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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第二章:エレノニア王国探訪記
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第22話:ルードルイへの道

大層なサブタイトルですが、大層な事は起こりません

いつも通りにタクマがチートで無双するだけです

俺達はルードルイへ向けて森の中で馬を走らせていた。

セニアが街道を進む事を嫌ったためだ。

気にし過ぎだとは思うが、まぁ彼女の気持ちもわからないでもなかったので了承した。


まさかフェル一派は全滅させたからもう大丈夫、とは言えないしな。


ついでに言えば、《赤き狼団》は王国全土に拠点というか支部みたいなものを持っていて、全団員数百人を超える大型冒険者団だ。

フィクレツ以外の場所に居る《赤き狼団》の他団員が、今回の事件を知り、俺達に辿り着かないとも限らない。


朝から一日馬を走らせて、街道を横断して通過。エレニア大森林近くの村で一泊させて貰う事にした。

徒歩や馬車なら二倍から三倍はかかる道程だ。流石に馬単体だと速いな。


馬の速度は時速60~70キロくらいらしい。

けれどそれは、全力を出した場合の話で、当然そんな速度で一日中走らせられる訳がない。


せめてルードルイまでは使いたいので無茶な事もさせられない。

馬の走り方で一番速い、走る時に使う駈歩かけあしじゃなくて、その一段階下の速歩はやあしで走らせた。


馬の歩き方はもう一つ、一番遅い常歩なみあしがあるけど、それぞれ乗ってる感覚が違うから面白い。

まぁ、人間だって歩く時と走る時じゃ体の使い方違うからな。


速歩は体が上下に跳ねる感じだ。

騎乗位とはよく言ったもんだぜ。

ごめんな、男の描写で。


ちなみにセニアは馬に乗りなれているらしく、あまり体が動いてなかった。

それを見て邪な想像をするのはちょっと難しいくらいに上下に動いていなかった。

マヨイガに行くまでにもその姿は見ていたから、もうあんまり残念に思わなくなったな。


ちなみに村での宿泊費は一人12デューだ。

馬小屋なのを考えると高いが、まぁ、馬用の飼料も貰ったし、口止め料も含んでるからな。

勿論、口止め料だなんて言って払ってない。

あくまでそこそこ稼いでて、気前が良い冒険者って事で通してる。


なんで自分からやましい事があるので料金ぼったくってくださいなんて言わないといけないんだよ。

セニアもそわそわしない。

堂々としてればいいんだから。


うん? 顔が赤い? あれ? そわそわしてるの別の理由?

