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第131話:赤犬鬼、再び

大変お待たせいたしました


三行あらすじ

ノーラがハーレムに加入

ハーレム加入を神に報告するためラングノニア王国へ

人間の勇者に絡まれピンチにかつての強敵登場


「おらぁっ!!」


木の枝から飛び降りながら、アルグレイが吠えた。

相手の動きを止める効果を持った咆哮、バインドシャウトによって人間の勇者達の動きが一瞬止まる。

そこへアルグレイの飛び蹴り。


直撃を受けた人間の勇者の頭が弾け飛んだ。

小気味よい音が響き、グロいを通り越して妙な感動を覚える。


俺達よりアルグレイの方が危険と判断したのか、それとも、人類の敵として設定されているモンスターを前に、勇者としてのなけなしの本能が働いたのか。


理由はわからないが人間の勇者達がアルグレイに標的を変更し、赤犬鬼へと殺到する。


「どらぁっ!!」


しかしアルグレイは圧倒的だった。

鉤爪で首を飛ばし、蹴りで頭を砕く。

ひとたび噛みつけば、次の瞬間にはまるで空間ごとえぐり取られたかのように、相手の体の一部が消失・・する。



名前:アルグレイ・ザ・ドッグ

年齢:6歳

性別:♂

種族:クリムゾンクラウン

役職:ラザニア防衛司令官

職業:撃闘士

状態:平静


種族LV89

職業LV:戦士LV62 拳闘士LV70 撃闘士LV35 探索者LV20


HP:7112/7112

MP:1024/1100


生命力:2823

魔力:1056

体力:2115

筋力:1336

知力:350

器用:956

敏捷:1518

頑強:1188

魔抵:865

幸運:25



幸運って下がるんだなぁ……。

なんて現実逃避したくなるステータスをしてやがる。

探索者フェレットの職業を獲得してるのはダンジョン潜るようになったからだろうか。


ステータス的には一応俺の方が上だ。

敏捷と筋力で大きく負けているけれど、そこはスキルや装備の質で補える範囲だろう。


問題はその圧倒的な生命力と体力の恩恵を受けたとんでもないHPだ。


ただ、これでもユーマ君の一撃がまともに入るとワンパンなんだよなぁ。

極まった勇者って改めてとんでもねぇわ。

闇の勇者と育ってない時に衝突できてほんと良かった。


信者獲得関連ではトラブルを招きやすい俺だけど、一応幸運値高いからね。


そんな事を考えてる間に戦闘……いや、虐殺は終わっていた。

アルグレイの周囲には頭部を中心に体の様々な部位が欠損した死体が転がっている。


血の匂いエグい……。


「よう、久しぶりだな、おにいちゃん」


そしてアルグレイは俺の方を向いて、犬歯を剥き出しにして笑った。

敵意は感じないけど、迫力あるなぁ。


「おにいちゃんって……」


色々言いたい事や聞きたい事はあるけど、まずそこが引っ掛かった。


「うん? お前、うちの大将の兄弟子なんだろ?」


ユリアがそういう風に説明したんだろうか。

まぁ、前世で兄妹の関係だったって言うよりは納得しやすいか。


「兄弟子というか……、同じ神様に世話になった仲だよ」


魂の転生のシステムは俺にはよくわからないが、異世界の魂が転生してくるとなると、間違いなくフェルディアルが関わっているだろうからな。

偶然か故意かはともかく、時空の女神の権能なしじゃ不可能なはずだ。


「ふぅん、そういうもんか。で? おにいちゃんの目的もやっぱりコイツらか?」


どうでも良さそうに相槌を打ったアルグレイは、周囲に転がっている人間の勇者を見回す。


「いや、獣人の集落にちょっとヤボ用があって……」


どこまで詳しく説明すべきかわからなかったから、そんなボカした言い方になる。

ちらりと周囲を見ると、俺達の会話から敵ではないと判断したらしいサラ達は落ち着いているが、立花だけは青ざめた顔でアルグレイを警戒していた。


『致死予測』で見ちゃったんだろうなぁ。


「そうか。てっきり大将が俺の協力者として寄越したのかと思ったんだが……」


「お前、潜入調査とか苦手そうだもんなぁ」


「ああ!? 大将の采配に間違いなんかある訳ねぇだろ! 人手が必要になっただけだよ!!」


犬っぽいから嗅覚や聴覚が通常のゴブリンやクリムゾンクラウンより発達してたとしてもさ、それって捜索向きの能力であって、脳筋のコイツはやっぱり潜入調査には向いてないだろ。


いや、こういう時に相手を殲滅して危機を脱せられるから、ある意味向いてるのか?


