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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第二章:エレノニア王国探訪記
35/149

第33話:若手ドワーフの事情

素材集めとテテスの紹介回です

あと、ちょっとグロい描写があります


馬具はすぐに必要だろうという事で、先に商館で購入した。

持ち運びも大変だから、馬を連れて行ってその場でサイズを測って貰う。ふふ、合理的だ。


「実際につけて乗ってみないと、座り心地はわからないものね」


セニアも納得していた。

セニアは随分と乗り心地に拘っている。

まぁ、長く乗るものだからな。少しでも良くしたいってのはわからないでもない。


セニアは冒険者になる前から馬に乗れていたようなので、多分、王宮で乗っていたんだろう。

良く躾けられた馬に、最高級の馬具が取り付けられていたに違いない。

けれど今はあまり躾けのなってない暴れ馬に量産品の馬具だ。

そりゃ尻も痛くなるわな。


「お、いた」


馬を宿に繋ぎ直し、早めの昼食を食べた後に昨日テテスが居た辺りへと向かうと、彼は昨日と変わらずそこで露店を開いていた。

相変わらずフードを目深に被って、特に呼び込みをするでもなくじっと座っている。


「やぁ」


声をかけると、テテスはこちらを見た。

見たあとで、すぐに視線を前方に戻す。


昨日の今日で愛想良くなるとは思わないけど、せめて挨拶くらいしようぜ。


「あんたの所ってオーダーメイドもやってんのかい?」


「え……? ああ。むしろそっちの方が……」


テテスの反応が良い。

なるほど。普段はオーダーメイドで依頼を受けているから、こうして出来合いの商品を並べるのが不本意なのか。

てことは何かあったのか? 露店売りしなきゃならない理由が。

腕はいいんだし、今まで普通に商売してたんなら、客が来なくなったとかじゃないよなぁ。

テテス若いし、どこかの工房で今までは下働きだったのが、独立したとかかな?


「じゃあ冒険に使うブーツを作って欲しいんだけどさ。何か良いのないか? 素材はこっちで用意するから。できれば非金属で頼む」


「ブーツか……。ドラゴニアレッグみたいな?」


「竜の素材は用意できねぇよ」


多分、こいつが作ればそれも『テテスのドラゴニアレッグ』になると思うけど、流石に竜革の素材が必要になる装備を作って欲しいとは言わんわ。


「となるとグリフォンか銀狼がいいかもな」


「そんなダンジョンの深階に行かなきゃ出会えないような魔物指定すんな」


「いや、会えるだろ」


「どこでだよ」


「神の牢獄」


「あー……」


テテスの言葉に、確かに、と俺は納得してしまった。ちらりとセニアを見ると、不快感を露にしている。


神の牢獄は、西にある巨大な山脈、ウェルズ山脈の事だ。

この山脈は、なんと海の中まで続いていて、大陸東部を完全に隔離するような形でそびえたっている。


二千メートル級の山々が連なるこのウェルズ山脈を越える者は皆無で、エレノニア王国をはじめとした大陸東部の国々は、西へと進出する事ができないでいた。


故にこの山脈を、人々は神の牢獄、あるいは神の揺り籠と呼ぶ。


大陸東部のヒトは、山脈の西で罪を犯して、この地に隔離された罪人の子孫であり、故にあの山脈は神がヒトを閉じ込めるために造った牢獄なのだ。

大陸西部は非常に危険であり、ヒトが生きるには過酷過ぎるため、神がヒトを守るための揺り籠としてあの山脈を造ったのだ。


これが双方の言い分である。

基本的に神は敬い崇めるものと考えている光の神の教団では神の揺り籠説を唱えている。

だから国民全員が光の神の信者である帝国の臣民、それもそのトップである王族のセニアは、テテスの言葉に憤りを感じたのだ。


大陸東部の国々も、この山脈を越えて、あるいは迂回して西側へと向かおうとした事はあった。

しかし、ヒトの身で越えるにはこの山は少々険しすぎた。おまけに、先に出たように、竜やグリフォンといった、ヒトの手には負えないような強力な魔物、モンスターが徘徊している。

幸い彼らは強い縄張り意識を持っているが、それ故に互いに牽制しあっていて、山脈からは出て来ない。だからこそ、そのテリトリーに入ればたちまち襲われてしまう。

水平線の向こうまで続く山脈を迂回するには遠洋を行くための造船技術と航海技術が必要になる。まだ羅針盤が存在していないこの世界では、遠洋に出る事は死に繋がるし、造船技術についても大して発達していない。

