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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第43話:レンジャーへの道② 野伏獲得

という訳で野伏獲得と家完成回です

朝、建築ギルドの人達と入れ替わるように建設場所からガルツへ移動。迷宮へ潜って魔法の石を集める。

十一階層以降は出現するモンスターの割合は、山羊小鬼が減り、ウィッカーマンが増えた。ストーンゴーレムの出現頻度は上がったようには思えない。

けれど、ごく稀にではあるけれど、山羊小鬼と一緒に出現するようにもなった。

これまでも、出現した山羊小鬼と、以前に出現してそのまま迷宮内で生活していた山羊小鬼がバッティングしたりして、一対多の戦いを経験はしていた。

けれど、同時に出現するというのは初めての事態だった。

ただ冷静に確認すると『常識』の中にその知識はあったので、階層を深くすれば、二体、三体と同時に出現するようになるようだ。

けれど、ただでさえ耐久力と敏捷性に優れる山羊小鬼と一緒に、物理攻撃に対して高い耐性を持つストーンゴーレムが出現すると、並みの冒険者パーティじゃ歯が立たないんじゃないか?

ああ、やっぱり。

『常識』で確認すると、十一階層以降へは、ベテラン冒険者が四~五人以上のパーティでないと厳しいとあった。


昼食をダンジョン内で摂りつつ、『キャストアストーン』や『錬成』を行う。

そして夕方まで狩りを続け、ギルドで魔石の売却や、他の街へ『テレポート』で移動して素材やアイテムを売却。

日が暮れる頃に建設場所へ赴き、仕事を終えた建築ギルドの人達と入れ替わるようにそこで野営。


徐々に形ができていく家に、若干興奮しつつ、そんな生活を続ける事二十日。

ついに俺は『野伏レンジャー』の職業を獲得する事に成功する。


これでダンジョン探索は勿論、旅をする時も色々と楽になるぜ。

折角『森林踏破』を得たんだから、エルフィンリードへ行ってみるのも面白いな。


まぁ、今は魔法の石をとにかく大量に用意しないといけない。


家はもう殆どできていた。

俺の希望通りの木造建築。

扉はこの世界では珍しい外開き。そして玄関で靴を脱ぐ仕様だ。

窓にはガラスを使いたかったけれど、安全性に欠けるとレセンダさんに却下されたので、外と内の両方に鎧戸をつけてみた。

ちなみに窓と扉は魔樫の材木を使用して作られているので、他の部分より防御力が高い。


台所には普通の竈の他、耐火煉瓦を用いた石窯も造ってもらった。

内政チートもので耐火煉瓦を造る時、耐火煉瓦を用いた窯を使用して造る、というとんちのような問題に突き当たる。

けれど、この世界には既に耐火煉瓦があったし、造るのも簡単だった。

『錬成』でできるんだ。

材料は普通の日干し煉瓦。ただ『錬成』すると半分くらいの大きさの耐火煉瓦になる。

ゲーム的に言えば、煉瓦二つを錬成して耐火煉瓦一つを造る、という感じか。


ただこの耐火煉瓦、コンクリート並みに『錬金術師アルケミスト』の要求LVが高いらしく、コンクリートを『錬成』できない術士では、同じく『錬成』できなかった。

作業効率を上げるために、朝と夜に俺が必要数を『錬成』する事になった。

まぁ、俺の経験値にもなるし、『錬成』スキルの習熟度も上がるから、別に良いんだけどさ。


囲いの塀はまだ半分もできていない。魔法の石の絶対数が足りないからだ。

一応家の正面からやや外れた位置に、鉄製の門扉は先に造っておいて貰った。

塀も門も高さは俺の腰くらいだ。相手の侵入を妨害する事を目的にしているんじゃなくて、ここは他人の敷地だと教えるためのものだからこれで十分。

野生の動物や魔物はこの高さでも入って来ないだろうからな。


「家の方は細かい調整をすれば完成だよ。住むだけならもう住める。塀の方はどうする? 伝手で魔法の石を仕入れて残りを仕上げてやってもいいけど?」


「いえ、家の完成で契約完了で構いませんよ。とりあえずロープを張っておいて、コツコツと魔法の石を貯めていきます。まとまった数が揃ったらまた依頼しますよ」


「そうかい? まぁ、元々の目的が違うから、それでもいいのか」


極端な話、塀は完成しなくてもいいんだから。むしろ、何かしらの理由で敷地を拡張しようとした時、邪魔にならなくて済む、という利点がある。

レセンダさんも塀に関しては特に気にしていなかったらしく、俺の意見に素直に従ってくれた。


翌日はダンジョンに行かずに、内装をレセンダさんと相談して微調整していく。

とは言え、建築技術に関して、俺の知識は無いに等しいし、デザインに関してはセンスが無いため、俺がどんな風に生活するかをシミュレーションしてレセンダさんに伝えて、それを基に職人さん達が調整していく形になる。


そして建設開始から二十二日。遂に俺の新居が完成した。


「いい仕事させて貰ったよ、ありがとうね」


「いえ、こちらこそ、良いものを造っていただいて感謝しています」


俺とレセンダさんはガッチリと握手する。

ちなみに、コンクリートを『錬成』できなかった『錬金術師アルケミスト』は結局コンクリートを造れなかった。一応、三人の内の一人は耐火煉瓦を『錬成』できるようにはなったので、必要LVはコンクリート>耐火煉瓦という事が判明した。


「ダンジョンなんかで敵を倒した方が『錬成』できるようになると思いますよ」


「そう言えば、非生産職でも戦闘はするべきって報告がどっかにあったね。ふぅん、なら試してみるか」


そう言った時のレセンダさんは非常に悪い顔をしていた。

ガルツには錬金術師ギルドが無いから、『錬金術師アルケミスト』達は冒険者ギルドからの派遣かフリーランスだろうか?

