第51話:サラとの生活、二週目
休日出勤もあって日曜日中に間に合いませんでした。
サラとの生活二週目に入りました。
サラを購入して一週間が経った。
今日からは掃除洗濯料理、全てサラが行うようになる。
掃除や洗濯は既にサラが一人で行っていたけどな。
料理に関しては調理方法もうろ覚え出し、技術も拙いから、俺が色々指導する事になる。
さて、朝だが俺は八時過ぎに起きた。最近は毎日このくらいの時間に起きている。
「おはようございます」
「おはよう」
サラの部屋の扉をノックすると、すぐにサラが部屋から出て来た。
「サラ、明日からはお前が俺を起こせ」
「はい」
「大体このくらいの時間に起きて朝食の準備をして、それが終わったら俺を起こしに来い」
「はい」
「部屋の鍵はかけていないから、遠慮無く部屋に入って来い。揺すっても大声を出しても良いから、とにかく俺が起きるまで起こせ」
「はい」
「朝食はお前の好きに作って良い。けれど、夕食の事も考慮しろよ」
「はい」
うぅむ。返事は良いのだけれど、流石に不安だな。やっぱりもう少し、俺が監督するか。
「但し明日から暫くは朝食の準備をする前に俺を起こせ。お前が料理している所を確認し、必要なら指導する」
「はい。よろしくお願いします」
「よし。じゃあ今日の朝食だ。何が食べたい?」
「腸詰を茹でたものが食べたいです」
いきなり俺の料理じゃないものリクエストしてきたな。
まぁ、お土産で結構な量貰ったから別にいいけどさ。
よし、折角だからホットドッグにしよう。
白パンに切れ目を入れてそこに茹でたウィンナーを挟む。
ケチャップもマスタードも無いから味つけはマーガリンくらいしかないけどな。
あとはスープと青汁だ。
「お前が朝食を作る場合でも青汁はつくから」
「…………はい」
返事までの間と、返事をした時に発光した首輪で、大体サラの感情がわかった。
「青汁が必要無いくらい野菜を使えば出ないが?」
「青汁でお願いします」
うん。青汁は我慢して飲んでしまえば終わりだもんな。
「「いただきます」」
うん。やっぱりパンにウィンナーは合うなぁ。
けど、パンはもう一回焼いた方が良かったな。やっぱり外側がパリパリのパンの方がホットドッグには合う。
まぁ、サラは満足してるみたいだし良しとしよう。
さて、明日サラは何を作ってくれるんだろう?
朝食とその片づけを終えたら掃除だ。
「基本的には先週した場所を掃除して貰う。ただ、昨日言った通り、午前中であればどれだけ掃除しても構わない。先週掃除した分が終われば、その翌日は掃除は休みだ。ただ、俺もチェックしているからな。手を抜いたりしたらやり直しにするから」
「はい」
うん、テンション上がってないね。まぁ、掃除が休みでも他の家事もあるし、ダンジョン行ったり勉強したりもあるしなぁ。
あと、サラに休暇の概念が無いかもしれない。
要は仕事が休み=嬉しいという感覚が彼女に存在しないんだ。
まぁ、好きで家事をやってくれるのに越した事はないけれど、そうでないならそのうち休み=嬉しいという図式が生まれるだろう。
サラが掃除している所を確認しつつ、俺は素材の還元や錬成を行う。
まぁ、監督とは言ったけれど、別にサラがサボってないかどうか見張ってる訳じゃない。
そこそこ育ったとは言え、まだサラのステータスは低い。
洗濯、掃除と、この世界だとまだ重労働の仕事を三時間ほど続けてできるだけの体力がまだ無いんだ。
だから『オートヒーリング』と『エナジーサークル』と『スタミナタンク』を最初にかけて、頃合いを見てかけ直してやらないといけないんだ。
今日はリビングと一階の廊下、そして階段まで終わった。
実は階段を掃除している途中で昼を回ったのだけれど、まぁ、キリが良い所までって事で、階段が終わるまで待ったんだ。
これは、一日で全てやり切れる日は遠そうだな。
昼はガルツで食べ、そのままダンジョンへ向かう。
何度も言うけどサラのステータスはまだまだ低いので、一階層で山羊小鬼と戦わせる。
ただ技術はそれなりについてきたように思う。動きが遅いのでそんな風には見えないけれど、槍を振るう動作自体はらしいものになっていた。
