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融合した世界  作者: 安藤ふじやす
6.リュウを名乗る者たち
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6-23.【再会①】

 前話あらすじ

 フウリュウから組織のことを聞く彰弘たち






 コーヒーの香りによって目覚めた彰弘がいたのは、普通なら見ることがないだろう不思議な空間であった。

 彰弘は寝たのは街道から少し外れた場所に造られた野営地であって、決して今彼の目に映るこの場所ではない。

「ここはあのときの?」

 どうやらこの空間は彰弘の記憶に残る場所のようである。普通なら困惑しそうな状況であるが、彼にその様子は見受けられない。

 白色と黒色を基調にしている空間に彰弘は見覚えがあった。また、その色分けに関係なく、そこにある物が乱雑に置かれている部分と妙に整理整頓されている部分がある光景も記憶にある。

「ふぅ。……まあ、延々殺される記憶を見せられないだけマシか」

 この場所は世界融合直後、彰弘があまり経験したくないことを経験した空間であった。だからこそ、溜息とその後の言葉が出てしまったわけである。

 さて、そんな感じの彰弘は恐らくいるだろう存在を探して歩き出した。

 彰弘が歩き始めてから少し。どこからか彼に二つの声がかけられた。

「あんな特殊なことが、そう何度も起きるわけないじゃない。それより、こっちに来なさいな」

「あのときはすまなかったのじゃ」

 声の発生源へと彰弘の顔が向く。

 いつの間に現れたのか。先ほどまでは何もなかった空間に、三つのカップとクッキーやチョコレートなどのお茶請けを置いた丸テーブルが一卓と、そこを囲むように三脚の椅子があった。そして、そこの椅子には二つの人影が座っている。

「だよな。二柱とは思わなかったが」

 メアルリア教の一柱である平穏と安らぎを司る破壊神アンヌ。

 世界融合直後に彰弘たちの名付けにより穏やかなる大地の神と成った国之穏姫命くにのおだひめのみこと

 彰弘が足を止め、向けた顔の先にいたのは、彼が見たことのある二柱の神であった。









 本題前の雑談をコーヒーとお茶請けで楽しむ。そしてそれぞれのカップの中身が半分くらいになったところでアンヌが本題を口にする。

「さてと、本題に移りましょうか。本題は二つ。まずは世界の融合時に私の魂の欠片があなたに、あなたの魂の欠片が私にくっついていたか。もう一つは何故このタイミングで私たちがあなたと接触したか」

「穏姫がいる理由が不明だが、後者はシンリュウだかって奴のせいか? いや、それでも神が接触してくるってのはない気がするんだが」

「直接手を貸すわけじゃないからいいのよ。言ってみれば神託の延長の域を出ないんだから。まあそれは良いとして。シンリュウとか名乗ってる奴のことよ。あいつが竜の状態で襲ってきた場合の脅威度は、冒険者で言ったらランクAパーティーに匹敵するわ。だからちょっと小細工が必要で、そのためにこの空間を創って会いに来たってわけ」

「小細工ねえ。にしてもランクA? しかもパーティー? ……ちと強さが想像できないな。無理に感じるが?」

 竜との戦い方は知っていると言った彰弘だったが、正確にはどこを攻撃すれば倒せるかを知っているというのが正しい。

 シンリュウの強さがランクAパーティーと同等であるということは、動きがグラスウェルでの大討伐時にオークキングとの戦いを手助けしてくれたランクBのモニカとシス――現在は望んでランクCで活動している――以上の可能性がある。そうなると攻撃を当てることさえ難しくなり、結果倒せる確率は極端に低下するだろう。

 なお、冒険者のランクAというのは彰弘が倒したオークキングの更に上のオークエンペラーと同等の強さである。勿論、冒険者のランクAも、そしてオークエンペラーも個々で強さに違いがあるため、一様にその強さと断言できるものではないが、少なくとも目安にはなった。

 ちなみに大討伐時にオークエンペラーを倒した、竜の翼、清浄の風、魔獣の顎の面々は当時ランクCだったりランクDだったわけだが、戦う力自体はランクBになれるだけのものがあり、だからこそ何とかオークエンペラーを倒すことができたのである。

「あなたの懸念はもっともだけど、そこは大丈夫よ。素早さはあのこの……ああ、今はガルドって名前だったわね……半分以下、いえもっと遅いかしらね。まあ、その分は攻撃が強いし飛べるけど」

「防御は?」

「柔くはないわね。血喰い(ブラッディイート)魂喰い(ソウルイーター)を魔力で今できる最大強化すれば鱗を貫けるけど、弱点である心臓へ届かせるにはあなたの魔力量が足りない」

「魔石で補充しながらってのは……無理か」

「できなくはないかもしれないけど、魔力を補給しつつ魔剣を最大強化して、更に動く標的の弱点を攻撃するって、今の自分でできると思う?」

「……無理だな」

 少しだけ考えた彰弘は結論を口にする。

 魔力を補給しつつ血喰い(ブラッディイート)などに魔力を注ぎ込み強化することまではできるだろうが、敵対して動く相手に攻撃までは、どう考えても無理に思える。もしかしたら魔剣を振ることはできるかもしれないが、間違いなく敵の弱点を攻撃するなんてことはできないだろうという結論に彰弘は達したのだ。

「だからなのじゃ。アンヌとわらわが神の試練を使ってアキヒロがわらわたちの魔力を使えるようにするのじゃ。後、リッカたちにも神の試練でわらわの魔力を使えるようにするのじゃ」