それならそれほどひどい事にはならないだろうけど、もし建築ギルドに所属しているとなると……。


まぁ、死なないようには配慮してくれるだろう。


ちなみに建設途中で二度目の仕送りが発生。

やっぱりすっかり忘れていた二度目の二十五日目。

前回と違って零時に現れず、フェルディアルはレセンダさん達がやって来た時を見計らって出現した。


間違いなく狙ってたんだろうな。

例によって手紙は忘れていたので、三十日目に渡す事になった。

今回は家を建てた事を報告する。

流石に妹の事は言えない。異世界に俺が居る事は母も知っている筈なので、そういう事もあると理解してくれる可能性もあるけど、デリケートな問題だしな。

今度ユリアに聞いておくか。


父さん向けに、家は外国なんで格安で建てられた事にしておく。


レセンダさんこそ堂々とした態度を崩していなかったものの、女神を始めて目にしただろう職人さん達は皆平伏していた。

なまじ、相手の強さをある程度測れる冒険者達は、その力の差を感じてしまい、気絶する者まで出た。


結局三十人以上に洗礼を授けて、満足気に女神は帰って行った。

三十日目にも出現するかと思ったが、この日は夜の内に出て来た。


「有難味が薄れるじゃないですか」


何故みんなが居る間に出て来なかったのかを尋ねた俺に、女神はそう答えた。

考えてみれば、前回の時も俺が一人で居る時に出て来たな。

あれはてっきり、たまたま俺が零時に一人で居たからだと思っていたけど、違った訳か。


「それに新しい方もいらっしゃいませんし、洗礼を授ける事ができませんからね」


なんとも俗っぽい理由だ。

けれど、信仰心が自分の力に直結する神にとっては、切実な問題だろうから、敢えて何も言うまい。

宗教が高尚で高潔なものなんて、俺も思ってないからな。そのトップの女神様にそうある事を望むのもおかしな話だ。



家が完成した翌日、どこで情報を仕入れたのか、あるいは監視していたのか。

妹が土産を持って新築祝いにやって来た。


扉をノックされて、中で寛いでいた俺は驚いた。

一応『サーチ』で周辺を確認していたし、朝には『空気の嫁セカンダス・エアリアル』をかけておいたのに、何の反応も無かったからだ。


魚眼レンズこそ無いものの、作って貰ったのぞき穴から外を見ると、黄斑のローブを纏った三つの人影がそこにあった。


「おーにーちゃーん、あーそびーましょー」


その人影の真ん中の人物が、バリトンヴォイスでそんな事を言った。

キモイ以外の感想は無かった。


仮に俺が知っている通りの外見をした妹のままだったとしても、キモイと思っただろう。

兄と妹の関係は色々複雑なんだ。


「いきなり来るなよ、お前」


「この世界に郵便なんてないからね、しょうがないじゃない」


そういうユリアだけど、ゴブリンキングダムには郵政事業がある事を俺は以前に聞いている。

手紙だけじゃなくて、小包なんかも運んでくれるし、まだまだ機能していないけど、保険もやっているというから、マジで今の日本郵政に近い業務形態らしい。

ちなみに公共だ。

