表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
融合した世界  作者: 安藤ふじやす
2.避難拠点での生活と冒険者
38/265

2-23.

 位牌回収作業も二区画目に入る。

 そんな中、最初に避難した小学校の校庭へ足を踏み入れた彰弘達は暫く黙祷する。

 その後、一行は依頼の続きのために歩みを進めるが、その最中に六花が彰弘のアパートを指し示したことで少々暴走ぎみになる少女四人。

 しかし、常識あるレンにより、その場での彰弘の部屋突入は回避されたのであった。

 夜になるまではまだ時間がある。彰弘は手を翳した顔を空に向け、そこにある太陽の位置からそう考えた。

 世界融合直後から感じていた違和感は消えかけていたのだが、実際にこうして数が結果として出てくる作業をしていると再びその違和感が持ち上がってくる。

 今日、彰弘達が回った戸数はすでに千五百を超える。時折、車から魔石を回収していることも考えると驚異的な早さであった。

 午前の早い内から行動していたことと今日の区画に集合住宅が多かったことも一因ではあろうが、やはり最大の要因は一日の長さが元の地球の倍あるということが関係していた。


 別れて位牌回収を行っていた彰弘達がそれぞれ担当した家屋から出てくると、いち早く自分達の分を終わらせていたセイルとレンが待っていた。

「お疲れ様です。これで四区画目も終わりです。一度休憩しましょう」

 レンは自分も回収に参加しているにも関わらずそう労い、結果を聞く姿勢を示した。

「こっちはなかったな」

「こちらはありました」

 それに答えて、瑞穂と香澄の二人と行動しているディアが位牌はなかったと報告し、続けて六花と紫苑と一緒に動いているミリアが声を出す。ライと行動を共にしていた彰弘は「なかった」と短く発言した。

「二分の一か。ま、それはさて置き預かろうか」

 報告を受けた、レンの護衛込みで行動しているセイルが自分達の分と合わせてそう結果を口にし、今現在、唯一位牌を手に持っている六花に声をかける。

「お願いします」

 六花はセイルに近づくと両手で胸の前に持っていた位牌をセイルへと差し出した。

 回収された位牌はレンが事前に用意していた住所が書かれた紙を付けられ、セイルが持つマジックリュックに納められる。

 魔法の物入れは性能により収納後に違いがある。それは大きく二つに分けられる。一つは普通の袋などと同様に入れた物品が固定されず物入れの動かし方運び方によってごちゃ混ぜになる物。もう一つは入れた物品が特定の位置に固定され振り回そうが何しようが物品同士がぶつかったり混ざったりしない物だ。

 セイルの持つマジックリュックは後者である。そのため、セイルが無造作に自分のマジックリュックに位牌を入れているように見えても、位牌が傷ついたりすることはないのである。

「これでよし、と。とりあえず順調で何よりだ。じゃあ、少し休むか」

 位牌を仕舞ったセイルはそう言うと、少し移動して全員が座れる広さがある場所で腰を下ろした。

 そして思わずといった声を出す。

「しかし、こうも何もないと物足りないと言うか、何て言うかな……」

「何言ってんの、何もなくて順調だからいいんじゃないか。今回の依頼は討伐じゃないんだからね、まったく」

 セイルの口から漏れた言葉に、その隣に座ったディアが呆れたように反論する。

 避難拠点の北側、その元地球側の土地にいた魔物のほとんどはすでに冒険者や兵士の手によって討伐されていた。そのお陰で何事もなく今のところ位牌の回収ができているのであった、