名前:サラ
年齢:12歳
性別:♀
種族:人間
役職:タクマの奴隷
職業:なし
状態:疲労(重度)空腹(重度)興奮(軽度)
種族LV4→5
職業LV:取得職業なし
HP:28/40→43
MP:4/28→31
生命力:24→26
魔力:12→13
体力:24→28
筋力:20→23
知力:23→26
器用:32→38
敏捷:16→17
頑強:25→26
魔抵:21→22
幸運:8→8
装備:アシッドランス 灰色狼毛皮の服 灰色狼毛皮のズボン テテスの灰色狼毛皮のブーツ
保有スキル
奴隷の心得 清掃 不意打ち 従属
山羊小鬼を二体倒したところでサラのLVが上がった。
器用と体力の伸びが良いのは家事の影響だろうか。知力は勉強だな。
なんか妙なスキルがついたぞ。
ふぅん、誰かの指示を受けると能力が上昇するのか。
合わせて四体の山羊小鬼を倒したところで今日は終了。
夕食の材料を買って帰る。
さて、今日からはサラがメインで作る事になる。とりあえず初日と同じハンバーグだ。
「いや、待て待て待て」
洗ったニンジンをまな板の上に置き、左手で押さえると、包丁を持った右手をサラが振りかぶった。
ところで流石に止める。
「俺が料理するところ、見てただろ?」
「…………はい」
見てなかったな、これは。多分、料理自体に目が行って、調理の方は目に入ってなかったんだろう。
「まず包丁はそんなに振りかぶらなくていい。ていうかニンジンはまず皮を剥け。こうやって……」
俺が背中からサラの腕を掴むと、サラがびくり、と体を震わせた。おい、いい加減慣れろ。
いや、難しいか。まぁ、真面目に指導して、そういうつもりでない事を理解して貰おう。
うん、この他人の体温が近くにある感じ。指導に集中しないと俺も色々やばい。
左手でニンジンを握らせ、右手は包丁の刃を背から持つように握らせる。
「力加減はこのくらいで……」
ゆっくりと、ニンジンの皮を剥いていく。まずは感覚を覚えて貰おう。
「で、皮が剥けたらまな板の上に置き、左手は猫の手って言って、こう丸める」
指の形を、上から包み込む形で教え込む。
うむ、すべすべで柔らかい。
『サニティ』『サニティ』『サニティ』…………。
「包丁は振り下ろすんじゃなくて、刃を対象に当てて押すか引くかして切るんだ。その際、包丁の側面に左手の指が当たるようにしておけば、左手を切る危険が無くなる」
すと、すと、すと、とゆっくりと、しかしリズミカルにニンジンを切っていく。
輪切りができたところで縦にざっくりと切る。
あとは一枚一枚細かく刻んでいく。
「次にタマネギだ。カレーの時にわかったと思うけど、タマネギは切っていると鼻がツーンとして涙が出て来る。防ぐ方法は色々あるけど、まぁ、鼻をつまむと良いそうだから、俺がつまんでやる。その間にお前はタマネギのみじん切りを終えろ。基本はニンジンと同じだ。ゆっくりでいいから気を付けて、丁寧にな」
「はい」
おお、鼻をつまむとそれなりに効果があるみたいだな。若干涙目だけど手元が狂うような事も無く、危なげなくタマネギを切っている。
「これを一旦炒めて……」
まぁ、包丁を使う場面さえ終われば後は後ろから順番を指示するだけで足りる。
非常に時間はかかったけれど、ハンバーグができた。
見た目はそこそこ。味もまぁ、特に変な動きはなかったし、大丈夫だろう。
「「いただきます」」
ポテトサラダを付け合わせにして、俺達は食べ始めた。
うん、まぁこんなもんだな。多分俺が作っても似たような味になる筈だ。
サラは無言で食べているけれど、びっくりしているような、感動しているような表情を浮かべている。
「どうした?」
「私が、こんなに、美味しい物を作れるなんて……」
言葉にしたせいで感情が溢れてしまったのか、サラの目から雫が零れた。
「ああ。ちゃんと俺のいう事を聞いて、丁寧に作ったからな。これはサラの努力の証だよ」
よく頑張ったな、と俺はサラの頭を撫でてやった。
そう言えば、サラの頭を撫でたのってこれが初めてじゃないか?
