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融合した世界  作者: 安藤ふじやす
6.リュウを名乗る者たち
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6-16.【クランベにて】

 前話あらすじ

 大闘技会閉会の翌日。

 彰弘は弟に会うためにクランベという街へ向かう。






 今までに何度もあったことであるが身分証に記されている称号で驚かれ、そしてそこに加えて、皇都サガ以降ではゴーレムを連れ歩いている従魔持ちということでも驚かれた彰弘たちは、とりあえず無事にクランベへと入ることができた。

 まあ、称号やらが少々常識の範疇にはない集団ではあるが、別に罪を犯しているというわけでも、何か後ろめたいことがあるわけでもないので、街にはいること自体には何の障害もないのである。

 そんな彰弘たちはクランベへと入り、北門から少し進んだところにある公園で今後の行動を再確認していた。

「まずは宿、ですよね?」

「ああ。いきなり行って泊めてもわうわけにはいかないからな」

 一応、彰弘は弟の圭司(けいじ)へと、事前に総合管理庁を通して今の時期に会いに行くという伝言を伝えていた。しかし、伝えたからといって正確な日程が分かるわけでもなく、増して人数が人数だ。大人しく宿屋を取るのが得策である。

「偶に忘れそうになるけど、普通はいきなりきたお客さんを泊めることなんてできないもんねー」

「まあ、一人だけなら別かもしれないけどね」

 何だかんだで広い屋敷と使用人がいる生活が身近にあり馴染んできた彰弘たちだが、とりあえずはまだ一般的な平民の生活がどのようなものであるか、忘れてはいない。

 ちなみに彰弘の屋敷ではいきなり十人くらいの来客があり泊めなければならなくなっても、なんとか対応できるだけの余裕がある。

「そんなわけで、まずは宿屋だな。んで、その後、時間があったら総管庁へ行って住所の再確認と地図を見せてもらう。弟の圭司と会うのは……まあ明日にするか」

 ライズサンク皇国の各街は番地やらなにやらでしっかりと管理されているので、目的の場所の住所が分かれば街の地図は必須ではない。しかし初めての街なので土地勘なんてものがあるわけがないため、彰弘は地図で弟の居場所を確認する予定であった。

 なお、ライズサンク皇国および隣接するノシェル公国とサシール公国の三国においては、世界融合の影響で離れ離れになった家族の安否などの情報は全て各国の総合管理庁で共有されている。そしてそれは日々更新されており、人探しの依頼があれば集められた情報から依頼者へ情報を開示していた。

 無論、情報の開示は誰にでも無条件にというわけではない。

 元地球人が依頼人である場合、世界融合前後の身分証明書が必要である。それに加えて、依頼人が探している人物の同意が得られなければ、どれだけ依頼人が言おうとも総合管理庁は情報の開示は行わないことになっていた。

 今の世界であっても情報というものは使い方によっては危険となりうる。だから総合管理庁は双方の了解をもってでしか情報の開示をしないのであった。

「さて、移動するぞ」

 彰弘はそういって歩き出す。

 するとそれに続くように残りの面々も動き出すのであった。









 翌日。

 彰弘たちの姿はクランベの宿屋の一階に併設された食堂にあった。

 武器や防具を身に付けていないのは、今日は防壁の外に出る予定はないからだ。

 ただ、無防備かというと、そういうわけではない。

 彼らの服は一見では何の変哲もない誰もが着ている普通の物と同じに見えるが、実はブラックファングの革などの魔物素材で作られたもので、並の冒険者が防壁の外へ行く程度の防御力を持っていた。

 武器に関しては見た目通り身に付けてはいないが、今いる彰弘たちの中で素手だと攻撃力が極端に落ちるのは碌な魔法を使えない彰弘と、こちらは全く魔法が使えないエレオノールくらいである。

 とはいえ、今の彰弘は武器がなくても普通のオークを殺すことくらいは余裕でできる。エレオノールにしても深遠の樹海での無茶に思える魔物狩りを経ているので相当に強くなっており、オークくらいなら苦戦はするだろうが勝つこともできるのだ。武器がなくても、とりあえずは問題ないと言える。

 残りのメンバーについても問題はない。六花に紫音、瑞穂と香澄、それからクリスティーヌについては魔法の腕前が既に熟練の魔法使い以上となっているので、武器がなくとも普通以上に戦えるからだ。

 ゴーレムに宿ったポルヌアについては、そもそも武器を持っていない。彼女はミスリルと魔鋼の合金製ゴーレムの強度そのままで、更に不思議なことに魔法も生前と同じように使えるのだから武器云々は蛇足というものだろう。あえて言うならば武器があれば物理攻撃の射程が伸びるということくらいか。

 ちなみに各自の防具は宿屋に置いてあるが、武器は全て彰弘のマジックバングルの中に入っているため、全員が同じ場所にいるならば、ものの数秒で武器がないという状態から脱することができたりする。

