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融合した世界  作者: 安藤ふじやす
3.グラスウェル
79/265

3-18.

 グラスウェルにある冒険者ギルドの訓練場で、数日振りに彰弘、それに六花と紫苑は身体を思いっきり動かした。

 なお、これが原因でちょっとした噂が流れるが、そのことを本人達が知るのは少し先のことである。




 世界が融合を果たし、そのときから年の終わりまでの間はライズサンク皇国では皇暦零年と呼ばれた。『零』の意味を考えると適した表現ではないと思われるが、世界の融合という非常に稀有な現象が起きたことに鑑みて付けられたものである。


 それはともかく、そんな年の大晦日、避難拠点へと移設された央常(ひさしつね)神社の境内からは談笑の声が聞こえていた。

 魔導具の灯りで適度に明るい境内は、国之穏姫命くにのおだひめのみことの神域なため、この季節のこの時間とは思えないほどに過ごしやすい。それ故に、この場にいる人達は寒さに震えることなく、茣蓙(ござ)を敷いた上に座り食事をしつつ談笑できているのである。


 今現在、央常神社の境内には十八人もの老若男女がいる。

 一人は年末年始を皆で過ごそうと考えた彰弘だ。

 当然のごとく、先日グラスウェル魔法学園の学園見学を行い、それを踏まえて避難拠点へ帰ってきてからも修練を続けていた六花と紫苑、そして瑞穂と香澄も、彰弘の考えに賛同してこの場にいる。

 そして、瑞穂と香澄がいるということは、その家族も当然いた。

 それから六花に誘われて一緒にきた彼女の友達である美弥とその両親がいて、その場でその話を聞いていた誠司いる。

 誠司と同じ場にいた康人の姿も、面白そうという理由で今この場あった。

 避難拠点の総合管理庁職員のレンも世界が融合して始めての年末年始、加えて自分が教団を担当することになった要因でもあることなどがあり、この場に姿がある。

 当然、神社に祀られる国之穏姫命と、教祖となり神主ともなった影虎、その妻である瑠璃、さらに幾分成り行き感はあるものの影虎夫妻と同時に国之穏姫命の加護を受けた澪もいた。


 国之穏姫命が彰弘達、自らが加護を与えた人達以外へもその姿を見せているが過度の問題はないのか? というところだが、神と成ってからの弛まぬ努力――神界の神々の強制苛烈な教育――により、本体を神界に、現界へと分身体を置くことができるようになったため、そこは問題ない。加えて言えば、この世界の融合に際しての住民登録を利用して『オダヒメ・ワシズカ』という居場所を確保していたことも堂々と姿を見せている理由であった。

 なお、住民登録は相談を受けたレンが、自身が所属する総合管理庁の支部長であるケイゴやレイルと一緒に内密の内に完了させている。登録時の魔力登録は神ということで不安があったが、そこは世界の影響力か神々の力か、普通の人と同様に問題なく済んでいた。









 央常神社の境内で会話を交わす彰弘達が話題に事欠くことはない。世界が融合したときのこと、自らの就職先や進学先、そして元の地球にはなく新たに現実のものとなった魔法や魔導具、話題の種はいたるところに落ちているのである。


 このように豊富な話題の中の自らが今後進む先についての話題が一段落したころ、日本酒が入ったコップを片手に康人は境内を見回し、それから感心したような顔で口を開いた。

「それにしても魔導具ってのは凄いっすね。灯り……は、仮設住宅にもあったから分かるんすけど、外でこれは驚きっす」

「ははは。寄付してくれた彰弘さんに感謝ですね。魔石の維持費に少々かかりますが、総合的に見て大変助かります」

 康人の言葉に答えたのは影虎である。その顔は何ともないような表情をしているが、よく見れば少しだけ顔が引きつっているのが見て取れた。


 央常神社の境内を含むその場は、本当の意味での国之穏姫命の神域だ。故に一年を通して過ごしやすい空間となっている。しかし、そのことが広く露見するといろいろと面倒なになることが目に見えており、そのため事情を知る者達であれこれどう説明するかを考えた。最終的に『この場の穏やかさは環境安定効果を持つ魔導具の効果』、『魔導具は彰弘が防壁の外で見つけてきて寄付した』、『魔石も彰弘が防壁の外で見つけて寄付した』と偽装することにしたのである。