頭を洗った時に髪を触った事はあるけどさ。
ていうか今、ごわっとしたよ?
この一週間、きちんと洗っていたお陰でサラの髪は色がちゃんとわかるようになった。
白髪でも灰色でもなく、銀髪だと誰もがわかるだろう。
そしてわずかながら光沢を放っているし、昼の光を浴びてキラキラと輝く様はかなりキレイだった。
だからあんまり気にしてなかったんだけど、なんだこの手触り。
普通こういう髪ってサラサラしてるもんじゃないの?
なんだ? ごわって。
まぁ、予想はつく。
風呂上がりに魔法で髪を乾かしているけど、それは濡れたまま寝ると風邪を引くとか、翌朝の寝癖がひどい事になるからだとか、ともかくそういう理由だ。
決して、髪を綺麗に保つためにやっている訳じゃなかった。
だから忘れてたんだ。
櫛かなんかで髪を梳かしてやる必要がある事を。
うん、今度櫛買ってやろう。
そういや前にブラシ買おうと思った事があったな。すっかり忘れていたぜ。
折角綺麗な銀髪なんだ。きちんと手入れしてやりたいし、させてやりたいよな。
翌朝
控えめなノックの音で目を覚ます。
まだ半分寝ている中で、時計を確認すると八時前だ。
サラが起こしに来たんだろうけど、ちょっと早いな。
まぁ、サラは時計とか持ってないから、むしろそこそこ時間感覚があると言えるんじゃないだろうか。
ちょっと、サラが俺をどういう起こし方をするのか気になったので、返事をせずにそのまま眠り続けた。
ゆっくりと、扉が開く気配がする。
サラが部屋の中に入って来た。そろりそろりと俺の方へ近付いてくる。
そして俺の前に立ち――
ガンガンガンガン
「!!!???」
突然鳴り響いた大音響に、俺はベッドから跳ね起きた。
音が止む。見ると、サラが鍋とお玉(木製)を手にしてそこに立っていた。
頭上で掲げるそのポーズは、まるで今までそれらを打ち鳴らしていたかのようで……。
「おはようございます」
「……おはよう」
いや、実際打ち鳴らしていたんだろう。まさかそんな古典的な手法で起こされるとは思わなかった。
いや、地球とは違うとは言え、ここの文明はかなり遅れている。つまり、古典的ではないという事か。
「それで起こしたのか?」
「はい。私はこのように起こされていましたから」
どうやら奴隷商のデフォルトだったらしい。
「今度からは禁止だ」
「何故でしょう?」
「……鍋とお玉が痛む」
「わかりました」
あっさりと引くサラ。コイツ、本当はわかっててやったんじゃないだろうな?
ちらりと彼女の顔を見るが、いつもの無表情なので感情を読み取る事はできなかった。
けれど俺の目は誤魔化せない。何せ『アナライズ』があるからな。
状態:歓喜(軽度)興奮(軽度)
ドッキリ大成功で喜んでるじゃねぇか。
「今日は卵料理にしよう」
深く突っ込まず朝食の準備に入る事にした。
「はい」
「まずは簡単な目玉焼きからだ」
と言っても、油を引いて卵を落とすだけだ。
けれどここで意外な弱点が発覚する。
サラ、卵割れなかった。
いや、力が足りないとかじゃなくて、上手く割れないんだよね。殻が入るくらいなら良い方で、大抵グシャっと潰れちゃうもんな。
「角を使うと割りやすい。殻が内側に入らないようにするなら平坦な場所で割る方が良いけれど、まぁ、それは慣れてからでいい」
「はい」
そして俺はサラに卵を渡す。受け取ったサラは暫くじっと見つめた後、
「えいっ!」
と力いっぱいにまな板に叩きつけた。
「あ……」
グシャリと潰れる卵。眉尻を下げてこちらを見るサラ。続く気まずい沈黙。
「もう一個、いってみよう」
「……はい」
若干返事に力が無い。
「軽くでいいんだ。コンコンって叩くくらい。まずは角に当てても卵が割れない力加減を目指せ。そこから徐々に強くしていけばいいから」
「はい」
何度かコンコンと角に打ち付け、そこから徐々に音が大きくなっていった。
都合、何十回目か忘れたけれど、長い時間をかけた結果、二個目は無事に割る事ができた。
まな板の上で潰れてしまった分は殻を取り除き、俺が玉子焼きにした。
どっちがいい? なんて聞けば間違いなくサラは自分が潰してしまった卵を使った玉子焼きを選ぶだろうから、何も言わずに俺が玉子焼きを食べる事にする。
