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第111話:初心者迷宮


レヘトの街を出て街道を暫く西に進むと一つの立札が見えて来る。

その立札が指し示す方角へ街道を外れて進むと、一日ほどで初心者迷宮に辿り着く。


ガルツの中にあるので、多くの冒険者が潜るというだけで、全然初心者向けではないシュブニグラス迷宮と違って、こちらは名前の通り初心者向けのダンジョンだ。

そのせいか、多くの人間が訪れる事もあって、街道を外れても、草が枯れて土が踏み固められ、道のようなものが続いている。


迷宮に近付くにつれて、草原を歩く人も増えて来た。

幾つか、キャンプやキャンプの跡も見える。


「そろそろ日が暮れるな、今日はこの辺りで休むか」


俺の提案に特に反対意見が出なかったので、『道』から少し外れた平地にテントを設置し、竈を組む。

テントは大きさ的に三人くらいで使うものなので、怪しまれないように三つ設置。


これ以上大きいのだと、背嚢から取り出しているように見せかけるのに無理が生じるからな。


安全面を考慮し、見張りは常に三人。

テントの中には『ワープゲート』を設置して、いつでも逃げられるようにしておく。

 

まぁ、『アナライズ』で確認した限り、俺達の障害になりそうな奴らはいないから、奇襲を受けない限り大丈夫だろう。

当然、周囲には『空気の嫁セカンダス・エアリアル』センスアトモスフィアを張っておく。


女性だらけのパーティは相当珍しいせいで、周りからジロジロ見られてるからな。


しかもここでキャンプをするって事は、初心者迷宮に向かうって事だから、こちらを初心者だと侮る可能性が高い。

自分達を棚に上げてな。


まぁ、基本的に弱肉強食の世界だから、男性の方が女性より強いって認識は、現代より相当強い。

同じ初心者同士なら、自分達の方が上だと勘違いしてもしょうがないよな。


一応、遠目に見ても装備は相当整っている筈だから、それを警戒してくれるといいんだけど……。


絡まれたところで瞬殺できるけど、トラブルに巻き込まれるのは勘弁だからな。


「これは予想するべきだったし、失敗だったかなぁ」


「ルクリアへ行く道すがらなら、大体こんなものだと思うよ」


竈の準備をしつつ俺がぼやくと、ミカエルがフォローを入れてくれた。

初心者迷宮へと挑む冒険者が拠点とするなら、やはり初心者三角形(俺命名)の頂点にある、ルクリアと他二つの城塞都市だ。

なら、それぞれから初心者迷宮へ向かう冒険者達で、街道の周囲は似たような状況だろうな。


「ふむ、それなら……『ファイアショット』」


竈に火を点けるのに魔法を用いる。

色々と隠すべきものはあるけれど、敢えて目立つ事で悪意ある人間の接触を回避しよう。

竈に火を灯すくらいの事でわざわざ魔法を使う。

そのくらい魔法に自信ありますアピールだ。


時の旗印を目立つ場所に掲げるのも考えたけれど、時空の神なんてマイナーな神、知らない奴の方が多いだろうし、更にその神の聖印なんて尚更だよな。

ほら、『常識』にもフェルディアル出て来ない。


考えてみれば、典型的な絡まれ方をしたのはフィクレツの冒険者ギルドだけか。

ダゴニアの氾濫鎮圧のはまたちょっと違うしなぁ。


そういう意味では、できる限り目立たないように、という俺の努力は実を結んでいた訳だ。


「? なんだろうか?」


ある意味一番絡んで来たのはこいつなんだよなぁ。


「いやなんでもないよ。さて、あとは俺に任せてお前も休んでいていいぞ」


「いや、一人でいると変なのが寄って来るかもしれないだろう? それにボクは、冒険者ミカエルとしてなら、女性だとバレなかった実績があるからね」


それはそれで変なのが寄ってきそうではあるな。

『隷属の首輪』をつけているのがミカエルだから、このパーティの主人がミカエルだと誤解する人間は少ないだろう。

だから、女性は寄って来ないかもしれない。


けれど、女日照りの長い兵士や冒険者の間では、普通に衆道が流行っている。

同性愛とは別なので、いかにも男性らしい相手よりも、中世的だったり、華奢な美形がその対象になりやすい。

特に、男女の性差の少ない年若い美少年に集中しがちだ。


そしてミカエルは、その要件を全て満たしている。

しかも剥けば美少女が出て来るんだ。

女性の代用として衆道を嗜む相手からすれば、相当な当たりだろう。


あれ? ミカエルを奴隷にしてる俺って、ひょっとしてそういう目で見られてる?


