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第104話:ドラゴンズピーク

判明している中では世界最高難易度のダンジョンへ挑みます。


さて、一言でドラゴンと言っても様々な種類が存在している。


一般的なドラゴンは、以前神の揺り籠で出会った灰色のドラゴン。

知能は動物並みで、縄張りに侵入した相手に攻撃を仕掛けて来る。

戦士LV80相当の強さを誇るが、実際には他の魔物を圧倒する数のスキルで、更に強化されている。


通常、ドラゴンというとこの種類を指し、派生種もこのドラゴンの亜種や進化種族を指す場合が多い。

今回の目標である火竜もこの一つ。


本来は山岳や深い森の奥。ダンジョンの最深部などのヒトが踏み入らない場所に生息している。


ワイバーンはドラゴンに分類される場合もあるが、基本的には種類が別。

所謂東洋龍やサーペントも多くの冒険者はドラゴンと認識しているが、種族としては別種族だ。


まぁ、あんまり見かけない魔物やモンスターだから、大して研究が進んでないんだろう。解剖学なんか存在すらしてない訳だし。


「しかし、火竜を狩りにドラゴンズピークへ行こう、とは、タクマ君にはいつもながら驚かされるね」


「まぁ、色々あって修理が必要な鎧があってな」


「いや、そこを主題に話してないんだよ」


神の揺り籠の中を、ドラゴンズピークを目指して歩いていると、ミカエルがそんな話を振って来た。


「ドラゴンはそんなに珍しい存在なんですか?」


興味を惹かれたのか、コミュニケーションの一環なのかはわからないが、立花も口を挟む。


「居る事は間違いないけど、多くの人は見ないまま一生を過ごすだろうね。冒険者でも中々出会えないよ」


出会えたら死ぬ場合が殆どだしね、とミカエルは続けた。

ブラックジョークにウィンクって意外に合うなぁ。


「成る程。動物園も水族館も無ければそういうものですよね。日本だって、野生の猛獣を生で見る機会のある人がどれだけいるか……」


ところで立花は、オタク知識に乏しいせいか、異世界人である事を隠そうとしない。

まぁ、彼女の目的からすれば、自分を召喚した人間が接触しやすいよう、敢えて晒している可能性はあるけどさ。


ただ、俺と同郷ってのは皆に言ってあるから、あまりミカエル達に露骨に晒さないで欲しい。


「動物園?」


「珍しい動物だけを扱った見世物小屋ですよ」


ただ、その辺りの説明はしたので、ミカエル達に突っ込まれたら、異世界や進んだ文明の事を説明しなくても、納得してもらえる返しをしてくれるので、それは助かっている。


「ああ、そういうのか。そう言えば、サラドの闘技場でも、捕らえたワイバーンと奴隷闘技者を戦わせたり、アースドレークを見世物にしてたりしてたね」


「戦ったのか?」


「まさか。自分で言うのもなんだけど、ボクは花形だったし、剣闘士という訳でもなかったからね。そういう危険な試合は組まれなかったよ」


サラドで随一の人気冒険者だったミカエルは、闘技場の利用は、かつての俺にしたように、決闘でのものばかりだったそうだが、冒険者ギルドへの依頼で、何度か闘技者として参加した事があるらしい。

ちなみにアースドレークは亜竜と呼ばれる、ドラゴンのようでドラゴンでない種類に分類される魔物だ。

でかいトカゲでブレスを吐かない奴は、大体この亜竜に分類されてるな。


「タクマ様……」


俺の隣を歩いていたサラが、立ち止まって俺の名を呼ぶ。

俺も気付いた。目の前の茂みから何者かの気配がする。


「しかしやっぱり神の揺り籠は凄いね。到着して半日ほどで、中々お目にかかれない魔物やモンスターと大量に出会ってるんだから」


「そういうものなんですね」


ミカエルと立花も、会話しながらも戦闘態勢を取る。

立花が召喚された荒野では、一週間近く獲物が獲れない事もあったっていうから、これだけ頻繁に敵と遭遇するのは珍しいんだろう。

ひょっとしたら、食料供給の点から、若干の嫉妬を滲ませているのかもしれない。


姿を現したのは、一体のメガベアーだった。

『サーチ』で確認するけど、近くに外の敵性体はいない。


群れで行動する事が多いメガベアーにしては珍しいな。

はぐれか?


