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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第三章:異世界ハーレム生活
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第42話:レンジャーへの道① 格闘家の目覚め

家が建つまでの話です


その日は迷宮に潜らずそのまま宿に帰って寝た。

帰り際に、明日早朝に建築ギルドに来るよう言われていたので、翌日、俺は朝食も摂らずに建築ギルドへ向かう。


正直、ちょっと嫌がらせの気持ちもあった。

こんなに朝早くじゃ誰もいないだろう。昨日完全敗北したからなぁ。少しくらい意趣返しがしたかったんだ。


なんて内心わくわくしながら建築ギルドへ赴くと、既に準備万端でレセンダさん以下、ギルドの皆さんが俺を待っていた。

いや、早過ぎるだろ。俺朝日より早く起きたんだよ?


山のように木材を積んだ台車が十台以上、腕を組んで立つレセンダさんの後ろに控えていた。


「おう、来たな!」


すげぇテンション高いな。

年寄りだから朝が早いってだけじゃなさそうだ。


「おはようございます」


「早速で悪いけど、建設予定地へ行こうか。徒歩だけど大丈夫かい?」


「ええ、問題ありません」


そうして俺達は街を出て、件の草原へと赴く。

俺とレセンダさんの他は建築ギルドの人二十人と、『錬金術師アルケミスト』らしき人十人。

そして、いかにも冒険者っぽい人五人だった。

ちなみに台車を引くのは建築ギルドの人のお仕事だった。


冒険者は道中と建設中の護衛だろう。

ガルツには錬金術師ギルドが無いのに、よくこれだけの人数を集めたもんだ。


「ふむ、中々の場所だねぇ」


予定地に到着すると、レセンダさんの指揮の下、てきぱきと台車から木材を降ろしていく職人さん達。事前に打ち合わせしてあったのか、冒険者の人達も周囲に散って警戒を始めた。