「ん〜、それは分かってるんだけどな。ここ最近、素振り以外でこいつを振ってないからなぁ。感覚が鈍りそうなんだよ」

 座るときに背中から降ろした、自分達のパーティー名の由来元となった両刃の斧を指す。

「そうだ、この依頼が終わって一休みしたらそこらの森にでもいかねぇか? アキヒロ達に森での動き方を教えることができるし、どうだ?」

 唐突の提案に、聞くともなく聞いていたディア以外の面々がセイルへと注目した。

「そんなに注目されると照れるんだが……」

 頭をかきつつセイルが少し引き気味で声を出す。

 そんなセイルにライが声をかけた。

「初めの方の会話はともかく、森は悪くないですね。彼らの同意があればですが」

「私としても反対の理由はありません。その辺りは早いに越したことはないですから。それに元々の目的とも一致しますし」

 そう、ライの言葉にミリアも続いた。

 いまいち訳の分からない彰弘達は首を傾げお互い顔を見合わせる。

 それを見たディアが笑いながら説明を始めた。

「今回、あんた達を誘ったのは人員が欲しかったというのもあるけど、元々はあんた達がこれから冒険者をやっていく上での手助けをするためだったのさ。新米冒険者の指導は先輩冒険者の努めでもあるしね。もっとも、指導と言っても普通は偶然依頼の最中や訓練場などで会ったときに助言を与える程度なんだけど、あんた達とは縁があるようだし、何より気に入っている。だから、今のようになっているわけさ」

 それを聞いた彰弘達は感謝を述べて、森への同行もお願いしたのだった。

 なお、その際に彰弘が謝礼を口にしようとしたが、それは口に出す前にセイル達に断られている。

 理由は、セイル達からしたら本来やって当たり前――少々、他の新人達へよりは過剰だが――であることに加え、今回の依頼では彰弘のお陰で十分すぎるほどの金銭を手に入れることができるのだから、それ以上はいくらなんでも貰いすぎ、というものだった。









 五区画目を回り始めてから暫く経ち、ある通りに差し掛かったとき、瑞穂と香澄が緊張を身体に表した。

 そんな二人を心配した彰弘は前を行く少女達へと声をかける。

「大丈夫か? 何があった?」

 立ち止まった瑞穂と香澄は彰弘を振り返り困ったような笑みを浮かべた。

 二人の横を歩いていたディアも心配そうな顔を少女達へと向けていた。

「あ、うん、大丈夫。別に今何かあったわけじゃないんだ。ね、香澄」

「うん。そうなの、彰弘さん」

「それにしては妙に緊張しているみたいだが……本当に大丈夫か?」

 大丈夫と返す瑞穂と香澄だったが、その様子は危機的と言うような状態ではないにしろ、普通とは言えない状態に彰弘には見えた。

 当然、他の面々も少女達の様子が今までと違うことに気が付いていた。そのため、全員が足を止めて心配を表した顔で二人の少女を見つめた。

「あははは〜。参ったな、どうしよ香澄?」

「どうしよって言われても……」

 少女二人はそう言って、一瞬だけ六花に目を向け、すぐに視線を外した。

 その様子に一瞬とは言え目を向けられた六花とその隣にいた紫苑は何か思い当たることがあったのか、お互いの顔を見る。

「もしかして瑞穂さんのお父さんと香澄さんのお母さんは……」

 紫苑に向けていた視線を、困ったような笑みを浮かべている瑞穂と香澄へと移した六花はそう言葉を紡いだ。

 瞬間、六花の視線の先にいる二人の少女の身体が硬直する。

「やはり、この近くなのですね」

 紫苑も六花と同じことを考えていたようで、そう言葉を漏らした。

 少女達のやり取りで、その場の全員が何故瑞穂と香澄の様子が変わったのかを理解した。

「正確にどこかは分からないんだ。でも、あたし達が別れたのはあの角を曲がってすぐのところ。だから、そこが近くなって……ね、香澄」

 瑞穂は困ったような笑みを浮かべた顔から、泣くのを我慢するような顔になりそう話し、香澄は瑞穂と同じ表情で下を向き小さく「うん」と同意していた。

 彰弘はおもむろに二人の少女へと歩み寄った。

「瑞穂、香澄。無闇矢鱈と泣くもんじゃないが、泣くのを我慢すればいいってもんじゃない。後な、泣くってことは別に恥ずかしいことじゃないんだぞ。もし泣き顔を見られたくないなら俺の身体で隠せばいい。そのくらいできるぞ?」