「来ます」


サラの呟きと同時に、雄叫びを上げながらメガベアーがこちらへ向けて突進してくる。


「サラさん!」


立花が思わず叫んで前に出ようとしたが、その前に、サラは手にした盾でメガベアーの突進を受け止めると、力の方向を巧みに変え、こちらへと弾き飛ばす。


「でやっ!」


火竜槍を流れて来たメガベアーの頭部目がけて突き刺す。


「グガアアアアァァァァア!?」


痛みに喘ぎ、メガベアーが額を抑えながら仰け反った。

そこへ、ミカエルが飛び込み、宝剣を一閃させる。


その一撃で、メガベアーは光の粒子となって消えた。

剣を振り抜いた姿勢で残心しているミカエルの周囲が煌めいていて、非常に絵になる。


「…………」


俺達のステータスは数字にして立花に見せているので、ミカエルやサラが、彼女と遜色ない強さなのはわかっているだろう。

そのうえで、『致死予測』があるから、メガベアーが俺達にとって危険な相手でない事もわかった筈だ。


けれど彼女は呆然と立ち尽くしている。


「どうした?」


「いえ、先輩。先輩やミカエルさんはともかく、サラさんの外見と強さのギャップにまだ慣れなくて……」


まぁ、現代日本なら、強い相手は見るからに『強い』ってわかる外見してるもんな。

最近成長著しいとは言え、サラはどちらかと言えば華奢に分類されるだろう体型をしているし、そして見た目も実年齢も、立花より下だ。


小柄な女子中学生が、羆の突進を受け止めたのを見れば、誰だって我が目を疑うだろう。

この辺りは慣れるしかないんだろう。


「まぁ、そのうち慣れるさ。サラほどとはいかなくても、外見と強さが合ってない人間なんて、この世界にはゴロゴロいるからな。勇者以外でも」


「そ、そうですね。頑張ります」


一ヶ月のファンタジーサバイバルを経験していても、やっぱりそこは現代日本の女子高校生だよな。

まぁ、俺と違って彼女は向こうに帰る理由が普通にあるから、あんまり常識を捨てるのもアレかもしれん。


いや、俺が帰らないって言ってる訳じゃないよ。

ただ、選択できるのは一度だけだから、その選択は慎重に行わないといけないからさ。


サラ達と離れる選択肢は無いから、こっちに定住するか、向こうに皆を連れて行くかって事になると思うけど。

戸籍とか女神が用意してくれたりしないかな? 怪しい新興宗教を運営してるんだから、その繋がりで身分偽証できたりしない(偏見)?