 何故に彰弘が見つけたことにしたのか? というその理由だが、関係者の中で一番そのことに疑いを持たれない存在となっていたからだ。

 世界の融合から今までの間に、防壁の外の何の変哲もない場所で、通常はありえない『星の記憶』と思しき武具や道具、さらには魔導具までもが見つけられている。これについては人々が様々な憶測推測を交わしていたのだが、複数の冒険者が実際にそれを見つけ物を街へと持ち帰っている事実から、そういうことになっているのだと今現在は認識するようになっていた。

 このような状況なので、早々に冒険者となっていた彰弘ならば、防壁の外で魔導具を見つけていたとしても不思議はないという話になったのだ。

 勿論、一生遊んで暮らせるくらいに高額となる魔導具を、彰弘が自分のものとせずに寄付をしたことに疑問を覚える者もいるのだろうが、現在の彼の懐事情と国之穏姫命の称号を知りさえすれば大抵の人は納得はせずとも理解を示すという予想があった。

 また、魔導具を機能させるための魔石も、今現在避難拠点とグラスウェルを繋げる防壁を建造しているゴーレムやらが想定以上に動かせている要因が彰弘の魔石発見にあるため、何か言われても説明できると考えたのである。実際、偽装のための魔石は彰弘が持っていた中でも大きめの魔石を提供していた。


 では実際にはどのような偽装なのかだが……それは、『この環境安定の魔導具に最大限の効果を発揮させるため神社が建つ丘の中に埋めた。魔力の補充とその起動は地上の社務所兼住居から影虎が操作している』、このようなものである。

 魔力補充と魔導具を起動させる操作は、神社の後ろ斜め横の空いている空間に彰弘が以前防壁の外で回収したプレハブハウスを置き、その中に備え付けた台座で行えることにしていた。

 なお、このプレハブハウスはそれだけではなく、仮の社務所兼影虎夫妻の住居としても活用されていた。それと言うのも、台座が置かれているだけでは不自然ということに加え、国之穏姫命の要望を受けた影虎夫妻が、この場所で寝起きをすることを決めたからである。


 さて話は少しずれるが、この偽装のための台座はそれだけのために置かれているわけではない。この台座には水を生み出す魔導具が入れられていた。この魔導具から延びる管は外側からは見えない場所を通り、別途備え付けられた給水タンクと繋がっていて、影虎夫妻がこの場で生活するための生活用水を供給することができるようになっているのである。

 本来ならば、神社が建つ丘の下から生活用水の水道管を引くのであるが、流石に全く予定になかったそれを即行うことはできなかった。そのため、生活用水の供給だけは魔導具を使うことにしたのである。

 なお、その他生活に必要な普通の道具類は以前に彰弘が回収していた影虎夫妻の家の物を、調理に使うコンロは影虎夫妻が入っていた仮設住宅の部屋にあった物を持ち込んでいる。想定よりも避難民の人数が少なかったこともあって、仮設住宅に用意されていた魔導具などの物品は、その部屋へと入居していた人達がそこを出るときに持っていくことができると決められたためであった。

