表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/149

第93話:神の大岩

作者が色々気にしぃなせいで、拙作ともう一つの拙作の更新に支障が出てしまって申し訳ありませんでした。

なるべく更新を優先していきますので、これからもよろしくお願いいたします。


日が暮れる前に『サーチ』で周囲に敵性反応が少ない場所を探し、その一帯を魔法で焼き払う。

再び『サーチ』でその周囲に敵性反応が無い事を確認して、俺達は野営の準備に取り掛かった。


うわー、植物系モンスター、エグいわー。

胞子系が特にヤバイ。攻撃防いでも命中したらバステ判定とか、なんだよ。


操られていた時の記憶は無くても、迷惑をかけた自覚はあるらしく、カタリナとミカエル以外はシュンとしている。

その姿にちょっと萌えるけれど、このまま気落ちされていても問題だ。


「そう言えば、植物系モンスターに捕らわれてたダンジョン狼とか魔石になってなかったけど、理由知ってるか?」


という訳でなんでもない風を装って会話を振る。

直接話しかけて励ますなんて俺にはできないよ。まだまだ実力不足だ。


「あれは確か死んでいない筈ですわよ」


俺の疑問に答えたのはカタリナだった。


「殺さずに栄養分を吸い取ってる状態だった筈ですわ」


「ああ、瀕死の状態で捕らわれてるのか」


「そうだね。植物系モンスターに限らないけれど、森や山で、魔石を持ったモンスターを偶に見るよ」


ミカエルが会話に入って来た。

魔石を、持ってる?

ああ、養分にしていたモンスターが死んで魔石になって、その魔石から魔力を吸い取ってるのか。


「石付きって奴だね。その魔石からはレア素材が出やすいって言われてる」


それは都市伝説だな。魔力を吸われてるんだから、レア素材が出にくくなるのが普通だろう。

『特別な状態の魔石』だから、何か普通とは違う事があるんじゃないかと期待したくなる気持ちもわかるけどさ。


いかん、ミカエルとカタリナ以外が会話に入って来ない。


「ほ、ほら、サラ。ドラゴン肉、焼けたぞ?」


俺は殆ど棒読みでサラに向けて焼けた肉の串を差し出す。


「ありがとうございます……」


肉を前にしてもサラのテンションが上がらない!?

けれど受け取っては貰えた。

俺が気を使っている事にも気付いただろう。だったら、後はこのまま続ければいい。

俺が気を使っている事に気付いたら、罪悪感を感じるかもしれない。

けれど、同時に、俺が怒っている訳じゃない事にも気付ける筈だ。


いっそ怒られた方がスッキリするのかもしれないけれど、あくまで俺は優しさで押す。

気にするような事じゃない事を示し続けるんだ。


「ほら、モニカとエレンも」


「うん……」


「エレンには旦那様からお肉をいただく資格がございません……」


モニカは受け取ったけれど、エレンは拒否した。


「旦那様のお手を煩わせたばかりか、あろう事か愛しの旦那様に弓を引くなんて……」


「み、未遂だったから大丈夫!」


それに再開した時、弓を引きまくってただろうが。

言わないけどな。なんか地雷を踏みそうだから。


「の、ノーラも、ほら、肉食うか?」


「ああ、ありがたくいただくぜ」


おや、こちらは元気だ。


「いやぁ、腹減って今にもぶっ倒れそうだったんだよにゃぁ」


元気が無い理由が違ってた。


「ふふ」


「くく、ノーラ君らしいね」


カタリナとミカエルが思わず噴き出した。

つられて、サラとモニカも笑顔になる。


「エレンには旦那様から愛していただく資格はございません。エレンの事は暫くほうっておいてください。エレンは……」


すると、エレンのお腹が可愛らしく鳴った。


「…………」


流石に、エレンの動きが止まった。頬が赤く染まる。


「ほら、エレン」


「……いただきます」


そしてエレンも肉串を受け取ってくれた。


その後は何とか、全員の気持ちが持ち直した。

ノーラのような、良い意味で空気を読まない人間は貴重だよな。




日が昇ったので起床。

全員が状態異常を起こしていないかチェックした後、朝食を食べて出発する。


いよいよ岩山が近くに迫って来た。

岩山の周囲を鳥が舞っているのが見える。

というか、ハーピーだった。


おお、やっとたどり着いた。

正直、ハーピーなんて足元にも及ばないモンスターを狩りまくってここまで来たら、ある意味感慨深いぜ。


「うん?」


不図、『サーチ』を確認すると、確認範囲全体が赤い。

なんだ? これ……。

『サーチ』の不具合? けど今までこんな事なんて……。魔法的な何かで妨害されてるのか?


