このバフォールは今何をしようとしている?


冒険者四人を瞬殺した程の力の持ち主が、私をすぐに殺さずに、股間の蛇を屹立させて、ゆっくりと迫って来る。


私がこれから何をされるのか、想像するのは簡単だった。


「い、いや……」


嘘。嘘。嘘。

こんなの嘘。

ただ殺されるだけでも嫌なのに。

モンスターに犯されるなんて、死んでも嫌だ。


「いや、こないで……」


壁際に倒れていた私は、逃げる事ができない。

ゆっくりとバフォールが伸ばした手が、私の服を掴んだ。


「いや、助けて、だれか……。誰か助けて……」



「てめえええぇぇぇぇはぁ! 俺の女にいいいぃぃぃ! なぁにをしようとしてっだらあああああぁぁぁぁぁ!!」


直後に黒い影が飛び込んで来た。

バフォールを蹴り飛ばし、私の前に背を向けて立つ。

黒い髪の後ろ姿。


「すまん、遅れた!」


「あ、あ……」


待ち望んだ人。待ち焦がれた人。

きっと来てくれると信じてた。

けれど、間に合わないかもしれないとも思ってた。

けれど、こうして来てくれた。

私の主様。

タクマ様が、そこに立っている。


「ばふぉおおおぉぉぉぉぉぉぉおお」


蹴り飛ばされたバフォールが鼻息荒く立ち上がる。


「うるせぇ! 人の女に汚ねぇもん見せつけてんじゃねぇ!」


叫んでタクマ様が腕を振るうと、バフォールの股間で幾つもの小さな爆発が起こった。


「ばふぉおおおおぉぉぉぉおお!?」


私では想像できない激痛が走ったんだろう。絶叫しながら、バフォールはその場に俯せに倒れ込む。

腰だけ空中に突き出し、股間を両手で押さえた情けない恰好で、バフォールが痛みに喘いでいる。


「今楽にしてやるよ」


そしてタクマ様は、どこからか取り出した赤い槍を、バフォールの頭上に振り下ろした。




「大丈夫か?」


バフォールが光になって消えたのを確認して、タクマ様はすぐに私に駆け寄って来てくれた。

心配そうな目で、私を見ている。


高くはないけど通った鼻筋。やや大きいけれど形の良い口。

強い意志を宿した目。吸い込まれそうな黒い瞳。

力強い太めの眉。


いかにも男らしい、頼り甲斐がありそうな顔だ。

そう言えば、こんなにちゃんとタクマ様を見た事が無かった。


世間ではどう思うかわからない。

けれど、私は素直にこう思う。


カッコイイ。


「サラ?」


名前を呼ばれただけで心臓が大きく跳ねた。

ああ。わかった。わかっちゃった。


私はタクマ様が好きなんだ。

ご主人様だからとか、奴隷だからとかでなくて。


ただただ、タクマ様が好きなんだ。


これが私の、初恋だと思う。


そう思ったら、私の体は勝手に動いていた。

さっきまで、指一本動かすのも億劫だったのに、あっさりと体が動いた。現金なものだ。


抱き着く。

タクマ様の感触。体温。匂い。

全身で感じ取るように、強く、強く抱き着く。


「サラ……」


含まれていた感情は同情? 憐憫?

私を抱きしめ返してくれたのは嬉しいけど、多分、男女の感情でそうした訳じゃないよね。


でも今はこれでいいか。

奴隷として売る事ができるようになったと言っても、私はまだ子供だ。

ヒトの成人は15歳から。あと三年ある。


三年で、思わずタクマ様が手を出してしまうような、魅力的な女性になってみせればいいんだ。

だから、今はこれでいい。


抱き着いたままでいたら、タクマ様の不思議な魔法で、ダンジョンから家のリビングへと移動していた。

最初は凄く驚いたけど、もう慣れた。

だからそのまま抱き着き続ける。

あ、顔ちゃんと見たい。これまで見て無かった分、取り返さないと。


「!!?」


目が合う。

顔を上げたら、凄い近い所にタクマ様の顔があった。

ち、近い。近いですよ、タクマ様!!


え? なんで更に近付いて来るんですか?

あ、私の一人称は私ですからね。サラに(・・・)近付いて来るって言った訳じゃないですから。


いや、本当に近いです。近い。え? なんで目を瞑るんですか?

なんで優しく私の髪を撫でていた手が、私の頭をがっちりと掴んでいるんですか?


これじゃ。

まるで。





私の初恋は、自覚してから半日も経たないうちに成就しました。


本日は二話連続更新です。

この話と次の話は、すぐに読んでもらいたかったので、同日更新にしました。

そのせいで更新自体が遅くなったとも言えますが。

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