いや、ほぼ野営みたいなもんじゃん。今更雑魚寝くらいで恥ずかしがんなって。


翌日、日が昇ると同時に村を立つ。


エレニア大森林に沿って北上。

このまま馬を走らせ、ルードルイから東へ伸びる街道に当たるまで進むつもりだ。

その街道はエレニア大森林の北部を横断し、国境沿いにあるデルリアへと繋がっている。

デルリアは東にある東方小国家群の一つエントリア王国に対する備えだ。

ただこのエントリア王国、別にエレノニア王国と敵対している訳ではなく、あくまで国境沿いにある街という事で、城壁都市となっているに過ぎない。

小国家群の多くはエレノニア王国をはじめとする、大陸東部に位置する大国の属国になっている。

エントリア王国も同じで、扱いはエレノニア王国の属国である。

ただ、彼らは情勢によってつく勢力を変える事で生き延びて来た国であるので、いつ別の大国の属国になるかわからない。

裏切るなよ、と睨みを効かせる意味でも、デルリアは存在している。


結局街道を使う事にセニアが難色を示すかと思ったが、そんな事はなかった。

流石に全ての街道を拒否している訳ではないようだ。

あくまで追っ手を警戒し、フィクレツ、ルードルイ間の街道を避けたかっただけらしい。


馬を走らせていると、その足音を聞いて魔物や野生の肉食獣が森から顔を出した。

彼らが魔力を帯びてモンスター化したのなら、そのまま襲って来るのだろうけど、そこそこの速さで通り過ぎる俺達を追いかけてくる奴は少なかった。

時折こちらを追跡してくる奴もいたが、適当に魔法や矢を放って追い散らした。

縄張りに踏み込まなければ、そこまで執拗に追っては来ない。


むしろそういう意味では人間の方が厄介だった。


やや外れているとは言え街道近く。むしろ、街道に近いが人気が少ないため、襲う側にとっては都合が良い。

更にエレニア大森林という隠れ家には最適の場所が近くにある。

そして一番懸念すべきデルリアは、エレニア大森林がその内に抱える、エレニア山脈の向こう側。


盗賊団が跋扈するには最適な環境と言えた。


俺を狙って森の中から撃ち込まれた矢を、素早く抜き放ったショートソードで切り払う。


「っ!」


すぐにセニアが背後で馬を止めるのがわかった。

俺が射られた事や、その矢を迎撃した事に驚いた訳ではない。

すぐに襲来するだろう敵を迎え撃つためだ。

セニアも慣れたもんだよな。


セニアの武器は刺突剣だからな。馬に乗ったままじゃ戦いにくいんだ。


俺は自分の馬とセニアの馬に『プロテクションウォール』の魔法をかけ、ブロードソードを抜き放った。

火竜槍は使わない。

全滅させられればいいけど、逃げられたら厄介だ。

野盗の中には冒険者なんかの情報を売って糊口を凌いでる奴らもいるからな。


臨戦態勢を取った俺に向けて、森の中から次々に矢が放たれる。

セニアは遠目にも目見麗しいからな。殺してしまうのが勿体無いと思ってるんだろう。

俺さえ片付ければ何とかなると思ってるのかもしれない。


「『ウィンドウォール』!」


てっきり森から姿を現して白兵戦になると思っていたのに。

ブロードソードでこれを弾き散らすのは面倒なので、俺は魔法の風で一気に薙ぎ払った。


「う、お……」


「ええ!? なんだあれ……!?」


どうやらそのタイミングで飛び出そうとしていたらしい野盗たちが、森から姿を現したところで躊躇していた。


「はっ!」


追いかけられても面倒だから、俺は馬の腹を蹴って盗賊たちへ向かって突撃する。


短い距離なので全速力だ。

この距離なら俺が全力で駆けた方が速いんだけど、まぁ気分の問題だ。


「う、うおおお!?」


全く速度を落とさず突っ込んで来る俺に、恐怖と驚愕の表情を浮かべる野盗。

そのまま正面の野盗を体当たりで吹き飛ばす。

幾ら体格の良い馬でも、そんな事をすれば突撃衝力は失われかねない。

けれど、対象の物理防御力を上昇させる『プロテクションウォール』をかけてあるからな。

ノーブレーキの車が人を撥ね飛ばしたからって止まらないでしょ?


更に体当たりした野盗の左にいた野盗をブロードソードで薙ぎ払う。

馬の速度を加えた一撃は、簡単に野盗の体を両断した。


職業のLVとスキルの熟練度が上がっているのもあるが、野盗を一撃で倒す事ができたのは、相手の種族LVが低かったのもあるだろう。

今見えている野盗の中で、一番高い奴でLV8だもんな。


まぁ、これが普通なんだろう。

護衛クエストの時に襲って来た奴らが異常だったんだ。


「な、なんだこいつ!?」


「いくらなんでもでたらめだ!」


「おい、にげ……」


逃げるように指示を出そうとした野盗の首を飛ばす。

手綱を操り野盗の間を素早く駆け抜ける。


逃がしはしない。

情報を売られる可能性は低いだろうけど、今後つけねらわれるのも厄介だ。

だからせめて、ここに居る奴らだけでも全滅させる。


「セニア、ここは任す!」


「え!? ええ、わかったわ!」


俺の言葉に一瞬セニアは呆けるものの、すぐに頷いて野盗に向かって駆け出した。

俺は馬から降りずにそのまま森の中へ突入。

正直、危ないかとも思ったけれど、こいつらにそんな知能は無いだろうと考えた。

あと、長年一緒に戦って来た相棒って訳じゃない馬が、俺が突然飛び降りて逃げない可能性は低いからな。


野盗を逃がすよりもここで馬が居なくなる方がまずい。

あ、セニアとタンデム? それもいいな……。


まぁ何かしら罠があっても、『プロデクションウォール』はかかったままだから、多少の妨害は弾き飛ばせるだろう。


「ばかか! 調子に乗って森の中まで追ってきやがって!」


弓を撃ってた奴らの隊長格だろうか。

弓を構えた三人の野盗の背後に立った、同じように弓を構えた髭面の野盗が侮蔑するように叫んだ。


笑顔ひきつってるけどな。


俺は素早くブロードソードを持ったまま、ボウガンを抜く。

あ、意外と使い所あったぞ、これ。


スキルを多重発動させてその奥の野盗を狙い撃つ。


「ぐあっ!?」


避ける事もできず、喉に矢を受け、そのまま仰向けに倒れる野盗。


「な……!?」


「あ……!?」


「え……!?」


突然の出来事に対応できない部下三人。


『マジックボックス』から矢をクロスボウの台座に出現させる。

事前に台尻の腹当てを腹に当てて固定し、弦を引いておいたので、手を放すだけでセットが完了する。


馬に乗りながら片手でクロスボウの装填ができるのなんて俺くらいだろうな。

なんせ普通の奴は『マジックボックス』が使えないから。


そのまま左手で持って真ん中の野盗の喉を狙い撃つ。

命中。絶命。


一人を倒すのに十秒程度。同じ動作をあと二回行い、俺はその場に居た野盗たちを全滅させた。


そしてそのまま馬をその場で回転させ、背後に向かって魔法を放つ。


「『ライトボール』」


「ぐわぁっ!」


茂みの向こうから悲鳴が聞こえた。


思わず手を放したんだろう、へろへろと飛んだ矢が近くの木にぶつかって落ちた。


ふふ、俺の背後で隙を窺っていたのは『サーチ』で確認済みだ。

その方が簡単なのに、さっきの弓使い達を魔法で倒さなかったのは、この背後の野盗たちを逃がさないためだ。


この背後に居た奴らにはしっかりとした指揮官が居なかったみたいだな。

俺が前方の奴らを攻撃してる時がチャンスだっただろうに。

隊長格があっさりやられたもんだから、どうすればいいのかわからず、弓を構えたまま動けないでいたんだ。


まずは魔法の光で目潰し。そして……。


「『光の槍(セカンダス・ウィスプ)』!」


魔法の光から放たれた槍が、彼らに降り注ぎ、そしてその体を貫いていく。


「ぎゃああぁぁあ!」


「ぐわああぁぁっ!!」


「ぐえええぇぇ!!」


聞こえてくる断末魔の悲鳴。

そして『サーチ』に映った輝点プリッツがその輝きを失い、彼らが絶命した事を知らせた。


同じころ、森の外に存在していた輝点プリッツも、その輝きを失ったのだった。


おかしいな。年度末終わって少し時間に余裕ができた筈なのに、更新頻度上がらなかったぞ?

ヒント→油断大敵

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