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融合した世界  作者: 安藤ふじやす
2.避難拠点での生活と冒険者
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2-22.

 一割ほど依頼をこなし、昼休憩を取る彰弘達。

 そして、再び依頼をこなそうを動き出すも彰弘の行動で少しの間一行は依頼とは別の行動をとることになる。

 しかし、それが後日のお金ざくざくに繋がるのであった。

 竜の翼が受けた位牌回収依頼の範囲は、彰弘と少女四人が住んでいた央平ひさしひら市の南側三分の二と、その南に隣接する央丘ひさしおか市北側の一部である。この説明だけでは相当な範囲に思えるが、世界の融合により央平市の東部側一部と央丘市のほぼ全ての土地は、サンク王国の土地を挟んでその向こう側へと融合を果たしているため、言葉から想像するほどには広くはなかった。

 しかし、するべき内容を考えると十分に広いと言える範囲だ。そこで総管庁職員のレンは自分達へ指定された範囲を区分けして順番に回ることにした。車道を境界としてその範囲を二十に分け、避難拠点に近い区画から位牌を回収していくことにしたのである。

 なお、この回収依頼は本当に位牌の回収だけが目的である。遺影というものが存在しているのならば、これも回収の対象となったかもしれないが、世界融合の現象として遺影のみならず写真と呼ばれるものは全て無地へと変わっていたため、回収対象とはならなかった。また、各家庭にあるであろう家族にとって大事である物なども回収対象とはなっていない。これは単純に持ち運べる量の問題もあるが、避難拠点の外に出ることができる人員には、その物の判別が困難なことが理由であった。ならば、その家族を同行してと言いたいところだが、いくら避難者が想定よりも大幅に少なかったと言っても、四万人弱の人数がいるのだ。その人数を護衛しながら防壁の外を行くのは現実的ではなかった。









 二区画目が半分ほど終わった段階で一行は目に付いた小さな公園で休憩を取っていた。

「位牌というのは故人そのものと聞きました。いささか数が少なくありませんか?」

「地域柄と言えばいいのでしょうか、この地域は地方からの上京者が多いのです。そのため、地方の実家に位牌はあっても今住んでいるところにはない家庭が多いのです」

 疑問を口にするライに元日本人を代表してレンが答えた。

 今のところ、回収した位牌の数は回った件数全体の四割ほどであった。多いか少ないかは判断する基準次第なので何とも言えないが、レンが言うとおりこの地域は地方から上京してきた人が多い、そのことを考えると回収した数は妥当と言えるかもしれなかった。

 もっとも、実家にもあり自分が住んでいるところにもある家庭が存在することをレンは知っていたが、それを何も知らない人に説明し理解してもらうのは難しいため、あえてその辺りは省いていた。

「なるほど。サンク王国……と言うかリルヴァーナではあまり考えられない状況があったのですね」

 レンの答えにそう返したライは水を口に含んだ。

 融合前のサンク王国でも地方から王都や大都市へと上京してくる人達がいないわけではなかった。しかし、一般人でそれを行う人は少ない。何故かと言うと、日本ほど外が安全ではないし交通手段の問題もあった。

 リルヴァーナの魔物は地球の野生生物とは比べ物にならないほど強力だ。そのため、力のない一般人は防壁の中や比較的安全な街の周辺で活動し、一生を終えるのが普通であった。

 また、交通手段が徒歩か獣車しかないため、隣の街へ行くのさえ数日かかるいう理由もあった。技術的には飛行機のようなものを作れないことはないのだが、空を飛んだ上で、そこを縄張りとする魔物に対抗する手段がなかったのである。

 もし仮に空に魔物の脅威がなかったとしてもコスト的な問題がある。

 飛行できる人工的な乗り物を動かすためには莫大と言える魔力が必要だ。

 二人が乗れる飛行機を作り、それを一キロメートル先へと飛ばすだけでも、一般的な熟練魔法使いおよそ三人分の魔力量が必要となるのだ。しかも、これは先に書いたとおり移動させるだけの場合であって、離陸や着陸、それに減速などは計算に入っていない。実際に全てを考慮したら一人分以上は多くの魔力量を必要としていた。この四人分の魔力量は、魔物から取れる魔石に換算した場合、四百万ゴルドくらいとなり、商売としては当然で、国としても運用できる範囲ではなかった。そのため、リルヴァーナには飛行機と呼べるものが一般にはないのである。

