俺の彼女が小さくなって俺のところにやってきた
【作者より】
作者はラブコメは疎いので、ご了承の上拝読を願います。
俺、菅井 拓真は高校に入学する前までの15年間、彼女はいなかった。
そもそも、俺のように冴えない容姿でひねくれた人間に気になる人がいるとしても彼女ができたとしてもいろんな意味で変な目で見られると思っていた。
ところが、彼女と同じ部活に入ったことがきっかけで赤い糸が結ばれたような気がした。
彼女の名前は小川 澪。
彼女は明るく、容姿端麗で成績優秀中学からクラリネットを続けている経験者であり、クラスや学年でアイドルというかマドンナという存在だ。
俺も中学からトロンボーンをやっている経験者で高校に入学した今でも続けているが、先ほどの通りの容姿と性格で成績はなんとか上位をキープしているレベル。
俺と彼女はかけ離れた存在で、つき合うことができないだろうと思っている最中のこと。
俺がいつも通りに音楽室に行こうとしたら、教室の入口付近に彼女が立っていた。
「菅井くん、だよね?」
「ハ、ハイ! えーっと、確か名前は……」
「驚かせちゃってごめんね。私は隣のクラスで吹奏楽部でクラリネットをやってる小川 澪。この高校の吹奏楽部は人数が多いから名前を覚えるのが大変だよね」
「ハイ」
「菅井くんと話がしたくって……。一緒に音楽室に行こ?」
「ハイ!」
「同い年なんだからタメ口でいいよ」
「あ、すまない……」
これが彼女との最初の会話。
俺は学年のアイドルかマドンナで同じ部活の彼女の名前がすぐに出てこなかったことが悔しかった。
そして、高校生活や部活に慣れ、はじめての施設訪問での演奏、甲子園の予選である地区予選などを様々なイベント経て、部員はもちろん、俺と彼女の距離は縮まってきた。
夏のコンクールの本番が終わり、楽器を持ち、コンクール会場の入口で写真撮影を終えたあと……。
彼女は同い年と先輩問わず女子部員に囲まれていた。
俺が男子部員で話している時に、彼女が肩をポンポン叩く。
「す……菅井くん」
「小川さん、どうした?」
彼女は一瞬うつむいたが、すぐに俺に視線を合わせた。
「は……話があるの」
「話!?」
俺は少し驚いた。その時の彼女の目はどこか何かを決意したような目をしていた。
「菅井、コンクール会場で彼女ゲッチュか?」
「まさか」
「僅か1年生にして我が吹部のマドンナの小川 澪ちゃんだぞ?」
「先輩、俺がこんな性格なのを知ってますよね? つき合うこと、できます?」
「大丈夫! だから、行ってこい!」
「ハイ!」
今時『ゲッチュ』って言わないよな? 周りの男子部員たちに促された俺は彼女のあとにくっついて歩く。
コンクール会場は他校の生徒や卒業生などでごった返しているため、俺は迷子にならないよう、無意識に彼女の手をつないでしまった。
彼女は一瞬驚き、手を放したが、つないでくれた。
そして、たどり着いた場所は人気のないロビー。
そこにソファーがあったので、2人で仲良く並んでとは言えないが、楽器を持ったまま1つ間を開けて座る。
「小川さん、さっきはお疲れ様」
「うん。お疲れ様」
「で、突然だけど、話って何かな?」
「あ、あのね……」
「ん?」
「私……す、菅井くんのことが……」
という流れは……今まで経験したことがなかった『愛の告白』ではないか!?
いや、そんなことはない! きっと何か悩んでいるに違いないと思って、話の続きを待つ。
「菅井くんのことが……好きなんだ」
「えっ……えーっ!?」
やっぱり、『愛の告白』というやつでした。
「冴えない容姿でひねくれ者の俺が小川さんに相応しくない」
「でも、私は菅井くんのことが好きなの!」
「その理由は?」
「だって、菅井くんは頑張り屋さんだし、トロンボーンも上手いし、女子部員や先輩達も評価してくれてる」
「それだけ?」
「あと、周りをよく見て行動できるところ。それと私は見た目も性格も問わない! だから、それをひっくるめて……好きなの!」
「俺からも言わせてもらう。小川さんは学年でも吹部でもマドンナなんだぞ? クラリネットは上手いわ、容姿端麗で成績優秀な君が俺とつり合う訳がない!」
「……」
「……」
少し沈黙の時間が流れた。俺はふと
「……さっきは、言い過ぎた……」
「……ごめんね。私も少しムキになってたかもしれない」
「俺、小川さんに話かけられた時、凄く嬉しかったんだよな」
「あの時の菅井くんはぎこちなかったもんね」
「なんで、俺?」
「えーっ!? もう忘れたの?」
「嘘だよ! さっき君は俺に告白してたけど、実は俺も小川さんのことが好きなんだ」
「う……嬉しい! 菅井くん、私は凄く嬉しいよ!」
「澪」
「え?」
「澪、ありがとな? 俺のことは拓真って呼んでくれて構わない」
「うん! 拓真、みんながいるところへ行こ? みんなが心配してると思うから早く、早く!」
「あ、あぁ! 澪、楽器忘れてる!」
「ありがとう! 私ったらおっちょこちょいだね」
俺達はどうやら両思いだった。
2人きりの時間はあっという間に過ぎていた。
「菅井、彼女はゲッチュできたのか?」
「できましたとも」
「このこのー」
「やめてくださいよー」
ついに、冴えない俺に彼女ができてしまったのだ。
あれから1ヶ月くらい経ったある朝のこと……。
「最近、小川さんの姿、見えないね……」
「澪ちゃん、部活、辞めるのかな?」
とウワサになっていた。
俺は心配になり、部活を終え、家に帰ったあとのこと。
「拓真? 拓真、お帰り!」
と、聞き覚えがある声が耳に届いた。
「澪! どこにいる!?」
「私、拓真の部屋の本棚の現代文の教科書の上」
と言われたため、よく見てみると……。彼女は俺の人差し指くらいの大きさになって、現代文の教科書の上にちょこんと座っていたのだ。
「あのね、コンクールの次の日の朝に小さくなってたの……」
「どうやって入ってきたんだ?」
「壁をよじ登って……。たまたま窓が開いてた部屋に入ったら拓真の部屋で……」
「それでか……。みんな、心配してたぞ。小川さんはどうした? とかって言ってた」
「小さくなっても私は元気だよ?」
「あぁ、元気そうでよかった。ここまでくるの大変だっただろ?」
「うん。人や車を避けながら道路を渡ったり、拓真の部屋までくるのが大変だったよ?」
「なら今日はゆっくり眠れるな」
「うん。でも……」
きゅるるる……。と彼女のお腹が鳴った。
「何も食べてなかったから、お腹空いたな……。あと、お風呂も入りたい……」
「ご飯は一緒に食えるかもしれないけど、トイレとお風呂はちょっとな……」
「だよね……」
こんなんでも一応、俺は男だし、彼女は女だ。
見てもいいことや見てはいけないこともたくさん出てくる。
「ねぇ、拓真。拓真は私が小さくなっても好きでいてくれる?」
「もちろん」
「早くもとの大きさに戻りたい!」
「そうだな。もとの大きさに戻ったら、いろんなところに行こうな」
「うん!」
なんで、彼女が小さくなってしまったのかというのは謎ではあるが、俺の彼女が小さくなって俺のところにやってきたという少し変わったお話であった。