00話
この世界の全ての始まり
一つのコートが落ちていた
雨が降る夜のこと、それは闇の中で一つだけポツンとただそこにあったんだ
首を傾げるもそのコートに触れればまるで羽のように軽く重さを感じない
そう思った瞬間それは透明になり消えてしまったのだから重さを感じないのも当たり前だろう
これがここでの普通
異常とみなされたものは透明となりそこから消えてなくなる
この雨もある程度降ったら消えるように止んでしまう
ほら、もう小ぶりになって傘なんて必要ない
傘を畳もうとした時、先ほどまでなかった白い長靴が見えた
それは置かれてるのではなく、水色のレインコートを羽織り、フードで目元を隠した人のようなものが履いていた
彼なのか彼女なのかも判別できないそれは、こちらへ一枚のトランプを差し出す
トランプにはとても丁寧な字で「招待状」と書かれている
首を傾げると今度は一足のヒールを差し出す
ますますわけがわからず口を開こうとすれば止められ、今度は目の前に紙が突きつけられた
そこに書いてあったのはこの一言
「この世界に復讐しないか?」
透明世界は政府が不必要と思えばなんでも消されてしまう
それは人であっても同じこと
頷く前にまるでそちら側へいくことがわかっていたかのように、いつの間にか薔薇の花は胸ポケットへ収まっており、腕に抱えていたヒールを地面へ落とし
私は躊躇うことなくその証を足につけた
透明世界では能力がなければ、いつ消されてもおかしくない
これは生き残るための始まり