 なお、魔法使いに魔力回復薬などを与えて直接飛行の魔導具へ魔力を供給する方法も考えられたが、魔石を普通に使うよりもさらに高額となる試算が出たのであった。


 少々、余談ではあるが、リルヴァーナには魔力以外で燃料と呼べるものはほとんどない。

 リルヴァーナ側の世界には地球側の世界での石油や天然ガスなどに類する資源が存在していなかったのである。動植物製の油などはあったため、それも含めて少しでも燃料となるであろう物質を魔力に代わる燃料へと転じさせる研究もされてきてはいたが、開始から数千年以上経過しても身を結ぶ目処すら立っていなかった。

 なお、世界の融合の影響が落ち着いた頃に、この燃料については各国独自に地球の技術とリルヴァーナの技術を組み合わせて取り組んだが、魔力に代わる燃料を開発した国は出ていない。地球の技術がまったく役に立たないわけではなかったが、燃料については意味のないものだったのである。


 彰弘はライとレンの話が終わった区切りで口を開いた。

「そっちの話は終わったようだし、教えてもらいたいことがあるんだがいいかな?」

「なんでしょう? 私が知っていることで答えられることでしたら教えますが」

 自分に向けかけられた言葉にライはそう返す。

 それを待って彰弘は言葉を続けた。

「魔石についてなんだがな。さっきの魔石は普通のと何が違うんだ?」

 透明色の魔石について彰弘は治療院でサティから聞いてはいたが、通常採掘でしか手に入らないことで珍しいと言う以外のことは聞いていなかった。

 これはサティが話さなかったのではなく、彼女に急用ができて魔石についての話が途中で終わったからであった。

 その後、透明色の魔石については、彰弘が手に入れる確信がなかったこともあり、今に至るまで誰かに聞くことがなかったのである。

「そうですね……性能で言えば、あの透明色の魔石は魔物から取れる魔石より、大きさが同じならば保有されている魔力量が上となります。その上、魔力を人が注ぐことで繰り返し使うことができます」

 充電式の電池と普通の電池みたいな物かと彰弘は考え頷いた。

 魔物から出た魔石はその魔力を使い切るとその場で消滅するのに対して、通常採掘で取れる透明色の魔石はその魔力を使いきっても消滅することはないのである。

「後は、あんなところから出てきたこと、大きさ、加工された状態だったこと、この三点が普通と違うところでしょうか」

「まあ、普通は地下にあるらしいからな。にしても、大きさか。あのときの反応を見る限りだと小さくて驚いていたということはないだろうが……。それに、加工?」

 彰弘が最後に加工という言葉を疑問気に出したことに、ライは「自分でもう少し調べてもいいと思いますが」と最初に言ってから説明を始めた。

「順番に説明します。まず地下から取れる魔石はあのように球体ではなく、他の鉱石などと同じような状態で採掘されます。それで本来なら専門の職人の下へ運ばれ使用できる状態に研磨などの加工をされてから、市場などに流されるのです。この加工は魔物から出た物も同様です。要するに加工されていない魔石はただの石と変わりありません。もっともドラゴンなどの強力な魔物から出た物や特大の物はその希少さから十分高価と言えますけどね」

 実際、そのような物は貴族の好事家などが高値で買い取ることがある。その値段はピンキリではあるが、貴族が買い取るような物となると、それ一つで一般人なら一生働かなくとも暮らせるだけの値段になる。ただ、それだけの物がそう簡単に手に入る訳もない。結局は地道に稼ぐしかないのである。