「さて、見えて来たな……」


そんな感じで襲ってくる魔物やモンスターを撃退しながら進むこと更に二日。

ようやっと、俺達はドラゴンズピークの麓に辿り着いた。


木々が生い茂る、勾配の緩やかな山の中に、突然屹立している土と石の峯。

勾配も突然急になっていて、見上げると、頂上は雲の向こうに突き抜けている。


これが神の揺り籠に存在する唯一のダンジョン(だと思われていた)ドラゴンズピーク。

ヒトでは到底及ばない、圧倒的な力を有したドラゴン達のひしめく、危険で前人未到の場所。


「タクマ君、君の強さは知っているつもりだけど、本当に挑むつもりかい?」


この中では比較的常識人のミカエルが、そんな事を聞いて来た。

声と膝が震えている。


まぁ、俺の影響とパワーレベリングで相当強くなっているとは言え、彼女は普通の冒険者としての感覚が残っているからな。

普通の冒険者としてみれば、ドラゴンなんて、数十人から数百人で一体を相手に数日がかりで倒す相手だ。


そんなドラゴンが多数生息する場所に足を踏み入れるだけでも恐怖だろうに、俺達はそいつらを蹴散らして、火竜を狩らなければならない。

しかも、火竜がどこに居るかは判明していない。


ちなみに、灰色ノーマルのドラゴンの強さの目安である、戦士LV80相当は、サラより少し強いくらいだ。


そのうえで、巨体、飛行、ブレスがあるのがドラゴン。

まぁ、サラにしても、スキルを全発動すれば、種族LV1のドラゴン程度、一対一タイマンで撃破してのけるだろうけど。


俺を盲目的に信頼しているサラには怯えはない。むしろ、俺の役に立とうとやる気満々だ。

比較対象のサンプルが少な過ぎて、ドラゴンの強さを実感しにくい立花も、平然としている。


メガベアーを弾き飛ばしたサラを見た時の立花じゃないが、こういう時、常識的な感覚って不便だよね。


「まぁ、ヤバそうなら『テレポート』ですぐに逃げればいいさ。念のために『オーバーロード』も毎朝かけ直してるだろ?」


「タクマ君を疑う訳じゃないけど、一度も発動してない魔法は信用しにくいよ」


オートレイズがあるとは言え、彼女達が死ぬところなんて見たくないから、そうならないように俺が頑張ってきたからな。

魔法が付与されているとは言え、一度も発動してないうえに、存在すら知らなかった魔法の効果を信用するのはやっぱり難しいか。


サラも『不殺の近い』で未発動だったとは言え、死の深淵を覗き込んだ事がある筈なんだが、こっちは気にしていないようだ。


「これで二度、タクマ様の盾になれますね」


「せめて一度にしてくれ」


なんて会話があったくらいだからな。

一回死んでも大丈夫、どころの話じゃなかったからなぁ。


「なんなら俺が一人で行って来てもいいけど?」


正直、ここから先は俺より強い相手が出て来る可能性もあるから、彼女達を連れて行くよりは安全だ。


「いえ、こういう誰も足を踏み入れなかった所には、えてして女神様が配置した何者かが居る筈です」


当初は女神を崇拝していなかったサラは、ハーレムメンバーの中では女神の性格と目的を、一番良く理解している。

だからサラの言った可能性は否定できないけれど、仮にそうだったからって、なんで俺を一人で行かせられない理由になるんだ?


「そういった存在がタクマ様と親交を深めるためには、女性にしておくのが手っ取り早いですからね」


言って、サラはちらりと立花を見る。

ああ、そういう事か。

サラが俺を神の揺り籠に一人で行かせたがらなかった理由として、寂しいというのもあるけど、また俺が女を連れて来ないように見張る、という思惑もあったからな。

まぁ、女神が信仰を得るために配置した女性だったなら、サラ達がいようがいまいが、連れて帰らないといけなくなるんだろうけど。


そして女性が手っ取り早い、というのも事実だ。

立花が女性じゃなかったら、立花の目的達成に多少協力はしても、家に住まわせる事はなかっただろうからな。


立花に手を出す、出さないの話じゃなくて、サラ達の身の安全と、俺の精神衛生上のためにな。

NTRはフィクションだけで十分です。


「ミカエル、どうする?」


パーティ分断はあまり得策ではないが、立花と一緒なら、ドラゴンズピークにさえ踏み入らなければ、それほどの危険はないだろう。

麓で待っていてもらう、というのは選択肢としてありだ。


「いや、行くよ。ダンジョンの外だけど、ここもドラゴンズピークの近くだ。ドラゴンが来ないとも限らない」


言われてみれば確かにそうだ。それなら、一緒に居た方が色々安心か。

という訳で、結局四人でドラゴンズピークに入る事になった。


土と草の大地から土と砂の大地に足を踏み入れた瞬間、確かに空気が変わったのを感じた。

恐らく、ダンジョンと神の揺り籠の他の場所では、空気中に内包される魔力の密度が違うため、そのせいだろう。


「成る程、ここは確かにダンジョンだね」


「はい。シュブニグラスと同じ感じがします」


二人も同じように感じ取ったようだ。

ミカエルは勿論だけど、サラもこの二年でかなりの回数ダンジョンに潜って来たからな。


他のダンジョンは、迷宮としてわかりやすく風景が変わっていたから、あまり気にしていなかったけど、ドラゴンズピークは風景自体は変わらないから、余計に敏感に感じてしまうのかもしれない。


「GYUUUUOOOOOOOOO!!」


すると、遠くからそんな雄叫びが聞こえて来た。


「早速見つかったか?」


魔物のドラゴンなら縄張りに踏み込んだせいだろうな。

他のダンジョンと違って、明確に入口が決まってないから、外周部に縄張りを持つドラゴンだろう。


普通に考えれば、外周部の縄張りは、弱いドラゴンのものだろうけど、餌を探しやすいという点から言えば、むしろ人気なのは外周部か?