『マップ』でも確認。やはり、マップ全域が赤い。

確認範囲を拡大していく。十倍、二十倍……。


「ええ!?」


そして俺は気付いた。

俺達の目の前に、とんでもなく巨大な敵性反応がある事に。


思わず顔を上げて前を確認する。

しかし目の前にあるのは巨大な岩山だけだ。


地下にでも敵が居るのか……?


そう考えていると、突然辺りに地鳴りが響いた。

続いて、地面が揺れ始める。


「な、なんだ……!?」


「タクマ、あれ……!」


モニカが指差した先では、岩山が大きく揺れていた。

地震なら、岩山が揺れても不思議じゃない。

けれど、百メートル以上はある巨大な岩山が、ああまで激しく揺れているにしては、地面の揺れは小さい。


ある事に思い至って、岩山を『アナライズ』で確認する。



ロックゴーレム LV1003



岩山だと思った? ざーんねん、ロックゴーレムでしたー!!


って、ええ!?

あの岩山全部が一体のロックゴーレムなのか!?

ていうか、そのLVなんだよ! 四桁超えとか初めて見たわ!


そして俺達の見る前で、岩山はロックゴーレムとしての姿を完全に現わしていた。


成る程。確かに、岩がヒト型になったような姿をしている……。

ゴーレムだと言われたら、確かにあれはゴーレムだろう。


全長がおかしいけどな!


「周囲にハーピーが舞ってますわ」


「共存してるっていうのかい? 魔物とモンスターが!?」


「そういう事もあるんだろう。縄張り意識が強いってだけで、互いに殺し合う程憎み合ってる訳じゃない。利害が一致すれば協力する事もあるんだろう」


「ハーピーとロックゴーレムの利害って何が一致するのよ?」


「俺に聞くな」


ロックゴーレムはゆっくりとこっちへと向かって来ている。

どうも、俺達に反応して動き出したみたいだな。縄張り意識の強さはゴーレムでも健在か。


しっかし、この大きさの岩の塊が、二足歩行で動いても自壊しないどころかバランス崩す事もしないなんて、つくづく魔法ってものの理不尽さを感じるな。


さて、五メートルとか十メートルくらいなら問題無いんだけど、これだけ大きいとダメージにサイズ差補正が乗るんだよな。

それでも顔やバイタルラインのような急所ならしっかりとダメージを与えられるし、一撃必殺も有り得るんだけど、ゴーレムってそういうのが無い存在だからな。


つまり、三百メートルの岩山を削り切らないといけない訳だ。


正直ハーピーの素材が欲しいだけなら、険しい山とか適当に巡れば手に入るんだから、ウェルズ山脈に拘る必要無いんだけど。

まぁ、ここまで来たらこいつぶった押して手に入れたいじゃないか。


「モニカ、ノーラ、ミカエルは周辺の警戒。ハーピーが降りて来るようなら攻撃してくれ!」


ロックゴーレムの周りを舞って、ギャアギャア鳴いているのを見ると、そんな機会は無さそうだけどな。


「サラ、エレン、カタリナは魔法でゴーレムを攻撃! 行くぞ!」


そして俺は火竜シリーズを身に纏い、『ソウルアームズ』を発動させ、『ライトウィング』で飛び上がった。

ゴーレムに向かって飛ぶ俺を、サラ達の魔法が追い抜いていく。

ゴーレムに命中するが、へこみ一つできているようには見えないな。

まぁ、命中した時に砂や石粒の欠片が舞っているから、多少はダメージを与えているだろう。


ゴーレムがその巨大な腕を引いた。次いで俺に向けて拳を繰り出す。

速度は相当なものの筈だけど、元々ゴーレム自身がでかいせいで、拳の移動距離が長い。結果、体感では非常に遅く感じる。


ゴーレムに近付きながら横回転ハーフロール。流石に、俺の横を拳が通り過ぎていく時は、その速度相応の迫力があった。

すれ違い様に、魔法のグレイブでその腕を斬り付ける。


うわ、かってぇ!