「加工については分かった。あれが加工後だということも理解した。じゃあ、あれの大きさは驚くに値するのか?」

「ええ。最初に出てきたあのクラスになると一般の市場にはほとんど出回りません。大抵は目上の方への献上品となったり、裕福な貴族が出回る前に買い取ってしまいますから。ちなみに、あの魔石が保有できる魔力は私とそこの子達全員を合わせたよりも上です。そのことを踏まえて一つ忠告です。もし、あの魔石を売らないで保持する場合は、できるだけ他人に知られないようにした方がいいですよ。低く見積もっても八百万を下回ることはない代物ですからね」

 彰弘とライが話を始めた段階で雑談をやめていた少女達は話の途中から話題に出ていた魔石を手に取り眺めていた。が、ライの口から出た八百万という数字に動きを止めた。

 そして……。

「香澄パスっ!」

 ライの口から値段が出たときに丁度件の魔石を手にしていた瑞穂が隣にいた香澄へと魔石を手渡す。

「え!? 紫苑ちゃん、どうぞ」

 瑞穂のいきなりの行動に一瞬驚いた香澄だが、次の瞬間には目の前の紫苑へと笑顔と共に魔石を差し出すと強引に手を開かせそこに乗せた。

「ここはやはり、六花さんが持っているべきだと思います。そうですよね、六花さん?」

「え? はい? そなの?」

 いつもと変わらないように見える紫苑に魔石を握らされた六花は戸惑いながら、自分に注目する皆を見回す。そして、おもむろに立ち上がると彰弘に近づいた。

「はい、彰弘さんの」

 そう言って、問題の魔石を手渡すとそそくさと元の位置に戻って座った。

 若干上目遣いの六花に平静を装いながらも緊張が見える紫苑、そして何故か座ったまま抱き合い成り行きを見守るような顔をした瑞穂と香澄。

 華麗なパス回しをした少女達は、そんなとても可愛らしい姿を見せる。

 それを見ていた大人達は笑みを浮かべた。

 彰弘も例外ではなく顔には笑みがあった。そして、そう言えば最初に取ったゴブリンの魔石も六花が渡して――正確にはバッグのポケットに入れられた――くれたなと少し前を思い出した。

「まあ、とりあえずこれで学費の心配はしなくてもすむな」

 彰弘は値段など気にしない感じで、渡された魔石を手の中で転がす。

「おおう、大人だ」

 瑞穂のそんな感嘆の声がきっかけになり、ようやく少女達は自分に向けられた視線に気付き顔を赤くした。

 なお、彰弘が大人だから動揺しなかったわけではなく、単にそういう性格だったのである。その証拠に同じ大人であるはずのレンは笑みを浮かべながらもどこか緊張の様子を表していた。

 ちなみに、竜の翼の面々はそれぞれが持っている武具や魔法の物入れなどが、そこそこの値段であるため、この程度の値段は常識の範囲内であったのだ。

「くっくっく。こういうのも悪くないな。依頼には潤いも必要だ」

「そうだね。確かに悪くない」

 セイルとディアは顔を見合わせ笑い合う。

「どうしました? ミリア」

 彰弘から少し離れた位置で微笑みを浮かべているミリアへライがそう尋ねる。

 あまり記憶にない表情だったための問いであった。

「いえ、あのとき、アキヒロさんを治療できてよかったと思いまして」

 そう言ってミリアはライへと笑顔を返す。

 小学校の校庭で意識を失っていた彰弘は確かに生命の危険があるとまでは言えない状態であった。しかし、あのときミリアが治療していなければ、数ヶ月は目覚めなかったかもしれないのだ。そうなると、今は笑っている少女達にも多大な影響を与えたであろう。もしそうだった場合、その影響がどのようなものなのかは今となっては想像しかできないが、現在より少女達へ良い影響を与えると考えるのは流石に無理があった。それだけ、今の少女達は嬉しそうな表情をしているのである。