 彰弘はそう優しく声を出し二人の少女を見つめた。

 それから少しの間があり、香澄が顔を伏せたまま彰弘の身体に顔を押し当て、すすり泣き始めた。

 彰弘はそんな香澄の頭を撫でながら瑞穂に目をやる。そして、声を出さずに頬を濡らす瑞穂を空いていた手を使い自分の身体へ近づけた。


 暫く辺りに流れていたすすり泣く音はいつの間にか止んでいた。

 彰弘はその後も少しの間両手を動かしていたが、自分の身体から少女達が離れる気配を感じて、その手を二人の頭から離した。

「くあぁぁぁ! 瑞穂ちゃんチョーはずかしい!」

 彰弘から離れて開口一番、瑞穂が声を上げた。

 口調はおちゃらけたものだったが、目は真っ赤だった。ただ、恥ずかしかったのは本当らしく、顔も真っ赤になっている。

 瑞穂の横の香澄は顔を伏したままなのでよく分からないが、耳まで真っ赤なところを見るに、目なども瑞穂と一緒であろう。

 性格は全然違う二人であったが、根本的な部分で妙に似通っていた。

 そんな二人に、六花と紫苑が水で濡らしたタオルを差し出している。差し出す濡れタオルを持つその顔には優しさがあった。

 彰弘は少女四人の様子を目を細め見てから、セイルたちへと向かい合う。そこには安堵と優しさを感じる顔があった。

「とりあえずは、解決かな?」

 セイルの言葉に彰弘は笑みで「そうだな」と答える。

 それを見たセイルは顎に手を当ててから口を開いた。

「にしてもあれだな。少し前、あんたに『大変だな』とか言ったけどさ、ひょっとして自業自得なんじゃないか?」

「ふふふ、良いではないですか。自業自得だろうと、悪い意味でのそれではないんです。私としてはとても嬉しいことなのですよ」

 セイルの言葉に聖母かと思える非の打ち所がない微笑みでミリアが答える。

 それに対して彰弘が言葉を返すよりも先に、顔を拭いた瑞穂が声をかけてきた。

 彰弘が言葉を飲み込みそちらへ振り向くと、まだ若干顔を赤くした瑞穂と香澄、それに笑顔を浮かべた六花と紫苑が立っていた。

「えと、えっと、もう大丈夫です、ありがとうございました!」

 そう言うと、瑞穂はデジャブを感じる勢いで頭を下げ、香澄も「ありがとうございます!」と同じように頭を下げた。そして、頭を上げ彰弘に顔を見せると二パッとした笑顔を二人して見せた。

 それを見て彰弘は、まぁいいか、とセイル達へ向ける言葉を霧散させた。


 一度立ち止まったため、折角だからと全員で現状を確認した。

 そしていざ動き出そうとしたところで、彰弘、そしてセイルとディアが後ろを振り向き武器を引き抜き構えた。その間にミリアは少女達を背中に隠す位置へ動き自らの武器である爪を取り出し両手に装着、ライはレンの腕を取りミリアと少女達のいるところまで移動し短杖を手にした。