 ちなみに、排水に関しては、神の威光と彰弘の資金、それに総合管理庁の思惑もあって、半ば無理矢理に整備を完了させていた。


 ともかく、この央常神社は影虎の顔が少し引きつるくらいにはいろいろと訳ありの場所なのである。









 彰弘達が談笑を始めてから数時間、境内への出入り口である鳥居のところに四人の男女が現れた。予定よりも遅くこの場に到着した、冒険者である竜の翼のメンバーである。

「悪い遅くなった。それにしても……ここなら、これはいらないな」

 先頭を歩くセイルはそう言うと、歩みを止めぬまま外套を脱ぎ、そしてそれを肩にかける。

 ディアとライも自分達パーティーのリーダーと同意見のようで、着ていた外套を脱いでいた。

 唯一、ミリアだけは鳥居を通ったときと同じ姿である。彼女の場合、以前彰弘経由で手に入れた五柱の女神共同制作の司祭服のお蔭で外套を必要としていなかったからだ。その服は、覆っている部分のみならず外気に晒されている素肌の部分までも保温保湿効果を及ぼす、非常に有能な機能も備えられた司祭服なのであった。

「むぅ〜? やっと来たー? でももうむり。今年はおせわになりましたおやすみなさいよいお年を」

 ほんの少し前まで起きていた瑞穂だったが睡魔には勝てず、茣蓙の上で横になり寝息を立てていた。そんな彼女は竜の翼の気配を感じたのか一度目を開けるも、やはり眠気には勝てないようで一方的に話すと再度茣蓙の上へコテンと横になった。

「悪かった。他の連中と飲んでて遅くなっ……って、寝たのか?」

 セイルは瑞穂から聞こえてくる「スー、スー」という音に、謝罪途中で顔を彰弘に向ける。

 彰弘はそれに対して笑いながら答えた。

「融合してから此の方、陽が沈んだら寝て陽が昇ったら起きて、は言いすぎだが、まあ早寝早起きだったようだしな。この時間はきついんだろう」

 その言葉にセイルは改めて茣蓙の上の彰弘達を見る。

 彰弘の太ももを枕にして六花と紫苑が寝息を立てており、その六花側の隣では美弥が自分の父親の身体に(もた)れて寝ていた。

 瑞穂は先ほどのとおりで、香澄は座った状態でこっくりこっくり船を漕いでいる。当然、二人の弟である正志も起きておらず、母親に寄りかかり寝息を立てていた。

 なお、神の一柱である国之穏姫命は寝なくとも大丈夫であったが、影虎の胡坐の上で寝ている。普通に寝て起きるという行為が、この神は好きなのだ。

「さてと、とりあえず布団に運ぶか。ここなら風邪をひくことはないだろうが、身体をちゃんと休めることはできないしな」

 そう言って彰弘は立ち上がろうとしたが動きを止めた。両方の太ももそれぞれに少女の頭が乗っているのだ、立ち上がれるわけがない。

 どうしたものかと彰弘が考え、誰かに助けてもらおうとした直後、片方の太ももから重量が消えた。

「問題ありません」

 彰弘の軽くなった太もも側から、そんな声が聞こえる。見ると紫苑がすっくと立ち上がっていた。

 何の前触れもなかっただけに、彰弘のみならず他の面々も紫苑へと視線が集まる。

「皆様、本年はお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします」

 そんな中で紫苑はそんな年末挨拶をを口にし、その場の皆へと綺麗な姿勢で頭を下げた。

 それから礼を終えた紫苑は、直後に彰弘へと向き直り「私は大丈夫ですので、六花さんをお願いします」と伝えると、有無を言わせぬような流れで自分のために用意された寝床であるプレハブハウスの内の一つへと歩いていった。