「さて、皆さん。そろそろ行きましょう」

 それぞれの会話が止んだところで、レンがそう声を出した。

 組分けをしてから余裕のある速度で回収を行っているとはいえ、まだまだ先は長い。あまりのんびり休憩としている訳にはいかないのだ。

「それもそうだな。よし、片付けたら出発するぞ!」

 レンの言葉を受けてセイルが声を張り上げる。

 それを合図に広げていた荷物をそれぞれ仕舞い、数分後には全員が出発できる状態となった。

 なお、少女達に華麗なパスプレーをさせた透明色の魔石は彰弘が自分のリュックサックへと布で包んで入れてある。元々持っていた六花へ返そうとしたのだが、やはり値段が気になるのか、彰弘のだと言い張り、残りの少女達もその言い分を支援した。一応、魔石は山分けなのだからと、彰弘は竜の翼の誰かに持ってもらおうともしたのだが、二個目以降はともかく最初の一つはお前らの物だから自分で持てと突っ返された。そんなこともあり、彰弘が運ぶことになったのである。

 ちなみに、竜の翼が持つことを断った理由のほとんどは前述のとおりなのだが、内心では、自分の物じゃないのにそんな高価な物を預かれるか! であった。実力はともかく、所詮はまだランクDの冒険者。八百万ゴルドを超えるような代物は気軽に預かれる物ではないのである。


 







 二区画目の回収も残り僅かになった。そんな中、一行はある小学校の校庭で手を合わせていた。

 そこは六花の両親が亡くなった土地であり、紫苑が自身唯一の肉親と絶縁を決め実行した場所であった。


 一行の最後に、合わせた手を離した六花が彰弘を見上げた。

「もういいのか?」

 頷く六花の顔に悲しみはなかった。

 今、六花の両手の中指には対となる指輪がはめられている。両親が亡くなった後、いつの間にか彰弘の手の中にあり、そして六花へと渡された両親の結婚指輪である。

 六花は彰弘から渡された二つの指輪をそのときはズボンのポケットへ入れた。そして翌日、ふと気付くと自分の中指に二つの指輪がはまっているのを見た。不思議に思いながらも両親の形見だったため、特に気にすることなくそのまま着けていることにした。そのから数日間は何事もなかったが、彰弘が中々目覚めず涙が出そうになったとき、それが起きた。中指にある二つの指輪が淡く光ると自分を励ます両親の声が聞こえたのだ。

 その後も彰弘が目覚めるまでの間、幾度となく両親の声に六花は励まされた。

 彰弘が目覚めてからは六花の顔が寂しさで曇るようなことはなかったが、両親の声は六花へと届いていた。ただ、その内容は「六花に男ができた」と落ち込む父親とそれを母親が慰めるというような、どこか漫才のようなものであった。

 そんなこともあり、六花は両親が亡くなったことに対して、意味もなく悲しまなくなったのである。

 なお、この二つの指輪は六花が風呂に入っているとき以外は常にその中指にはまっている。六花が着けようとしているのではなく、いつの間にかはまっているのである。六花が指輪を外して部屋の中に置き外出するも、外に出た六花の中指には何事もなかったかのように二つの指輪がはまっているのだ。

 呪いか? と思えるような現象ではあるが、当の六花は両親と一緒という感覚に、その現象を気にもしていなかった。

 ただ、六花は一つだけ疑問に思うことがある。遠くって言ってたけど、全然遠くないよね? と。


 小学校の正門から敷地外へ出た一行は、校庭に隣合う畑を右手に車道を歩いていた。位牌を回収するため、次の家を目指しているのである。

 車道を歩いているのは言わずもがな、車が行き交うことがないからである。

 そんな中、六花が声を出して左手に見えたアパートを指差した。

「彰弘さんの部屋発見です!」

 その声により一行は少女の指差す方向に目を向け立ち止まる。

 そこには日本でアパートと呼ばれる種の集合住宅が建っていた。

「何か、妙な気分だな」

 彰弘は懐かしさでも居心地の悪さでもない、微妙な感じを受け自然とそんな言葉が口から出た。

「もう少しインパクトが欲しいところだな」

「まあ、普通だね。もっとごっつい鉄扉とか付いてるのかと思った」

「なんだそれは? 普通に決まっているだろ。普通のサラリーマンだったんだから」

 セイルとディアの感想に彰弘は呆れたように言葉を返す。

 そして、こいつらの中で俺はどんな奴になってるんだ、とため息をついた。

 一方少女達はと言うと、「あ、なんか家捜ししたい」「駄目だよ瑞穂ちゃん。本人の前でそんなこと言っちゃ」「え? でもしたくない?」「……否定はしないけど」「面白そうですね。するときはぜひ私も」「お、紫苑ちゃん話わかるね〜」「わたしも一緒します!」「うん。六花ちゃんがんばろうね」「はい」、と、とんでもない会話をしていた。