 まあ、いろいろと書いたが、彰弘の肩には輝亀竜のガルドがいつも通り鎮座しているので、余程のことが起こらない限りは何も問題ないのが、この一行であった。









「のんびり観光がてら行こうか。途中で昼飯食べて……ま、丁度は腹がこなれたころに着くだろ」

「いまさら。ほんとうにいまさらだけどね。急がなくてもいいの?」

 朝食をとり終え、食後の茶を飲みつつ今日の方針を伝える彰弘に、若干不安気な表情をした六花が問いかける。

 彰弘が視線を動かすと、事情に全く関わっていないポルヌア以外の表情は六花と似たり寄ったりであった。

 彰弘の家族探しの旅が当初の予定より一年先に延びた理由は、六花たち全員が彼と同じ冒険者ランクとなってから同行したいと願ったからだ。

 彰弘はその六花たちの要望を問題ないと受け入れたし、実際に思うとことは何もなかった。そしてそのことは言葉で伝えていたのだが、それでも生き別れとなった家族との再会を自分たちの我儘で先延ばししたという事実は、彼女たちにとって相応に大きなものだったのである。

「ふー。何度も言ったと思うが気にするな。最終的に延期しても良いと決めたのは俺だ。とりあえず、このことについては無条件で俺を信じとけ。それで問題ないからさ」

 隣に座る六花に微笑みかけて頭を撫でた彰弘は、残りの面々へとその顔のまま視線を合わせる。

 反応は様々であったが、最終的に彰弘に顔を向けられた面々の表情から不安がなくなっていたので、彰弘の言葉と態度は成功といえるだろう。

「んじゃまあ、出かけようか」

 朝食後の茶を飲みほした彰弘が席から立ちあがる。

 それに六花たちも続く。

 こうして宿屋を出た一行は、特に急ぐわけでもなく彰弘の弟が住むところへ向かうのであった。









 クランベの街は南北に二つの大通りが通っている。西側は基本的には交易用で東側がそれ以外用であった。

 元々が港町とサガを結ぶ中継地点であったこともあり、このような形となっているのだ。

「帰りは西側を通ってみるか」

「こっちとはまた違った感じなんでしょうね」

 とりあえず交易に関わりがない者は滅多なことでは街の西側にはいかないという情報と、彰弘の弟である圭司が住んでいる住所が街の南東であることから、彰弘たちは東側の大通りを進んでいた。

 そんなクランベの東側の特徴は区画の整理がしっかりとされている、といったところだろうか。西側は交易のために必要と思われる施設を順に建てていくという拡張を繰り返していた影響で若干煩雑であるが、東側は人が住むための街を計画的に造っていったという経緯があり、目的地に向かうのに分かりやすくなっていた。

「それにしても落ち着いた場所ですよね」

「時間に余裕がなかったりで急ぐ人は西側の大通りを使うそうですから。なんでも、こちらと違って向こうは速さ重視の定期獣車があるそうですよ」

「上手く住み分けができてるってことかな? まあ、悪いことじゃないな」

 クランベの街の様子を話題に足を進める彰弘たちの目に南側の防壁がはっきりと映る。

 それを確認して彰弘が視線を少し彷徨わせて、ある一点で目を止めた。

「よし、そこを左な。んで住宅街に出たら右だ」

 大通りの脇にあるのは基本的には商店関係であった。

 彰弘たちが目指す場所は大通りから一本横へ入った住宅街にある。

「ほへー。またこれは良い雰囲気」

 目新しいものもなく、どれだけ他の街と似たようなものであっても、大通り付近と住宅街との違いに思わず声が出てしまう。それほどまでにこの世界の街の中は場所により雰囲気が劇的に変化しているのである。

 そんなこんなで歩くこと暫し。彰弘たちの目の前に小さな公園が見えてきた。

 二人掛けのベンチが二つあるだけの広場で、その広さは十メートル四方といったところだろうか。

「あ、誰かいますね」

「ああ」

 公園に人がいるのを見て誰かが声を出すと、それに応えるように彰弘が一言だけ呟く。

 そしてそんな彰弘の顔は少しだけ懐かしさを覚えるような表情をしていたのであった。

お読みいただき、ありがとございます。



感想いただきました。ありがとうございます。

で、六花たちの容姿についてありましたので少しだけ。

まあ、まだ年齢的に少女です。

現時点で

六花:十五歳

紫苑:十六歳

瑞穂:十八歳

香澄:十八歳

ですので。

ちなみに、今現在彰弘に同行しているクリスティーヌは十七歳で、エレオノールは二十二歳です。

ついでに言うとポルヌアの容姿は六花と同じくらい(つまり年齢よりはちょっと幼い)感じです。


彼女たちの容姿については折角ですので、次の話で彰弘の弟が見た感想みたいな感じで入れようかと思います。


では、今回はこのあたりで。


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