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異世界から仕送りしています  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第一章:異世界生活開始
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第10話:裏切り者

俺の思惑は外れ、魔法使い系の職業は獲得できなかった。

止めを刺しただけでは駄目か。

となると、魔法を使った結果、種族レベルが上がらないと駄目なんだろうな。



夜、俺はMPの回復を理由に見張りを拒否した。

今日の俺の活躍ぶりを見た護衛と御者は、それに抗議しなかった。

感じ悪く思われたかもしれないが、これは誘いだ。


この三日間は明らかにおかしい。


最初の盗賊の襲撃。

まぁ、これはいい。

無名のわりに敵のLVが高かったとか、暗殺者が混じってたとか、奇妙な部分はあったが、そういう偶然がある可能性も低くはない。


ゴブリンの襲撃。

まぁ、これもいい。

ただし挙動がおかしかった。

俺達の強さを目の当たりにしたゴブリン達が逃げなかった。かと言って、無謀に遮二無二突撃してくるような事もなかった。

まるで逃げたいけれど、逃げられなくされているようだった。

誰かに襲撃を強制されているかのように……。


そして今日のケンタウロス。

確かにイメージ的には草原に出現しそうなモンスターだ。

けれど、テリトリーを侵した訳でもないのに、あそこまで執拗に追って来るのは異常だった。


これはもう、護衛か乗客達の中に、襲撃を手引きしている裏切り者がいると考えるべきだ。


フィクレツまで金稼ぎしながら馬車で行ける楽な道程だと思ってたのに……。

面倒な事に巻き込まれてしまった……。


狙いは乗客の誰かだろうな。

お忍びで身分の高い人間でもいるんだろう。


だから俺は誘う事にした。


裏切り者にとって目的を遂行する上で、最も邪魔になる人間は誰か? と問われれば、迷いなく俺だ、と答えるだろう。

今日の活躍でそれは顕著になった筈だ。


見張りに参加した場合、一対一では俺を殺せる可能性が低いし、下手をすれば、俺と別の護衛二人を相手にしなければならなくなる。


そこで俺が一人、護衛達用の馬車で寝ていればどうなるか。


まぁ襲って来るよね。間違いなく。

そこを俺が返り討ちにすればいいのだ。


言ってしまえばプロ相手に俺が簡単に勝てるか? という問題はあったが、向こうは護衛クエストを受けても違和感がないよう、それほど高いLVの人間を入れてはないようだから、経験で負けても、ステータスの高さでゴリ押しできるだろう。

クレインさんみたいなのが相手だと、経験とスキルで敗北する可能性はあるけど、少なくとも、護衛の誰かが裏切り者だった場合、遅れを取る事は無いと断言できる。


乗客の方はどうだろうな?

御者も含めて『アナライズ』してないからなぁ。


とは言え、乗客に犯人がいるのなら、それこそ一日目の夜に目的は達せられていただろうから、その可能性は排除していいと思う。


正直、既に襲撃者の手配は済んでいて、明日以降も襲って来る可能性も無くはない。

それでもまぁ、裏切り者を背後に抱えたまま戦うよりはマシだろう。


襲撃者を撃退している間に、ターゲットを始末されては本末転倒だ。

裏切り者を排除しておけば、少なくともその心配はなくなる。


ソードの死により、俺はステータスが高いだけではどうしようもない事がある事を知った。

なら、できる限りステータスの高さだけで対処ができる環境を作り上げるべきだ。


という訳で、俺は『サーチ』で周囲の状況を探りながら寝たふりを続けていた。


今は見張りはメイスとランス。

ワンハンドとエストックは外で寝ている。

これは俺が追い出したんじゃなくて、初日からそうだった。

何か異変が起きた時、すぐに対処できるようにって事らしい。


……。


…………。


……………………。


……動きがねぇ……。


動かないつもりか? けど流石にそろそろ怪しまれてると相手も思ってるだろう。

ここが俺を排除するには一番良いタイミングだろう?


野生動物の動きを見たい誘惑にかられながらも、俺は『サーチ』で護衛達の動きをじっと観察する。


正直、眠気との戦いもあって、こっちの世界に転生してから一番苦戦している……。


退屈と疲労から援護を受け、強敵と化した眠気と戦っていると、ついにその瞬間が訪れた。


待ちに待った、と言うと不謹慎だろうか。


思わず心の中でキターーーーーー!!! と叫んでしまったけれど……。


『サーチ』の中に映っていた青い輝点プリッツが赤色に変わった。

これは、敵性存在へと切り替わった証。

味方の中に潜伏している裏切り者を見つけ出す事はできないが、その裏切り者が行動に移した時、それを察知できる機能だ。


これは位置的にランスか……!?


