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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第52話:急転直下

このところ忙しかったために更新が滞ってしまっていました。

評価してくださった方々、ありがとうございます。

サラとの生活、二週目その2です。

翌朝もノックの音で目を覚ます。

布団の中で時計を確認すると、八時を少し回ったところだった。

どうやらこのくらいの時間に起こす事に決めたらしいな。

昨日はお玉で鍋を打ち鳴らして起こすやり方だったけれど、それを禁止した今日はどうやって起こすのだろう?

気になったので狸寝入りをする。

するとゆっくりと、扉が開く気配がした。

サラが中に入って来る。

そして足音を立てないよう気を付けてこちらに近付いてくる。


「おはようございます……」


蚊の鳴くような声、とはこういうのを言うんだろうな。

小さな声で俺に挨拶をするサラ。

実は起きているから聞こえているけど、寝てたらこれ、気付かないぞ。


起こさなければならないのに、寝ているのだから大声を出さないように、とか思っているんだろうか。


「おはようございます……」


再び小さな声で俺に話しかける。

同時に、俺の体を揺すり始めた。


「おはようございます……」


「ああ、おはよう」


まぁ、ここらで起きてやろう。

俺は瞼を開け、挨拶を返した。

びくっとサラが体を震わせて、半歩俺から離れる。

うん、びびり過ぎだろう。


「さて、朝食のメニューは?」


「ぱ、パンを焼いて、ジャムを塗ります」


「それだけか?」


「スープを、お願い、します」


スープは俺の『マジックボックス』に入りっぱなしだもんな。俺が出さなきゃ食卓には並ばない。

スープ自体は香草や薬草を適当に煮込んだだけのものだから、サラに作らせてもいいだろう。今日の夕食の時にでも作らせるか。


「それだけか?」


「…………」


「サラ?」


「……お、お水を……」


「じゃあ俺はサラダを準備しようかな」


「青汁をお願いします」


観念したようにサラは俺にそう伝えた。

しかしウィンナーでもハムでも無く、ジャムを所望するとは、やっぱりサラも女の子か。甘い物が好きなんだろうな。


朝食の後は掃除をするサラを眺めながら『錬成』と『キャストアストーン』による還元を行う。

昼をガルツで摂り、そのままダンジョンへ。

今日は魔法をサラに見せるつもりだ。一階層から『テレポート』で十三階層へ。


「こ、ここは……」


これまでとの雰囲気の違いを感じ取ったのか、サラが怯えた様子で周囲を見回していた。

俺の服の裾をぎゅっと握る感じが可愛らしい。


「まぁ、今までよりは大分下の階層だ。今日はここで魔法を見せる。それを見て、イメージの助けにするんだ」


サラはまだ目が不安に揺れていたが、それでも小さく頷いた。


暫く待っていると、目の前で魔力の噴出が起こった。


「これは覚えなくていいからな」


そう断りを入れてから、俺は無詠唱で魔法を発動させる。


「マジックマイン」


俺の手から放たれた二つの魔力の塊が、噴出している魔力の傍へ飛び、そこで静止する。そして白い光を放っていた魔力は、無色透明に変化する。

そして出現したのは山羊小鬼が一体とストーンゴーレムが一体。

お、ちょっと予想と違ったな。

まぁいいや。


「ぼええぇぇ!!!????」


そしていつも通りに出現時の雄叫びを上げ始めた山羊小鬼の足元で突然爆発が起こり、バインドシャウトを中断させる。

『マジックマイン』は世界魔法の第二階位。設置型の魔法の地雷だ。


てっきり三体くらい出現すると思ったから、二つ設置したのにな。


流石にマイン一つでは山羊小鬼を倒せなかったので、怯んでいる隙に間合いを詰め、その勢いを乗せた爪先を山羊小鬼の喉に突き刺す。


「ぐひゅぅ……」


空気が絞り出されるような音を出して山羊小鬼が崩れ落ちる。その途中で、光の粒子となって消えた。


そこでようやっとストーンゴーレムが動き始める。

しかしその動きはひどくゆっくりで緩慢だ。

獲物が近くに居る際に繰り出される攻撃はそこそこ速いのだけれど、それ以外の動きは、非常に遅い。


「さて、まずは基本となる自然魔法の第一階位、『ファイアショット』だ」


ゆっくりとこちらに向かって来るストーンゴーレムを前に、俺はサラに向かって魔法の講義を始めた。


「攻撃に使うだけじゃなくて、火を点ける時なんかにも使えて便利だ。同じく自然魔法には『イグニッション』という火を点ける魔法があるが、これは生活魔法なので『ファイアショット』が使えるなら覚えなくてもいい」