ただ、ドラゴンの中には人間と同等か、それ以上の知性を有する種類もいるからなぁ。


モンスターならそもそも、モンスター以外の生物を敵視して襲ってくるから、俺達の存在を感じ取ったダンジョンから指令を受けて、襲いに来るかもしれない。

ダンジョンの自我がどういう仕組みかわかっていないから、モンスターがどういう理屈でこっちに向かって来るのかもわからないんだけどさ。


通常のダンジョンなら、その場所に突然出現するタイプのものでなければ、適当に徘徊してるだけだけど、ここはどうなんだろうな。


小さな地鳴りと共に軽い地響きが段々と近付いて来る。

近付くにつれ、それらは徐々に大きくなっていく。


そして、稜線の向こうから、それは姿を現した。


全長10メートルは超えていそうな、巨大な四つ足のドラゴン。

翼は退化して、体に比べれば非常に小さなものが背中に二枚生えている。

足は太く、そして短い。鼻先から尻尾の先にかけて、甲羅のような鱗に覆われていて、いかにも防御力が高そうだ。

尻尾の先には非常に痛そうな棘が生えている。


地竜。


火竜と同じドラゴンの派生種だ。

目的の相手ではなかったけど、これは幸先が良いと言えるかもしれない。


『アナライズ』で見ると感じた通りに頑強の数値が高い。魔抵は比べれば低いが、それでも十分高い。

しかも『魔法耐性』で魔法に対して強いし、『地属性無効』があるので、土、石属性はそもそも通用しない。


まぁ、地属性の魔法ってあんまり使わないんだけどな。


「正面は俺が抑える! 尻尾に気を付けて、側面や背後から攻撃。背中は硬いから、できるだけ内側を狙え!」


「「エンゲージリンク!」」


「先輩、ステータス借ります!」


サラとミカエルはエンゲージリンクを発動させ、立花は月の勇者の【固有技能ユニークスキル】『湖面の月』で俺のステータスを写し取る。

勇者だと本来はあまりこういう機会はないんだろうけど、自分より強い味方がいるなら、かなり強いスキルだよな。

敵だと抵抗可能だけど、味方は抵抗を放棄すればいいんだから。


ついでに言えば、このスキルを使えば、勇者が持っている、『勇者ヒーロー』以外の職業を獲得しにくく、他の職業スキルを獲得しにくい、というデメリットを消せる。

ステータスは低くても、スキルは多く所持している味方がいればいいんだから、勇者同士で戦う事になってもその威力を発揮する筈だ。


そう言えば、制限時間とか聞いてないな。

これ、制限時間無制限とか、ステータスやスキルごとに別の対象からコピー可能だとすると、かなりのチートスキルだぞ。

勇者よりステータスが高い相手なんてそうそういないから、旅の途中で使い勝手の良さそうなスキルをコピーしておけばいいんだから。


あれ? ひょっとしてこのスキルって、疑似的な『アナライズ』としても使えるのか?


相手のステータスとスキルを丸ごとコピーするんじゃなくて、部分的に選べるんだとすると、選ぶために数値やスキルを確認できるよな?


今度立花にちゃんと聞いておこう。


炎の勇者は【固有技能ユニークスキル】使わせずに倒したけど、氷の勇者のスキルも相当ヤバかったしな。


ガチでやり合うとすると、勇者ってやっぱこえーよ。

唯一俺的にスキルの相性が良いのが、『反英雄宣告』の光の勇者な訳だけど、ユーマ君自体が強いからなぁ。


しかも立花は月の勇者としてのスキルを複数有してるっぽいから、他の勇者も複数持ってる可能性があるんだよ。

これ、ユーマ君って他にもヤバイスキル持ってるんじゃないだろうか?