何せこの世界にはダンジョン、そしてモンスターが存在する。どうしてもリソースを国内に向ける必要があるため、外に向かう技術はどうしても後回しになる。


大陸東部の南端は、一応山脈が途切れていて、そこから西部へ向かう事ができるのだが、今度は地平線の向こうまで荒野と砂漠が続いている。

この事も、神の揺り籠説を後押ししている。

この山脈が途切れた南部沿岸、通称『神の門』と領地を接するノークタニア公国はあまり大規模な調査団を西側に送った事は無い。

これも原因はダンジョンとモンスターだ。

ヒトの国家であれば、西側へ入植した際の利益供与を空手形として切り、停戦、同盟などを結ぶ事で大人しくさせる事ができるけど、モンスター相手にはそんなもの通用しない。

かと言って、他国の軍隊を自国に入れて、ダンジョンやモンスターの対策を任せられる程、この世界のヒトは団結していない。


ちなみにダンジョンやモンスターに関しても、揺り籠派と牢獄派で見解が分かれる。

魔力を帯びて変身するにせよ、魔力によって生み出されるにせよ、それが神の創った世界の理から外れる事は共通しているが、何故それがこの大陸東部に存在しているかに対しての説が違っているんだ。

揺り籠派は試練として。今は神によって庇護されているヒトが、いずれ山脈を越えて西へと向かうため、その成長を促すための試練として存在していると唱える。

牢獄派は懲罰として。罪人の子孫であるヒトに罰を下す執行官として存在していると唱える。


とは言え、それぞれを心の底から信じているのは、一部の敬虔な信者か、各教団の上層部くらいだ。

一般の人々にとっては、牢獄にせよ揺り籠にせよ、ただの呼び名でしかないし、巨大な山脈があって西には行けない、という事さえわかっていればそれで充分なんだ。

一応、現状に満足し、これを維持する事に尽力する人間は揺り籠。現状に満足せず、良くも悪くも革新的な人間は牢獄と呼ぶ傾向にある。

保守も革新も、とちらが良くてどちらが悪いかは、俺には判断できない。だから、俺は呼び名に関してはどうでもいいと思っている。

普通にウェルズ山脈と呼ぼう。

これだって名前の由来は光の神ウェルから来ている訳だし。


「あんな所まで素材獲りにいけないっての。旅費をお前に支払う報酬から引いたら、お前が俺達に金を支払う事になるかもしれんぜ?」


「む……」


「できれば馬で一日、二日程度の場所で入手できる素材で限定して欲しい」


「注文が多いな……」


「オーダーメイドってのはそんなもんだろ? お前の手持ちの素材で作れるものでもいいけど」


「……ここに並んでる以上のものはないよ」


だろうな。ここまで商売下手な奴だ。自分の持っている素材で良いものから順番に使ってる事は予想できる。


「……なら、セアカドクグモの革かな? 三匹分もあれば一足分には足りると思う」


「へぇ……」


セアカドクグモはその名前の通り、背中が赤い毒蜘蛛だ。

体長が二メートルあるけどな。

名前がオーストラリア原産の外来種に似ているけど、どちらかと言うと、タカラダニの方が似ている。


タカラダニってのは暖かくなると家の庭や壁に出現する真っ赤で小さな蜘蛛みたいなあれだ。銀色のポストなんか見てみると、わちゃわちゃ動いてるのがわかるぞ。

セアカゴケグモは黒い腹部に、赤色の斑点模様がついているけど、セアカドクグモは背中側が鮮やかな赤一色だ。

どのみち体長が二百倍以上差があるから、もしこの世界にセアカゴケグモが居ても見間違える事は無いと思う。


同じ二メートルくらいあるレッドスパイダーという魔物も存在するけど、こちらは大して強くない割に、糸が鮮やかな赤色をしていて衣類の素材になる事から、初心者冒険者がよく狩っている。

そしてレッドスパイダーと勘違いしてセアカドクグモに挑んで返り討ちにあう初心者も後を絶たない。


セアカドクグモはエレア山地とその付近の森林に生息しているから、倒せるだけの力量があれば、確かに手頃な素材だ。

『常識』の中に、その革を素材に使うという知識が無いけどな。


「聞かない技術だな。本当にその素材でいいものが作れるのか?」


「ああ、そこは任せてくれ」


「よし、じゃあこれは手付金だ。他の依頼があっても俺を優先してくれ」


そう言って俺はテテスに十六分金貨(62.5デュー)を渡した。


「別に、こんなのなくても……」


依頼なんてない、と言いたいんだろう。

哀しいけれど、それがテテスの現状なんだろうな。


「それだけお前の腕を買ってるって事さ。セニアはどうする?」


「え? うーん、そうね。素材の量に余裕があれば作ってもらおうかしら」


セニアは魔法の武具である甲殻虫のブーツを装備してるからな。あれ、散々森の中歩き回ったのに、全然草臥れてないんだぜ? 俺のブーツなんて歩く度に底がパカパカ言ってるのに。


「依頼料は幾らだ?」


「素材を持ち込んでくれるんなら、今日からできあがるまでにかかった生活費だけで……」


「それに100デュープラスな」


「え……? うん、じゃあそれで」


マジでこいつこれからどうやって生きて行くんだろう? 他人事ながら心配になっちゃう商才の無さだな。

俺の100デューも、こちらの懐具合から出た金額だからな。相場として考えたら、詐欺だと言われても反論できないぜ。


期間中の生活費って事は、素材を持って来るまでにかかる期間を長くすれば、テテスに渡す金も多くなるけど、正直、俺がコイツの商品買わなかったら、コイツどうやって生活費得るんだろう?