魔力に依らず、一定の効果を得られる生活魔法だから、ステータスの低いサラには『イグニッション』の方が良いように思えるけれど、どうせ成長してから覚え直すんなら、最初から『ファイアショット』を覚えさせた方が効率が良いだろう。

どのみち、今のサラじゃ火を点けるのに時間がかかっちゃうからな。


「呪文を唱えながら体内で魔力を練り上げる。臍の辺りに発生場所があるから、そこを意識する事で上手くいきやすいぞ。そして魔力を手の平に集め……」


俺の体の中心が赤く光り始め、その光がゆっくりと、前に突き出した手の平へと向かっていく。


「この魔力はお前にわかりやすいように濃度を高めているだけだから、お前が使う時はここまでしなくていいからな」


注釈を入れている間に魔力が手の平に集まった。手の平が赤く輝き出す。


「ファイアショット!」


そして魔法を放つ。

放出された魔力がすぐにその姿を変え、一つの火の玉となってストーンゴーレムへ向かう。

命中。一瞬激しく燃え上がるが、炎はすぐに消えた。

魔法の炎なので延焼しにくいのもあるけれど、まぁ、相手は石だからな。

『ファイアショット』の温度じゃ燃やす事はできない。


魔法を受けて動きが止まった間に半歩下がる。


「さて次に……」


俺は再びストーンゴーレムに手の平を向け、魔法を放つ準備を始めた。

サラのための魔法講座は、それから三時間続いた。



ガルツで食材を買い込み、家に帰って夕食の準備を始める。

今日は天ぷらだ。

揚げ物が続くけれど、まぁ、仕方ない。

そもそも俺の料理のレパートリーはそれほど多くない。加えて、この世界でも作れる料理、となるとその数は更に減る。

カレーは明日固定だから、となると後はカルボナーラ、トンカツ、カツレツしか教えた料理は残っていない。だからどうしても揚げ物の頻度が高くなってしまうんだ。

米が使えればなぁ。


茸や山菜を水で洗い、少し茹でて灰汁を取る。

その後は小麦粉と卵を水で溶いた天ぷら粉もどきにくぐらせて、油で揚げる。

天ぷら粉を作る作業と、くぐらせて油に投入する作業をサラにやらせてみたら、意外と楽しんでいるようだった。

ああ、泥遊びみたいなもんなのか。


「あつ」


「油が跳ねるって言ったろ? もう少し離れなさい」


「はい」


油の中で天ぷらが揚がっている様子を食い入るように見つめていたサラの顔に跳ねた油が当たったようだ。


「火傷してるといけないからな。ほら、『ヒーリング』」


「ありがとうございます」


どこに跳ねたのかわからなかったので、俺はサラの頬を両手で包むようにして回復魔法を使った。

うん。モチモチでサラサラで、柔らかいな。サラを買った当初は、もっと肌がザラザラしていた筈だ。大分回復して来ているのかな?


「あ、あの……」


「ん、すまん」


頬を真っ赤に染めて、サラが声を上げる。謝りながら手を放すが、首輪は特に反応していなかった。

うん? あまり嫌じゃなかったのかな?


「いえ、はい……」


サラの反応も良くわからん。

恥ずかしがっているのだけは確かだと思うけど……。


風呂の後はまったりタイム。

サラの髪を梳かしてやると、彼女は瞼を閉じて俺に身を委ねた。

そのまま眠ってしまったのは、疲れていたのか、それとも、俺を多少は信用してくれるようになったからなのか。

その無防備な寝顔に、少し癒された。



翌朝。控えめなノックの音で目を覚ます。

反応しないでいると、扉が開かれてサラが入って来た。


「おはようございます……」


小さな声でサラが挨拶する。

反応しないでいると、サラが近くに寄って来るのがわかった。


「おはようございます……」


昨日と同じように、挨拶をしながら俺を揺すり始める。

さて、ここで反応しないとどういう行動に出るんだろう?

ちょっと興味が湧いたので寝たふり続行。


「おはようございます……」


更に挨拶をしながら俺を揺する。

うーん、これはこれ以上は変化なしかな?

するとサラが手を止めた。

お、何か思いついたか?


わくわくして待っていると、サラの気配が離れて行く。

ほう、それでどうする?