ハナからこういう危機に陥らないようにしろ? それはそう。


さて、この人間の勇者に関する懸念事項はこれでほぼほぼ解決したと言っても良い。

俺という存在を認識されて、この後付け狙われる可能性はなくなった。

アルグレイの存在が強すぎて、俺達はその一味としか扱われないだろう。


どこからかやってきた、獣人を連れた冒険者ではなく、ゴブリンキングダムの一員と見做されるようになったって事だ。

アルグレイがこの国で暴れれば暴れるほど、その印象は強くなる。


だから後は放置で大丈夫。

念のため、別の国経由でガルツに戻れば完璧だろう。


問題があるとすれば一つ。


「そうか、頑張れよ。俺達の用事はもう済んだから」


「まぁ待てよ」


そう言ってこの場から立ち去ろうとする俺を、アルグレイは呼び止める。


「人手が必要って言ったろ? おにいちゃん?」


こいつが俺達をすんなり見逃してくれるかどうかって事だけだ。


逃げるのは簡単だ。

『テレポート』でこの場からいなくなればいい。

あとはコイツより先にユリアに話をつけられれば、協力せずに逃げた件もお咎めなしだろう。


コイツがユリアから言い渡された任務をほっぽって俺達を追いかけて来るとか、それこそ、俺達の事を報告しにユリアの元に帰るとかする訳ないから、確実に逃げられる。


ただなぁ。


気になるんだよなぁ、人間の勇者……。


コイツらに任せて大丈夫なのかって懸念もある。

コイツがどこかで敗北して野垂れ時ぬ事はないだろうし、正直、俺としてはそれでもいいんだけど、問題はコイツが潰し切れなかった時だ。


あとは、アルグレイが派遣されてるから、人間の勇者の製造工場みたいな場所を潰す目的だろうって勝手に予想してるけど、製造方法を入手して自分達で人造勇者の量産に着手する事が目的の可能性だってある。


ユリアがどこまでを目指してるのかわからないけれど、もしも世界征服なんて企んでるのだとしたら、その場合、かなりマズイ事になるよな……。


ゴブリンが安心安全に生きていく国作りをしてるとか、前にゴブリンキングダムの本拠地でユリアと話した時はそんな事を言ってたっけ。


今でこそ、エレノニア王国の信頼を得るために平和的に活動してるけど、本来はトンネル爆破したり首都爆撃したりと過激な手段を取ってた奴らだ。


人造勇者の軍団なんてものを手に入れても、そのまま友好的な関係を続けてくれるだろうか。


俺としては王国には愛着はないけどガルツにはあるし、何よりミシェルの愛する母国だ。

守れるなら守ってやりたい。


とは言えここでアルグレイ単体は勿論、ゴブリンキングダム自体と敵対するのは悪手だ。

コイツに勝てるか? ってのもあるし、何より今だとユリアには絶対に勝てない。

明確に敵対した時、果たしてユリアは俺の妹として振舞ってくれるのだろうか。


くれないだろうな。

以前に話した時、俺が勇者かもしれないってだけで殺意向けてきた奴だ。


兄とゴブリンキングダムを天秤にかけたら、間違いなくゴブリンキングダムに傾く奴だよ。


それが悪い事とは思わないし、むしろ感覚的には当たり前だと理解できる。

それでもやっぱり、兄としては寂しいもんだよ。

妹が、遠い……。


さて、アルグレイやユリアには勝てないから敵に回したくない。

かと言って、このまま放置もよろしくない。


だったらどうするか。


「……はぁ、いいぜドッグ、俺達にできる事なら多少は協力してやるよ」


「ほんとか!? いやぁ、流石は大将の兄弟子。頼りになるぜ!」


笑って俺の背中を叩くアルグレイ。

いや、痛いって。お前の筋力で手加減なしに叩くんじゃない。

俺じゃなかったら死んでるぞ。


ともかく、俺はアルグレイに協力する事にした。


敵対も放置もできない。

だったらできる限り人間の勇者に関する情報を取得して、それをユーマ君に渡してしまえばいい。


それならゴブリンキングダムが製造方法を入手する前に光の勇者によって叩き潰されるかもしれないし、仮に間に合わなくても、敵対するのはユーマ君だ。


バケモノにはバケモノをぶつける。

卑怯とは言うまいね。


『人間の勇者』は『反英雄宣告』の対象になっても、人工的に勇者を作り出す行為自体は、問題にならない可能性が抜け落ちているタクマ

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― 新着の感想 ―
結構覚えているけど、タクマって誰だ?
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