月の勇者だけの特性であって欲しいぜ。


火竜の全身鎧を身に纏い、『ソウルアームズ』を発動させ、地竜へと走り出す。


「GUUUUuuuuOOOOooooO!!」


そんな俺に向けて咆哮が放たれる。

何かに抵抗している感覚。まぁ、お約束の『バインドシャウト』だろう。


構わず突進する俺に向けて、地竜も突進してくる。

明らかに速度は出ていないんだが、ただでさえ巨大であるので迫力が凄ぇ。


よく見ると、鼻先の鱗が膨らんでいる。ハンマーヘッドシャークの頭を思い起こさせる形だ。

つまり、あれを対象に叩きつけて攻撃してくるって事か!?


このまま正面衝突は好ましくないな。

『インヴィジヴルジャベリン』を複数発動させて、その鼻頭目がけて叩き込む。


うわぁ、あんまり効いてねぇ。


魔力上限(キャップ)が若干、地竜の魔抵を超える程度だからなぁ。そこに『魔法耐性』が加わると、ダメージなんてそりゃないか。


あ、とすると火竜の槍を『ソウルアームズ』で包んでるのもまずいか?

頑強と魔抵+『魔法耐性』、どっちが上だろうか?


なんとなく、突きは躊躇われたので袈裟掛けに振り下ろす。


「くあっ!?」


棒でアスファルトを叩いた時のような衝撃が手に響く。

これ大してダメージ入ってないな。


そして当然、そんなものでは相手の勢いは止まらず、俺は見事に吹き飛ばされる。


「ぐはっ!!」


痛ぇ! けど……。


「エレンの親父さんの拳ほどじゃないな!」


空中で体勢を建て直して着地。

目の前には再び俺を目がけて突進して来る地竜。


「『風災神の拳ディシマス・テュポーン!!」


俺はタイミングを合わせて、地竜の顎下に魔法を発動させる。

『アッパーサイクロン』の名で呼ばれる第十階位の精霊魔法。エルフ達の伝説には残されているけど、一度も確認された事が無い魔法だ。


効果としては単純明快。凄まじい暴風を下から上へと放つ魔法だ。


対空技みたいなもんだな。威力がゲージ消費超必みたいなもんだけど。


複数の魔法系職業に熟練しないと使えない魔法と違って、精霊魔法なので、第十階位でも威力は抑えめ、その分、MP消費も少なくて済む。


下から顎を突き上げられた事で、地竜の巨大が浮かび上がり、背側に比べて防御の低い腹側が曝け出される。

ついでに、突進の運動エネルギーが頸椎から頭にかけて負担になってしまったらしく、骨が軋む音が聞こえた。


喉の下辺りが丁度良い位置にあったので、そこへ目がけて『インヴィジヴルジャベリン』と、槍系の攻撃スキル『インフィニティスパイク』で突きの連打を叩き込む。

更に、動きの止まった地竜に対して、サラ達も攻撃を開始していた。


「唸れ。『鈍喰なまくら』!!」


ミカエルが宝剣・鈍喰の【固有性能ユニークスキル】『鉛喰』を発動させて尻尾を攻撃している。

本来は相手の武器を破壊するスキルだが、爪や牙といった、武器になり得る生物の部位にも効果を発揮する事がわかっているからな。

棘のついた尻尾なんて、誰がどう見ても武器だろう。


「GUGAAAAaaaaaaA!!」


態勢を建て直した地竜がその場で手足をばたつかせ始めた。

とは言えこの巨体だ。踏みつけは十分脅威となり得る威力を秘めているし、その際に生じる風圧で、容易に近付けなくなっている。


「サラ君!」


ミカエルが叫ぶと同時に、尻尾による薙ぎ払いがサラを襲った。どうやら破壊しきれなかったらしいな。


「ぐっ!!」


その場で小さくジャンプし、盾で尻尾を受け止めるサラ。

空中に浮いているので、そのまま弾き飛ばされる。お陰で、ダメージはそれほど入らなかったみたいだな。


「!?」


もう一度魔法で顎を突き上げてやろうとしたその時、俺はそれに気付いた。


口から覗く鋭い牙。その隙間から、光が漏れている。


「『レインボーシェル』!」


咄嗟に属性防御の魔法を発動させる。直後に放たれる、大地のブレス。

間一髪間に合った。


とは言え、ダメージは完全に無くならない。ブレスに押されて距離が離れてしまった。


ブレスが収まると、その通り道の地面が抉れていた。距離を利用して、三再び俺に向かって突進してくる地竜。