「さて、それでコンクリートの製法だが……」


「製法も何も。材料の種類さえ過不足無く揃っているなら、あとは『錬成』するだけじゃないですか」


「「えっ?」」


「え?」


レセンダさんの言葉に俺が苦笑しながら言うと、『錬金術師アルケミスト』の人達が一斉に驚きの声をあげた。

俺も思わず、疑問の言葉を口から零してしまう。


「え? だからこうやって……」


俺は荷降ろしされたセメントの材料に近付き、それを手に取る。


「こうすれば……」


そして『錬成』。手の中で材料が光輝く。光が収まったそこには、両手に納まる程度の量のセメントと、使用されなかった材料の残りが出現している。


「…………」


「…………ね?」


無言で俺を見る『錬金術師アルケミスト』達の視線が痛かったので、小首を傾げてみた。


「……ま、まぁ、実際にやって見せたんだ。お前たちもやってやれない事は無い筈だ」


いち早く再起動を果たしたのはレセンダさんだった。彼女に言われて、『錬金術師アルケミスト』達が材料に近付き、恐る恐るそれを手に取る。


「お、おお」


「まさか……」


そしてそれぞれ『錬成』し、手の中に出現したセメントに慄いている。


どうやら、錬金術師ギルドでは、材料の種類だけでなく、量も適切じゃないと成功しないと教えてるみたいだな。

面倒な工程を踏まなくていいから、それでも普通に造るよりは楽だけどさ。

これまで一人も試さなかったとは考えられないから、錬金術師ギルドは、知ってて敢えて教えてないな。

理由としては、全部『錬成』でできるようになってしまうと、技術の進歩が停滞するから、だろうか。

それをなんでギルドの人間が危惧するのかはわからないけど。


あ、三人ほど成功してないな。

多分LVが足りてないんだろう。


「よし、お前たちは清涼な水を『錬成』してもらう。一日一回、セメントの『錬成』を試すぞ」


レセンダさんも理由がわかったらしく、成功できなかった『錬金術師アルケミスト』にそう指示を出した。

清涼な水は、その辺の水を『錬成』する事でできる、文字通り、清涼な水だ。

『ピュリフィケーション』と効果自体は変わらないけど、必要LVが1だからな。『錬金術師アルケミスト』にとって、ある意味中和剤以上に基本になるアイテムだ。


「じゃあ俺は魔法の石集めるためにストーンゴーレム狩って来ますね」


「ああ。日没前にはこっちは街に戻るけど、あんたはどうすんだい?」


「なら俺はそのくらいに戻って来ますよ。資材の見張りがてら野宿します」


「助かるけれど、いいのかい?」


「『野伏レンジャー』、欲しいんで」


「なるほどね」


俺の言葉にレセンダさんはにやりと笑った。


この世界に存在する職業の中で、獲得条件が判明している数少ない職業だ。

とは言え、連続で20日から30日野宿するって伝わってるだけだけど。


実際には連続で20日の野宿。後は敏捷と器用が30以上必要だ。

野宿日数に差があるのは、このステータスが不足していたせいなんだろうな。


「こっちも完成までには二週間を予定しているからねぇ。丁度いいかもね」


「ええ、丁度良いかと思いまして」


旅をしていても、意外と連続20日の野宿は難しい。

狙ってやらないと獲得できそうにないならな。いい機会だから狙ってみよう。


『追跡』『潜伏』『気配察知』『罠発見』『罠解除』など、かなり使い勝手の良いスキルが揃ってるし。



俺は徒歩でガルツへ戻って迷宮へ入る。

一階層の途中、周囲に誰も居ないのを確認してから『テレポート』。

とりあえず六階層へ飛んだ。

あとは下の階層へ降りながらモンスターを倒していこう。

下の階層ほどストーンゴーレムは出やすいみたいだし、種族LVが上がれば一度に手に入る魔石も多くなるからな。


早速目の前で魔力が噴出している。


「ぼえええええぇぇぇぇぇえええ!!」


出現したのは山羊小鬼だった。

ち、ハズレか。


即座に拳を振るって山羊小鬼の顔面を殴りつけた。


「ぶふぅおお!?」


吹き飛び、壁に叩きつけられた山羊小鬼に追撃をかける。

壁と挟み込むように、フックをぶち込む。


「ぶふぅぅぅうう!?」


そして山羊小鬼は光と魔石を残して消えた。


うん。いい感じだ。この調子でサクサクいこう。




この日の戦果は山羊小鬼の魔石13個。ウィッカーマンの魔石6個。ストーンゴーレムの魔石4個だった。

明日はもう少し深く潜ってみるかな?


山羊小鬼の魔石10個と、ウィッカーマンの魔石2個をカモフラージュにギルドで変換。

ストーンゴーレムの魔石も1個だけ変換して貰い、魔法の石を買い取った。

魔法の石の買取価格は35デューだ。差し引き5デューの赤字だ。

今回は強壮剤をここガルツで売る。1個8デューで売れた。

やはり地元だけあって買取価格が安い。なので5個に抑えておく。

俺が錬金術を使えるのはバレているだろうし、これからバレるだろうから、ガルツで販売する事自体には問題ないが。


まぁ、あれだ。フィクレツやルードルイでの販売は時間を置かないといけないからな。その間、何もしないのも勿体無い。販売ローテーションにガルツを含める事ができれば、トータルでの利益は高まる筈だ。


「まぁ、こんなものかね」


俺が建設場所へ着くと、丁度撤収準備が終わっているところだった。

家はまだ全然できていない。地面に穴を掘り、土台になる部分にコンクリートを流し込んだくらいだ。その中には二メートルくらいの長さの竹が立っている。

鉄筋コンクリートならぬ竹筋コンクリート。

戦中くらいにこんな技術があったのを思い出して、レセンダさんに伝えてみた結果だ。

俺は詳しい事はわからなかったので、正直、今のこの光景が正しいのか判断できない。まぁ、そこはプロに任せておこう。

また敷地にする予定なんだろう、俺が執政館の職員に大体示した範囲にロープが張られていた。


改めて見ると、広いな。これ二週間で集められる魔法の石だけじゃ囲い切れないんじゃないか?