 その直後に彰弘は六花を抱え立ち上がり、子供達の寝床であるプレハブハウスへ向かう。しかし、そこで目にした光景に驚くことになる。

 プレハブハウスに入った彰弘の目には、先ほどの年末挨拶から僅か数十秒しか経っていないにも関わらず、既に安らかな寝息を立てている紫苑の寝姿が映っていた。

 ちなみに、彰弘以外の大人達も彼と同様の反応をしていたことを明記しておく。









 子供達を布団へ運んだ後、彰弘は再び境内の茣蓙の上にいた。

 一緒にいるのは影虎にセイルとライ、そして誠司と康人だ。残りの者は「片付けはやっておく」との彰弘の言葉で布団に入っていた。

「先ほどの紫苑さんには驚きましたが、それはともかく、改めまして今年一年間お疲れ様でした」

 影虎の言葉で、彰弘達は各々が持つコップを軽く打ち合わせた。

「いやはや、最後まで面白かったな」

 一息でカップに入った酒を飲み干してから、セイルはそう言ってオーク肉の串焼きへと手を伸ばす。

 ライは笑顔で「否定できませんね」と、セイルの空となったのコップへと一升瓶から酒を注いだ。

 なお、一升瓶のラベルは剥がれていて銘柄は分からないが、その味は辛めの日本酒のものである。

「まあ、それはそれとしてだ、誠司さんに康人、何か話がありそうな雰囲気だったが……」

 セイルとライのやり取りに、先ほどの瑞穂と紫苑を思い浮かべ笑みを浮かべた彰弘だったが、ふと気になっていたことを思い出し声を出した。

 そう言われた二人はお互い顔を見合わせる。そうしてから誠司が口を開いた。

「まあ、一つは大したことではないんですけが、そろそろ彰弘さんからの『さん』付けをやめてもらえないかと思いまして。職場の同僚とかなら慣れているからいいんですが、そうではないのに目上の方から言われるとどうも違和感が……」

「本気で大したことじゃないな。アキヒロがセイジと呼べばいいだけだろ」

 真面目な話かと串焼きを口へ運ぶのを止めていたセイルは、そう言うとオーク肉を頬張る。

「切っ掛けがないと難しいんだよ」

 一本目を食い終わり二本目へと手を出したセイルへと顔を向けそう理由を告げた彰弘は、誠司へと向き直った。

 そんな彰弘へ、今度は康人が口を開く。

「あれ? 僕の場合は初めっから呼び捨てだったっすよね?」

「そんなことは……そうだったか?」

「その話題は、それくらいでいいんじゃないですか? アキヒロがカゲトラさんのような雰囲気であればいいんでしょうけど、そうではありませんからね」

「分かったよ。うだうだ言っても仕方ない」

 何となく納得がいかない感じではあるが、誠司の感覚が彰弘も分からないわけではない。結局、彼は呼び捨ての意見を受け入れる。

 それから呼び方より派生した雑談が続いた。

 自分より若い世代のその会話を微笑ましく思い見守っていた影虎だったが、そろそろ次の話に進めるべきかと考え、区切りのいいところで口を挟んだ。

「そういえば、呼び方以外にも何かあったのではないですか?」

「ああ、そうでした」

 影虎の言葉に、はっとした誠司は「ありがとうございます」と頭を下げる。

 それに対して影虎は「いえいえ」と笑みを返した。

「そう言えば、一つは大したことはないとか何とか言ってたな」

「ええ。名前の呼ばれ方は、言ってみれば私の我侭のようなものですから。それはいいとしまして、実はファムクリツへ行く前に一度は実戦を経験しておきたいと、美弥と康人と話していまして……。小学校の校庭でゴブリンと戦ったことはありますが、今現在の自分達は果たしてアレ相手に戦えるのか不安なのです。あのときと今では精神状態が違いますから。ただ、今のままでは外へ出ることができませんから、どうしたらよいか悩んでいたのです」

 真剣な誠司の表情に、現在冒険者として活動する彰弘と以前から冒険者として活動していたセイルとライの二人は「なるほど」と頷く。

 なお、美弥の名前が出ても三人が特に驚きもしなかったのは、六花達の存在があったからである。避難拠点に避難してきた当初、美弥も六花達と魔法の訓練をしていたし、その後も兵士の訓練場に間借りした場所で身体を動かしているのを見て、問題ないと考えていたからであった。


 誠司は美弥の家族と一緒にファムクリツへ行き、そこの主産業である耕作を行うことになっていた。しかし、基本耕作地というものはそのほとんどが防壁の外にある。すると必然と魔物に遭遇する機会が、防壁の中で働く者達よりも増えるのだ。彼はその魔物との遭遇を危惧して、自分が戦えるかを試したかったのである。