どう見ても露店のラインナップが昨日と変わってないから、売れてないぞ?

そういう意味でも手付金と称して金を渡したんだからな。


という訳で素早く出発準備を整え街を出る。

基本世間知らずのセニアも、テテスの態度には危機感を覚えたらしく、特に渋る事無く俺についてきてくれた。


ルードルイは出入りに時間がかかるからな。テテスの露店から街を出るまでに二時間かかったよ。

西門から出て暫く街道沿いに馬を走らせる。

三十分くらい走らせたところで農村を発見したので、セアカドクグモの情報を得ようと立ち寄る。


「この辺りじゃ聞かないですねぇ。西に半日歩いたところに、狩りで生計を立てている村があるから、そちらに言ってみては?」


発見した第一村人は親切に教えてくれた。

事前に渡した銀貨一枚がよく仕事をしてくれたようだ。


お礼を言って教えられた村へと向かう。

すると、森の近くに小屋が集まっている集落を発見した。あれかな?


馬で近付くと、何人かの村人が小屋から出て来た。わぁ、警戒している。

布の服に革の鎧。弓や短剣を手にした、いかにも狩人っぽい人達だ。


LVはそんなに高くないな……。


「なんだ? あんた達は?」


尋ねる狩人の目線はセニアに向けられている。その目には不安と驚きが含まれていた。

やはり隠し切れませんよね、彼女の気品。その上で騎乗してるもんなぁ。


「この辺りでセアカドクグモが生息している場所を知りませんか?」


俺は馬を降り、両手を広げて上にあげる事で敵意が無い事を示して狩人に近付いた。

戸惑いの表情で他の狩人と顔を見合わせる。


「ちょっと素材が欲しくてね」


言いながら俺は狩人に銀貨一枚を渡した。


「あんなもんの何の素材が欲しいんだ? 毒袋か?」


「それならもっと楽で強力な毒を作れる魔物がいるだろう?」


まぁ、普通はそういう認識だわな。魔物やモンスターの全てが有用な素材になるとは限らないからな。


「詳細は知らないよ。俺達は依頼を受けた冒険者なんだから」


「それもそうか……」


嘘は言ってないよ。セアカドクグモの素材が良いって言ったのは俺達じゃなくてテテスだし、俺達は冒険者だし。

二人とも役職違うけどな。


「この先の森でたまに見るぜ?」


一人の狩人が教えてくれた。


「狩ってくれるってんなら有り難い。俺達じゃ危険だからな」


「あいつ見つからないように狩りすんのも面倒だしなぁ」


「こないだ鹿が狩られててよ」


「あー、ありゃ勿体無かった」


毒持ってるわ、そこそこ強いわ、おまけに素材は金にならないわ。

三重苦揃ったセアカドクグモは一般的な狩人にとっては厄介な邪魔者だ。

生息場所さえわかれば、簡単に教えてくれると踏んでいたけど、どうやら予想通りだったみたいだ。


「ありがとうございます」


お礼を言って俺は森へ向けて馬を走らせる。

正直、新しい馬具は何が良いのか俺にはわからん。

けれど、心なしかセニアが楽しそうな表情を浮かべていたので、わかる人には違いがわかるらしい。


森の近くで馬を降り、近くの木に繋いで中へと入る。


エレニア大森林に比べると、まぁ、なんていうか普通の森だ。

人の手があまり入っていないので、木々の間隔が狭いのが違いと言えば違いか。


エレニア大森林は獣道でさえない場所でも、それなりに開けていたからな。


「いたわね」


暫く散策すると、セアカドクグモはあっさりと見つかった。

木と木の間に、十メートルはあろうかという巨大な蜘蛛の巣があり、その中心に真っ赤な蜘蛛が鎮座していた。


二メートルを超える巨大な蜘蛛。色鮮やかな赤色をした背中とは反対に、腹側はくすんだ黒色をしている。


テテスの話では、必要なのは腹部の革だと言う話なので、頭を狙う事にする。

俺はショートボウを構え、『クリエイトウェポン』で作った魔法の矢を番える。


「ギュウウウゥゥゥウ!?」


俺の放った矢はセアカドクグモに見事命中。紫色の体液を撒き散らしながら、蜘蛛は地面に落下した。


「はっ!」


そしてセニアが蜘蛛目がけて走り出す。

ひっくりかえって足をわきわきさせている様は、非常に虫チックだが、とても気持ち悪い。


セニアさん気を付けて、そいつ君よりステータス高いからね。


「せやっ!」


頭部目がけて一突き。切っ先が硬い外皮を突き破って内部へと侵入する。すぐに剣を引き、高速の二連突き(ダブルピアッシング)