 どうしてこうなった? と彰弘は頭を抱える。

 男の一人暮らしだからたいした物はない。しかし、少女達に見せられない類の物がまったくないわけではないのだ。救いであるのは、回収順では明日以降なことと見せられない物は山となっている本のその奥にあることか。

 位牌は部屋にないので、それを理由に部屋に入るのを断ることも視野に入れたが、この調子ではそれは無理っぽい。可能な限り、自分のためにも少女達のためにも家捜しは阻止しようと彰弘は心に決めた。

「はい、そこまでです。アキヒロさんの部屋は順調に行けば明日には見れますから、今は先に進みますよ」

 手のひらをパンパンと打ち鳴らし、微妙な笑みを浮かべたレンが先を促す。

 それに対して少女達は残念そうにしながらも理解を示し再び歩き出した。

 彰弘は「大変だな〜」と面白そうに肩を叩いてくるセイルに勘弁してくれと返しながら足を動かした。


 そんなこんなで再び依頼のため移動を開始した一行だったが、ミリアとライが付いてきていないことに気付き今一度足を止めた。

「おい、何やってんだ? いくぞ」

 セイルの声で移動に気が付いた二人は慌ててその場から離れ合流してきた。そして、迎えに来た形のセイルに謝罪をすると何事もなかったように歩き始めた。

「何かあったか?」

 セイルは歩きながら遅れてきた二人にそう尋ねる。

 些細なことが命取りになる世界では、このような確認は必要不可欠であった。

「何かあるのは間違いないようですが……」

 言葉尻を濁すライの言葉をミリアが継ぐ。

「正直、よくわかりません。ただ、一つ言えることは私達にとって悪いものではないという感覚だけははっきりと分かりました」

 ミリアの言葉にセイルはライに確認の視線を向けた。

「私にはそれも分かりませんでした。つまり私に分からずミリアに分かるということから考えると、そっち方面でしょうね。まあ、明日以降にでもあの部屋に入れば分かると思います」

「確かに、ここでグダグダ言ってても仕方ないな。んじゃ、いくぞ」

 セイルはそう言うと、少し前を行くディアを先頭にした七人を足早に追いかけた。

 ライもそれに続く。

 ミリアだけは歩きながらあの場で感じた気配を確かめるように、三度彰弘の部屋の玄関へと顔を向けたが、「まさかね」とすぐに前に向き直り足を速めた。


 ミリアとライが感じ取った気配については、すぐに分かることとなる。ただ、それが彰弘達にどのような影響を及ぼすのかは現時点では不明であった。

お読みいただき、ありがとうございます。



 魔石について

 魔物から出た魔石は使えばなくなる普通の魔石(電池)。

 地中から掘り出された魔石は繰り返し使える便利な魔石(充電式電池)。

 なお、この便利な魔石はどのような方法を用いても、人が直接魔石に触り魔力を注ぎ込まない限り魔力が補充されることはありません。

 例えどんなに緻密で正確な魔導回路(魔導具を動作させる回路)を用いても、それが人の魔力吸収と寸分違わない回路だとしても、魔石への魔力の補充はできません。

 じゃ、なんで地中にあるとき魔力が保有されてるんだよ、って話ですが、魔石の生成過程では必ず魔力が関係してきます。そしてそれは生成が完了されるまで欠かすことができません。結果、生成された魔石には魔力が封じ込められることになるわけです。

 ちなみに彰弘がたまに吸っているタバコは神殿で作られていますが、そのときに使われる魔石の粉は加工の過程で出た削りカスです。このカスは通常の方法では本当にカスですが、ある方法を使うと任意に魔力を吸い出すことができるようになります。それ故、タバコにはほんのちょこっとだけ魔力回復の効果があるのです。

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