 もっとも、ファムクリツに代表されるように、普通の耕作従事者などは魔物を視認できる距離に見かけた場合、安全な場所へと逃げ様子を見ることになっていた。魔物の相手は、それを専門に行うために常駐する兵士や、耕作もするが実際に戦えそれを受け入れた者、または緊急依頼として冒険者が事に当たる。

 耕作に従事するだけの予定である誠司の不安は普通のものではあるかもしれないが、彼が考えるほど心配するものではないのである。


 とは言え、要らぬ不安は解消すべきことなのは事実であった。

「それなら、一時的に冒険者になったらどうだ? いつファムクリツへ行くのか分からんが、それまでの間に冒険者になって外に行ってみればいい」

「それはいいのですか? 予定では私達がファムクリツへ行くのは来年の夏の初めごろです。それだとすぐに冒険者を辞めることになってしまうのですが」

 セイルの言葉に誠司はそう返す。

「特に問題はないでしょう。冒険者を目指したものの、肌に合わなくて短期間で辞めてしまう人も多くはないですがいます。もっとも、大抵は納めた金銭の関係で最低一年間はギルドに所属しますが……今のあなた達なら無料ですし、いいんじゃないですか?」

 セイルの言葉を補足するようにライに言われ、誠司は康人へと顔を向ける。

 そんな二人を見て、彰弘はグラスウェルで出会った冒険者を思い出し口を開いた。

「この前グラスウェルへ行ったときなんだけどな、ファムクリツ出身ていう二人の冒険者に会ったぞ。彼らも農業をやるつもりだけど、魔物を自力で撃退できるようになりたいと一時的に冒険者になったらしい。だから、セイルとライが言うように誠司達も一時的に冒険者になることは問題ないと思う」

 彰弘の言う二人とはジンとレミのことである。二人の考えが誠司達と似ていたので彼は声を出したのである。

「ま、夏なら時間はあるから、どうするかゆっくり考えればいい。冬は身体の動きが鈍るから、外に出るなら春になってからの方がいいしな」

「そうですね。春過ぎだと機会はそう多くないでしょうけど、遭遇できないとはならないでしょう」

「もし、そう決めたら言ってほしい。多少は助けになることができると思うからな」

 彰弘の言葉を最後に話は一段落、そう受け取ったセイルは欠伸交じりに「そろそろ寝ようぜ」と、言い出した。

「分かりました。ありがとうございます。その方向で考えてみます」

 誠司と康人は頷き合うと、欠伸をかみ殺すセイルとライ、そして彰弘へ向かって頭を下げた。


 その後、彰弘達は事の成り行きを見守っていた影虎と共にその場の片付けをして、仮の寝床であるプレハブハウスへと向かい就寝した。









 翌朝、目を覚ました彰弘を待っていたものは、元気よく年始の挨拶を向けてきた少女達の姿であった。

 驚きだったのは、昨日の深夜寝ぼけ眼ではあるが年末の挨拶をしてきた瑞穂と、起きているときと寸分違わぬ調子で彼女と同じ意の挨拶をした紫苑が、実はあのとき起きていなかったという事実である。このことには彰弘のみならず、あのとき起きていた大人達も驚いていた。

 当然、子供達は寝ていたのだから驚く材料を持っていない。ただ、何に大人達が驚いているのかを不思議がっていただけである。

 なお、朝起きて竜の翼の姿を見た六花達は年末の挨拶をしそびれたと詰め寄っていた。彼らは瑞穂と紫苑に言われたときは釈然としない顔をしていたが、自分達が遅れていたのは事実、そこは素直に謝ったのである。


 ともかく、彰弘達はこうして世界が融合を果たした始めての年末を終え、皇暦元年の年始を迎えたのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。


明けまして、おめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。



二〇一六年 一月 二日 二十一時 四分 修正

誤字修正

文章表現修正

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