 難しい顔をする彰弘に、にこにこ顔の国之穏姫命が自分がこの場にいる理由を話す。

 いまいち国之穏姫命の言ったことが読み切れない彰弘は、顔を難しいものから若干の困惑顔に変えてアンヌを見る。

「一般的な神官は私たちの魔力を使って神の奇跡というものを使うわ。でも、神官でないあなたたちは神の加護を持っていても信徒じゃないから神の奇跡は使えない」

「まあ、そうだろうよ。影虎さんたちが使えて俺らが使えないことを考えればな」

「うん。ただね、加護を受けた者は神から魔力を受け取ることはできるのよ。実感があるかは分からないけど、加護を受けるってことはそれだけで神の魔力によって生身の防御力が上がるの。つまり、神の魔力があなたたちに繋がっているってことね」

「う……ん?」

「ああ、ごめんね。苦手なのよ説明。ま、難しく考えることはないわ。要は神の試練を経てあなたたちが私たちの魔力を使えるようにするということ」

「了解。ところで、俺だけでなく六花たちもってのは?」

「相手が攻撃する前に倒すためじゃな」

 国之穏姫命の言葉で、彰弘の顔に再び困惑気味な色が出る。

 しかし先ほどアンヌから得たシンリュウの情報に加えて、六花たちの攻撃方法を思い返した彰弘は国之穏姫命が放った言葉の意味を理解した。

「叩き落すためにか?」

「そうね。空を飛んでいる敵の弱点を貫くのはきついでしょ」

「確かに飛んでいるのはやっかいだな。……距離次第だが、ガルドを投げて重しになってもらうのも手か?」

「それが成功したら、それだけで終わりそうな気もするわね」

 ふいの思い付きを口にした彰弘の考えを想像したアンヌは、苦笑気味の顔で笑いを零す。

 確かに終わる可能性はある。ガルドは現在最低でも全長二五メートル、全高十メートル、全幅十五メートルという大きさになれる。そして体重については普段は特殊能力で軽くしているが、それを解けば数百トンにもなるのだ。少なくともシンリュウが空を飛んでいることはできなくなる可能性はあった。

 なお、ガルドは彰弘が寝ている横でもくもくとけれど静かに金属を食べ続けている。シンリュウとの戦いがあるということで、可能な限り自分の力を強くしておこうと考え、彰弘に保管していた金属類を出してもらっていたのだ。

「ま、一応分かった。ガルドと相談してみるか。後は状況次第だな」

「ケースバイケースってね。あ、そうそう、念のため……ってわけじゃないんだけど、うちのリースが気に入ったからって、クリスティーヌとミレイヌに名付き加護と試練を与えるって言ってたわ。ついでにそれぞれの従者にはルイーナがやるらしいわよ」

「……こんなこと言うのはあれだけどさ」

「なによ?」

「そんなにぽんぽん与えるもんなのか? 加護ってやつは」

 加護自体は神の奇跡という技を使える者であれば誰でも例外なく与えられているものであるから問題はないのだが、名付きの加護持ちというのは加護持ち全体の一パーセントにも満たない現状がある。

 彰弘の疑問はもっともであった。

「普通はないでしょうね。でも今回は連帯責任って感じ。ドルワザヌアの顕現は想定外とはいえ私たちのミス。そしてそのドルワザヌアを討ったのはサリナなんだけど、シンリュウってのがあなたを狙う理由は私のせい。多分ね。だから、リースもルイーナも加護と試練を与える気になったんだと思うわ。もっとも、その四人にその資格があったからだけどね。いくらなんでも、全く興味も何もない人に加護を与えるようなことはしないわよ」

 ドルワザヌアとは世界融合当時に顕現した、この世界とは異なる理の世界から渡ってきた、一般的に邪神と呼ばれている存在のことである。

 そしてサリナというのは、このドルワザヌアを討ったメアルリア教の教主の名だ。

「ふーん。なんつーか、考え方が俺らとあんま変わらない気がするな。まあ、それはそれとして、アンヌのせいで俺が狙われるってのは、名付きの加護が関係している感じか? それ以外だと魂云々関係とかあるかもしれないが」

「両方と言うべきかしらね。私の名付きの加護を与えているのは今現在あなたとサリナともう一人で三人なんだけど、サリナが完全に復調していないし魂の欠片の件もあって、私の気配が一番強いのがあなたになるのよね」

「もう一人ってのは気になるが、まあいいか。んで、どうする? コーヒーもなくなったし、試練とやらをやるのか?」

「ううん。まずは魂の欠片の方ね。それを話してから試練の方が効率が良いわ。というわで、こっちはもう少しかかるから、あなたは予定通りにね」

「分かったのじゃ。まずはリッカたちの試練からやるのじゃ。じゃあ、またの」

 アンヌに顔と言葉を向けられた国之穏姫命は、彰弘に元気な笑顔を見せると大きく手を振ってから姿を消した。

 これから六花と紫苑に瑞穂と香澄へ神の試練を与えにいくのである。この試練が終わり十全な成果が出るならば、元々普通以上の魔力を持っていた四人は更に多くの魔力を使えるようになるのだ。そしてそれは彼女らの、また彰弘の安全に繋がることになる。

「さてと穏姫は行ったし、コーヒーを入れなおしてから話の続きをしましょうか」

 いつのまにか用意されていた諸々の器具を使ってアンヌが準備をする。

 そして二つのカップに新しいコーヒーが注がれた。

「それじゃ、はじめましょっか」

 椅子に座りなおしたアンヌは彰弘に向かい合う。

 そして、世界融合当初に起こった事についてを話し始めるのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。




書ききれなかった。再会②に続く。

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