損切ができない郵政事業を民営化する意味は無いとのたまっていた。

その通りだと思った。

まぁ、日本で民営化を実行した政治家には、何か思惑があったんだろう。

俺達庶民がわからないような、深い政治的意図がな。


考えて見れば、鉄道だって民営化していいもんじゃないよな、普通。

過疎ってる山奥とかの村の方が必要なのに、採算が取れないからって廃線が相次いだ結果、村を出る人間が多くなって過疎が進む、とか、完全に本末転倒だとしか思えん。


まぁ、今の俺には日本の政治事情は関係ないし、ゴブリンキングダムに関しても、それは王たる妹が考えればいいことだ。

仕送りを終えて、ある程度の貯蓄を作って、向こうに帰った時、少しでも良くなっている事を祈ろう。


……今度フェルディアルに向こうの新聞を頼んでみよう。

ガチ浦島太郎状態とか本気でシャレにならん。


一緒に来た二人の護衛らしき人物も、ユリアに続いて家に入る。

ローブを脱ぐと、以外にも、人間の女性が姿を見せた。

部分鎧を纏い、剣を佩いた二人の女性。



名前:エフィメラルド・アンリ・フォン・セイナン

種族:人間

性別:♀

年齢:21歳

役職:ゴブリンキングダム鬼母

種族LV:32

職業:強剣士



名前:エメラルド・エンナ・セリナン

種族:人間

性別:♀

年齢:23歳

役職:ゴブリンキングダム鬼母

種族LV:33

職業:羽剣士




お前(ユリアン)のハーレム要員じゃねぇか。

まぁ、種族LVも高いから、護衛もかねてるんだろうな。職業も上位職業だし。


「護衛かと思ったらお前のハーレムかよ」


「え? 違うよ。確かに私の子供産んで貰ったけど、私ゴブリンだもん。ヒトに興味ないよ」


俺の言葉を即座に否定するユリア。おい、二人ともしょぼくれてんぞ。


「まぁ、でも健気だし忠誠心高いし役に立つから、大事にはしてるし、信頼もしてるよ。ほら、あれだよ。ヒトがペット大事にするようなもん?」


「お前な……」


しかし言われた二人は少し嬉しそうだったので、俺はそれ以上何も言わないでおいた。

しっかし、名前が似てんなぁ。家名みたいなもんが違うから、姉妹って事はないんだろうけど。

エフィメラルドって、件のエフィさんだろうか?


「へぇ、お兄ちゃん、良い家建てたじゃない」


内装を確認しながら妹がそう評価した。

前回で慣れた筈だけど、二十日以上経ってしまったせいで、記憶がリセットされたのか、バリトンヴォイスの女性言葉に違和感バリバリだった。


「ちゃんと新築の祝いも持って来たよ。エリ?」


とりあえずリビングに通して座らせる。残念ながらお茶やお茶菓子の準備はまだできてないから、小川から汲んできた水に『ピュリフィケーション』をかけただけのものしか出せなかった。

お茶請けに関しては、土産と言って渡されたクッキーをそのまま出す事にした。


ユリアが言うと、エメラルドの方が何もない空間から何か巨大な布に包まれたモノを取り出した。

『マジックボックス』!? いや、現実的に考えれば『リトルマジックボックス』の方か?