まぁ、最悪ギルドや商館で買えばいいか。


「お疲れさまでした。また明日よろしくお願いします」


「あいよ。あんたも気をつけてな」


レセンダさん達が帰った後、俺は野営の準備を始める。

と言っても、木材などの遠くで焚火を起こすだけだ。

魔法の石を椅子代わりにし、街で買った肉を焼き、食べる。


食べ終えた後、とくにする事もないので寝る事にした。

第二階位の精霊魔法、『空気の嫁セカンダス・エアリアル』を発動させておく。

『センスアトモスフィア』と呼ばれるこの魔法は、指定した範囲の空気の変化を察知する事のできる魔法だ。

これで範囲内にヒトや魔物、モンスターが侵入したら知る事ができる。

まぁ、一種の警報装置だな。



朝。日の光が眩しくて目を覚ます。

一度欠伸と共に伸びをして、軽くストレッチ。

近くの川で顔を洗い、炙った黒パンにマルガリンをつけた簡単な朝食を摂る。


暫くすると、朝靄の向こうから三十人程の集団が近付いてくるのが見えた。

レセンダさん率いる建築ギルドの人達だろう。ほんと、早いな。


「よう、おはようさん。無事だったみたいだな」


「おはようございます。ええ、おかげさまで」


レセンダさんと挨拶を交わした後、他の人たちにも挨拶をすると、テンションの低い挨拶が返って来た。

やはり、レセンダさんが特別朝早いだけなんだろうか?

いや、片道一時間近い道のりを歩いて来ている訳だから、疲れているのかもしれない。


「よし、少し休憩したらすぐに作業に取り掛かるよ!」


「「うぃーす」」


やはりテンションが低い。

テキパキと指示を出すレセンダさんと、ダラダラと動く職人達を置いて、俺はガルツへと向かった。



昨日は十階層まで来ていたんだけど、何となく先へ進むのは躊躇われて、十階層をグルグル回ってモンスターを狩っていた。

今日は折角なので、この先で狩りをしてみようと思う。

統計を取るには数が足りていないけれど、できるだけストーンゴーレムが出やすそうな階層を探したい。


魔法の石が欲しいだけなら、ゴーレム系がメインモンスターの石牢迷宮にでも行けばいいんだけど、所在がエレノニア王国の西側に位置する、ロドニア王国の更に西奥だからな。

ちょっと日帰りは無理だ。


十階層のボスも五階層と同じく山羊小鬼だった。

しかし身長が2メートル以上あり、更にそこから長く、太く、硬い角が1メートル以上伸びている。

迫力あるなぁ……。


種族LVは50か。


まぁ、『アナライズ』でステータスを見た限りじゃ、なんとかなりそうだ。

というか、魔法やスキルを使用すれば問題無く倒せるだろう。


出現と同時に雄叫びを上げている間に俺は動いていた。

勢いよく走り込み、山羊小鬼の2メートル程手前で跳躍。そのまま胸に飛び蹴りをかます。

更に空中で蹴り足とは反対の左足で顎を蹴り上げ、更に踵落としを顔面に決める。最後に腰を回転させ、回し蹴りで吹き飛ばした。

これぞ空中でのキックコンボ、ショットガンエアシュート!

ちょっと元ネタが古過ぎて、実際にどういう動きだったかは忘れてしまったけどな。


流石にこれだけじゃ倒れてはくらないか。というか、多分最初の一撃以外はまともなダメージが出てないんじゃないかな?


着地と同時に猛ダッシュ。絶叫を上げながら立ち上がった山羊小鬼の喉に向けて爪先を蹴り出す。

碌な抵抗もできずに突き刺さる。


顔面や胴体とは違う感触だな。

これ喉仏か?


撃ち込んだ右足を引き、着地と同時に左足で蹴り上げる。

右足で地面を蹴ったのと同じなので、左足の蹴りに、その際発生したエネルギーが乗るんだ。

当然、さっきの空中コンボの途中に入れた蹴り上げなんか比べ物にならない威力を叩き出す。


蹴り上げた足をそのままに、落下を始めたところで振り下ろす。

落下のエネルギーを乗せた渾身の踵落とし。

踵が山羊小鬼の顔面にめり込み、そのまま鎖骨の辺りまで切り裂いた。


おお、スプラッタ。


崩れ落ちながら山羊小鬼は光となり、残されたのは六つの魔石。



新たな職業ゲット→拳闘士:獲得条件・素手による戦闘を行った結果種族LVが上がる。要 筋力30以上 敏捷25以上



とりあえず、目当ての職業ゲット。


サブタイトル通り野伏レンジャーを目指します

今回は欲しかった職業、拳闘士グラップラーも獲得しました

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