柄を握る手に、痺れにも似た痛みがあった。多少削れはしたけれど、やはりあまりダメージを追っているようには見えない。


これはあれだな、ちまちま削るよりは大技で一気にやってしまった方がいいな。


それでも折角飛び上がったんだから、一撃くらい本体に攻撃を与えたいところ。

ここで引き返すのはちょっと間抜けだ。


「GYAAAAAAAA!!」


「!?」


鳴き声が聞こえて、俺の体内で、何かに抵抗するような反応があった。

ああ、バインドシャウトか。

レジストしなきゃいけない程度には効果が高いんだな。


成る程。ハーピーはロックゴーレムに直接攻撃を仕掛けようとする相手を迎撃する役目か。

要塞と直掩みたいな関係なのかな。


よし、方針変更。

ロックゴーレムは勿論倒すけれど、先にハーピーを処理してしまおう。

ロックゴーレムを倒す余波で、素材ごと吹き飛んでも困るしな。

ハーピーはモンスターじゃないから、倒しても魔石になるなんて事が無い。素材を獲りたいなら、ある程度原型を残さないといけないんだ。


という訳でハーピーの頭に向けて『インヴィジヴルジャベリン』を連打。

三体のハーピーが頭を吹き飛ばされて、ゆっくりと墜落していく。

ゴーレムの近くまで来ると、ハーピー達が狂ったように鳴いてこちらを威嚇してくる。

翼を使って風によって攻撃してくる奴も居るけど、まぁ、今の俺には微風だ。


和風人魚みたいなガチ化け物的なビジュアルで良かったぜ。これでモンスター娘的な萌え系だったら攻撃する事を躊躇ってたかもしれないな。

すれ違い様にグレイブ一閃。ハーピーの首が宙を舞う。

続けて二体のハーピーの首を飛ばしたところで、俺は旋回。落ちていく途中のハーピーの死体に近付いて、『マジックボックス』に収納する。


おっと、ゴーレムのパンチが迫っている。

俺は寸前で『テレポート』し、サラ達の下へと戻った。


「接近戦は無理だな」


「当たり前でしょ」


俺の呟きに、モニカが呆れたように返した。


という訳で、魔法の威力を上昇させるスキルを複数重複発動。

『魔力凝縮』『達成値上昇』『魔力吸収』『上位魔法』……。


「『シューティングスター』!!」


そして放つのは魔法の流れ星。


光速で飛んだ魔法の光がロックゴーレムに命中。その胸部を大きく抉り取る。中心より左にややずれたため、左腕が吹き飛んでいる。

反動でゆっくりと仰け反っていくロックゴーレム。

そこへ再び、流星の矢が飛び、ロックゴーレムを粉砕した。


「ふぅ……」


そして俺は、一息吐いて膝をつく。

二発目撃つMP、足りなかった……。


根こそぎ持って行かれたためにMP枯渇状態に陥っている。

なるほど、こういう感覚なのか……。


すっげぇ不快だ。

頭痛と吐き気と疲労感が同時に襲って来てつらい。

おまけに、吐き気にしても、実際に込み上げて来るものが無いからどうしようも無いっていう状況。


うわー、めまいがする。目の前が白みがかってチカチカと光ってるよー。


このまま倒れ込んで意識を失ってしまいたいところだ。

『根性』ってオフにできないからなー。


「と、とりあえず、昨日みたいにして寝床を確保してくれ。魔石を回収して、俺はすぐに休む……」


「大丈夫かい?」


ミカエルが俺に近付き、支えてくれる。


サラやカタリナは、それを羨まし気に見ながら、魔法で周囲を薙ぎ払っていた。


「おいおい、本当に大丈夫かよ」


ノーラもミカエルの反対側から俺を支えてくれた。


二人に両側から支えられ、ゆっくりとゴーレムが崩れた辺りへ近付いていく。


「うわぁ……」


そこには、山のような数の魔石が残されていた。


そうか。ロックゴーレムがデカイからって魔石もデカイ訳じゃないもんな。

平均的な大きさのロックゴーレムから手に入る魔石は、ゴブリンとかと比べるとデカイけれど。

種族LVが上がっても魔石は大きくならず、数が増えるんだ。

LV四桁ともなれば、その量もとんでもない事になって当然か。


「おや?」


その魔石を回収していると、地面にぽっかりと空いた穴に気付く。