剣を引き抜くと同時にセニアはセアカドクグモから距離を取った。

頭部から紫色の体液を断続的に噴き出しながら、体をびくびくと震わせている。

暫くするとその動きが収まった。

よし、死んだな。これより解体作業に入る。


頭と足を切り落とし、腹部を縛って木の枝から吊るす。

頭部を切り落とした断面から、木の枝を突き入れ、中身を掻き出す。

体液にも毒が含まれているので、直接手を突っ込むのは色々まずいらしい。何となく、武器を使うのも躊躇われた。


内臓と一緒にぶよぶよとした水袋のようなものが出て来た。

これがおそらく毒袋。ちなみにギルドに持ち込んでもたった5デューでしか買い取ってくれない。

それなりに強力な毒なんだけど、毒として使うならもっと良いものが沢山あるからな。

『マジックボックス』に入れておけば大丈夫だとは思うけど、できれば持ち運びたくない。

腹部だけ『マジックボックス』に入れて、あとは一ヶ所にまとめて焼却する。

木々が密集しているので、他所に燃え移らないようにだけ気を付けた。


焼却処分をしている間に昼食を摂る。辺りに立ち込める、エビを炙ったような匂いが、悔しいけど食用を増進させた。


昼食を終え、暫くすると内臓の殆どが焼けたようなので、最後に土砂を被せて消火しつつ地面に埋める。


「さて、あと五匹だな」


「え? 三匹分でいいんじゃ?」


「一応セニアの分も獲っていこう」


「そんなに持ち運べる?」


「実際に持っているのを見せるのは一匹分だけだから大丈夫」


あとは全部『マジックボックス』に入れる。テテス以外は必要な量を知らないから、それで十分。


「そう? ならいいけど」


俺が使えるのが『リトルマジックボックス』だと思っているセニアは、容量の心配をしていたようだ。

ただ彼女が知っているのは、『リトルマジックボックス』は容量に限界があるという事だけだから、俺が大丈夫と言えば、彼女はそれを疑う術を持たない。


森の中を探索し、三時間かけてセアカドクグモを合計六匹狩る事に成功する。

一匹の腹部だけ、『見せ』用に背負い、後は全て『マジックボックス』に入れた。


森を出る間に、ゴブリンや二足歩行の服を着た犬、所謂コボルトと遭遇。見かけただけなら放っておいても良かったけど、襲ってきたので返り討ちにして魔石をいただいた。


ルードルイに帰り着いた頃には日が暮れていた。

一応テテスが露店を出していた場所へ行ってみるが、既に撤収したあとだった。


「また明日だな」


「そうね」


宿に帰る前に冒険者ギルドに寄り、ゴブリンとコボルトの魔石を換金(どちらもレア素材は出なかった)。

宿に戻るとすぐに夕食を摂り、それぞれ部屋へと入った。


俺は『テレポート』でこっそりとシュブニグラスへ行き、山羊小鬼の魔石を六個入手する。

陶器の手持ちが無かったので魔石を素材に変換だけして寝た。

ちなみに、レア素材は出なかった。



翌日、朝食を摂ってテテスが露店を開いていた場所へ。

これまで通り、無言でフードを目深に被った怪しい姿で座っていた。


「もう獲って来たのか? ってなんだ、一つだけじゃないか」


俺の報告に一瞬テテスは驚くが、俺が背負っているのがセアカドクグモの腹部一つだけだったので、あからさまに落胆の表情を浮かべた。


「大丈夫、マジックボックスに入ってるから」


「ああ、そうか。じゃあ、工房に行こうか?」


多分、『リトルマジックボックス』を省略したんだと思ってるな。まぁ、狙ってやったから別にいいけど。

テテスだけならともかく、周りに人が大勢居るからな。


「いいのか?」


昨日と商品が変わってないので、売れてないのだとわかっていたけど、一応聞いてみる。


「お察しの通り、あんたたち以外に売れてないんでね」


どうやらこちらの意図はばっちりバレているらしい。

てきぱきと商品を風呂敷に包み、背負う。

ドワーフは人間と比べて総じて背が低い。大きな風呂敷を背負うと、非常にアンバランスだった。

でもなんか、しっくりくるシルエットだよな。


「ついてきな」


言ってテテスが歩き出したので、俺とセニアもそれに続く。


「自分の工房持ってるんだな?」


道中、俺はテテスに話しかけてみた。


この手の相手はどういう返しをしてくるかわかるから、会話は苦にならない。

多分、俺と同じぼっちのコミュ障だからだ。


鍛冶職人や細工職人は職人ギルドに属している場合が多く、若い独立したての職人や、テテスのように露店売りをしている職人は、ギルドが経営する共同工房を使用している場合が多い。

自分の工房を持っていたら、普通はそこで売るからね。

ただ自分の工房は莫大な維持費がかかるから、テテスの商売下手から、てっきりギルドの工房を借りているんだと思っていたけど。


「オレのって訳じゃないよ。師匠の工房だ」


「師匠の所に居るのか?」


じゃあ客が来なくなった原因は、こいつが独立したからじゃなくて、その師匠に何かあったからか?