 少女達は訳が分からないまま遅れて武器を構え、レンは何事かと忙しく目を動かした。

 腰を落とし武器である長大な両刃斧を構えたセイルが舌打ちをする。

 他の面々もセイルと同様に即戦闘に入れる構えをしていた。

「なんだ……これは?」

 彰弘は初めての現象に疑問の声を漏らす。

 視界には、靄のようなものが徐々に何かを形作っていく光景が映っていた。

「この現象で出現するのは九割が霊体生物です」

「なんだそれは?」

 ライから出た聞きなれない言葉に、彰弘は靄のようなものから目を離さずにそう返す。

「簡単に言えば実体のない生物だ。今の状態だとどんな攻撃も通らない。形が安定したとしても普通の物理攻撃は意味がない。アキヒロ、剣に魔力を通しておけ」

 そう彰弘に答えたのはセイルだった。すでに自分の武器へは魔力を通しており、その証拠に手にある両刃斧はぼんやりと光っていた。

 彰弘はすぐさま剣に魔力を注ぎ込んだ。それを受けた手の中の血喰ブラッディイートいは、見る者によっては恐怖を感じるようなどす黒い赤色の刃を発生させる。

 それから数秒して、靄は二つの人型へ変化を完了させた。

 瞬間、攻撃を仕掛けようとしたセイルとディアだったが「待て!」「お父さん!」「お母さん!」という三つの声にその行動を阻まれた。

「何!?」

 再び構えの体勢に戻ったセイルが二つの人型を視界に入れたまま声を上げた。

 ディアも突進途中から構えに戻り言葉が返ってくるのを待っていた。

「あれは多分瑞穂の父親と香澄の母親だ。今の両親とよく似ている」

 後ろの雰囲気から、一番詳しいはずの少女達が話せる状態ではないだろうと予測して彰弘が答えた。

「恐らく、あの人達はこの場で亡くなったのでしょう。とりあえず、武器は必要ありません。あの二人からは害意などは感じられませんし、何よりあの状態を維持できるのも後少しのようです」

 彰弘の言葉に自分の考察を口にしたミリアは、今は必要ないと両手に装着した爪と言われる武器を外しマジックポーチに入れる。

 ミリアと同時に少女達が小剣を鞘に戻し、少ししてから彰弘とライが武器を仕舞う。最後にセイルとディアが構えていた武器を背に戻した。

「ふー。で、どうするんだ? このまま待っていればいいのか?」

 一つため息をついたセイルは誰に言うでもなく言葉を出す。

「そんなに時間はかからないから心配しないでもらいたい」

 聞き覚えのない声にセイルは眉を寄せる。

 声の主は、ライが霊体生物と言い、彰弘が少女二人の親だと言った女の形をした方から発せられた。

「すぐに別れることになるが、はじめまして。私が香澄の母親の京香きょうかだ」

「で、私が瑞穂の父親の正一しょういちです」

 霊体の二人はそう自己紹介をすると軽く頭を下げた。

「さて、冗談抜きに時間がなさそうだから、喋らせてもらおう。香澄、元気そうで何よりだ。ところで、正二と正志は無事か?」

 無意識で彰弘の横まで来ていた香澄に京香はそう問いかける。

「う、うん。怪我もしなかったし今も元気だよ」

「そうか。それは良かった」

 ぶっきらぼうな物言いだが、半分透けた京香の顔には心底の安堵が見て取れた。

「ほら、今度は正一の番だ」

 本当に時間がないのだろう、京香は香澄と簡単にやりとりしただけで隣の正一へバトンを渡す。

「瑞穂。元気なお前がちゃんと元気でいてくれて嬉しいよ」

 正一は香澄と同じく彰弘の横まで来ていた瑞穂へと優しげに声をかけた。

「うん。ちゃんとお母さんも元気だよ。もちろん怪我なんてしてない。今は正二叔父さんと夫婦になってあたしと香澄と正志の五人で一緒に暮らしてる」

「そうか、本当に良かった。それはそうとその男は何だ? 何故、袖を掴んでいる? ちょっと瑞穂、お父さんの問いに答、ぶぺっ!」

 妻子、そして弟と弟の子供二人が無事なことに半透明の顔を安堵の表情にしていた正一は、瑞穂が彰弘の袖を掴んでいるのを見るや矢継ぎ早に質問を投げかけようとし、京香の裏拳をくらい仰向けに倒れた。