ロックゴーレムが鎮座していただろう場所は、確かにクレーターのように窪んでいた。

しかしその中心に、人一人が通れそうなくらいの穴が空いていたんだ。


側面のある程度整えられた状態から、それが自然にできた穴でない事はなんとなくわかる。


「ダンジョンの入口だ」


「え? 神の揺り籠にあるダンジョンってドラゴンズピークだけだよね」


「あまりヒトが入っていにゃい場所だから、知られてにゃい事もあるんじゃにゃいか?」


俺の呟きにミカエルとノーラが反応してくれる。


ドラゴンズピークは世界唯一の屋外型のダンジョンだ。

ダンジョンの中が屋外のようになっているエルフィンリードと違い、完全に『外』にあるダンジョンなんだ。

その名の通り、ドラゴン系のモンスターで溢れていて、ウェルズ山脈にある事もあって、世界最難度のダンジョンとも言われている。


「ドラゴンズピークの別の入口かな?」


「ダンジョンの入口は基本一つだけど、まぁ、ドラゴンズピークの場合は入口って概念があるのかどうか怪しいからな」


ドラゴンズピークの正確な範囲はわかっていない。

ただ、ウェルズ山脈の途中で、突然様々な種類のモンスターが、殺し合わずに生息していたら、そこはドラゴンズピークの範囲内だと考えて良いそうだ。


「ダンジョンの入口だとすると、ここから魔力が噴出している筈だな。あのロックゴーレムがあれだけ巨大だったのはこれが原因か?」


「神の揺り籠自体が魔力で溢れているらしいからね。その上でダンジョンから漏れる魔力も浴びていたら、巨大に成長してもおかしくはないね」


「まぁ、今日は休んで明日は一旦帰ろう。ここをどうするかはまた後日だな」


「クレインさんにでも報告するかい?」


「うーん……」


ミカエルの質問に俺は考え込む。

どうするべきか相談するのもいいけれど、妙なトラブルに巻き込まれかねないからなー。

稼ぎが安定してきている今の状況でわざわざ事件を起こす必要も無いだろう。


「いや、基本的には黙っていよう。ウェルズ山脈にヒトが入らない訳じゃないから、他の誰かがそのうち見つけてくれるだろう」


そういう相手は、ヒトの範疇を大きく超えた、英雄と呼ばれるような存在だろうからな。

そういう奴らなら、喜んで目立ってくれるだろう。


「魔力を吸収していたロックゴーレムがいにゃくにゃった事で、氾濫が起きたりしにゃいのか?」


「起きても揺り籠の魔物やモンスター達と殺し合うだけだよ」


「ドラゴンズピークもそんな感じだな」


ヒトの生活圏の近くにあるダンジョンを攻略するのはヒトだ。

けれど、ウェルズ山脈のダンジョンを攻略しているのは魔物やダンジョン以外で発生したモンスターだったりする。

まぁ、彼らに攻略しているという意識は無いだろうけどな。群れが大きくなって縄張りを広げようとした結果だったり、特定の縄張りを持たないタイプの魔物だったりが偶々ドラゴンズピークに入り込んだだけってのが多い。


ドラゴンの中にはヒトと同じか、それ以上の知能を有しているのも居るらしいから、意識してダンジョンを攻略している奴らも居るかもしれないけどな。


結局俺達はそのままこの場所で一泊して、そして翌朝、家に帰った。

ともかくハーピーの素材がようやっと手に入った。

ドラゴンやグリフォンの素材、大量の魔石も色々と使い道がある。


危ない場面もあったけれど、まぁ、有意義な時間だった事は間違いない。


やっぱり高難度ステージは、安定して戦えるようになったら、狩場として優秀なのは、虚構ゲームも現実も同じだよな。


そう言えば、火竜の素材を手に入れるのを忘れてるな。

まぁ、またそのうち行こう。

そのうちな。


一先ず神の揺り籠の話は一旦終わりですが、章題にもなっているので、これからも度々神の揺り籠に赴く事になると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハーピーの素材取ってきた奴とんでもねぇなと思ってたら、他の高い山でも取れるのね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