でも、こいつの腕前なら昔の客がそのまま依頼してくれそうなもんだけどな。

それともその師匠ってのはそんなに凄い腕前だったんだろうか? もしくは人付き合いが苦手で、碌な人脈を形成できなかったのか?


「ああ。レグナー工房ってところなんだけどな……」


「「レグナー!?」」


俺とセニアの声が重なる。どちらも驚いていた。

『常識』の中にその名前はあった。

『戦う鍛冶師』『血濡れの鉄槌』と呼ばれる、稀代の名工レグナー。

二つ名の由来は、様々な素材を自分で獲って来るから。

勿論、鍛冶師としての腕前も超一流。細工師としての実績もあるから、『細工師クラフトマン』のテテスが弟子でも不思議じゃない。


あれ? けどレグナーって……。


「二年前に死んでるよな?」


「!!」


「タクマ!」


びくり、と体を震わせるテテス。俺はセニアに肘で脇腹をつつかれた。


あ、地雷踏んだ?


「そうだ。師匠は二年前、神の牢獄へ黒魔竜の素材を獲りにいったまま帰って来なかった。死体は確認されてないけど、間違いなく……」


「いや、その、すまん……」


「謝る必要は無いよ。もう二年前の事だし。師匠が危険な事をしていたのは知ってるから」


それは、強がりではないようだった。


「工房を継いだのはオレなんだ。師匠の遺品を整理していたら、そういう遺言書が出て来たんだってさ。オレは先輩や、それこそ師匠の息子が継ぐべきだって言ったんだけど、師匠の最期の言葉を聞かない訳にはいかないって事で、俺が継いだんだ」


けれど、元々レグナーという強力なカリスマの下に集った職人達。才能はあるんだろうけど、まだ若いテテスについて行く事を良しとせず、一人、また一人と独立していった。

そうなると、逆にレグナー工房という大き過ぎる名前がテテスの重荷になる。

テテスでは対応できない依頼を断っていると、ルードルイをはじめ、王国内で、「レグナー工房は代替わりして質が落ちた」と噂されるようになった。

質が落ちたのは確かだけど、テテスが対応できる限りにおいては師匠と遜色無い筈だが、「質が落ちた」という評判だけが独り歩きして、客足も徐々に遠のいていったそうだ。

誰もが品質の良し悪しを完璧に把握できる訳がない。「質が落ちた」という思い込みのもとでテテスの商品を見れば、レグナーの威光が死んで美化されてしまった事もあって、レグナーのそれより数段劣った品だと見えてしまう。


となれば、レグナー工房に縋りつくテテスと、独立した元職人達。

どちらも同じくレグナーより劣っているとなれば、客の印象がより悪いのはどちらだろうか?


まぁ、現状を見ればその答えは明白だ。


レグナー工房は、大陸一とまで言われた名工、レグナーが運営していただけあり、とても大きな建物だった。

全盛期には五十人を超える職人が居たって話だから、この小さな城並みに広い敷地も納得できる。


けれどその広い工房の中で、使われているとわかるのは、隅の一角の作業スペースだけだ。

多分、若いテテスは工房の中で最も序列が低かったんじゃないかな? だってその場所、入口から一番遠いからね。スペースも一番狭いし。

そんなテテスを何故後継者に指名したのかは俺にはわからないけど、職人たちの離反にはその辺りの理由もあったのかもしれない。


「素材を出して」


言われて俺は『マジックボックス』からセアカドクグモの腹部を五つ取り出し、背負っていたものも下ろす。


「三匹でいいって言わなかった?」


「余ったらセニアの分も作って貰う約束だろ?」


「まぁ、いいけどね」


言って、テテスは準備を始める。


「じゃあ、日が暮れるくらいにまた来てよ」


「そんなに早くできるのか?」


「素材がまるで傷ついてないし、新鮮さも保たれてるから、下処理が殆ど必要ないからね。今すぐにでも造り始める事ができるくらいだよ。匂いがひどいし粘つくと思うから、ある程度は処理しないといけないけどね」