「あの……」
「気にするな。最初から上手くできる奴なんていないんだから。二個目は上手くできたじゃないか」
「…………ありがとうございます……」
うぅむ、目に見えてしょぼくれている。
朝食後、洗濯と掃除をしている間、俺は少し出かける事にした。
『テレポート』でルードルイへ飛ぶ。
大丈夫だとは思うが、できるだけ早く帰ってやりたい。まだサラじゃ何かトラブルが起きた時に上手く解決できないからな。
通りの両側に立つ露店や屋台を流し見しながら早歩きで進む。目当ての商品があったら『アナライズ』で確認。
そこそこの値段で、それなりに良い物を探す。
「お」
と、俺はある露天商の前で足を止めた。
その露天商は茶色に汚れたローブを纏っていた。
正体を隠している訳じゃないのは『アナライズ』で見ればわかる。
大陸西側の小国からやって来た商人だ。乾燥地帯にある国なので、このようなスタイルをしているんだ。
彼の前に並ぶのは様々なアクセサリー。
宝石の類は殆どないが、珍しく、綺麗な石や、何か動物の骨を使って作られているらしい品物が並んでいる。
そこにある一つの櫛が目についた。
「これ、幾らだい?」
「いらっしゃい。それなら50デューだよ」
櫛一つに五千円と考えれば高いと思うかもしれないけれど、櫛なんてそれこそピンキリだからなぁ。
「そうか。じゃあこっちの腕飾りと併せて60でどうだ?」
俺は隣に置かれた、何かの鳥の羽で飾られた腕飾りを手に取る。
「うーん、65でどうだい?」
「いいだろう」
俺は商人に銀貨七枚を支払い、銅貨五枚をお釣りとして受け取った。
勿論目当ては櫛だったけれど、この品物の価値に気付かれないよう腕飾りも一緒に購入したんだ。
まぁ、あって困るものじゃないしな。
フェレンダの花櫛:[分類]装飾品
[種類]櫛
[耐性]斬△突△打△火〇熱〇氷〇水〇風〇土〇石〇雷〇光△闇△
物理防御力0
魔法防御力0
重量1
このアイテムを装備している者は『魅了』状態にならない
精神耐性(小)を得る
[固有性能]春花薫風
最大MPの半分を消費すると、魔法防御力:消費したMP×2の防御結界を作る事ができる
なんでもウェルズ山脈の向こうで発見された遺跡から発掘されたものだそうだ。
完全にマジックアイテムです。ありがとうございました。
普通に考えれば1万デューはくだらないだろうレアものだけど、どうやら商人はそれを知らなかったようだな。
これがあの商人の手作りだっていうなら、テテスの時と同じように保護していたんだろうけど、自身の目利きが拙いだけの商人なら遠慮は無用だ。
どうせこのアイテムをあの商人に売った人間も、大して価値があると思ってなかっただろうからな。
まぁ、櫛で耐性とか精神抵抗とかあっても確認のしようがないもんな。
ここに来るまでに誰か『物品鑑定』持っている人間が居なかったんだろうか?
春告鳥の腕飾り:[分類]装飾品
[種類]腕輪
[耐性]斬△突△打△火△熱△氷△水△風〇土△石△雷△光△闇△
物理防御力0
魔法防御力0
重量1
『困惑』になりにくくなる
[固有性能]なし
こちらも中々。とは言えマジックアイテムと言う程の品じゃない。薄い桃色が綺麗な羽飾りがついているだけの腕輪だと思うだろう。
春に大陸東端西側の小国で見られる小鳥の羽を使った装飾品だ。
遠方から運んで来た以上の価値は無いとも言えるが。
想定していたより良い物が手に入った。
正直、作りの良い物であれば良かったんだけど、まさかマジックアイテムが手に入るとは。
ともあれ俺は再び『テレポート』を使用し、家に帰った。
特にトラブルなどは起きていなかった。
今日の風呂の後に櫛をプレゼントするとしよう。腕飾りは明日のダンジョン探索前に渡す事にする。
昼食の後は勉強の時間。
やはり掛け算に苦しんでいるようだ。
5×3が、3個で一組のグループが5組ある、という事は何となく理解したようだ。
基本はできている。けれど、九九ができないせいで二桁の掛け算になると計算が追いつかなくなってしまうようだ。
筆算を教えてみようと思ったけれど、アラビア数字なんて便利なものが無いこの世界だとそれも難しい。
いっそアラビア数字を教えてみるか?