パタン、と扉が閉じられた。


「…………」


待つ。

待つ。

待つ。


え? ひょっとして諦めた?

あ、それとも、今日は俺が起きたくないと意思表示をしたと思ってそれに従った!?


奴隷の心得仕事し過ぎだ。

『スキル封じ』の祝福をかけた方がいいのかな?

でも奴隷の心得、『隷属の首輪』と連動してるから、封印すると何が起きるかわからないんだよなぁ。


とりあえず起きよう。


「おはよう」


「おはようございます」


俺がリビングに顔を出しても、サラは特に驚いた様子も無く、挨拶を返すだけだった。

うぅむ。真意がわからん。


「起きたくない時は言うから、起きるまで起こせ」


「…………はい」


首輪は特に反応しなかったけど、返事までに間があった。

あれ? ひょっとして寝たふりバレてる?


「今日の朝食は?」


「卵を使おうと思います」


「目玉焼きか?」


「いえ、玉子焼きを……」


言われてサラの手元を見ると、陶器の器で卵をかき回してるところだった。

その料理、見た目と違ってそこそこ難易度高いぞ?

まぁ、経験しておくのも良いか。


「調味料は?」


「え?」


「少量の砂糖と塩を加えなさい。それぞれ一つまみくらい」


「はい」


俺の言葉に従い、サラは砂糖の入った壺を取り出し、その中に手を突っ込んだ。

わしっと、掴んで手を引き抜く。


「待った!」


「?」


首を傾げるな。可愛さで許したくなっちゃうだろ。


「それは一つまみじゃなくて一掴みだ。甘すぎて食べられなくなるぞ」


「甘いのにですか?」


「何事も過ぎれば毒になる」


過ぎたるは及ばざるが如し。そうかー、料理の知識が無いとこういう所にも弊害が出て来るか。


「わかりました」


しゅんとするサラ。おい、首輪発光してるぞ。

やっぱりサラも甘いの好きか。まぁ、まさに女子供だからなぁ。当然っちゃ当然か。

けれどここでその欲望に任せて砂糖たっぷりの味に慣れさせる訳にはいかない。

それは味覚障害だからな。

塩も同様だ。


「人差し指と親指でつまむくらいでいいんだよ」


「わかりました」


熱したフライパンに油を引き、といた卵を投入する。


「全部一度に入れるな。上手く固まらなくなるぞ」


「はい」


やはり玉子を巻く作業が難しいようだ。何度か失敗してしまい、結局フライパンの底にこびりついてしまった。

焦げたりはしなかったので、木ヘラでこそぎ取る。

玉子焼きというよりスクランブルエッグになったな。


「こういう料理もあるにはあるが、まぁ、練習すればできるようになるさ」


「……はい」


目に見えてしょんぼりしてるな。


「そう落ち込むな。最初から上手くできる方が珍しいんだ。失敗を繰り返す事で上手くなっていくんだから」


言って俺はサラの頭を撫でてやる。

うん。大分サラサラになって来たな。


「ありがとうございます」


応える表情は相変わらず無表情だけど、声は少し弾んでいるようだった。


午後からは魔法の練習。

掛け算はまだかかりそうだ。今は問題をとにかく解かせる事にする。

この分だと、割り算を始めるのはまだ先になりそうだな。


「呪文の詠唱をしつつ、昨日見せた通りに魔力の操作を行えば、魔法は使えるようになる」


「はい」


「よし。まずは臍の辺りに魔力を溜めてみろ。腹筋に力を入れるような感じだ」


肛門括約筋をしめつつ踏ん張る、のが一番感覚的に近いんだけど、流石にそんな説明を12歳の少女にできる筈がない。


「ふ、んんんんんんん」


目を閉じて力む様がちょっと可愛くてほっこりした。

おい、顔真っ赤だぞ。息継ぎを思い出せ。


「ひゃう!」


俺が腹をつつくと、サラがびっくりしたらしく高い声を上げた。


「ここに意識を集中。力は入れなくていい」


「は、はい」


俺が臍の上辺りに人差し指を当てたまま指示を出す。

目を閉じ、サラが集中し始める。

すると、サラの体中に散っていた魔力が、俺の指先に集まって来るのを感じた。


「よし。そのままキープ。目を開けて」


「は、はい……」


応えた時と、目を開けた時に若干魔力が乱れたけれど、まぁ、良し。


「そのままこれを読め」