悪意だけでなく、好意を持った男性も寄ってきそうだな……。


とりあえず、この日は心配していたような事は起こらず、平穏な夜を過ごす事ができた。

 

朝日とともに起きた翌日。

朝食を摂ってテントを片付けたのち、初心者迷宮へ向かう。


「人が増えてきましたね」


初心者迷宮が近くなると、徐々に道行く人間、『道』の傍で休憩する人間の数が増えてきた。

サラが周囲を警戒しながら呟く。


大都市の大通り、祝福の日もかくや、という賑わいだ。

中には露店や屋台を出している者もいる。

それらの賑わいと違うのは、目につく人間の悉くが、何かしら武装をしているという事だろうか。


つまり、ここにいる人間のほぼ全員が、冒険者や傭兵だという事だな。


「冒険者ギルドの本部がある国だからね。冒険者の数は間違いなく大陸一だろうし、その中で最も多いのは、やっぱり初心者だからね」


そのため、初心者迷宮は大人気なんだそうだ。

初心者パーティに一人二人混じっているLVの高い人間は、冒険者や傭兵、騎士団を引退したあと、初心者の護衛役を生業とするようになった奴らだそうだ。


人が多いというより、完全に人混みの中に入った感じだな。


「あ、あれだね」


とミカエルが指示したのは、大勢の人間によって形成された行列だった。

その最後尾には、ここは最後尾です、という看板を持った人間が立っている。


あれ? どっかで見たような列の成し方だな……。


「この行列は初心者迷宮の入口へと続くものでーす! パーティごとに固まって、順番にお並びください! 初心者迷宮に挑むにあたっての注意事項をお配りしておりますので、順番待ちの間によくお読みいただくようお願い申し上げます! また挑戦料は一人につき5デュー。あるいは30デューをお支払いいただくと、十人までなら一パーティとして何人でも挑戦可能です!」


看板を掲げている人間の隣で、風の魔法で声を増幅して他の冒険者や傭兵に呼びかけている奴もいる。

つまり6人以上のパーティなら一人ずつ支払うんじゃなくてパーティで支払った方が得って事か。


「迷宮の挑戦で商売をしてるって事?」


「国が管理してるそうだからな。維持費を徴収してるんだろう」


モニカが首を傾げる。

ダンジョンはその存在が確認されている場合、国と、そのダンジョンがある土地を治める貴族、そして付近の冒険者ギルドが共同で管理している場合が多い。

けれどそれは、氾濫対策などの、国に対する安全面からの考えだ。


対してこの初心者迷宮は、初心者冒険者や傭兵の育成のために国が管理している。

時間を空けて一組ずつ入る事や、迷宮内で他の冒険者と争わない事など、細かい注意事項が幾つも並んだ羊皮紙がそれを証明している。


何より一番大きいのは、ダンジョンをクリアしてはいけない事、だろうな。


現在確認されている最下層は27階層で、そこは立ち入り禁止となっているらしい。

一応、27階層へ続く階段にはわかるように囲いがしてあるらしいけど、ダンジョンは変化、成長するからな。


別の階段が生成されていたとしても、階層を数えていれば、そこが最下層かどうかはわかるって訳だ。

ちなみに、ダンジョンをクリアしてしまうと、ほぼ確実に処刑されてしまうそうだ。


故意かどうか。過失であったとしても避けられたかどうかで判断されるが、万が一にも死刑を免れたとしても、数十年にも及ぶ監禁と重労働が課せられる。


冒険者による収入と、傭兵業はこの国の基幹産業だからな。

その育成を妨げるような行為は、国に対するテロ行為って事なんだろう。


しかし、その思想はともかくとして、この運営方法、なんか違和感があるんだよな。

いや、初心者迷宮をきちんと管理するうえではなんら問題が無いんだけど、この国というか、この世界に馴染まないというか……。





名前:大野大志

年齢:24歳

性別:♂

種族:人間

役職:風の勇者

職業:勇者

状態:疲労(軽度)空腹(軽度)


種族LV51

職業LV:勇者LV36 戦士LV12 探索者LV15 弓使いLV18 描画師LV42


HP:943/943

MP:887/945


生命力:586

魔力:602

体力:613

筋力:557

知力:583

器用:822

敏捷:709

頑強:645

魔抵:725

幸運:96


装備:風の弓 宝剣エリュオール サガ鋼の胸当て 白鋼石の篭手 白鋼石の脚甲 吸血草の服 風神のマント


保有スキル

風の神の加護 英雄の資質 風魔法 弓戦闘 剣戦闘 武器戦闘 直感 致死予測 忍耐 精神抵抗 死後の一戦 見切り

スマッシュ フルスイング 連射 狙撃 クイックショット ロングレンジスナイプ アクセル ラッシュ 英雄力解放

統率 調整 描画 芸術の神の加護




『アナライズ』で確認してみると、違和感の正体が理解できた。

看板を掲げてる方は、強い事は強いがこの世界の人間みたいだな。


あれ? これ『致死予測』使われたらまずくないか?

 

初心者迷宮での話を書くはずが、その前に終わってしまいました。

そして明らかに初心者迷宮に挑む強さではないタクマ達を前に、勇者の取る行動とは!?

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