第122話:激闘に後に
闇の勇者を撃退したタクマ
今後の予定について話し合います
ひとまずソーマ君を退け、立花達と合流した後、俺達は街道から外れた森の中に身を潜めていた。
「さて、これからどうしようか」
アイテムを使用してHPとMPを回復し、落ち着いたところで俺はそう切り出した。
「勇者クラブと関わるのを避けるのを優先するなら、国を出るべきだね」
最初に口を開いたのはミカエルだった。
「一応の目的は竜王の鱗を加工できる職人を探す事だけど、そういった職人が集まっているのは間違いなく、神の揺り籠の麓にあるガンディアだ」
ガンディアはロドニアの西部中央に位置する街で、そのものずばり、鉱山都市と呼ばれている。
神の揺り籠から採れる上質な鉱石を販売、加工する事で繁栄した都市だ。
ドワーフが集っているならミカエルの言う通りその街だろうし、『常識』でもそうなっている。
勿論、そういったわかりやすい場所を嫌う協調性の無い天才がいる可能性もゼロではないけど、何の手掛かりもなく探せる訳がない。
「けれどガンディアには冒険者ギルドの本部があるわね」
言葉を継いだのはモニカだった。
ノーラの関係でそこを訪ねるよう言われているけれど、勇者クラブの面々が基本冒険者として生計を立てている以上、彼らとギルドの関係性は深いと見るべきだ。
初心者迷宮の管理を任されてるくらいだしな。
どういう連絡手段があるかわからないけれど、既にギルドへ連絡が言ってる可能性は考慮しないといけない。
この国では俺達の信用度は勇者クラブと比べてかなり低い。
俺が時空の神の使徒であるって事で、かろうじてゼロじゃないってだけだ。
ソーマ君が俺達を、闇の神に連なる邪神の眷属とでも言えば、冒険者ギルドやガンディアどころか、ロドニアそのものが敵になりかねない。
闇の勇者はソーマ君なのにな。
今後を考えれば勇者クラブは残しておきたい。
どうしても衝突が避けられないなら、皆の安全と天秤にかけるまでもなく叩き潰すけれど、だからってわざわざガンディアへ行って煽るような真似をする必要はない。
「ガンディアを避けて竜王の鱗の事を聞くなら、王都のロードグリアか、南部のエセンドラか……」
ただ、王都はガンディアと同じ理由で足を向けるのに躊躇するし、エセンドラはどちらかと言えば、神の揺り籠や南部国境に対する砦群へ物資を輸送するための後方拠点としての側面が強い。
「いっそ砦の中に入るのもありかもしれないわね」
砦に常駐する兵士や傭兵向けに酒場や商店が砦内部には存在していて、一種の城塞都市を形成している。
当然、武具の修理に必要なので鍛冶屋も中にある筈だ。
距離で言えばガンディアより更に神の揺り籠に近い事になる。
「けれど、そのような最前線に腕の良い職人がいるかしら?」
カタリナが疑問を口にする。
神の揺り籠や国境に近いって事は、それだけ危険も大きいって事だ。
本人が行きたがっても、それほどの腕を持つ職人なら周りが止める気がするな。
正直、竜王の鱗の関係以外でも、ロドニアには行ってみたい場所が結構あったんだよな。
様々な種類のゴーレムが出現するっていう石牢迷宮、鉱物資源が豊富に手に入るらしい魔物鉱山。
今後の生活を充実させるためにも、せめて場所だけでもマーキングしておいて、いつでも『テレポート』できるようにしておきたい。
特に、ガルツの家を囲む魔法の石がまだまだ足りてないからな。
石牢迷宮に行ってストーンゴーレムを狩りまくるのはアリだ。
「アイツらは俺達が何をしにロドニアへ来たのか知らない」
入国の際にも目的は明かしてないからな。せいぜい時空の神の布教活動くらいか。
あれ? そう言えばあの時、俺達全員で国境を通ってるよな?
とすると勇者クラブが調べれば、立花の仲間がノーラとエレンだけじゃないってバレる?
「そんな俺達が勇者クラブと揉め事を起こしたとして、普通はどうすると思う?」
まぁ、今後は別行動を避けるようにすればいいか。
ソーマ君の『闇の帳』の事を考えたら、別動隊は作っておきたいけれども……。
「まぁ、この国を出ようとしますわね」
「初心者迷宮を経由してルクリアに来ているから、東側……エレノニア王国から来たって推測は簡単にできるね」
俺の問いにカタリナとミカエルが答える。
サラド方面の国境が固められる可能性は、俺達だって当然考える。
「エレノニア王国南西部の国境付近にはダンジョンがあるから守りが固い。当然、そこと接するロドニア王国南東部も砦や軍の駐屯地が多くて監視が厳しい」
「となると、国を出るには北部からフェレノスか、南部からノークタニアか……」
そんな広い範囲、通常はカバーしきれない。
裏をかいてレヘトから東へ抜ける可能性だってあるから、そこを押さえない訳にはいかない。
けれど俺達は、勇者クラブがどれだけの影響力を持っているかを知らない。
この国の兵士や冒険者、傭兵なんかを動かす事ができなかったとしても、クラブに所属してる勇者の中に、国境全体を監視できる能力持ちがいるかもしれない。
できれば石牢迷宮には行っておきたいんだけど、石牢迷宮はルクリアから行くには王都を経由する必要がある。
土地勘のない場所で街道を外れて辿り着くのはほぼ不可能だ。
石牢迷宮は神の揺り籠に接しているが、そっちからのアプローチはもっと無理。
「仕方ない。一旦帰るか……」
仮に国境が封鎖されても、俺達には帰る手段がある。
そしてもしも国境全域を見張る事が可能だったなら、国境に俺達が姿を現さない事で、まだ国内にいると思わせる事ができるから、時間も稼げる。
あー、でも俺の事を調べられたら『テレポート』はわからなくても『ワープゲート』の存在には辿り着けるから、それで国を出た事がバレちゃうか。
あれ? そこまで掴む事ができれば、俺がガルツの外に住んでる事もバレるんじゃないか?
もしもアイツら国境を越えて追って来るほど、俺達に執着心を抱いているとしたら……?
ちょっと俺が考えている以上に、自体はまずい事になっているのかもしれない……。
という訳で一旦帰宅
何やら不穏なフラグが立っていますが…
 




