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第126話:ラングノニアへの旅路


ガルツを出てフェルデ森林を目指し、街道を外れて南西へ向かう。

カタリナ達の言った通りに派生ダンジョンを通るのではなく、あくまで地上を進むルートを選択した。


ダンジョンは常識の通用しない未知の世界だからな。

何かあった時に対応できない可能性があるのは怖い。


俺とノーラとウォード一家。

そしてサラ達を含めたフルメンバーでの行動だ。


ウォード達を連れて行く以上、サラ達の誰かを家に残す意味はないからな。


一応隠密行動なので、馬車は目立つという事で徒歩になった。

まだ幼いノーラの弟二人には厳しい道程になるかもしれない。

妹のツィーリは厳しいどころか不可能だと思われたので、ノーラがおぶっている。


ラングノニアから逃げてくる時はそんな余裕もなかったから全員必死に歩いたらしいけどな。

ステータスが数字で見えてるせいで、子供相手でも苦労させて鍛えて強くしたくなっちゃうのはなんとかしないといけないな。

こういうのもゲーム脳って言うんだろうか。


さておき、ガルツからフェルデ森林までは徒歩でおよそ二日。

けれど子供を連れているのでもう少しかかるだろうと予測していた。


道中、何度か野盗の襲撃を受けた。

サラ達に師事して迷宮で鍛えてるとは言ってもそこは子供。


同じく荒事で生計を立てている野盗相手に、彼らを中心に戦うような真似はさせない。

サラ、ミカエル、ノーラ、立花たちばなが前に出て、それをカタリナとエレンが支援する形で無双を続けた。


勿論、彼女達を迂回するなどして抜けてきた相手もいた。

それは俺を中心にウォードさんとニーナさんで撃退。


ステータス的に勝っている相手に対してだけ、二対一でのみ、フルブとライトに戦闘を許可した。


「なんだかこういう普通の旅って久し振りね」


三日と少しかけてフェルデ森林の外縁部に辿りつき、そこで野営をしてると、モニカがそんな事を呟いた。


「普通……?」


「そうだね。昔なら勝つか負けるか考える前に殺されていたような怪物や、何がどうなってるのかわからない相手に襲われる事なく旅できるってのは、本当に良いものだね」


何度か野盗に襲われた。

つまるところ、命の危険があった旅路に何を言ってるんだこの元皇女は、なんて思ったけれど、答えるミカエルの言葉に俺も納得する。


この世界において、旅とはそもそも危険なものだ。

俺はチート能力で強引に突破しているけれど、命を落とすような危険な状況を何度も乗り越えて、苦労して目的地にたどり着くのが、この世界の『普通の旅』だ。


まぁドラゴンだの人間を大きく超えた強さの熊だの、いつの間にか正気を失っている植物だのに比べれば、野盗に襲われる程度は普通の旅か。


「そうだねぇ。こうして夜を安全に過ごせるなんて素晴らしいねぇ」


そして亡命してきた元難民は更に事情が重い。


「やっぱりこういう世界だと、旅って危険なものなのね」


立花はなにやら難しそうな表情を浮かべて、彼女達の会話を聞いている。

地球でも治安のよくない場所を旅するのは大変なんだろうな、とか考えてるんだろうか。


ちなみにフルブとライトとツィーリは、ウォード夫妻とともに夜は俺の『ワープゲート』を使って家に戻っている。

勿論、サラ達も警護のために一緒だ。


一応、誰に見られているかわからないので、野営している証拠として俺を含めて一部はテントの傍で見張り役でカモフラージュ。

子供達はテントで眠っていると見せかけて家にいるという訳だ。


家と子供達の警備のサラ達は固定じゃなくてローテーションだ。


みんな俺と離れたがらなくてな。

いやぁ、モテルオトコハツライナー。

正直すまない。


割と真面目にこんなにも激しく好意を向けられた経験が無いせいで、未だに取り合いのような事態に遭遇すると、テンパっちゃうんだよな。


かつての俺を超えたハイパー俺になるためにも慣れていなかいといけないと常々思ってはいるんだけど、中々難しいな。


それこそノーラにはもっと早くに俺から迫るべきだった。

嫌われるような事をしないってのは大事だけれど、嫌われる事を恐れない勇気ってのも必要だと思う。


マイナス方向でもいいから好感度の絶対値を稼いでおいて、後のイベントで一気に反転させる、なんて言ってた落とし神はやはり偉大だった。

大きなイベントがある事がわからない現実だと絶対にやれない手法ではあるけどな。

大抵は、一度マイナスに好感度が入ったら、それ以降は何をしても否定的な評価を受けるだけだ。

実際には淡々と日々が流れていって、ゆっくりと好感度が沈んでいくだけになる。


逆に言えば、好感度を反転させるイベントの発生が高確率で予想できるこの世界においては、もっとグイグイ押していくべきなんだろう。


ただ未だに童貞マインドの俺。

好みのタイプの女性にいくんじゃくて、好意を寄せてくれる相手に向かいがちだ。


「フェルデ森林はこの国では珍しく、ただの森林なんだよね」


「ああ、ダンジョンがないってこと?」


「そうそう」


シュブニグラスやサラバーティなんていう、他のダンジョンに比べて派生ダンジョンを生み出しやすいダンジョンがあって、それは確かに珍しい。


「ラングノニアのダンジョンは数が少ないっていうから、それが関係してたりするのかな」


基本的に情報の伝達が遅く、そして伝わる範囲の狭いこの世界において、元王族同士は流石に物知りだ。

基本的にあちこち移動する冒険者もそうした各国情勢には詳しいんだけど、基本的にエレニア大森林とエルフェンリードのダンジョンでしか活動していなかったエレンと、姿を隠さなければならない関係で各地を放浪できなかったカタリナじゃぁなぁ。


俺は『異世界の常識』のお陰でその辺の冒険者よりは周辺の情勢に詳しいからな。

ただ、知っている事とそれを活用できるかは別だ。


気楽な世間話でさらっとその地域の雑学を口にできるってスマートで良いよなぁ。

そういう所も見習って、慣れていかないとな。


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