「『マジックボックス』が使えるのか? あれって相当高度な魔法だろう」


「ううん。それより簡単な『リトルマジックボックス』だよ」


俺のカマかけにあっさりノッてくれる妹。多分、バレてるだろうけど、隠す気も無いんだろうな。

ちなみに、二人にも椅子と水を勧めたのだけど、二人はユリアをちらりと見ただけだった。

ユリアも何も言わない。上下関係厳しすぎると思うけど、一代で王国を築いてそれを運用しようと思えば、仕方ない事なのかもしれない。

ユリアが何も言わない以上、俺が何か口出しする事はできない。

正直若干、人間のクセにユリアになにタメ口きいてんだテメェって空気が二人から漏れ出てるからな。

俺の好意は間違いなく跳ね除けられるだろうし、そんな態度の二人に優しくしようとは俺も思えなかった。


「綿の詰まった敷き布団に羽毛のかけふとん。綿と羽毛を入れた枕だよ」


「おお!」


これはマジでありがたい。

ユリアの所から戻ってから、高級宿の寝具すら俺にとっては寝苦しいものだったからな。

野宿の方が開き直れる分寝やすいってどういう事だよ。


「これはマジで嬉しいぜ! サンキューな。今の所何も無いけど、そのうち何かお返しするよ!」


「うぅん、いいよ。今のお兄ちゃんにそんなの期待してないから」


「うぐっ……!」


グサリと胸に刺さったぜ。


「まだまだ私の好きだったお兄ちゃんには遠いかなー? もうちょっと頑張ってから、私のお兄ちゃんだって自慢させてくれればそれでいいよ」


昔の俺が強過ぎる!

過去の自分を捨てられず、高校で道化を演じる事のできずにヒキコモリになった俺。

そして今、過去の自分が強大な敵となって俺の前に立ちはだかっている。


確かに俺自身、中学までの自分はまだまだ色々できていたと思ってるけど、ユリアの中の俺はどこまでの存在になっているんだろうか?

絶対に美化されてるよなぁ。そんな俺を追い抜く事は勿論、追いつく事もできるのか?


「そういや王国との交渉はどうだ?」


「まだかなー? 周辺国がまだ様子見してる段階だし。王国もゴブリンに備えつつも、自国の国力回復を優先してるし」


周辺国は、一番積極的だと思われていた帝国が動いてないのが原因らしい。セニア、頑張ってるんだろうか。


「だからもうちょっと突っついてみるつもり」


「…………止めやしないけどさ。できるだけ人が死なないようにしてくれよ」


後ろの二人も複雑そうな顔してるぞ。王国貴族だったりするんだろうか?


「まぁ、私もね、別に人殺すのが楽しいって訳じゃないからさ。でも国力下げるのって一番良いのは経済を破壊する事だし、そうなると必然的に商人とかの一般人がターゲットになっちゃうよねー」


「…………うん、まぁ、ほどほどにな」


「護衛を頼まれたら別に引き受けていいからね。手加減はさせないけど」


明るく言う妹が、やっぱり遠いぜ……。


「そう言えばユリア。俺が月一で母さんに仕送りと手紙を渡してるのは言ったよな? それにお前の事って書いていいか?」


俺は一応、後ろの二人を考慮して日本語で話しかけた。

ユリアも日本語で返す。


「え? 駄目だよ」


即答だった。


「一応理由を聞いても?」


「母さんがこっちの世界を知ってるとは言っても、どのくらい知ってるかわからないでしょ? 生まれ変わりってのもどのくらい理解してるのかわからないし、ゴブリンに転生っていうのがどういう事なのかわからないかもしれないじゃない? 実は生きていた、とか、そのうち帰ってくるかもしれない、とか勘違いされたらまずいでしょう?」