とりあえず今は数をこなさせる事くらいしか対策が思いつかない。
ああ、こうして子供は勉強が嫌いになっていくんだな……。
俺は理解が早かったし、人から褒められたりするのが好きだったから、勉強も特に嫌いじゃなかった。
まぁ、あくまで手段としてだけどな。勉強が好きだから勉強する、なんて高校時代の化け物共の気持ちはわからん。
今日は読み書きにある程度時間を残した。
魔法を教えるためだ。
基本的に魔法は呪文の詠唱を丸暗記すれば使えるようになる。
後はその魔法の効果を理解し、どのような結果を及ぼすのかをイメージできれば、魔法は発動する。
それがどのような魔法かは後日実際に見せて教えるとして、今はとりあえず呪文の詠唱を覚えさせる。
ステータスが規定値を突破した後、実際に魔法を使わせて、魔法使い系の職業を獲得させよう。
今日の夕食は唐揚げだ。
順番的にはアジフライなんだけど、アジフライにはアジを捌く、という工程があるからな。まだ包丁の扱いに慣れていないサラだと難しい。
要は揚げ物を教えたかったので、唐揚げにしてみた。
トンカツより喜んでいた記憶があったからだ。
あと下拵えがトンカツやカツレツより多いので、色々教えられると思ったからだ。
醤油とみりんと砂糖を混ぜて作ったタレに鴨の肉を漬け込み、よく揉みこむ。
「味がしっかりと沁み込んだら、小麦粉をつけて熱した油で揚げる。この時油がはねるから火傷しないように気を付けろ。今日は『ヒートターミネート』で防御してやる」
「はい、ありがとうございます」
特に気にせずサラはお礼を口にするけれど、実際に魔法を学び始めたら、俺が手軽に日常生活に使用してる魔法が、どれだけ高位の魔法かわかってびっくりするだろうな。
ちょっとその時が楽しみだ。
ちなみに『ヒートターミネート』は第四階位の真理魔法。効果は熱属性攻撃の完全無効化。
名前からなんとなくわかると思うけど、この無効化魔法は『コールドターミネート』とか各属性に存在している。
タレの作り方も下味のつけ方も、肉の揚げ方も同じだったので唐揚げは以前作ったのと大差無い味になった。
今日の付け合わせはポテトサラダと香草スープ。
あー、米食いてぇ。
「サラ、ちょっとこっち来て座れ」
風呂から出たサラをリビングに呼ぶ。素直に近付いて来たサラは、ペタンと床に腰を下ろした。
おお、久しぶりだな、この感じ。
いつもなら床じゃなくて椅子に、と言うところだけど、意外と良い高さだ。
「ちょっとそのままでいろ」
「え?」
どうやらサラもネタとして床に座ったらしく、俺が注意しなかった事に意外そうな声を上げた。
俺はサラの背後に椅子を置き、そこに座った。そしてサラの髪を手に取る。
やはりごわっとしている。キューティクルが復活して光沢を放っているのに勿体無い。
「あの……?」
「櫛を買って来た。これからお前の髪を梳く」
「あ、ありがとうございます」
「これからも風呂上りは髪を乾かした後、こうして櫛で髪を梳かすからな」
「……自分でやりますよ?」
「暫くは俺にやらせろ」
そして俺はサラの髪に櫛を入れる。所々で引っかかったけれど、できる限り引っ張ったりしないように気を付ける。
「……はい」
サラが呟いたその時、首輪は何の反応も示さなかった。
風呂上りは幸せな時間。
インド人なんかは二桁の掛け算を九九(みたいなもの)でできるらしいですね。
アラビア数字無しで筆算とか無謀も良いところです。