言って俺は魔術教本のあるページを開いてサラに手渡した。


「赤よ赤。この世に生まれたる破壊の赤よ。

 赤よ赤。この世に生まれたる創造の赤よ。

 我が手より出でて形と成れ。

 赤の緋弾――ファイアショット――」


それは『フィアショット』の呪文だ。勿論、魔力が丹田に溜まっている状態では発動しない。


「何度も読め」


「赤よ赤。この世に生まれたる破壊の赤よ。

 赤よ赤。この世に生まれたる創造の赤よ。

 我が手より出でて形と成れ。

 赤の緋弾――ファイアショット――」


「目を瞑って言ってみろ」


何度か繰り返させた後、俺はそう指示を出した。


「赤よ赤。この世に生まれたる破壊の赤よ。

 赤よ赤。この世に生まれたる創造の赤よ。

 我が手より出でて形と成れ。

 赤の緋弾――ファイアショット――」


問題無く詠唱を行う。よし、覚えたな。

後は一度使用しさえすれば、頭の中、というか魂に呪文が刻まれるから、二度と忘れなくなる。


「意識を俺の指先に集中しろ」


そして俺は、指をゆっくりと移動させていく。


「んっ……」


服の上からとは言え、肌を指先が撫でていく感触に、サラが身震いした。

頬が赤く、息が荒いのは、決して疲労からだけじゃないだろうな。

けれど止める訳にはいかない。これは魔法を覚えるうえで大事な行為だ。

決してやましい気持ちがある訳じゃない。

ホントダヨ。

本当なのに、念を押せば押すほど嘘に聞こえる不思議。


サラから本を取り上げ、手の平を前に突き出させる。

その手の平まで、ついに指先がやってきた。


「そのまま手の平に集中していろ」


そして、俺はゆっくりと指をサラから離していく。


「詠唱!」


「赤よ赤。この世に生まれたる破壊の赤よ。

 赤よ赤。この世に生まれたる創造の赤よ。

 我が手より出でて形と成れ。

 赤の緋弾――」


澱みない詠唱。

サラの手の平にある魔力が、それに合わせて渦巻き始めていた。

これは、いける!


「――ファイアショット――」


そして魔法が発動した。

手の平から飛び出した魔力が、一瞬で炎へとその姿を変え、俺に(・・)直撃する。


「い、今……!」


サラは自分が魔法を使えた事に純粋に驚いていた。

同時に、その瞳には喜びの色が見える。


「私、今……」


そして顔を上げた。上げたところで動きが止まる。

俺の顔から煙が上がっていたからだ。

それを見て、サラは何がどうなったのか理解したようだ。


「あの……」


「これが第一階位の自然魔法『ファイアショット』だ」


何も問題無い。それをサラに伝えるために、俺はそのことには触れずに言った。

実際、何も問題無かった。サラの魔力に『ファイアショット』の威力では、俺の魔法防御を抜ける訳がないからだ。

それがわかっていたから、俺はサラの正面に立っていた訳だし。



名前:サラ

年齢:12歳

性別:♀

種族:人間

役職:タクマの奴隷

職業:なし

状態:疲労(軽度)空腹(中度)興奮(軽度)歓喜(軽度)困惑(中度)恐怖(軽度)


種族LV5→7

職業LV:戦士LV1


HP:41/43→57

MP:27/31→40


生命力:26→31

魔力:13→17

体力:28→37

筋力:23→30

知力:26→33

器用:38→51

敏捷:17→20

頑強:26→28

魔抵:22→24

幸運:8→9


装備:アシッドランス 灰色狼毛皮の服 灰色狼毛皮のズボン テテスの灰色狼毛皮のブーツ


保有スキル

奴隷の心得 清掃 不意打ち 従属 自然魔法 槍戦闘



そして俺という強すぎる相手に魔法を撃ち込んだためにLVが一気に上がった。

おや、これ実はかなり効率の良いレベリング方法なんじゃないだろうか?

まぁ、サラが変な趣味に目覚めても困るから、緊急時以外はやらないけどさ。

あと、ダメージ無いとは言っても、命中した瞬間はやっぱり熱いし痛いんだよな。


ステータスが上昇した関係で『戦士ファイター』を獲得した。

これで敏捷が上がれば『槍戦士ライトランサー』が獲得できるようになる。

自然術士ドルイド』は魔力が、『家事士ハウスキーパー』は敏捷が足りない。

結構回避させてる筈なんだけど、敏捷が伸びないのはなんでだ?