勘違い……か。そうだな。ユリアはもう俺の妹の友理愛じゃないんだ。ゴブリン達の王、ユリアン・ザ・キングなんだ。

人間の姿で生まれ変わっていたら、ひょっとしたら里帰りを考えたかもしれないけれど、もう完全に別の生物になってるもんな。

会いたいという気持ちはあるだろう。俺に再開できた事を凄く喜んでいたんだから、母さんにだって会いたいに違いない。

けれど会えない。理由は、ユリアが言った通りだ。

この世界や自分の事を、どのくらい理解しているかわからないからだ。

つまり、怖いんだ。

暖かく受け入れられるならともかく、拒絶される可能性があるからな。

一度死んだとは言っても、ユリアの話だとほぼノータイムで生まれ変わった認識らしいから、母さんとの思い出も鮮明に残っているだろう。

そんな家族に拒絶されたら、と思うと、怖くて会えないというのは、非常によくわかる。


もうあっちの世界は、ユリアにとって帰る場所じゃないって事だ。

これも、転移しただけの俺と、転生したユリアとの違いだろうな。


「そうか、わかったよ。でも、まぁ、気が変わったらいつでも言ってくれ」


「うん、わかった。無いとおもうけど」


俺だって、今はそのうち帰るつもりではあるけれど、どうなるかわからない。

既に漫画もアニメもゲームも無い世界に慣れつつあるしな。


「何か困った事があったら連絡してよ。手伝える事なら力を貸すよ?」


「助かるけれど、まぁ、あれだ。できる限り自分でやるさ。いつまでも妹の世話になる兄ってのも情けないしな」


「ふふ、流石私のお兄ちゃんだね」


「このプライドの高さのせいでヒキコモリになっちまったんだけどな」


「いいじゃん。自尊心が無いより全然良いと思うよ。私は」


そう言って貰えると、少し心が楽になるよ。


「でも連絡ってったって、どうやって? 電話も郵便も無いだろ」


手紙は目当ての場所に行く相手に金払って頼むってのが普通だからな。冒険者のクエストで配達クエストがあるけど。

まさかゴブリンキングダム宛に配達クエストを依頼する訳にはいかないだろう。


「今回の訪問でわかったかもしれないけど、お兄ちゃんの様子は部下に調べさせて報告さえてるから」


ああ、やっぱ監視してたのか。


「監視って言うと言葉が悪いけど、さっきはああ言ったけど、できればお兄ちゃんとは敵対したくないからね。そのための情報収集だよ」


うっかりお兄ちゃんと深い付き合いがある人を殺したりしないようにさ、なんて言われても、まるで安心できないぞ、妹よ。


「だから、そうね。私に連絡したい時は、庭に黄色い布を掲げてくれる?」


「ああ、わかった」


それなら、そのつもりが無くてもうっかり呼んでしまうって事もないだろうし、他の人間からじゃ意味がわからないだろうからな。


「こっちから用がある時は、ドアに手紙挟んでおくからさ。日本語で」


「ああ、わかった」


一番良いのは、俺がゴブリンキングダムの場所を知る事なんだけど、向こうから言い出さないうちは提案しない方が良いだろうな。

色々便宜を図ってくれるけれど、ユリアにとって大事なのは俺よりもゴブリンキングダムとそこで暮らすゴブリン達だ。

俺が邪魔だと思ったら、これを排除する事に躊躇しないだろう。できる限り回避する方法を模索してくれるだろうが、俺を排除しない、俺だから排除しない、という結論には至らない筈だ。

だから、ユリアから許可が出るまで、俺はゴブリンキングダムには赴かない方が良いと思う。


ちなみに『テレポート』で飛ぶ事は今の所不可能だ。

場所が特定できていないせいか、上手く座標を設定できないんだ。


その後一時間ほど、ユリアは雑談をして帰って行った。

ユリアは俺の出した水と自分で持って来たクッキーを口にしたが、結局護衛の二人は水に口をつける事はおろか、座る事さえ許さなかった。


とにもかくにも、俺はこの世界で生きて行くための拠点を手に入れたのだった。 


妹再登場。

そして次回から、ついに章タイトルっぽい話になります。

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