「そうか。まあ、そこは専門家に任せるよ」


「ああ。任せてくれ」


「相変わらず寂れてんなぁー!!」


そんな時、入口から粗野な声が響いた。

振り向くと、金髪の男が、体格は良いがガラは良くない四人の男を連れて、工房内に入って来ているところだった。


「いつもの場所にいねぇからどこに行ったかと思ったがよ、昼間に工房に居るなんて珍しいじゃねぇか!?」


ポケットに手を突っ込んで、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべながら男は近付いてくる。

顔の造りはそれなりに整っているが、生来の根性の悪さがにじみ出ているようで、どうにも生理的嫌悪感をかきたてられる顔だ。


「誰だお前は?」


とりあえず、俯いて黙ってしまったテテスを庇うように立ち、俺は男に問いかけた。


「あ? てめぇこそ誰だよ」


「人の工房に勝手に入って来た挙句、態度も悪いとか、人として最低だな」


絶対にテテスと良い関係じゃない事はわかったので、挑発してみる。手を出して来たら返り討ちにするつもりだった。


「あんだてめぇは!? ざけてんのか!? 俺の一存でこんな工房簡単に潰せるんだぞ!?」


「ちゃんとギルドに登録してある工房を潰すとか勘違いも甚だしいな。ギルド長にだってそんな権限ないだろ?」


「俺はあのレグナーの息子なんだよ? 親父が死んだ以上、この工房は俺のものって訳!」


「レグナーの遺言書でこのテテスが継ぐようになってた筈だろ?」


「っ! いや、それは、そ、そんな遺言書なんて関係ねぇんだよ! 現に他の職人はいなくなっちまっただろ!?」


わかりやすく動揺してんなー。


「それと遺言書の内容は無関係だろ? 実力主義の職人だって、年下の下で働きたくないって奴はそりゃいるさ」


「け、けどよ……」


「大体、お前が息子だってんならなんでレグナーはお前に工房を継がせなかったんだよ?」


「う、それは……」


「テテスの腕前とか以前に、お前が信用無かっただけじゃないのか? んで、工房離れた後もこうして嫌がらせに来るのか? ほんと、最低な男だな」


「て、てめぇ……!」


「まぁまぁポールさん。こんな奴に言いたい放題言わせておく必要はないですよ」


と、そこでこれまで黙っていた、後ろのガラの悪い男の一人が前に出た。


「おいてめぇ、あんまり調子こいてると、二度と表歩けないようにしてやんぞ?」


ああ!? と俺に向かって凄むガラの悪い男。


こいつらは後ろの素材が見えないんだろうか? それとも知らない? 『常識』にあったって言っても、冒険者の三割以上が知ってる事だからなぁ。

冒険者じゃなかったら魔物の事とか知らなくてもおかしくないし。


「とにかくこれはそこのチビとポールさんの問題だからよ、関係ないやつはしゃしゃり出てくんじゃねぇよ! とっとと出てけや。そこの女置いていけば、てめぇは見逃してやるよ」


そして笑い合う男達。


「ぷっちーん」


「あ?」


俺の言葉に訝るような表情を向けた男の顎に、軽く一発入れる。


「うお……!?」


それだけで、その場に崩れ落ちる男。


「なっ!?」


「てめぇ、何しやがった!?」


「出てくのはそっちだよ。ここはテテスの工房でお前達は招かれざる客だ。そして俺達はテテスに防具製作の依頼に来た客」


そして一歩前に出て、ポールを真っ直ぐに見据え、『狂者の眼』と同じく『狂戦士バーサーカー』のスキル『狂者の威圧』を重複発動させる。


「俺達とテテスの問題だから、関係ないやつはしゃしゃり出てくるな」


「う……あ、うわあああぁぁぁぁあああ!!」


俺が発せられる重圧に耐えきれず、ポールは悲鳴を上げてその場から逃げ出した。


「ぽ、ポールさん!? くそ、てめぇら、覚えてやがれ!」


そして男達も、捨て台詞を残してその場から走り去った。


おい、仲間一人忘れてってるぞ?

いや……。


「で? どういう事だ?」


「どうもこうもないよ」


喋らないかと思ったけれど、テテスは意外と簡単に口を開いた。


「あいつは師匠の息子だけど、鍛冶師としても細工職人としても腕前は二流もいいところだ。そのくせ師匠の威光を笠に着て威張り散らす嫌な奴さ」


「ああ、マジで最低な奴なんだな。で? そいつがなんでお前に因縁つけてくるんだ? それこそ、お前がこの工房継いだのは二年前だろ?」


「師匠が死んだからって簡単に心を入れ替えられたら世話ないよ。アイツはクズのままだったのさ。アイツがそれまで好き勝手できたのは、師匠の威光と、レグナー工房が栄えていたからだ。けど、師匠の七光りは無くなって、工房も収入が激減した」


