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第124話:ノーラと初めての朝


「まだにゃかにゃにか入ってる感じがする……」


朝。

俺の胸に顔を乗せ、まどろみながらノーラは言った。


頬が赤い。

自分で言うのもなんだけど、好きな相手にひっついてるからというだけじゃなくて、昨夜の興奮が収まって恥ずかしさが込み上げて来てるんだろう。

これは実際俺が何度も経験しているからわかる。

他の子達も初めての夜を終えて迎えた朝はそんな感じだったし。


というか色々ズルいんだよなぁ。

普段は溌剌として、性的な事に対しても積極的というか開放的な言動が多いのに、いざその時になると初心な態度で羞恥に悶えるとか、ギャップが激し過ぎる。


初めてだっていうのを除いても、行為中は終始受け身だったし。

それでいながら獣のよう、とでも言うのか。こちらの攻めに対してはかなり敏感に反応するしな。


体に関してだってそうだ。

サラやモニカ、ミカエルのように鍛えている者特有の、硬さの奥に確かな弾力を感じる。

それでいてカタリナのような肉感も保有しているといういいとこどりの肉体。


これは多分、種族的な差異が関係しているんだろう。


いざこういう関係になる前はうだうだうじうじ言ってた俺だけど、こうして一度抱くと途端にノーラに対する愛しさが込み上げて来るのは、まだ俺の精神が童貞のそれから脱却できてない証なんだろう。


三十年近く連れ添った相棒の事をそう簡単に忘れられる訳がないよな。


そうなる事がわかっていても、他の女性に対して積極的に出れないのは、成功した時の幸福のメリットより、失敗した時に関係が壊れるデメリットを恐れているからだろうか。

サラ達を愛するので手一杯だとか言い訳しておいて本質はこれだからなぁ。


賢者タイム終了。


「ギノ族の祠へ連れて行って欲しいんだけど……」


朝食を摂っていると、ノーラからそんな要求があった。


「ギノ族のって事は、ラングノニア領内だろう? どうしてまた?」


「戦巫女は番が出来たらギノ族の祖神様に報告し祝福を受けるにゃらわしがあるんだよ」


ノーラは獣の神から加護を得ている。これがその祖神様だとして、その洗礼を受けるって事だろうか。

獣の神って『常識』に無いくらいマイナーな神だからなぁ。


うちの女神様もマイナーの部類だけど、一応神殿はあるし、教会関係者ならその存在自体は知られてる。

けど、獣の神は神殿自体がこの大陸の国には無い。


ただ時空っていう概念が理解できないからマイナーなフェルディアルと違って、獣の神はその存在が知られれば爆発的に信者増えそうな気がするな。


人間やエルフとかだと信仰する人は少ないだろう。

獣に関係する職業は思い浮かぶけれど、大体が獣を狩る側だ。

獣を使役する猟師とかも獣を狩るために使役してる訳だし、畜産業は獣の神に真っ向から喧嘩を売ってる気がする。


正直、対象になるのは地球の過激派Vガンみたいな人達しか思い浮かばない。


けれど生まれながらにこの神の加護を得られそうな種族がいる。

それが獣人だ。


「あれ? でも戦巫女って世襲制じゃないよな?」


ノーラの母親であるニーナの役職は現在は冒険者だし、出会った時は難民だった。

そしてニーナもウォードも『獣の神の加護』を得ていない。


「うん。先代の巫女の前で戦って、一番強かった奴が次の巫女ににゃるんだ」


つまり集落チャンピオンの通称な訳か。


「巫女に選ばれると祖神様から力を授けられて身体能力が上昇したり、特殊な魔法を使えるようににゃったりするんだ」


加護自体はその時に授けられるんだろうか。

確かにノーラの成長率はウォードや他の兄弟より良かったけど、それは彼女が丁度成長し易い年齢だからなんだと思ってた。

どうもここにも影響してそうだな。


「まぁ理由はわかったけど、いいのか? ラングノニアだぞ?」


人間至上主義を掲げてヒトの中でも人間を優遇し、エルフやドワーフですら二級市民として差別する国。

そこでは獣人はヒトとモンスターのハーフと言われており、討伐対象となっている。

それに反発した一部の獣人がクーデターを起こしたものの失敗。

そして国が本気で獣人を狩り尽くす前に、ノーラ達を始めとしたラングノニアの獣人達は国から逃げ出した訳だ。


そんな所に獣人を連れて行って大丈夫なのか?


確かに俺なら密入国は幾らでもやりようがあるけどさ。


「戦巫女自体は、それこそもう集落で一番強い奴、くらいの意味しかにゃいからそこまで重要じゃにゃいんだ」


頬を掻きながらノーラは言う。

その頬がほんのりと赤い。


「ただ、折角番ににゃったら報告して祝福を受けるっていう風習があるんだから、番ににゃったからやってみたいんだよ」


結婚式に憧れる女子かよ。


でもまぁ、気持ちはわからんでもない。

俺だってエレンを貰いに行った時にエレンの親父さんに殴られた。

あれは痛かったけど、同時に嬉しくもあった。


それだけ大事にしていたエレンを託されたから、というのも勿論ある。

それと同じかそれ以上に。

フィクションで見た事のある展開を体験できた、という事実に興奮したんだ。


「タクマと番ににゃったっていう、実感っていうか、証拠みたいにゃのが欲しいんだよ」


「そこまで請われて拒否したんじゃ、男が廃るな」


という訳で次回ラングノニアへ向かいます

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[気になる点] 思想信条やライフスタイルへの当てこすりは対象が何であれ正直萎えます・・・ 愚痴すみません
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