そうか、お前が……。


あれ? でもこれ動きが変だぞ?


俺の眠る馬車の方でも、他の眠っている護衛の方でもなく、何故かメイスへと向かっている。


共犯者……?


俺はできる限り静かに、しかし素早く馬車を抜け出す。


二台の馬車がハの字型に並んで止まっているその間、オレンジ色の光が暗闇の中心で輝いていた。

焚火の灯りに照らし出されたのは、ランスが手にした槍で、メイスの胸を背後から深々と貫いている光景だった。


遅かった!!


輝点プリッツが赤に変わった瞬間に動くべきだった。

悠長に俺の方へ向かって来るのを待っていたから……。


確かに、襲われた瞬間でなくては、裏切り者を殺した俺の正当性を主張できなかった。

『サーチ』や『アナライズ』の事を言う訳にはいかないのだから、後手に回るのは仕方無い事だ。


けど……。でも……!!


また俺のミスで人が死ぬ……!


「何をしてるっ!!」


俺はランスに向かって叫んだ。

彼はびくり、と体を震わせると、俺の方を見た。

素早く、槍を引き抜く。


「いや、違う、これは、こいつの方が……」


おそらく、返り討ちにしただけだと弁明しようとしたのだろう。

だが、『サーチ』の輝点プリッツは相変わらず赤いままだ。



オンデノトュエ

役職:エレノニア王国第四機動部隊隊員



『アナライズ』で見ても一目瞭然。明らかに冒険者ではない役職だ。

『常識』によると、第四機動部隊は王国の情報を司る部隊らしい。

所謂隠密部隊的な組織だ。


とは言え、これを言う訳にはいかない。

俺が叫んだのは目撃者を増やすため。

俺の言葉に反応して、すぐにエストックとワンハンドが跳ね起きていた。


メイスに槍を突き刺していた場面は見えていた筈。

後はランスに余計な事を言わせずに始末するだけ。


馬車から出てすぐに俺は『サニティ』を自分にかけていた。

冷静になった俺は瞬時にこの策を思いついた。


これ以外に、ランスを裏切り者だと残りの二人に認識させ、俺の行動に正当性を持たせたうえで、即座にランスを排除する方法が思いつかなかった。


知力の高さと頭の良さって関係ないからね。

知力のステータスは魔法の効果や最大MP、後は知力依存のスキルに影響を与えるものだから。


ランスが身構えるより早く接近、そして俺は剣を振るう。


俺が今手にしているのはショートソードでも、シミターでもなく、ソードの遺したブロードソード。


敢えてこれを振るう事で、一連の襲撃の黒幕がランスである事を残りの二人に強く印象つけられる。


ソードを無念を晴らすため、無意識に俺が手にしていた、とかならかっこよかったんだけどな。


戦士ファイター』のスキル『スマッシュ』を発動させる。

振り下ろすタイプの近接攻撃の威力を上昇させるスキルだ。


これに『剣戦士ライトセイバー』のパッシブスキル、『剣戦闘』で武器種類:剣、刀の攻撃力と命中力を上昇させる。更に本来なら『剣戦士ライトセイバー』LV50で使用可能になるアクティブスキル『流水剣技』で相手の防御力及び防御行動を無効化する。


そして俺の高い筋力でブロードソードを振り下ろした結果。


一切の手応え無く、ランスの体を真っ二つに切り裂いたのだった。




結論としてメイスは助からなかった。


既にこと切れていたので、回復魔法では治療できない。

祝福の中には蘇生魔法もあるが、俺はまだ祝福は使用できない。


この状況を見た二人は、俺の推理を聞き、ランスが襲撃を手引きしていた裏切り者だと理解してくれた。


御者も、三人がそうだと言うなら、と特に俺の言葉を疑う事は無かった。


メイスからアイアンメイス(物理攻撃力28、売却価格10デュー)を受け継ぐ。

ランスからは鋼鉄の槍を奪い取った。


メイスは優しく横たわらせて黙祷を捧げたが、ランスは首を切り落とし、馬車から離れた所に捨てた。


これらは裏切り者と、その裏切り者に殺された仲間を明確にするために意図的に差別して行った。


非道とは、言うまいね……。


寝直す気にならず、俺はそのままワンハンドとエストックと共に、朝まで見張りを続けたのだった。


裏切り者排除。

これで襲撃は止むのでしょうか?

止むならここで切ってませんよねw

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