まぁ、これから『戦士ファイター』の補正でこれまでよりは伸びやすくなるだろう。


とりあえず今日は『ファイアショット』を俺の誘導無しに打てるようになるまで、川に撃ち込ませ続けた。

流石にレベリングが捗るとは言え、俺は自分を的にする気は無かった。



今日の夕食はカレー。

そう伝えると、サラのテンションは目に見えて上がった。

ふふ、世界は違えど、子供がカレー好きなのは一緒か。


包丁に慣れさせるためにも、皮むきを始め、できる限りサラに野菜を調理させた。

勿論、怪我されても困るので、俺がしっかり監督しながらだったけど。

そのせいか完成まで三時間もかかってしまった。

二人とも腹ペコだ。



状態:空腹(重度)疲労(軽度)


状態:飢餓(軽度)疲労(重度)狂気(軽度)



どっちがどっちかは敢えて言うまい。

相変わらずのパンカレー。あー、米くいてー。




今日は祝福の日。

それとなく、朝食時にサラに街に行きたいか聞いてみたが、あまり色よい返事は貰えなかった。

多分、祝福の日に外に出た事が無いから、街で何をやっているのか知らないせいもあるだろう。

これまで暮らして来て、若干人生を諦めている事を除けば、サラは年相応の感性を持った女の子だとわかっている。

だから、一度お祭り中のルードルイ辺りへ連れて行けば、考えも変わると思うんだが。


けどすまんサラ。俺がまだ無理だ。

人の多い中をただ通り過ぎるだけならともかく、お祭りに参加する事を目的に祝福の日に外に出るのは、俺にはまだハードルが高い。


そんな訳で今日は家でまったりする事にした。

食事はともかく、掃除と洗濯も今日は休み。

にしようと思ったのだけど、サラが手持無沙汰でそわそわしていた。


「今日は休みだ。休みとは、家の中で自分のしたい事をして良い日の事だ」


「わかりました」


俺の言葉の意味を誤解しなかったサラはいつも通りに洗濯と掃除を始めた。

こういうのもワーカーホリックと言うんだろうか?

俺はそんなサラを眺めてダラダラしていた。


「その辺りを掃除したいのですが……」


「ああ、わかった」


などと、居場所を追われる様は、完全に休日のお父さんだった。


昼食には昨日のカレー。

そして夕飯はトンカツだ。


俺がそれを告げた時、サラの目が爛々と輝いたのを覚えている。

衣をつけて油に投入するサラの手は慎重であり、その目は真剣そのものだ。

ほんと肉好きだなー。


子供らしさ故に元々好きだったのに加えて、それまで肉を食べる事ができなかった反動も相まって、大好物になっちゃった訳だ。

まぁ、どれかの料理に拘るんじゃなくて、肉全般を好きになってくれた事は幸いか。



翌日のダンジョン探索では、ちょっと思いついた事を試してみる事にした。

これまで、俺はサラの後方で指示を出していた。モンスターと戦っていたのはサラだけだ。

けれど、サラが山羊小鬼を倒すと、俺にも経験値が入るのを感じていた。

多分、同じパーティに居ると判断されると、戦闘終了時に経験値が入るんじゃないかな?

ただ、今の俺に第一階層の山羊小鬼を倒した経験値なんて大した量ではないし、入って来る量がより少ないとなれば尚更だ。

モンスターを倒した際に得られる経験値は、その戦闘に参加したパーティメンバーで頭割りにする。だから、俺が戦闘に参加している判定を受けると、サラが獲得できる経験値が減ってしまう。

サラの育成のためにも、俺に経験値が入らないようにするべきだ。


じゃあどうすれば俺とサラがパーティだと認識されなくなるのか?

距離?