「GUGYUUu!?」


しかし、その直前で不自然に右側に傾き、転んだ。


見ると、立花が錫杖を振り抜いた姿勢で止まっていた。

どうやら、月の錫杖で地竜の後ろ脚を払ったらしい。


立花本来のステータスでは無理だ。俺のステータスを借りたとしても、威力上限(キャップ)のせいで通常の武器や素手では無理だ。

しかし、月の錫杖なら。


威力上限(キャップ)が存在しない神器を俺の筋力で振るえば可能だ。


「立花、『装甲破壊』!」


「はい!」


撃闘士ストライカーのスキルを立花にコピーするよう伝える。

この反応から、部分コピーが可能なのがわかるな。


相手の打撃系の攻撃が命中すると、その度に相手の物理防御力を10%低下させるスキルだ。

鎧などを着ていると、これを破壊する事も可能。


立花が背中の硬い外皮に向けて、錫杖を振るうと、金属同士がかち合ったような音が響いた。


そうだな、まずはコイツのやたらと高い防御力を下げるべきだな。

という訳で、俺も槍をしまって、素手で地竜の鼻先を殴る。攻撃力自体は火竜槍で攻撃する方が高いんだが、これなら『装甲破壊』を乗せられるからな。


「GUUUUuuuuOOOOooooO!?」


鼻先を俺、背中を立花、腹部をサラに攻撃され、痛みに喘ぐ地竜。


そして何か大きく重いものが千切れた音が聞こえたかと思ったら、さっきまで勢いよく振り回されていた尻尾が飛んでいくのが見えた。

よし、尻尾切断成功!


剥ぎ取りして確率1%以下の素材をゲットだぜ!


「GYUOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」


流石にこれまでの痛みの比じゃないんだろう。

スキルがどうこう以前に、鼓膜が破れるかと思うほどの絶叫を迸らせ、更に激しく暴れ始めた。


「立花、鱗は!?」


「多少剥げましたけど……」


「十分だ。離れろ!」


そして俺は、立花が指示した、鱗が剥げてその奥の皮膚が丸見えになっている場所目がけて魔法を放つ。

『魔力凝縮』と『魔法収縮』を合わせて発動させ、その小さな穴に入り込むよう調整する。


「『シューティングスター』!」


そして放つのは、山の神の化身と謳われるガメオベアーを一撃で瀕死の状況へと追い込んだ、第九階位の神理魔法。


そして断末魔の悲鳴をあげる暇もなく、地竜は内部から弾け飛んだ。


「ぶわ!?」


大量の血しぶきが俺達に降り注ぎ、その衝撃の余波で全員が吹き飛ばされる。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「……素材、勿体無かったな……」


「いえ、先輩、そういう問題じゃないと思います」


とりあえず、全員を『クリーン』で綺麗にしながら、無事な素材を拾っていく。

遠くに落ちていた、4メートルはある巨大な尻尾も勿論回収。


「しかし、相手が相手とはいえ、初戦でこれか……」


「だから言ったじゃないか……」


俺の呟きに対し、恨めしい目線を向けて来たのはミカエルだった。


「これは火竜も、ちゃんと対策を立てないと素材が殆ど残らないな」


「あ、そっち……」


まぁ、修理だけなら竜鱗と皮膚がある程度取れればいいんだから、なんとかなるか。


サラ達のHPを回復させ、俺自身はアイテムを使ってMPを回復させたのち、ドラゴンズピークの奥へと向かって歩き出した。


仲間になるとよくわかる、勇者のチートぶり。

キャップが無いのが一番大きいと思います。

ドラゴンと同じく、地竜も大勢の人間で、何日もかけて討伐する相手。

四人で素材を求めて狩りにいくなんて、某狩りゲーでもないと無茶な話ですよ。

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[一言] そういえば、ゴブリンキングダムの情報がふわっと消えてたから人知れず勇者に処されたのかね。
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