「あー……なるほど……」


多分、ツケで豪遊しまくったんだろうな。

それまでならツケはレグナーの名前でなんとでもなったし、その支払いも、工房の収入でどうとでもなっていた。

けれど、そのどちらもが無くなった今、アイツはおそらく借金まみれだ。


「それで、敷地面積だけは広いこの工房に目をつけたのか……?」


「ああ、半年くらい前から度々ああやって嫌がらせに来る。それまでは一ヶ月に一人二人あった依頼も完全にゼロになったよ」


だから急に露店売りを始めたのか。


「なるほどね。まぁ、何となくわかったよ。じゃあ、ブーツの製作、よろしくな」


「え?」


「え? じゃねぇよ。そういう話だっただろ? 今日はもう来ないと思うしさ」


「いや、あんな事があったのに、まだオレに任せてくれるのか? 師匠の下に居た職人の何人かは、このルードルイで工房開いているから……」


「そいつらはセアカドクグモを加工できるのか?」


「う……。まぁ、無理だと思う」


「だろ? それに俺がこの仕事を任せたいと思うのはお前なんだからさ。俺がお前を信頼してるのはその腕前であって人間性じゃないよ。だから、お前がどんなトラブル抱えてようが関係無い。仕事さえちゃんとしてくれればな。それとも、怖くて鎚握れないか?」


細工師クラフトマン』だから鎚は握らないと思うが。


「安い挑発だな。まぁ、いいさ。任せてくれるって言うなら任されてやるよ」


「一応セニアを護衛に残していくよ」


「え?」


これにはセニアが声を上げる。


「俺はちょっと、コイツ(・・・)を返してくるから」


「…………ふぅ、わかったわ」


この時俺はどんな笑顔を浮かべていたんだろうか?

セニアの全てを諦めたような溜息が、それを物語っているような気がする。




気絶したままの男を担いで俺は街を歩く。


心当たりはあった。

いや、コイツらの溜まり場じゃない。コイツらの素性を知っていそうな人間にだ。


「しっかし重たいなぁ。なんでこんなに筋肉膨らませてやがるんだか」


ウェイトトレーニングでも筋力は成長するが、種族LVが上がるための経験値は入らない。

ただ種族LVが上がるだけならどっちが効率が良いかは微妙だけど、戦闘して経験値を得れば、『戦士ファイター』なんかの戦闘系職業を獲得できる筈だから、その成長補正も乗るので、トレーニングをするより身体能力は確実に上昇する。


LV1の筋肉達磨より、LV10のもやしの方が、間違いなく筋力は上なのがこの世界なんだ。


目的の場所に到着した。そこは慈愛の神の神殿だ。

担いだまま中に入る。

ざっと周囲を見回すと、目的の人物が長椅子に座って談笑しているのが見えた。


「ちょっといいかい?」


「あん? おぅ、こないだの兄ちゃんじゃねぇか。はは、面白い荷物担いでんなぁ」


人一人を担いだ俺を見ても、じいさんはそんな事を言う。

彼の名前はレバンノ・ステアンノ。二日前に洗礼を受けに来た時、出会った元冒険者だ。


『アナライズ』で見ても一般市民だったけど、名前をツリーで辿れば正体が判明した。


このじいさん、元盗賊ギルドの元締めだった。


十年以上前に引退して、本人が言った通り隠居したので、役職も市民になっていたんだ。

けれど、その影響力はまだまだ健在。


てか、やっぱフラグだったよ……。


というか、この街でありついた職業って裏家業の事だったのかよ。

職業『剣戦士ライトセイバー』だったからちょっと気付かなかったぜ。

多分、獲得職業に『盗賊ロバー』とか『曲者シーフ』を持ってる筈だ。


「ちょっとトラブルがあってね。コイツ、どこの奴か知らないかい?」


俺はそう言って、男をじいさんの前に下ろした。


「うーん? ちょっと見覚えねぇなぁ。最近の若い奴で、下っ端だと流石にな。お前さんはどうだい?」


と、じいさんは一緒に座っていた男に声をかけた。


眼光の鋭い男だった。慈愛の神の神殿にはそぐわない雰囲気を纏っている。

明らかにまともな職業の人間じゃないよね、この人。



名前:イブリード

年齢:38歳

性別:♂

種族:人間

役職:ルードルイ市民

職業:曲者

状態:平静

種族LV:29



あ、多分盗賊ギルドの関係者だ。

役職が市民だから、情報屋とかそんなんかな?


「デルゴの所の若い奴だな。レグナーの息子と最近つるんでるのをよく見る」


「ああ、そのレグナー工房でトラブったんだよ」


そこで、イブリードは右手を俺に向かって差し出した。


「相場がわからん」


「翁の知り合いだから銀貨でいい」


言われて俺は銀貨一枚を渡す。


「レグナーの息子はデルゴの所から良くない金を借りている」


「んで、デルゴの若い衆があのドラ息子に絡むんじゃなくて、つるんで、工房に? ははぁん、デルゴと組んであの土地安く買い上げようって腹か」


「だろうな」


二人の話は、俺の推理と一致した。


「テテスは良い腕の持ち主だ。正直、工房と師匠の名前がでか過ぎて苦戦してるけど、暫くすれば必ず名前が上がるよ。けど、その前に考え足らずの奴らにおかしな事されちゃたまらん」