けれどそれだと、長距離射撃で相手を倒した場合、経験値が入らない事になる。

壁の向こうを歩いていただけの人が、戦闘終了時の経験値を獲得してしまう事になる。

だから距離はあり得ない。

距離でないとすると戦闘への参加意思か。


戦闘中に、サラに一切の援護を行わなければ、同一パーティだと認識されないんじゃないかと考えた。

なので補助魔法はダンジョンに入る前にできる限りかけておく。

そして、魔力の噴出が起きたら、俺はゆっくりとその場を離れて、壁際にもたれて静観の構え。


「ぼえええぇぐしゅ!?」


そして出現した山羊小鬼を、サラが撃破する。

ステータスの上昇に加え、槍戦闘のスキルのお陰でサラは十分足らずで山羊小鬼を撃破する事に成功した。

動きもこれまでの指示をよく覚えていたらしく、非常に様になっていた。


そして、俺に経験値が入った感覚は無かった。


よし。成功した。


「サラ、これからお前の成長を早めるために、俺は戦闘中、お前に助言などを行わないからそのつもりでいろ」


「はい」


実験が成功してから改めて説明する俺ヘタレ。

仮に間違っていても、サラにはLVや経験値はわからないんだから、しれっと別の方法を試せばいいだけなのにね。



名前:サラ

年齢:12歳

性別:♀

種族:人間

役職:タクマの奴隷

職業:なし

状態:疲労(軽度)空腹(軽度)


種族LV7→8

職業LV:戦士LV1→2


HP:49/57→63

MP:23/40→47


生命力:31→35

魔力:17→20

体力:37→40

筋力:30→33

知力:33→38

器用:51→54

敏捷:20→25

頑強:28→31

魔抵:24→27

幸運:9→9


装備:アシッドランス 灰色狼毛皮の服 灰色狼毛皮のズボン テテスの灰色狼毛皮のブーツ


保有スキル

奴隷の心得 清掃 不意打ち 従属 自然魔法 槍戦闘 パワースパイク スマッシュ 戦闘継続



同じやり方で続けて二体山羊小鬼を倒したらサラのLVが上がった。

単純計算今までの二倍獲得経験値が多いんだもんな。そりゃ成長も早いわ。

器用の伸びが緩くなったな。これはステータスが高くなった事で、日常生活で殆ど経験値が得られなくなったせいだろう。

『戦闘継続』は戦闘中の疲労上昇を防ぐスキルだ。

これまで一戦一戦が凄ぇ長かったからな。獲得してもおかしくはない。


「よし。サラ。補助魔法をかけ直して次だ」


「はい」


サラも自分が強くなっているのを自覚しているんだろう。力強く頷き、意気揚々と歩き出す。

うーんちょっと調子に乗り過ぎか?

確かに俺の所に来たばかりのステータスと比べれば、倍以上になっているけれど、それでも人間種の平均をやっと超えた程度のステータスだからなぁ。

スキルとこれまでの経験があるから山羊小鬼に勝てているけど、全てのステータスがサラより高いからなぁ。


「え?」


「え?」


歩き出して暫くして、サラがそんな呟きを残して俺の前から消えた。

俺もその光景を見て、思わずそんな呟きを漏らしてしまった。


え? なに? なにが起きた!?


落ち着け。落ち着いて状況を確認しろ。

『サニティ』『サニティ』『サニティ』……。


『マップ』と『サーチ』で周囲を確認。サラには『マーキング』をかけてあるので、『マップ』の範囲を超えてもその位置がわかる。

…………なんか凄い勢いで下へ向かってるんだが。

これ、まさか落ちてるのか!?

いや、その動きはやや斜めだ。多分、滑り台のような通路を滑り落ちてるんだと思う。


じゃあサラの身に何が起こった?

ダンジョンで突然その姿が消えて、下へ落ちて行く、となると原因は一つしかない。


落とし穴だ。


けれどシュブニグラス迷宮の第一階層にトラップなんて無かった筈。

いや、成長したのか!?

ダンジョンは生きている。マヨイガ程顕著でなくても、その姿形は日に日に変わっているんだ。


だから突然、第一階層に落とし穴などのトラップが設置されても不思議じゃない。


サラがどこまで落ちて行くのかわからないけれど、既にかなり下の階層まで落ちているようだ。

これはマズイ。本当にマズイ。


サラのステータスを考えれば、第二階層の山羊小鬼ですら既にキツイ筈。

しかも魔法が殆ど使えないから、ストーンゴーレムとの相性は最悪だ。


「くそ!」


まずは十三階層へ『テレポート』。

『サーチ』で確認すると、サラはやや上の階層に居るようだけど、まだ落ちて行っている。

これは、この階層も抜けてしまうか?


急いで『マップ』を使用して十四階層へ続く階段を探す。

上で止まれば『テレポート』で飛べば良い。

けれど、更に下へ行ってしまった場合は……。


「くそ……!」


最悪の想像ばかりが頭をよぎる。

させるか。そんな未来は許容できない。


助ける。

絶対に助ける。

絶対にだ!!


急転直下は、本来解決に向かう時に使う慣用句ですが、まぁ、落下とかけてみました。

実際には滑り落ちている訳ですが。

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