「まったく、細かいことを気にしすぎだ。いいじゃないか、少しくらい歳が離れていても。なぁ、香澄?」

「え、あ、うん」

 香澄は京香からの言葉に、彰弘を見て瑞穂を見て、それから六花と紫苑を見る。

「あらま、ライバルがいっぱいか? まぁ、がんばんな香澄。瑞穂も手加減は必要ないからね、正々堂々戦いな」

「あの、おば様。お時間のないところを失礼します。私は紫苑と申します。私達四人が争う必要はありません。何せ今は一夫多妻、多夫一妻制。ですので、ご心配無用です」

 紫苑が会話に食い込んだ。

 ついでとばかりに六花が自己紹介を行う。

 そして、紫苑の話した内容に彰弘は大変なことが今後起きるんじゃないかと、天を仰ぎそうになり必死で自分の動きを抑えた。

「おっと、そんなことになっているのか。んじゃ、私としてはそこの人が不貞行為しないように見守りさえすればいいのか」

 予想外、いや瑞穂と香澄の家庭環境を聞く限りは予想内か、ともかく一般的に普通ではない感性で話す京香に彰弘は言葉が出ない。

 ミリア以外の大人も彰弘と同様で呆気にとられたように、ただそのやり取りを見ている。

 彰弘はそんな中でも何とか口を開き「心配無用」とだけ京香に伝えた。

 元々、結婚とかそれ系統に興味がなかった彰弘はその言葉が意味することを深く考えずに声に出した。ただ単に京香に気圧されただけかもしれないが……。

「ハハハ、そうかそうか。ま、頼むよ。二人とも私達の可愛い娘だ。最終的にどうなるかは、そっち次第だから任せる。ただ、それまで……娘達をよろしくお願いします」

 笑っていた京香はふいに真面目な顔をして頭を下げた。

「ああ、それは当然だ。さっきの言葉じゃないが安心してくれ」

 彰弘の言葉と態度に、京香は満足したように笑みを浮かべる。

 そして、いまだ倒れたまま天を仰いでいる正一を引っ張り上げた。

「ほらほら正一、時間だよ。折角の時間をふて腐れてんだから、もう。ほら、最後に何かないの?」

 足元から徐々に消えていく自分の身体に愕然としながら正一は一気に捲くし立てた。

「いいか、お前! 娘を不幸にしたら承知しないからな! そんなことをしたらどこまでも追いかけて成敗してくれる! いいか、わかったな!」

 正一は、その勢いに若干引いた彰弘が何とか頷くのを見ると、今度は瑞穂に向かって話しかける。

「瑞穂。瑞希によろしく言っといて。私はあの世で京香とイチャイチャするから、そっちはそっちで仲良くなって。後、正志にも元気でやれよって」

「うん。わかった。絶対、みんなで幸せになるから心配しないで」

 瑞穂は正一の言葉に何の躊躇いもなくそう答えた。

 正一の身体はすでに腰あたりまでが消えていた。当然、京香の方も同様である。

「さて、んじゃ。本当にお別れだ。ああ、そうそう香澄」

「なに、お母さん?」

「正一が言ったことは、そのまま私の言葉でもあるからね。後は……香澄、楽しめそうか?」

 京香の言葉に香澄は一瞬目を瞑り。

「うん!」

 と、大きな声で答えた。

 京香はそれに満足そうに頷くと隣の正一へと顔を向け手を伸ばす。

 正一はその手を掴み笑顔を返した。

 そして……。

「「じゃあ、またな」」

 瑞穂と香澄に向かってそう言うと光となって消えていった。


 二人の男女が消えた場所に向かってその場にいた全員が目を閉じ手を合わせた。

 その後、それぞれの思いを胸に浮かべ、依頼のため再び歩き出した。

 そんな中の瑞穂と香澄の顔にあったのは微笑みだった。

 実のところ、ほんの少しだけ悲しみは残っている。しかしそれは、最後に父親と会い伯母に会い、母親と会い伯父に会ったことで不思議と小さくなっていたものであった。この小さな小さな悲しみはいつまでも残っているものだと思う。でも、それは涙を流す類のものではなかったのである。

 だから、瑞穂と香澄の顔には涙ではなく微笑みがあったのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。



霊体生物について

所謂生霊死霊の類です。ついでに言うと精霊などもこれになります。

どれにも善い奴もいれば悪い奴もいます。

話が通じるのも通じないのもいます。

ただ、魔物というわけではないので魔石を出さないため、敵として出てきた場合には、ひたすら厄介なだけの生物です。純粋な魔力でしか倒せませんし。

例えばファイアアローで攻撃した場合、火属性分のダメージは通らず、魔法を形作っている攻撃的な魔力部分のみがダメージを与える。と言うような感じです。


ちなみに、この世界で言うアンデットとは別物です。アンデットは魔物カテゴリーでしっかり魔石を残します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