「正直あの工房を一人で切り盛りするのは難しいと思うがなぁ」


「俺もそう思う。けれど、二年もあそこで頑張ってるって事は、譲れない何かがあるんだろう。俺はそれを尊重したい。勿論、売ってもいいって言うなら、ちゃんと適正価格で購入してくれる相手を紹介してやりたい」


「なるほどねぇ。けど、兄ちゃんあれだな? よく俺がそういう事詳しいってわかったな?」


「そんな雰囲気纏わせてれば、堅気の人間じゃないってわかるよ」


「違いない」


イブリードも同意した。


「ま、とりあえず話してみねぇ事にはな。可能ならギルドに話通して、事務員とか工房を経営・・できる奴を派遣してやる必要があるだろうし」


名前さえ上がれば、働きたいって職人がやって来るだろうし、独立した職人も戻って来るかもしれない。

そうすれば、あの敷地と工房を維持するだけの資金を稼ぐ事も容易になるだろう。


さて、あとはあのバカをどうするかだけど……。


「ただの借金まみれのクズならほっときゃいいんだが、後ろについてるデルゴをなんとかしねぇとな」


「デルゴがポールに金を貸したのは最初からあの土地が狙いだ。大人しく引き下がるとは思えんな」


「借金返したからって何とかなるような相手じゃねぇだろうしなぁ。

昔みてぇに工房が繁盛すりゃぁ、おいそれとは手出しできなくなるとは思うけどよ……」


「それについては俺にちょっとした考えがある」


「へぇ……」


う、じいさん目を細めてガチモードだよ。

威圧感はんぱねぇな。


「さっきも言った通りテテスは相当な腕前だ。しかも、ただ腕がいいってだけじゃなくて、独創性もある。これまで、価値が無いと思われていた魔物やモンスターの素材が金になるくらいにな」


「本当か?」


「これ、何かわかるか?」


言って俺は装備していたグローブを二人に見せる。


「うん? 革のグローブだろう? 魔法の防具でもねぇようだし」


「……!? 砂漠狐の毛皮だと……!?」


暫くじっと見ていたイブリードが驚きの声を上げた。

え? わかんの?

俺としては「実は砂漠狐の毛皮だ」「なにぃっ!?」みたいな展開を期待してたんだけど……。


『防具鑑定』か『物品鑑定』持ちか?


俺の正体には気付いてないみたいだから、『アナライズ』そのものじゃないみたいだけど……。


「いやいや、毛はよ!?」


「それにあれは毛皮を使って服は作れても、グローブなんかの防具には向かなかった筈……」


セニアと反応が同じだな。


「そこがテテスの凄い所さ」


詳しい説明を省く事で興味を煽る。

まぁ、詳しい説明はできないんだけどな。


「今セアカドクグモの革でブーツも造ってもらってる」


「は!? あんなもんでどうやって!?」


「俺にはわからない。けど、わざわざ素材を獲ってこさせて自信満々なんだ。見切り発車じゃないと思うぜ?」


「なるほどねぇ。レグナーの野郎がなんでわざわざあんな坊やを後継者に指名したのかと思ったけど、その才能に惚れたのか」


「多分な」


レグナーとしては、テテスの才能を潰さないよう、好き勝手に創作させるために後継者に指名したんだろう。工房の運営自体は、周囲のベテラン職人に任せるつもりで。

破天荒過ぎた彼は、どうやら職人の職人気質を甘く見ていたみたいだけど。


「ふぅん。なるほど。それで冒険者ギルドを味方につけようって事か?」


「冒険者ギルドだけじゃないさ。これまでは討伐依頼を出さなきゃ狩られなかった魔物やモンスターを冒険者が積極的に狩ってくれるようになるんだ。領主や王国にだって恩が売れる」


「なるほど。そこまで広げりゃデルゴの野郎にゃ手は出せねぇな」


「デルゴ自体は合理主義者だからな。冒険者ギルドを敵に回す事がどれくらい愚かかわかってるだろう。けれど、デルゴが手を引いたらポールが暴走するんじゃないか?」


「そのデルゴって奴が手を引いても、ポールの借金はそのままだろう? デルゴが今度はポールの敵に回るんだ」


「はは。そりゃ確かにその通りだ。いいだろう。各所への根回しはまかせときな。けどま、一回話してからだな。土地に拘りが無いんなら、一回別の所に売って、その後でギルドが新しい工房与えてやりゃいいんだからよ」


「ああ。その辺は任せるよ。俺は一介の冒険者だから、そういう事には疎いからさ」


「へ、よく言うぜ」


言ってレバンノ爺さんが豪快に笑い、俺もつられて声を上げて笑った。イブリードも、目を伏せて口元を緩めている。

よし、裏家業の伝手と協力者ゲット!



長くなりました。

テテス周りの話はあと一話だけ続きます

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